近年、さまざまな理由から「直葬」を行う方が増えています。
この直葬は、私たちに馴染みがある一般葬とどのような違いがあるのでしょうか?
ここでは、直葬について詳しく説明しながら、「一般葬との相違点」「費用相場」「メリット・デメリット」などについて解説します。
目次
直葬とは?

直葬とは、一般的に行われる葬儀とは異なり、通夜や告別式を省いて行う葬儀方法です。
臨終を迎えた遺体は病院や自宅から直接火葬場へ向かい、火葬によって弔われるという特徴から別名「火葬式」「密葬」と呼ばれます。
また、葬儀参列者はごく親しい近親者や友人の数名程度に限定し、火葬炉の前で僧侶から読経を頂くだけの簡素な葬儀方法という特徴があります。
直葬の読み方
直葬の読み方は「ちょくそう」、もしくは「じきそう」です。
一般的には「ちょくそう」と読むことが多いですが、お住いの地域によっては「じきそう」と読む場合もあります。
葬儀業者や寺院に説明する際には、「ちょくそう」と読めば意味が伝わります。
直葬を選ぶ割合
これまでの葬儀では、装飾を施した霊柩車で遺体を運び、葬儀会場には大きな花輪を立てるなど、豪華な葬儀が好まれる傾向にありました。
しかし、現在では質素で厳かな葬儀が好まれる傾向にあります。
そのため、直葬以外にもお通夜を行わない「一日葬」や家族や近しい近親者のみで行う「家族葬」など、一般葬と比較すると簡素な葬儀需要は増加傾向にあります。
この傾向は、地方都市よりも都市部に強く表れ、東京都の直葬割合は全国平均の4.9%を大きく上回る9%台です。
なお、全国の葬儀方法別の割合は次の表のとおりです。
葬儀の種類 | 作成手数料 |
---|---|
一般葬 | 52.8% |
家族葬 | 37.9% |
直葬 | 4.9% |
家族葬 | 4.4% |
直葬が選ばれる理由
現在では、大きな霊柩車や花輪は景観から浮いて悪目立ちしてしまい、派手な葬儀は斎場の近隣住民から苦情が寄せられるのが現状です。
このような現状を反映して、小規模な葬儀が好まれる傾向にありますが、その中でも直葬が選ばれるようになった理由は次の要因が関係しています。
- 経済的な理由から安価な葬儀が選ばれているから
- 亡くなる方の年齢が高齢となる場合が多く、既に友人・知人が亡くなっていることから葬儀参列者が少ないから
- 核家族化が進み葬儀の喪主を務める人物とも疎遠になっていることから、簡素な葬儀が選ばれているから
- 近隣住民との関係が希薄化していることから、大きな葬儀を行うには人手が足りないから など
直葬の葬儀の流れ

一般葬とは異なる流れで行われる直葬は、どのように進行するのでしょうか?
ここでは、直葬の葬儀の流れについて解説します。
- 臨終
- お迎え・遺体の安置
- 納棺・出棺
- 火葬
- 骨上げ
臨終
病院や自宅で臨終を迎えた方は、次の方法で「死亡位診断書」を作成してもらいます。
- 病院で亡くなった場合:主治医から死亡診断書を作成してもらう
- 自宅で亡くなった場合:かかりつけの医師により死亡確認と死因の特定を行い、死亡診断書を作成してもらう
なお、通常の生活を送っていた方が突然亡くなった場合は警察による検視を行うため、遺体はその場から動かさず速やかに警察に連絡を行います。
お迎え・遺体の安置
法律で死後24時間以内の火葬は認められていないため、遺体は安置所に一定期間安置されます。
自宅に安置できる場合は自宅に、自宅での安置が難しい場合は葬儀業者所有の安置場所まで運搬し、火葬まで遺体はそれぞれの場所に安置されます。
なお、安置が完了した段階で葬儀業者や寺院と葬儀についての打ち合せを行うのが一般的です。
納棺・出棺
火葬を行うため故人に死装束を着せ、葬儀業者によって遺体を棺に納める「納棺の儀」が行われますが、この際には遺族が立会い納棺を手伝うことも可能です。
納棺された遺体は、火葬場の予約時間や道路状況を踏まえて出棺されます。
火葬
火葬場へ到着したら故人と最後のお別れを行いますが、この際には火葬炉の前で僧侶から短い読経を頂くことも可能です。
火葬時間は1時間から2時間程度かかるため、遺族は火葬が終わるまでの時間を控室で過ごします。
骨上げ
火葬が終わり遺骨を骨壺に納める儀式は「骨上げ」と呼ばれ、二人一組になり専用の箸で遺骨をつかみ、骨壺に納めていきます。
足の遺骨から拾い最後に喉仏を骨壺に納める方法が一般的ですが、お骨上げの方法や遺骨を拾う方の順番は地域によってさまざまです。
事前に火葬場の職員や葬儀業者に手順を確認し、その方法に従いましょう。
一般的な葬儀の流れ
通夜・告別式を行わない直葬とは異なり、一般葬は次の流れで行います。
- 臨終
- お迎え・安置
- 納棺
- 通夜
- 告別式
- 出棺
- 火葬
- お骨上げ
直葬は通夜・告別式を行わないことにより葬儀を1日で終えますが、大勢の弔問客への対応が不要となるため、むしろゆっくりと故人と向き合う時間を取ることができる葬儀方法と言えるでしょう。
直葬の費用相場

