借地権を相続した場合、相続登記は必要?賃借権や地上権などを詳しく解説。

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たとえば、自分の親が、一戸建ての家や自己所有のマンションなどを持っている場合、実はそれが建っている土地については借物である、ということは少なくありません。

土地を借りる権利を借地権といいますが、相続においてこの借地権は、どのように扱われるのでしょうか?相続登記は必要なのでしょうか?


被相続人=資産を残す人=亡くなった方
相続人=資産を受け継ぐ人=配偶者、子供、親せきなど


1.借地権について

所有権と借地権の違い

被相続人が不動産(建物)を所有していた場合に考えなければならないのが、建っている土地との権利関係です。

建物同様に被相続人が所有してるものなのか、誰かから借りているものなのかによって、相続の仕方が変わってくるのです。

所有権とは

所有権とは、そのものを所有する権利で、この場合所有権登記を行っているはずですから、登記簿謄本にも記載があります。

土地を所有しているので、土地の売買や利用、他の人への貸出や、相続、贈与も自由に行う権利があります。

よって、この(被相続人に所有権がある)場合には、相続のために誰かに許可をとる必要はありません。

相続をした人が、相続登記を行えばいいということになります。

借地権とは

借地権は、誰かから借りた土地に、自分が所有する建物を建ててもよいという権利です。

この場合、建物の所有権は被相続人にあるけれど、土地の権利は第三者にあるという状態になります。

建物を人に貸したり、改装したりといったことはある程度※1 自由にできますが、土地の売買や貸出などに関する権利は持っていません。

※1 借地権の契約で定めがある場合、それに従います

借地権の種類

借地権は、現行4種類のものがあります。大きな違いは、契約期間の長さにあります。

1.旧(法)借地権

1992年8月1日よりも前に契約されたものには、旧法が適用されています。権利の存続期間は、堅固建物で30年以上、非堅固建物で20年以上です。「堅固建物」とは、コンクリートや鉄筋などでできた建物のことで、「非堅固建物」とは、木造などの建物を指します。これより短い期間を定めた場合や、特に期間を定めなかった場合には、堅固建物で60年、非堅固建物で30年とすることが、法で定められています。契約更新時には、堅固建物が30年、非堅固建物が20年となります。旧(法)借地権では、地主は、正当な理由がなければ契約更新を拒めないことになっています。大きな契約違反などがなければ、ほとんど永続的にその土地を借り続けられるということです。

2.普通借地権

1992年8月1日以降、新法の適用によって定められました。建物の区別はなくなり、契約時に約束される存続期間は30年です。契約更新時には、1回目は20年、2回目以降は10年と、期間が短くなっていきます。旧法と同じく、地主は正当な理由なしに契約更新を拒否できません。

3.定期借地権

こちらも、新法の制定によって誕生した権利です。「定期」とつくとおり、契約満了時に、土地を返却しなければなりません。契約によって定められる存続期間によって、3つの種類があります。ひとつが、存続期間が50年以上の「一般定期借地権」、ふたつめが、30年以上の「建物譲渡特約付借地権」、そして3つめが、10年以上、20年以下の「事業用借地権」です。分譲マンションや大型ショッピングモール、コンビニやガソリンスタンドなど、さまざまな形で活用されています。

4.一時使用目的の借地権

定期借地権では、最低でも10年間、借地権が存続します。しかし、工事のために隣接した土地に事務所を建てたり、期間限定の展覧会の会場を造ったり、選挙用事務所を建てたりと、もっと短い期間で土地を利用したいという場合もあります。そのときに適用されるのが、一時使用目的の借地権という考え方です。建物を所有する目的で、かつそれが一時的なものであることが明らかな場合にのみ適用され、存続期間は特に定められていません。契約が更新されることはなく、期間の満了とともに権利は消失します。

2.借地権だと分かった場合に確認すること

被相続人が有しているのが所有権ではなく借地権だと分かったら、次に、土地や建物の権利の内容を詳しく調べる必要があります。

重要なのは権利の種類建物を所有する権利です。

特に後者は、できれば相続が発生するよりも前に確認しておきたいポイントになります。

2種類の権利、どちらかを得ているか

先ほど借地権を、権利の存続期間によって4つに分類しましたが、権利の強さ、内容によって、2つに分けることもできます。それが、賃借権地上権です。

賃借権について

賃借権は、地主の承諾を得ることで、間接的に土地を支配できる権利です。

土地を借りているというよりも、土地を使う権利を借りている状態というイメージです。

地主の許可がなければ、賃借権の登記はできませんし、勝手に権利を譲渡したり、貸し出したりすることはできません。

賃借権は債権のひとつで、債権とは、「債権者が債務者に何かをさせたりさせなかったりする権利」です。

つまり、土地の賃借権とは「土地を借りる権利、地主に土地を貸してもらう権利」というくらいの意味になります。

地上権について

地上権は、その土地に対する直接的な支配権です。

賃借権と違いこちらは物権、つまり、物を直接的に支配できる権利なので、非常に強い力を持っています。

登記の義務があり、地主の許可がなくても、譲渡や売買、貸出が可能です。

地主に不利になりかねない権利なので、一戸建ての住居のような場合にはほとんど使われません。

賃借権の場合は、建物の所有権保存登記が必須!

