お盆の時期には、多くの人がお墓参りをして先祖の魂を敬います。
日本では古くからの慣わしとして良く目にする光景ですが、お盆にお墓参りをする意味や正式な日程・お参りの仕方・マナーなど、気になる点がたくさんありますよね。
今回は、お盆のお墓参りの時期や正式なお墓参りの仕方・服装・マナーについて、具体的な例を挙げて詳しく解説します。
お盆の墓参りの意味

お盆は、年に一度先祖の魂が極楽浄土から帰ってくる日です。
元々は「盂蘭盆会(うらぼんえ)」と呼ばれる仏教の教えにならった風習で、この時期に現世へ帰ってくる先祖の魂を手厚くお迎えすることが徳となり、良い供養になると考えられてきました。
このことから、毎年多くの人がお盆にお墓を訪れ、墓掃除やお供物をするなどして先祖の魂を敬っています。
お盆の墓参りはいつ行けば良い?

お盆の時期は、新暦では8月12日〜16日、旧暦では7月12日〜15日です。
どの時期になるかは地域にもよりますが、お盆のお墓参りはこの時期を目安にして行われます。
しかし、お盆のお墓参りには「お墓をきれいにする」「先祖の魂を送り迎えする」という意味合いも込められていますので、できれば適切な日程でお墓参りをしたいですよね。
では、具体的な日程として考えたとき、お盆の墓参りはいつ行けば良いのでしょうか?
正式なお盆のお墓参りの日程をお伝えしましょう。
- 8月12日:墓掃除
- 8月13日:お迎えのお参り
- 8月16日:お見送りのお参り
8月12日:墓掃除
お盆の時期は、新暦・旧暦ともに「8月12日〜16日」とされていますが、先祖の魂が帰ってくるのは8月13日です。
したがって、その前日である8月12日にお墓へ出向き、お墓のある区画の草むしりや掃き掃除、墓石を丁寧に拭くなどの掃除を行います。
正式なお迎えは翌日8月13日ですが、掃除が終わったら線香をあげて手を合わせ、先祖が迷わず帰って来られるようお参りしましょう。
8月13日:お迎えのお参り
8月13日に行うのは、お迎えのお参りです。
お墓に目印となる蝋燭の火を灯し、線香や供物・お水を供えて先祖を手厚く出迎えます。
「良くお帰りくださいました」という気持ちでお参りしましょう。
8月16日:お見送りのお参り
8月16日のお墓参りは、先祖が極楽浄土に帰るのを見送るために行われます。
お迎えの時と同じように線香や供物・お水を供え、「どうぞご無事でお帰りください」という気持ちでお参りしましょう。
何時ごろお墓参りには行くべき?
お盆のお墓参りする時間に、特に決まりはありません。
ただし、お盆の慣習は地域によって異なるため、それに合わせてお参りする時間を決めることも大切です。
例えば、「できるだけ早くお迎えするのが望ましい」と考える地域では、朝からお墓参りをして先祖をで迎えますし、「お墓で提灯を灯して連れ帰る」という慣習がある地域は夕方近くにお参りします。
お見送りのお参りも同様で、正式な時間は決まっていないものの「できるだけ長く先祖の魂を供養したい」という意味を込め、夕方近くにお参りする人も少なくありません。
お墓参りの時間には決まりはありませんが、地域の慣習も考慮して何時ごろお参りするか決めましょう。
お盆のお墓参りはしないとだめ?