直葬の費用相場は20万円前後と非常に経済的です。
ここでは、この費用の内訳と共に、追加料金が発生するケースについて解説します。
直葬の作業内訳と作業ごとの費用相場一覧
直葬を行う際の「作業内訳」「作業内容・詳細」「費用相場」は次のとおりです。
作業内訳 | 作業内容・詳細 | 費用相場 |
---|---|---|
寝台車による遺体運搬費用 | 病院や自宅などから安置所、その後安置所から火葬場に遺体を運搬するため2回分の費用が必要 | 2万円~3万円 |
ドライアイス代金 | ドライアイスを使用して遺体の損傷を防ぐ | 安置期間により異なり1日1万円程度 |
物品一式(棺・骨壺など) | 棺や骨壺は「素材」「装飾」「仕様」によって値段が異なる |
|
火葬料金 | 火葬料金は火葬場が民間か公営かによって金額が異なり、火葬場に併設してある休憩所を使用する際には別途1万円から2万円程度の料金がかかる場合がある |
|
火葬料金 |
| 費用相場がないため、各葬儀業者へ確認することをおすすめします |
手続き代行 |
| 費用相場がないため、各葬儀業者へ確認することをおすすめします |
追加料金が発生する可能性もある
近年では、この費用相場よりもさらに安い費用を謳っている葬儀業者も少なくありません。
すべての葬儀業者に当てはまるわけではありませんが、このような業者の中には追加料金が発生するなどして、結果的に費用総額が相場を上回る場合もあるため注意が必要です。
直葬のメリット

直葬の流れは一般葬とは大きく異なるため、次のメリットがあります。
- 葬儀費用を抑えられる
- 葬儀参列者への対応が不要
葬儀費用を抑えられる
一般葬と比較すると、直葬は費用を大きく抑えることが可能です。
日本消費者協会が行ったアンケートによると、一般的な葬儀費用は全国平均で190万円以上で、内訳の金額は次のようになっています。
- 寺院へのお布施:平均47万円
- 飲食接待費用:平均30万円
- 通夜・葬儀にかかる葬儀基本料金:平均121万円
しかし、直葬を行う場合は次の費用は全て不要となります。
- 寺院へのお布施:僧侶に読経を依頼しない場合は不要
- 飲食接待費用:会食を行わない場合は不要
- 会場の使用料:葬儀会場や祭壇は使用しないため不要
葬儀参列者への対応が不要
一般葬では遺族の他に故人の関係者も弔問客として受け入れるため、訃報連絡や挨拶などの対応が必要です。
しかし、直葬では親族数名で行うことが多いためこうした対応は全て不要です。
弔問客に対しての対応の必要が無いことから精神的な負担も少なく、香典を頂くこともないため香典返しの作業も必要ありません。
直葬のデメリット

