故人との最期のお別れを、親しい人たちだけでゆっくり行える家族葬。
すでに新しい葬儀形式として多くの人に認識されるようになりましたが、近年では遺族の諸事情や感染症対策などで、その需要は増加傾向にあります。
しかし、実際に家族葬を検討したり「家族葬を行います」という知らせを受けたりすると、どのように対応するべきなのか迷ってしまいますよね。
今回は、家族葬の葬儀形式や具体的な流れとともに、家族葬の費用・香典・服装や呼ばれる範囲など、家族葬に関するさまざまな内容を解説します。
目次
家族葬とは?どのような葬儀?

家族葬が一般葬と異なることはわかっていても、具体的にどのような点が違うのかと問われると悩む方も多いことでしょう。
家族葬の特徴がわかっていると、実際に家族葬を検討する際の目安になります。
ここでは、家族葬とはどのような葬儀なのかを詳しくお伝えしましょう。
- 一般葬よりも規模が小さい
- 参列者の人数が限られる
- 故人や遺族の遺志・意見を反映しやすい
- 葬儀費用を抑えやすい
一般葬よりも規模が小さい
家族葬には、これというはっきりとした定義はありませんが、「一般葬よりも規模が小さい葬儀」を家族葬と呼ぶ人が少なくありません。
家族葬は、一般葬と比較すると参列者数・会場の規模・祭壇の設えに至るまで、すべて規模が小さくなります。
たとえ葬儀の流れが一般葬と同じでも、葬儀全体の規模が小さくなれば遺族の負担も軽減され、故人とゆっくりお別れができるのです。
何か大きな違いがなくても、規模が小さい葬儀も家族葬に含まれることを覚えておきましょう。
参列者の人数が限られる
家族葬では、少人数で故人とゆっくりお別れするために、参列者の人数が限られることがあります。
家族葬の場合、参列者の人数は平均すると10人〜30人前後なので、一般葬のように訃報を知った人は誰でも参列して良いわけではありません。
故人が生前に希望していた人や、遺族から招待を受けた人たちなど、あらかじめ参列できる人が限られるのは家族葬ならではの特徴といえるでしょう。
故人や遺族の遺志・意見を反映しやすい
故人の遺言や遺族の意見など、葬儀に関する希望を反映しやすいことも家族葬の特徴です。
葬儀の流れは一般葬とあまり変わりませんが、参列者が限られていれば話し合いもスムーズですし、より希望に沿った形式でお別れができます。
もちろん、すべての家族葬に当てはまるわけではありませんが、家族葬だと故人や遺族の遺志・意見を反映しやすいという点を覚えておくと良いでしょう。
葬儀費用を抑えやすい
家族葬は「小規模」「少人数」という特徴があるため、一般葬と比較すると葬儀費用が抑えやすいです。
小規模な葬儀なら会場も小さくて済みますし、参列者が少人数なら用意する食事や会葬御礼品も少ないため、全体的に葬儀費用が少なくなります。
もし費用の点で葬儀形式を悩むようなら、家族葬による葬儀を検討してみましょう。
家族葬を選ぶのはどのようなケース?

近年では広く認識されるようになった家族葬ですが、比較的新しい葬儀形式なので実際に検討する際悩む方も多いことでしょう。
では、家族葬を選ぶ人にはどのような理由があるのか、具体的なケースをお伝えします。
- 故人や遺族が望む場合
- 葬儀費用を出来るだけ抑えたい場合
- 諸事情により少人数の葬儀が望ましい場合
故人や遺族が望む場合
故人が生前から家族葬を望んでいたり、遺族が静かに見送りたいと希望したりした場合、家族葬が選ばれることがあります。
家族葬は故人や遺族の意見が反映されやすいですし、葬儀の規模が小さい分遺族の負担が軽減されるので、より希望に沿ったお見送りができるからです。
もし故人の遺志や遺族の希望がはっきりしているなら、家族葬を選択肢に入れてみましょう。
葬儀費用を出来るだけ抑えたい場合
葬儀費用の面で不安があり、できるだけ費用を抑えたいという場合も、家族葬が選ばれる傾向にあります。
一般葬の平均費用は、約150万円〜200万円と言われています。
家族葬なら、葬儀全体の規模も参列者数も小さくなるため、その分の費用が抑えられるのです。
葬儀費用に不安がある方は、家族葬による葬儀を検討してみましょう。
諸事情により少人数の葬儀が望ましい場合
何かしらの諸事情があり、少人数の葬儀が望ましいを判断された場合も、家族葬が選ばれています。
ごくプライベートな問題から家族葬にするケースもありますが、最近では感染症対策として家族葬を選ぶ人も増えてきました。
家族葬を選ぶ遺族は、それぞれに充分検討した上で「家族葬の方が良い」と判断しています。
周囲の人も遺族の考えを尊重し、故人を暖かく見送れるよう見守りましょう。
家族葬に掛かる費用相場

家族葬に掛かる費用相場は、全国平均で約70万円〜100万円です。
この相場はあくまで平均で、葬儀社によっても金額が異なりますし、葬儀の設えや参列者の人数によっても異なります。
はっきりした金額を知りたい場合は、いくつかの葬儀社に相談して見積もりを出すようにしましょう。
家族葬のお布施は?