「お盆にお墓参りをした方が良い」と思ってはいるものの、仕事の都合で休みが取れなかったり、お墓が遠方にあり行くのが難しかったりなど、さまざまな事情でお墓参りができないケースがあります。
お盆のお墓参りは仏教の教えと深く関わりがありますから、お墓参りをしないことに不安を感じる人も少なくありません。
結論からお伝えすると、どうしても難しいようならお盆にお墓参りしなくても大丈夫です。
お盆のお墓参りで一番大切なのは「先祖を供養したい」と思う気持ちです。
お墓に出向くことができなくても、仏壇に手を合わせたり故人の遺影にお供え物をしたりすれば、それも立派な供養になります。
ただし、家族や親族が信心深く地域の慣習を大切にしている場合、お盆にお墓参りをしないことで苦言を述べられるかもしれません。
お盆にお墓参りができず、周囲の人から何かしらの意見を告げられた場合は、お墓参りができないこととその理由を丁寧に伝えて理解してもらい、自分にできる方法で供養をしましょう。
お盆の墓参りに必要な物

お盆にお墓参りをするときは、五供(ごく)と呼ばれる基本のお供えを用意します。
五供とは、「香」「花」「灯燭(とうしょく)」「浄水」「飲食(おんじき)」のことで、この5つを表す品物をお供えとして用意しなければなりません。
では、五供を表す品物とはどのようなものなのか、それぞれについて詳しく解説しましょう。
線香
線香は、五供の中で「香」を表した供物です。
線香の香りと煙は、立ち昇って極楽浄土へ届くと考えられており、仏様や先祖の霊とつながる大切な架け橋です。
また、線香の香りが心身を清めますので、穏やかな気持ちで先祖の霊をお迎えできます。
お墓参りでは、一度に複数本の線香をお供えしますので、できれば線香は箱ごと用意しましょう。
供花
供花は、五供の中で「花」を表した供物です。
花の美しさと香りが仏様や先祖に喜ばれると考えられており、お店でも「仏花」と呼ばれるお供え用の花束が売られています。
「この花を使ってはいけない」という決まりはありませんが、一般的に仏事にふさわしくないとされる花もありますので、供花を用意する際は種類に気をつけましょう。
水
水は、五供の中で「浄水」を表した供物です。
きれいな水は先祖の渇きを潤すだけでなく、餓鬼道で苦しむ人たちも癒すと考えられています。
多くの場合、墓地・霊園で手桶と柄杓を借りて水を用意しますが、もし地域墓などで水道が近くにない場合はお供え用の水を用意しましょう。
蝋燭
蝋燭は、五供の中で「灯燭」を表した供物です。
蝋燭の火は暗い道を照らす意味があり、火がもたらす光そのものが供物と考えられています。
お墓に石灯籠がある場合、その灯籠で蝋燭を灯してください。
石灯籠が燭台も一緒に持っていき、蝋燭を立ててその火を供物にしましょう。
マッチ・ライター
マッチ・ライターは、線香や蝋燭に火を灯す際に使用します。
一般的なマッチ・ライターで問題ありませんが、風が強い場合は消えにくい仏壇用のライターを用意しましょう。
お供え物
お供え物は、五供の中で「飲食」を表す供物です。
お盆の時期には専用のお供え物も購入できますが、小さな重箱に煮物を詰めたり、故人の好きだった食べ物・飲み物を用意したりしてお供えすることもあります。
お供え物にも特に決まりはありませんが、汁気のある食べ物はこぼれると墓石を汚すかもしれません。
墓石の種類によっては汚れが色素沈着することもありますので、良く考慮してから用意しましょう。
お盆の墓参りの作法と手順

お盆のお墓参りは、作法を覚えて手順を守ったお参りをすると、より丁寧で心のこもったお参りができます。
ここでは、お盆の墓参りの作法と手順について、順を追って詳しくお伝えしましょう。
- お墓を掃除する
- 墓石に打ち水をする
- お花・水・お供物を供える
- 線香をあげてお参りする
- 線香を燃やし切りお供物を持ち帰る
お墓を掃除する
最初に行うのは、お墓とその周囲の掃除です。
掃除をする前にお墓に手を合わせ、ご挨拶をしてから掃除を始めてください。
最初に目立つゴミや枯葉を取り除き、草むしりをして周囲をきれいにします。
周囲がきれいになったら墓石に水をかけ、柔らかい布やスポンジで優しく墓石の汚れを落としてください。
たわし・歯ブラシといったブラシ系の硬いものは、墓石を傷つけるので使わないようにしましょう。