上記の2種類の借地権について、1.賃借権 or 2.地上権 かどうかを確認した時、それが賃借権の場合は、登記が行われません。

賃借権はあくまでも貸主に対する債権に過ぎず、地主(貸主)には「自分の不利になるような登記はしたくない」という心理が働くためです。

もちろん、地主(貸主)さんの協力があれば、賃借権の登記を得ることも可能ですが、現実的には少ないです。

そうすると、その土地の利用権があるという証拠は、賃借権を結んだ契約書だけになってしまいます。

その場合に以下のような問題が起こります。

◆ケーススタディ

● 当事者:Bさん(借地権者)
● 地主:Aさん(所有者)
● 第三者:Cさん(新たな所有者)

この状態で、地主Aさんが、Bさんが賃借権を持っている土地Xを、第三者のCさんに売ったとします。

すると、土地の所有権が、Aさんではなく、第三者のCさんに移ってしまうのです。

この時、新たな所有者Cさんが、引き続きBさんに土地を貸してくれるということであれば問題ありませんが、「土地を貸したのはAさんで、自分は貸すつもりはない、土地を明渡してくれ」と言われることもあるかもしれません。

土地Xには、Bさんの建物が建っている訳ですから、こうなると大変です。

が、Aさんと交わしていた賃借権はあくまでも債権であり、原則としてはあくまでもAさんという人に対する権利にすぎないので、土地の新所有者であるCさんには何らの権利も有しないことになり、Cさんに対しては土地の借主(借地権者)であることの主張ができないのが原則ということになります。つまり、Bさんは土地を明け渡すしかないのです、、

しかし、これではBさん(借主)の立場があまりにも弱くなってしまうため、借地借家法では建物の所有権保存登記を行うことで、賃借権を第三者に対抗できるとしています。

Bさんが、土地Xに建てた建物の所有権保存登記をすれば、建物の所有権がBさんにあることを他の人に主張できるだけではなく、その建物の底地を使う権利(賃借権)を有することを他の人に主張できるのです。

これで、土地をCさんに明け渡さなくて済むのです。

また、賃借権は地主の許可無しに登記できませんが、土地の上に建っている建物の所有権保存登記は借地権者が単独で行うことができます。

尚、建物を新築した際には、所有権保存登記を必ずと言っていいほど行われていますが、万が一されていない場合は、相続人により所有権保存登記をすることができます。

3.借地権の相続手続き

名義変更(相続登記)について

借地権(=土地)そのものの名義変更については、特に手続きの必要はありません。

が、上記のお話の通り、建物については所有権保存登記がなされており、その名義変更手続きとして、所有権移転登記を行う必要があります。

また万が一所有権保存登記がされていない場合は、所有権保存登記を行いましょう。

地主への連絡

相続が発生し、借地やその上の建物をどうするかが決まったら、できるだけ早く地主に連絡をしましょう。

条件によっては地主の許可なく相続が完了することもありますが、その場合でも今後の関係のことも考えると、「相続で権利者が変わりました」という連絡はしておいた方がよいでしょう。

