身近な方との別れは辛く悲しいものですが、その中でも母親との別れはたくさんの思い出がこみ上げてしまい、喪失感の大きさから何も手につかないという方も多いのではないでしょうか?
しかし、このような状況にあっても、残された遺族は母親の死去に関するさまざまな手続きを行わなければなりません。
ここでは、大切な方が亡くなった際に行うことを時系列に紹介しながら、「各種行政手続き」「相続手続き」「注意点」を解説します。
葬儀や法事に関しては、葬儀業者のサポートを受けながら手続きを行うためそれほど難しくはありませんが、相続に関する手続きは思いのほか時間と労力がかかるものです。
故人の死去から相続までのすべての手続きを解説していますので、効率的な手続きにご活用ください。
目次
母が亡くなった日から四十九日までの流れ
初めに、母親が亡くなった当日から四十九日までの流れを解説します。
故人の死去から四十九までの期間は、故人を亡くした悲しみが癒えない状態でさまざまな儀式を行いつつ手続きを行うため、親族には大きな負担がかかる期間です。
時間的な余裕を持って行動できるよう、事前に流れを把握しておきましょう。
死去から四十九日までの流れは次のとおりです。
- 死亡届を取得
- 近親者への死亡連絡
- 葬儀業者を決めて寺院を手配
- 遺体の運搬と安置
- 葬儀業者との打ち合わせ
- 死亡届・火葬許可証の手続き
- 通夜
- 葬儀・告別式
- 火葬
- 初七日法要
- 葬儀費用の支払い
- 各種行政手続きや変更届を提出
- 四十九日法要
非常に多くの作業を短期間で行うことがご理解いただけると思います。
それぞれの儀式や手続きの詳細は、これから解説していきます。
母が亡くなった当日に行うこと
まずは、母親の死去当日に行う内容を解説します。
- 死亡診断書の取得
- 近親者や職場への連絡
- 葬儀業者の決定
- 遺体の運搬と安置
死亡診断書の取得
死亡診断書とは、人の死を医学的にも法律的にも証明する書類で、記入者は医師に限られ故人の死亡状況によって次のように発行されます。
故人が病院で亡くなった場合
故人が病院に入院しておりその入院先で亡くなった場合は、担当医師が死亡診断書を発行します。
故人が自宅で亡くなった場合
故人が自宅で亡くなった場合では、故人が通院して診療を受けていたのかで次のようにその後の手続きが異なります。
- 病院に通院していた場合:何らかの傷病で診察を受けその傷病が死因となって死亡した場合は、その担当医師によって死亡診断書が発行される
- 病院に通院していない場合:故人が診療を受けていないのに突然死亡した場合は、警察に連絡した後に医師に遺体の検案を依頼し死体検案書が発行される
この死亡診断書並びに死体検案書は、今後行うことになる火葬や埋葬の起点となる書類です。
そのため、必ず複数枚のコピーを取りその後の書類作成に備えておきましょう。
近親者や職場への連絡
親が亡くなったことは、その死去の直後に近親者や職場へ知らせます。
現在ではメールやLINEなどさまざまな連絡方法がありますが、早く確実に連絡が伝わるという点で電話を利用することが一般的です。
深夜や早朝など、電話をかける時間としては、失礼と感じる時間帯であってもこの場合は構いません。
遠方にお住いの親族は移動に時間がかかるため早めの連絡を心がけ、ご自身の職場に連絡する際には業務の引継ぎや忌引き休暇についての申請を行います。
なお、この際の連絡は通夜や葬儀の内容がまったく決まっていなくても死去した内容だけを伝え、通夜や葬儀の内容が決まり次第改めて連絡を行いましょう。
葬儀業者の決定
葬儀業者を決定し、通夜や葬儀に関する具体的な内容の打合せを行います。
また、この際には死亡診断書を葬儀業者へ渡し、死亡届や火葬許可証の手続きを依頼することが一般的です。
通夜および葬儀の日程は火葬場の予約状況や僧侶の予定を考慮して調整し、同時に遺族の役割分担などもこの際に決めておけば、その後の進行がスムーズです。
なお、事前に葬儀業者が決まっていない場合は、この慌ただしい状況で葬儀業者を決めることになります。
次のポイントに注意して葬儀業者を選びましょう。
- 葬儀費用と追加費用が明確
- スタッフの対応が丁寧でこちらの要求に真摯に対応してくれる
- 契約を急がせない
- 創業期間が長く多くの葬儀実績がある
遺体の運搬と安置
病院で亡くなった場合では、長時間の遺体を安置することはできません。
葬儀業者を決める際に運搬と安置について相談すれば、速やかに遺体を安置場まで運搬してくれます。
