婿養子には相続財産を受け取る権利があるのか?婿養子の相続について詳しく解説!

法定相続
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戦後、民法が改正され、結婚後は男女どちらの姓を名乗ってもいいことになりましたが、男性側の姓を名乗る方が圧倒的に多いのが実情です。しかし、全体の約3%は男性が女性側の姓を名乗っているケースもあります。本稿ではこのようなケースに当てはまる婿養子の相続について詳しく解説して行きたいと思います。
一般的に結婚後、男性の姓が変わると「養子になられたんですね」と言われることが多いですが、実は姓が変わった場合、一概に「婿養子」という訳ではなく、婿婿養子では違いがあります。そういった前提のお話から、相続に関するお話までを解説していきます。


被相続人=資産を残す人=亡くなった方
相続人=資産を受け継ぐ人=配偶者、子供、親せきなど


1.「婿」と「婿養子」の違い

婿の場合

冒頭にも記載しましたが、結婚後、男性の姓が変わると、「養子に入られたんですね」と言われることが多いですが、姓が変わっただけでは、養子にはなりません。
女性が男性の姓を名乗ったからと言って、先方の養子になる訳ではないのと同じです。「姓が変わっただけ」の場合は、婿です。
そして相続時、婿の場合は、結婚相手の女性の両親の財産の相続権はありません。
単に男性が女性の姓を名乗っているということになり、男性は結婚相手の両親の子供ではないので、相続人に該当しません。

婿養子の場合

では、婿養子とはどういう場合を言うのでしょうか?
「婿養子」になるには、男性と結婚相手の両親が養子縁組をすることが必要です。
相手の親の子供になった上で、女性と結婚する事で、婿養子となるのです。男性は、女性の夫となるのと同時に、妻の両親の養子になります。
そして相続時、婿養子の場合は、妻の両親の「養子」として法定相続人になり、相続することができます。
また婿養子になっても、男性は、実の親との親子関係は継続したままですので、実の親の財産も相続することができます。
自分の両親と妻の両親、両方の親から相続を受けることが出来るというのはすごく都合の良いことに聞こえるかもしれません。
しかし、財産を相続する以上、実子と同じように両親の面倒を見る必要と責任が出てきます。
財産を受け取ることばかり目が行きがちですが、この点も忘れないようにしましょう。

ケーススタディ

2兄弟の4人家族がいました。

この兄弟のうち弟は、妻と結婚するにあたり婿養子に出て、戸籍からも出ており、姓も変わっています。この場合、兄弟の父親が亡くなった時、弟に相続権はあるのでしょうか?
 

答えは、弟にも、相続権はあり、兄と同じ割合の権利を持っています。
上記のように、婿養子になったとしても実の親との親子関係は継続したままですので、財産を相続することができます。
 

婿養子に入る際の注意点について!
婿養子になれば、実親、妻の親、両方から相続を受け取れるという面ではメリットがありますが、一方で注意点も考えなければなりません。
注意点の1つとして挙げれるのが、離婚する場合の手続きが煩雑になるということです。「姓が変わっただけ」の婿の場合は、離婚届を提出すれば、離婚は成立します。しかし、婿養子の場合、離婚届を提出すれば、夫婦間の離婚は成立しますが、他にしなければならないことがあります。
婿養子では、相手の親との養子縁組をしているため、離婚届を提出しただけでは、元妻の親との親子関係が残っています。つまり、相続権も続いています。離婚したのに、その親と親子関係が続いている、相続権があるというのは不自然なので、養子縁組を解消する手続きも同時に行うのが一般的です。
この手続きが、婿養子の時には発生するため、デメリットとして考えることができるでしょう。

2.婿養子の相続割合

名前が変わるだけの婿では相続権利は発生しない、婿養子になった場合は相続権利が発生すると説明しました。
では、婿養子の相続の割合はどうでしょうか?
婿養子の場合、法定相続分は、第一順位である「子ども」と同じです。
つまり、結婚相手の実子である妻や、妻の兄弟姉妹と同等になります。

ケーススタディ

ある男性が、1人の女性と結婚を控えています。
結婚相手の女性は、親2人、長女、次女、三女(その女性)の3姉妹からなる、5人家族です。

男性は、相手の女性の両親と養子縁組をして婿養子に入り、三女と結婚しました。
数年後、3姉妹の父親が亡くなりました。
父(被相続人)は4,000万円の遺産を残しました。この場合、男性(婿養子)の相続割合はどうなるでしょうか?