家族葬で僧侶に法要をお願いする場合、お布施の金額は一般葬と同じように用意してください。
お布施の金額は寺院によって異なりますが、法要での読経だけなら約5万円〜10万円、戒名やお車代なども含めると30万円ほど必要です。
お布施は法要をしてくださった僧侶へのお礼であり、葬儀の規模で変動するものではありませんので、家族葬のお布施も一般葬と同じように用意しましょう。
家族葬の一般的な流れ

家族葬を行うまでの流れは、規模・参列者数という点で考慮すべきことがあるため、一般葬と少し違った準備をしなければなりません。
ここでは、家族葬を行うまでの一般的な流れについて、時系列に沿ってお伝えしましょう。
- 遺体を引き取る・安置する
- 家族葬の規模を決める
- 家族葬の日程を決める
- 参列して欲しい人だけに家族葬の案内を出す
- お通夜・告別式の準備をする
- 納棺の儀を行う
- お通夜を行う
- 通夜振る舞いを行う
- 告別式を行う
- 火葬する
- 精進上げの食事会を行う
遺体を引き取る・安置する
故人の死亡が確認されたら、遺体を引き取り安置します。
死亡確認は必ず医師が行い、死亡診断書を書いてもらわなければなりません。
死亡診断書を作成してもらう間に、故人の遺体は医療処置や清拭を施されますので、遺族は手分けして退院準備を行い、遺体を運ぶ寝台車の手配や安置場所の準備をしましょう。
家族葬の規模を決める
遺体を安置したら、次に行うのが具体的な家族葬の相談です。
まずは家族葬の参列者数を決め、どの程度の規模にするのかはっきりさせましょう。
家族葬の規模が決まれば、会場の大きさや会葬御礼品・飲食の手配もしやすくなりますので、わからない点は葬儀社の人に相談しながら決めるようにしてください。
家族葬の日程を決める
家族葬の規模が決まったら、次に具体的な日程を話し合います。
ここで大切なのは、最初に火葬日を決めるということです。
葬儀の後には火葬を行いますが、火葬は火葬場でしか行えず、事前に予約しなければなりません。
つまり、「火葬の予約日=告別式の日」になるので、火葬日を決めると自然に日程が定まります。
「火葬日を予約する→火葬日を告別式の日にする→告別式の前日をお通夜日にする」という流れで、家族葬の日程を決めましょう。
参列して欲しい人だけに家族葬の案内を出す
家族葬の日程が決まったら、参列して欲しい人だけに家族葬の案内を出しましょう。
家族葬の参列者数は少ないので、遺族で手分けして連絡するようにしてください。
このときに注意しなければならないのが、「招待した人以外に知らせないで欲しい」とお願いすることです。
招待者が他の人に話してしまうと、案内を出していない人も参列に訪れてしまいます。
故人を偲ぶ気持ちはありがたいものですが、家族葬を行う遺族にとっては負担にもなりかねません。
招待者に案内の連絡をした際には事情を話し、他の人に知らせないようお願いしましょう。
お通夜・告別式の準備をする
参列者への連絡が済んだら、お通夜・告別式の準備を行います。
棺や仏具、供花、お供え、通夜振る舞いなど、細かな部分まで決めなければなりません。
葬儀社の人に相談すれば、パンフレット等で適切なアドバイスがもらえますので、わからないことは葬儀社と相談しながら決めると良いでしょう。
納棺の儀を行う
お通夜・告別式の準備が終わったら、安置されている故人の遺体を棺へ納めます。
故人に遺体に死装束を着せ、髪や顔色などを整えてあげてから棺に納め、棺を葬儀会場へ移動させましょう。
お通夜を行う
葬儀会場に棺を安置したら、参列者の入場を待ってお通夜を行います。
儀式の内容は一般葬と変わりませんが、家族葬は参列者が少ないぶんゆっくりとお別れできますから、最期の時間を大切に過ごしてください。
通夜振る舞いを行う
お通夜が済んだら、参列者を案内して通夜振る舞いの会食を行います。
元々通夜振る舞いは少しでも参加することが礼儀ですが、家族葬の場合は参列者自体が少ないので、可能な限り顔を出して故人の思い出話などを語り合いましょう。
告別式を行う
お通夜の翌日に行われるのが告別式です。
家族葬の告別式でも、参列者はあらかじめ限られていますので、招待された人以外には遠慮して頂けるよう、案内時にお願いしておくと良いでしょう。
告別式の後には火葬のための出棺が行われますが、家族葬は参列者が少ないので全員で花を手向け、出棺のお手伝いをするようにしてください。
火葬する
出棺された遺体は、火葬場へ移動して火葬されます。
お骨が焼き上がるまでの間は、用意された控室で待つことになりますので、事前にお茶菓子や飲み物なども用意しておきましょう。
精進上げの食事会を行う
遺骨を骨壷に収めたら、一度葬儀会場に戻って荷物を引き取り、精進上げの食事会を行います。
家族葬の場合参列者数が少ないので、自宅でちょっとしたオードブルを揃えてひっそりと行うことも少なくありません。
遺族の状況に合わせ、無理のない範囲で行うようにしましょう。
家族葬で参列に呼ぶ範囲はどこまで?