直葬にはメリットだけではなく当然デメリットも存在します。
直葬を希望する方は、メリットよりもむしろデメリットについて理解を深め、十分な対策を行ってから葬儀に臨みましょう。
直葬のデメリットは次のとおりです。
- 親族の理解が必要
- 葬儀に参列を希望する方への配慮が必要
- 菩提寺に納骨できない可能性がある
- 役所からの葬祭料が支給されない可能性がある
親族の理解が必要
直葬は近年急速に普及してきた葬儀方法のため、親族や周囲の方にはまだ正確に理解されていないことから、「礼節を欠いた葬儀」と思われている側面があります。
特に親族の中でも年長者の方にその傾向が強く、事前の説明が十分にできていない場合などは、後々のトラブルになりかねません。
直葬を行う事情を丁寧に説明し、周囲の方の理解が得られてから直葬を行うなどの配慮が必要です。
葬儀に参列を希望する方への配慮が必要
身近な親族と同様に、葬儀に参列を希望する方への配慮も必要です。
先ほどお伝えしたとおり、直葬は身近な親族のみで行うことが一般的なため、故人の友人などの参列をお断りする状況は少なくありません。
そのような方に対しては、直葬を行うため葬儀に参列することができない旨を丁寧に説明し、後日弔問の機会を設けるなどの対応が必要です。
菩提寺に納骨できない可能性がある
一般葬では僧侶に読経を依頼し、宗派の作法に従って葬儀が進行されますが、直葬では僧侶に読経を依頼するケースは多くはありません。
そのため、このことが原因で菩提寺との関係が悪化してしまい、納骨を断られる場合があります。
直葬を希望する場合は菩提寺にその後の供養方法を含めて相談し、住職からの理解と了承を得て進めなければ、後々の後悔につながってしまう可能性もあるのです。
役所からの葬祭料が支給されない可能性がある
通常は遺族の葬儀代金を減らすことを目的として、各自治体や健康保険組合から「埋葬料」と呼ばれる葬祭料が支払われます。
この葬祭料は申請を行うことで支払われますが、直葬を申請すると葬儀を行っていないと判断され、葬祭料が支払われないケースがあります。
このような対応は各自治体や健康保険組合によって異なります。
直葬を希望する方は事前に問い合わせを行い、葬祭料が支払われるかどうかの確認を行いましょう。
直葬を行うための手段は3種類
一般葬は葬儀業者を介して行いますが、直葬では次の方法で葬儀を行うことが可能です。
ここでは、直葬のやり方を3種類に分けそれぞれの葬儀方法を解説します。
- 葬儀のすべてを自分で行う
- 葬儀業者をご自身で選ぶ
- 葬儀業者ブローカーに依頼する
葬儀のすべてを自分で行う
一般的な葬儀をご自身だけで行うには、その工程や決めなければならないことの多さから、現実的には行うことが難しいでしょう。
しかし、直葬では葬儀全体の手順も少ないことから、すべてをご自身で行うことも可能です。
特に直葬を行うことで葬儀費用を安く済ませたいと考える方にとっては、ご自身のみで葬儀の準備を行えば、費用はさらに安くなるなど多くのメリットがあります。
ただし、ご自身のみで行う葬儀では、死亡届などの書類手続きも行わなければなりません。
書類手続きについてはある程度の知識が必要になりますが、それ程難しいものではありません。
葬儀業者をご自身で選ぶ
宗教的な儀式を行いたくない無宗教の方などは葬儀業者をご自身で選び、その方に葬儀のお手伝いを依頼しながら直葬を行うケースが見られます。
直葬は葬儀会場や装飾品を用いることがないため、無宗教の方には最適な葬儀と言えますが、納得できる形で故人と最後のお別れをするには綿密な打合せが必要です。
あまり葬儀経験のない葬儀業者が直葬を担当すると、こちらの意図をくみ取ることができずに、納得できるお別れができない可能性もあります。
このような事情から、直葬を行う際の葬儀業者は一般葬より慎重に選ぶ必要があるでしょう。
葬儀業者ブローカーに依頼する
葬儀業者ブローカーとは、インターネットで葬儀業者を探している方に葬儀業者を仲介することで手数料を得ている業者で、葬儀業者ブローカーを介すことで葬儀費用はさらに安くなります。
しかし、中には低価格を喧伝しながらも追加料金で高額請求を行う業者や、質の低いサービスで納得できない葬儀を行う業者など悪質な業者もいるのが現状です。
優良業者を探すためにも、葬儀ブローカーを利用する際には慎重な判断が求められるでしょう。
直葬で戒名をつけてもらう方法

通夜や告別式を行わない直葬でも、僧侶から戒名をつけてもらうことは可能です。
その際には寺院に「四十九日法要はこちらの寺院で行うため戒名を頂けないでしょうか?」と、謙虚な姿勢で住職に相談してみましょう。
15万円から30万円のお布施は必要になりますが、快く戒名を頂けるでしょう。
まとめ

直葬が葬儀方法として認知されたのはごく最近のため、私たちの周囲には直葬に関する理解が十分ではないのが現状です。
そのため、直葬に対して間違った認識を持たれている方も多く、直葬を希望する方はこのような方に対する事前説明が何よりも重要となります。
どのような種類の葬儀を行うにせよ、葬儀を運営する側の人物は遺族や故人の関係者全員が納得できる葬儀を行うことが責任です。
周囲の方へ最大限の配慮と、十分な説明を行うよう心がけましょう。