反対に、条件によっては地主の許可が必要になるケースもあります。以下で詳しくみていきましょう。

法定相続人が相続する場合

法定相続人が相続する場合、地主の承諾はいりません。

承諾料や名義書換料といった料金を払う必要もありません。

相続は、包括承継といって、被相続人の地位をそのまま引き継ぐものだからです。

この場合、地代や契約期間はそのまま引き継がれることになります。

借地権も、借地上の建物も同じ人が相続していれば、そこに住む義務もありません。建物の貸出なども自由に行えます。

法定相続人以外が相続する場合

法定相続人でない人が相続する場合、これは、第三者への譲渡とみなされ、地主の承諾が必要になります。

承諾料や名義書換料が発生する場合、これも支払わなければなりません。

もしも地主の承諾が得られなければ、家庭裁判所で所定の手続きをしましょう。

借地権譲渡の承諾の代わりになる許可を受けることができます。

売却する場合

建物を売却することになった場合は、借地権も合わせて売却することになります。

建物だけを購入して、土地を利用する権利を持っていなければ、土地の不法占拠になってしまうからです。

借地権を売却するには、当然地主の許可が必要になります。

もし承諾が得られなければ、家庭裁判所で、承諾に代わる許可を得ることができます。

4.借地権の評価方法について

借地権を相続する場合にも、その価額によって相続税が発生します。では、借地権はどのように評価するのでしょうか。

借地権の評価方法は、旧(法)借地権と普通借地権、定期借地権、一時使用目的の借地権で異なります。それぞれ見ていきましょう。

借地権

旧(法)借地権と普通借地権を評価額を求める計算式は以下のとおりです。

借地権の評価額=自用地としての評価額×借地権割合

自用地としての評価額とは、その土地を更地にしたときの価額です。そして、借地権割合とは、路線価図に記載されている一定の割合を指します。路線価図は、国税庁のHPからも調べられます。

※路線価図の見方についてはこちらの記事で詳しく解説しています

定期借地権等

定期借地権の評価は、原則として、被相続人が亡くなった時点で、被相続人に帰属する経済的利益と、その存続期間をもとに計算します。経済的利益とは、適正地代と支払地代の差額のことで、安く借りることで利益を得ていたと考えます。

ただし、契約時からずっと、権利者に帰属する経済的利益に変化がないなど、課税上特に弊害がない場合には、簡便法を用いて計算します。

計算式は次のようになります。

専門的な言葉が並びますが、実際に評価するときには、定期借地権等の評価明細書を税務署に提出すれば計算してくれます。

一時使用目的の借地権

一時使用目的の借地権は、短い期間で更新もなく消滅するものです。権利自体が非常に弱いため、上に挙げた借地権や定期借地権と同じように評価せず、「雑種地の賃借権」の評価方法に準じて評価することになっています。

雑種地の賃借権の評価には、次の2つのパターンがあります。

1.地上権に準ずる権利として評価することが相当と認められる賃借権

「地上権に準ずる」とは、賃借権の登記がされているもの、権利金など、設定の対価としての金銭の授受がある、堅固な構築物の所有を目的とするものなどです。

計算方法は以下のとおりです。

雑種地の自用地価額×法定地上権割合と借地権割合とのいずれか低い割合

法定地上権割合とは、相続税法第23条に定められた、地上権を評価するときに用いる割合で、権利の残存年数によって決まります。

2.1以外の賃借権

雑種地の自用地としての価額×法定地上権割合×1/2

5.借地権で起こり得るトラブル

借地上に建てた建物で生活していても、借地権について意識することはあまりないかもしれません。

しかし、そのせいで契約の更新や相続の際にトラブルになることがあります。

子ども名義での新築

後のちの相続のことを考えて、あるいは子ども夫婦と同居をするためにといった理由で、建物の名義を子どもにするというのはよくある話ではないでしょうか。

しかし、借地の場合、借地権の所有者と建物の所有者が違うと、地主が建築を認めてくれないことがあります。

借地権を持っている人とは別の人の名義の建物を建てることは、「借地権自体を貸し出した」ということになるからです。

持っているのが賃借権の場合、地主の承諾なく、権利を貸し出すことはできませんから、これを理由に次の更新を断られてしまう恐れがあります。

また、建物や土地の利用権を主張するための所有権保存登記は、借地権と建物の名義が違うと借地権を第三者に対抗することができません。

この点でも、名義の違う建物を建てることは避けた方がいいといえます。

二世帯住宅の許可なし建築

子ども名義での新築と同じように、二世帯住宅を建てる際、子ども名義にする場合も、トラブルになる恐れがあります。

二世帯住宅の場合、元々あった建物を改築したり建て替えたりといった形で建築するケースも多く見られますが、契約内容によっては、改築や建て替えなど、建物の耐用年数を伸ばす行為に関しても、地主の許可を得なければならないこともあるのです。

もし、子ども名義で、さらに今ある建物を建て替えて二世帯住宅にしたいといった場合には、借地権の名義変更をするか、あるいは、借地権を子どもに貸し出すこと、権利を得た子どもが建物を建てることの2点について、それぞれ地主からの承諾を得なければならないということになります。

まとめ

借地権とは、土地を借りて、その上に建物を建てられる権利です。

被相続人の相続財産に建物が含まれる場合、それが建っている土地が、被相続人の所有物なのか、もしくは借りている土地なのかによって、手続きが大きく変わることがあります。

法定相続人が、建物も借地権もそのまま相続するときには、それほど面倒ではありませんが、法定相続人以外が相続したり、建物を売却して相続したりといったときには、地主の承諾が不可欠です。

権利関係がごちゃごちゃしてしまわないように、相続が発生する前から整理しておけるとよいですね。

この記事を監修した専門家は、