答えは、男性の相続割合は1/8(500万円)となります。理由は以下の通りです。
まず今回のケースの場合、被相続人(今回は妻の父親)には配偶者である妻の母親がいるので、母親が1/2(2,000万円)を相続します。
次に残りの1/2(2,000万円)を3姉妹で等分することになりますが、ここに婿養子である男性も加わります。
つまり、長女、次女、三女(妻)、婿養子(夫)の4人で1/2(2,000万円)を4等分します。
よって、男性の相続割合は1/8(500万円)となります。
前章で書いたように、上記のケースで相続する権利があるのは、妻の両親と養子縁組をした婿養子だけです。
養子縁組をしていない限り「長年、義理の親の介護をしてきた」とか「義理の親が亡くなったが、親族は婿である自分しかいない」など、個別の事情がどんなものであれ、相続権は発生しません。この点は、十分、ご留意ください。
※遺言書で指定されていた場合は別のケースとなります

3.婿養子に相続させたくない場合に取る2つの方法

これまでは一般的な知識として、婿と婿養子の相続について説明してきました。
この章では、義理の親の立場から「婿養子の相続」について考える際の注意点をご説明します。
娘の結婚の際、色々な理由で家を継いでもらうため、娘の夫と養子縁組をし、婿養子に入ってもらった場合でも、長年共に暮らす中で、確執や諍いが起こる場合はあります。
養子縁組をした婿養子は、何度も書いてきましたように、相続権がありますし、相続割合も実子と同等ですが、どうしても婿養子には、相続させたくない場合も出てくるでしょう。
そんな時、婿養子に相続させないということは可能なのでしょうか?
結論としては可能です。またその方法は、2つあります。順番に見ていきましょう。

養子縁組を解消する

1つ目は、婿養子との養子縁組の解消です。
当たり前ですが、養子縁組をしているから、実子と同等の相続権があり、婿養子との養子縁組を解消すれば、婿養子には相続権はなくなります。
養子縁組の解消には、養子離縁届の提出が必要です。養子縁組を解消するときに提出する書類です。これが受理されると、法律上の親子関係が解消します。
ただ、養子離縁届の提出には、婿養子の合意が必要で、親の側から一方的に提出することはできません。
合意が得られない場合、裁判になることもあり、その場合、離縁の理由が制限されます。
親子関係を解消しなければならないほどの理由、事由をはっきり示す必要が出てくるので、すんなりと養子離縁に至らないこともあります。

遺言書に書き残す

2つ目は、遺言書を遺すという方法です。
先ほど紹介した養子縁組の解消という方法は、現実的でない場合があります。
なぜなら、婿養子に入るということは、結婚当時、後継ぎがいない、家を継ぐなど何かしらの重大な理由があって婿養子という選択肢を取ることが多いです。
その場合「相続させたくない」という理由だけで、養子縁組を解消するのは、少し強引な手法となります。(また、婿養子の同意も必要ですが、妻(自分の娘)も納得する理由が必要です)
上記のようなことから、遺言書に遺すという手法の方が現実的で、取りやすい措置と言えるでしょう。
遺言書に遺すとは、被相続人が遺言書に婿養子には相続させない旨を書き残す方法です。
遺産相続では、法定相続分よりも、遺言書が残っていた場合はその内容が優先されるため、婿養子に相続させないという事が可能になります。

遺言書を書く際は遺留分に注意すること!
遺言書を使えば「婿養子に相続させない」事ができると説明しましたが、厳密に言えば、「婿養子には一切相続させない」ということはできません。
なぜなら、法定相続人には、遺留分という相続分について最低限保証されるべき権利があるからです。
ですので遺言書に「婿養子に相続させない」と記載しても、遺留分の割合だけは婿養子に相続する権利があるという事を覚えておきましょう。
尚、婿養子の遺留分は、相続分の1/2となります。
※遺留分についてはこちらの記事をご覧下さい

まとめ

今回は、婿養子の相続について、知っておくべきポイントを整理してご説明しました。
もしあなた自身が婿養子である、または身内に婿養子がいる場合は、そのときになって慌てるのではなく、事前に上記のような情報を確認し、準備しておくことが重要です。
今回の解説がその一助になれば幸いです。

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