「家族葬は少人数」ということはわかっていても、実際に参列者を決める段階になると、どの範囲まで呼ぶべきなのか悩む人も多いことでしょう。
家族葬で呼ぶべき範囲に決まりはありませんが、目安となる範囲がわかっていると参列者を決めやすくなります。
家族葬で参列に呼ぶべき範囲について、具体的な例をお伝えしましょう。
- 故人のごく身内のみ
- 故人の身内とごく親しい友人・知人
- 故人からみて三親等から四親等内
故人のごく身内のみ
故人が可能な限り小さな家族葬を望んでおり、遺族もできるだけひっそりと見送りたいという場合は、故人のごく身内のみに連絡してみましょう。
故人が逝去する直前までお付き合いがあった人は、お互いに気心も知れていて安心できます。
お互いに連絡を取り合って、協力しながら暖かな家族葬で見送りましょう。
故人の身内とごく親しい友人・知人
遺族や親族の人数が少ない場合は、故人が生前親しくしていた友人・知人が呼ばれることもあります。
特に、故人と家族ぐるみでお付き合いしていた友人・知人なら、故人との最期の別れを惜しみたいという人もいるかもしれません。
家族葬の規模にもよりますが、人数的に余裕があるなら、ごく親しい友人・知人も招待しましょう。
故人からみて三親等から四親等内
家族葬の規模が30人前後の場合、故人から見て三親等から四親等内の親族を呼ぶ人もいます。
比較的親族が固まって住んでいる地域なら、家族葬に優先して招待した方が、葬儀後のお付き合いも円満にいくことでしょう。
家族葬の規模と状況にもよりますが、迷った時は故人の三親等から四親等を目安に招待してみてください。
家族葬に関するマナー

家族葬は、一般葬と比べると規模は小さいですが、故人を見送るための立派な葬儀です。
そのため、家族葬に参列する際には失礼がないよう、マナーを守らなければなりません。
ここでは、家族葬で守るべきマナーについて詳しく解説しましょう。
服装
家族葬の服装は、遺族側が正喪服か準喪服、参列者が準喪服か略喪服を着用するのがマナーです。
遺族からの案内で「平服でお越しください」と言われた場合は、いわゆる普段着ではなく黒系の略喪服を基本にしましょう。
家族葬は参列者数が少ないので、どうしても服装で悩むようなら事前に遺族に連絡し、服装について尋ねたり相談したりするのも良いでしょう。
香典
家族葬における香典は、遺族の意向に沿って用意するのがマナーです。
たとえば、事前に遺族から「香典は辞退します」と言われた場合、無理矢理渡してはなりません。
逆に、遺族から何も言われていないなら香典を用意し、お悔やみと共に遺族へ渡すのがマナーです。
香典辞退は受付の際に言われることもありますので、どちらかわからない場合は必ず用意しておきましょう。
参列する人
家族葬への参列や、「招待された人だけ」にしなければなりません。
遺族は参列して欲しい人を選んで招待していますから、それ以外の人を連れて行ったり無理に参列させたりすると、遺族に対して失礼にあたります。
家族葬への参列や、遺族に招待された人だけという点を守りましょう。
家族葬で起こりやすいトラブルは?