墓石に打ち水をする
掃除が終わったら、手桶にきれいな水を用意して墓石に打ち水をします。
墓石への打ち水は、「渇きを潤す」「餓鬼への施し」という意味がある他、先祖の魂をお呼びするためとも言われており、一般的なお参りでは良く見られる行為です。
ただし、地域によっては打ち水が「先祖の頭に水をかける」「冷や水を浴びせる」と捉えられてしまい、必ずしもすべての人が作法として受け入れているわけではありません。
さらに、墓石の種類や状態によっては、水をかけることで悪い影響が出ることもあります。
打ち水をする際は、周囲の人に良く尋ねてから行ってください。
お花・水・お供物を供える
墓石の花立てにお花を生け、水・お供物を供えます。
花束に巻かれている紙やセロファンは外し、整えてから生けるようにしましょう。
水は、墓石の中央に水鉢と呼ばれる窪みがある場合はそこへ注ぎ、水鉢がない場合はあらかじめ小さなコップを持参して供えてください。
線香をあげてお参りする
お花・水・お供物をお供えしたら、線香をあげてお参りします。
燭台に蝋燭を立てて火を灯し、線香に火をつけて線香立てに立ててください。
線香をあげた順にお参りをしていきますが、ここで気をつけなければならないのがお参りの順番です。
故人と近しい続柄の順番でお参りするのがマナーなので、自分の立場を考慮して順番を守りましょう。
線香を燃やし切りお供物を持ち帰る
お墓参りが済んだら、線香を燃やしきりお供物を片付け、忘れ物がないかを確認してから帰宅します。
お供えしたお供物を持ち帰るのは、墓地・霊園に迷惑をかけないようにするためのマナーです。
屋外にあるお墓のお供え物をそのままにしていると、野生の動物に荒らされてお墓が汚れたり、墓地・霊園が荒らされるかもしれません。
多くの墓地・霊園では、規則としてお供物の持ち帰りを促していますので、注意を守って後片付けをしてから帰宅しましょう。
お盆の墓参りの服装

お盆のお墓参りは、正式な法要ではないものの仏事に関することなので、どのような服装がふさわしいのか悩む方も多いことでしょう。
実は、お墓参りの服装は「お墓でどのようなことをするか」によって異なります。
ここでは、お盆のお墓参りの服装について、ケース別に分けてお伝えしましょう。
基本的に決まりはない
基本的な考えとしては、お盆のお墓参りに決まった服装はありません。
あまりに肌を露出したり、派手すぎる服装は咎められることもありますが、一般的なカジュアル系やビジネスカジュアル程度であれば大丈夫です。
服装がどうしても気になる場合は、周囲の人に相談してアドバイスをもらったり、事前にチェックしたりしましょう。
法要を行う場合は節度のある服装にする
お盆のお墓参りでは、その時期に合わせて納骨をしたりお施餓鬼法要をしたりすることがあります。
お墓参り自体は正式な法要ではありませんが、納骨やお施餓鬼法要は僧侶にお願いする立派な法要なので、節度のある服装でお参りしなければなりません。
ただし、葬儀のような硬さはないので、次の表を目安にして服装を選びましょう。
- 男性:黒・濃紺・ダークグレーを基調にしたズボンに、白・水色系のワイシャツ
- 女性:黒・濃紺・ダークブラウンなどのワンピースやスカート・パンツ。ブラウスも同様で色味を合わせる
- 子供:暗めの色ならどのような服装でも問題ないが、派手なキャラクターものは避ける
墓掃除をする場合は動きやすい服装にする
お墓参りの前に墓掃除をする際は、動きやすく汚れても大丈夫な服装をします。
墓掃除では、ゴミ集めや草むしりも行いますし、場合によっては伸びてきた植木を伐採しなければなりません。
さらに、墓石の汚れを落としたり水を運んできたりといった作業があるため、動きやすい服装が最適です。
墓地・霊園によっては、階段が多く足場が悪いこともありますので、お墓の状況と掃除の内容に合わせた服装をしましょう。
お盆の墓参りでよくある疑問
お盆の時期のお墓参りは、昔からの慣習だからこそマナーが気になり、お参りに行く日や行けないときの対処法が気になりますよね。
このような疑問を持つ人は多く、実際に自分で調べたり、周囲の人に尋ねたりするケースもよく見られます。
ここでは、お盆のお墓参りでよくある疑問を挙げ、その答えをお伝えしましょう。
お盆の時期ならいつお墓参りしても良い?
お盆のお墓参りは、特にお参りする日が決まっているわけではありません。
確かに、お盆の時期のお墓参りは8月13日〜16日の間でそれぞれに意味があるため、厳密にお参りをしたいという場合はそれに合わせたお参りが必要です。
しかし、お盆のお墓参りで一番重要なのは「先祖の供養」や「故人の冥福を祈ること」なので、お盆に近い時期で「お参りしたい」という気持ちがあるなら、いつお参りしても問題はありません。
実際に、8月14日・15日のお墓参りは「留守参り」とも呼ばれており、少しでも手を合わせたいと思う人がお墓参りに訪れています。
昔ながらの慣習に沿ったお墓参りも素晴らしいですが、どうしても都合が悪い場合は無理をせず、お盆の時期で都合が良い日を選んでお参りしましょう。
お盆のお墓参りで行ってはいけない日はある?
お盆のお墓参りには、「行ってはいけない日」はありません。
友引や仏滅といった六曜も関係ありませんので、いつでも都合の良い日にお参りしましょう。
お盆のお墓参りに行けない時はどうすれば良い?
お盆のお墓参りに行けないときは、自宅の仏壇や故人の遺影の前にお供え物をしてお参りします。
蝋燭や線香を用意し、故人の好きだった食べ物や飲み物を供えて、先祖の魂を敬い故人の冥福を祈りましょう。
ただし、帰省を伴うお墓参りの場合、実家の家族が親族がお墓の掃除やお盆の準備のお手伝いを希望していることがあります。
帰省の予定が変更になるようなら、早めに連絡して実家の家族・親族が慌てないようにしましょう。
お盆のお墓参りの注意点

お盆のお墓参りを行う際は、マナーを守ってお参りすることが大切です。
具体的にどのようなことを気をつけるべきなのか、お盆のお墓参りの注意点をお伝えしましょう。
- 墓地・霊園の規則を守る
- お供物は必ず持ち帰る
- 墓石を傷つけるようなアクセサリーをつけない
墓地・霊園の規則を守る
お盆にお墓参りをする際は、墓地・霊園の規則を守ってお参りしましょう。
お墓がある墓地・霊園は、公営・民営を問わず管理者がおり、権利者全員が気持ちよく過ごせるよう規則を定めています。
ゴミの捨て方や施設の使い方・手桶や柄杓(ひしゃく)の扱い方など、墓地・霊園の規則を守るようにしてください。
お供物は必ず持ち帰る
お墓参りでお供えしたお供物は、必ず持ち帰るようにしましょう。
お供物は飲食物なので、そのままにしてしまうと腐ってしまったり、野生動物に狙われてお墓が荒れたりします。
墓地・霊園や他家のお墓にも迷惑になりますので、お供物は必ず持ち帰るようにしてください。
墓石を傷つけるようなアクセサリーをつけない
お盆のお墓参りで掃除を行う際は、墓石を傷つけるようなアクセサリーをつけないようにしましょう。
墓石にはデリケートな石材が使われていることが多く、指輪やブレスレット・腕時計といった硬い素材のアクセサリーをつけていると、墓掃除の際に墓石を傷つけることがあります。
たとえ小さな傷であっても、そこからひび割れたり苔が生えたりすることがありますので、墓掃除の際はアクセサリーをつけないようにしてください。
まとめ
お盆のお墓参りには、現世に帰ってくる先祖の魂を手厚くもてなし、供養して徳を積むという意味が込められています。
お盆の時期であればいつお墓参りしても問題ありませんが、五供と呼ばれるお供え物を用意し、作法と手順を守ったお参りをすることが大切です。
また、お盆のお墓参りでは目的に合わせて服装を選び、墓地・霊園の規則を守ったお参りをしなければなりません。
お盆のお墓参りをする時はルールとマナーに注意して、お参りするすべての人が気持ち良く過ごせるようにしましょう。