社会的に認識度が高くなっている家族葬ですが、それでもなかなか受け入れられない人も多く、思わぬトラブルが起こることもあります。
では、家族葬で起こりやすいトラブルとはどのようなものなのか、具体的な例をお伝えしましょう。
- 親族間でのトラブル
- 地域の慣習やお付き合いのトラブル
- 家族葬の費用に関するトラブル
親族間でのトラブル
家族葬で一番起こりやすいのは、親族間でのトラブルです。
家族葬は遺族で参列者を決めるため、親族の間で「呼ばれた・呼ばれてない」の言い争いが起こったり、関係が悪くなったりすることも少なくありません。
さらに、親族の間で家族葬に関する理解が得られていないと、後々の親戚付き合いに影響が出ることもあります。
親族間でのトラブルを回避するためには、家族葬にした事情を話して理解を得られるよう準備しましょう。
地域の慣習やお付き合いのトラブル
家族葬自体が地域の慣習に合わず、近所付き合いでトラブルになることもあります。
特に、地域全体が同じ檀家だったりしきたりに沿った葬儀にこだわっていたりすると、家族葬という形式そのものが受け入れられず、問題視されるケースも少なくありません。
家族葬を検討する際には、地域の慣習や今後のお付き合いまで考慮するようにしましょう。
家族葬の費用に関するトラブル
家族葬の費用は一般葬に比べると安いのですが、「思ったよりも高かった」という理由でトラブルになるケースもあります。
このようなトラブルの場合、原因として考えられるのが「見積書の見落とし」と「葬儀社との話し合い」です。
葬儀社から最初に提示されるのはあくまで「基本料金」なので、実際に選んだ仏具や供花・接待費などが加算されれば当然費用は変わります。
この点を理解していないと、葬儀後に費用のトラブルが起こってしまうのです。
家族葬の費用に関するトラブルは、葬儀社と話し合い見積書を確認すれば回避できます。
金額に対して不明な点はその都度尋ね、費用のトラブルが起こらないよう事前によく話し合いましょう。
家族葬を行う際の注意点

家族葬を行う際には、準備の段階で気をつけなければならないことがあります。
具体的な注意点をお伝えしていきますので、実際に家族葬を検討する際の参考にしてください。
- 家族葬の規模を決めてから参列者の人数を決める
- 訃報は最低限に留め参列者にも協力して貰う
- 家族葬にする理由を周囲に伝えて理解を得る
- 葬儀社との相談を綿密に行う
家族葬の規模を決めてから参列者の人数を決める
家族葬の参列者の人数は、規模を決めてからはっきりさせるようにしましょう。
最初から参列者数を決めてしまうと、呼ばなければならない人がどんどん増えてしまい、思っていたよりも規模が大きくなる可能性があります。
まずは家族葬の規模を決めて、そこから人数を割り出し、参列者を決めましょう。
訃報は最低限に留め参列者にも協力して貰う
家族葬を行う際には、訃報は参列者のみの最低限に留め、他の人に知らせないよう協力してもらいましょう。
参列者が訃報の知らせを他の人に教えてしまうと、招待者以外の人が訪れるかもしれません。
悪気があるわけではなくても、遺族にとってはあまり受け入れたくないですよね。
訃報は招待者のみの最低限の留め、他の人には知らせないようにお願いして、静かに家族葬が行えるよう協力してもらいましょう。
家族葬にする理由を周囲に伝えて理解を得る
家族葬を行う際には、必ず理由を周囲に伝えて理解を得るようにしましょう。
年配の方には、家族葬という形式自体が受け入れられないという人もいます。
また、家族葬はどうしても参列者が制限されますから、理由がわからないと招待されなかった人に納得してもらえません。
周囲から理解を得られれば、葬儀後の人間関係もトラブルになりにくいので、家族葬にする理由をはっきり伝えて理解を得ておきましょう。
葬儀社との相談を綿密に行う
家族葬を行う葬儀社との相談は、些細なことも話し合い綿密な関係を築きましょう。
実際に家族葬の準備を進めていくと、「これは何の費用?」「これは何をするために必要?」という項目が出てきます。
この疑問をそのままにしてしまうと、後から見積書に納得がいかなかったり、葬儀社に対して不信感を持ったりする可能性があるのです。
家族葬に関することは些細な疑問も葬儀社に相談し、お互いに気持ちよく故人を送り出せるような関係を築きましょう。
まとめ
家族葬は、ごく限られた参列者だけで故人とゆっくりお別れできる葬儀形式です。
故人や遺族の意向が反映されやすく、一般葬に比べると費用が抑えられるというメリットがある一方、参列者が限られるため呼ばれない人とのトラブルが起こったり、なかなか納得してもらえなかったりするケースも少なくありません。
しかし、「なぜ家族葬を選んだのか」という理由をきちんと話して理解を得られれば、周囲からも受け入れられやすく、意向に沿った家族葬が行えます。
家族葬の特徴と注意点をよく知って、穏やかな葬儀になるよう準備をしましょう。