遺体を安置する場所は自宅か葬儀業者が管理する遺体安置場となります。
母が亡くなった2日目に行うこと
ここでは、故人の死去から一晩明けて2日目に行うことを解説します。
- 死亡届を提出
- 火葬許可証の手続き
- 通夜
死亡届を提出
前日に葬儀業者へ渡した死亡診断書を使って、死亡届の手続きを代行してもらいます。
この手続きはご自身で行うことも可能のため、ここでは死亡届の手続き方法を解説します。
死亡届は死亡の事実を知った日から7日以内に、次の場所のいずれかに提出しなければなりません。
- 故人が亡くなった場所の市区町村窓口
- 故人の本籍地がある市区町村窓口
- 届出人の所在地がある市区町村窓口
この死亡届は死亡診断書と同じ用紙になっていますので、必要箇所を記入して提出しましょう。
火葬許可証の手続き
火葬許可証は故人を火葬する際に必要な書類で、死亡届提出の際に合わせて申請を行います。
通夜
以前のお通夜は夜通し故人に付き添うのが習わしでしたが、現在では2時間ほどで終了することが一般的です。
18時から19時の間に開始されるため、遺族は遅くても開始時刻の1時間前までに通夜会場に集合し弔問客に備えます。
この際には葬儀社との打ち合わせを再度行い、次の内容についての確認を行います。
- 受付の段取り
- 席順の確認
- 焼香の順番の確認
- 喪主の挨拶のタイミングと内容の確認
なお、通夜が終了した後には弔問客を別室に通して通夜振る舞いを行い故人を偲びます。
軽食やお酒などが振る舞われるため、遺族はこの際の飲食物に関して不足がないのかを確認し、喪主は通夜振る舞いの段取りについても確認しておきましょう。
母が亡くなった3日目に行うこと
ここでは、故人の死去から3日目に行うことを解説します。
- 葬儀・告別式
- 火葬
- 葬儀費用の支払い
葬儀・告別式
葬儀・告別式は、通夜の翌日に行うことが一般的です。
開始する時間は火葬を行う時間によって異なりますが、午前中の早い時間など日中に行います。
通夜と同様に事前に葬儀業者との打ち合わせを行い、遺族の役割や葬儀の段取りについて確認し、参列者へ十分な対応ができる体制を整えましょう。
葬儀・告別式の終盤では一般弔問客が故人と最後のお別れを行い、故人が納められた棺は火葬場へと出棺されます。
火葬
火葬場へ到着した遺体と遺族は、火葬炉の前で故人と最後のお別れを行います。
火葬を行う手順は次のとおりです。
火葬を行う手順
- 火葬場への移動:移動する際には寝台車が先頭を走り、その後ろを遺族が乗ったマイクロバスなどが続きますが、このマイクロバスに乗り込む順番は故人と関係が深かった順番になります。
- 火葬場へ到着:火葬場では葬儀業者の指示に従って故人と最後のお別れを行います。火葬時間は1から2時間ほどとなるため、遺族は控室で待機し参列者へお茶やお菓子を振る舞います。
- 火葬後:火葬後は遺骨を骨壺に納める「骨上げ」の儀式を行います。
- 埋葬許可証の受取:骨上げで遺骨を骨壺に詰めれば、火葬は終了です。火葬終了時には喪主が火葬場職員から埋葬許可証を受け取ります。
初七日法要を行う場合もある
本来は死去から7日目に行う初七日法要ですが、最近では参列者へ配慮して葬儀後に行うことが多くなっています。
この葬儀当日に初七日法要を行う方法には、「繰り上げ初七日法要」と「繰り込み初七日法要」の2種類がありますが、これは地域によって慣習が異なります。
葬儀業者との打ち合わせの中で、初七日法要をどのように行うのかを決めておきましょう。
葬儀費用の支払い
葬儀費用は、葬儀終了から1週間程度を目途に支払います。
これまでは現金一括での支払い方法が主流でしたが、現在ではクレジットカードや分割払いなどに対応している葬儀業者が増えています。
これらの支払いを希望する場合は、葬儀業者へ相談してみましょう。
母が亡くなった14日以内に行う手続き
ここでは、故人の死去から14日以内に行う手続を解説します。
- 葬儀・告別式
- 火葬
- 葬儀費用の支払い
国民年金の受給停止手続き
亡くなった方が国民年金を受給していた場合は、年金受給の停止手続きが必要です。
年金事務所または年金相談センターに年金受給者死亡届を提出します。
なお、日本年金機構にマイナンバーカードが登録されている方は、年金受給者死亡届の提出を省略することができます。
健康保険等の資格喪失手続き
公的医療保険には次の種類があります。
- 会社員が加入する健康保険
- 自営業者や無職の方が加入する国民健康保険
- 75歳以上の方が加入する後期高齢者医療保険
いずれの保険に加入している場合でも、亡くなった方は被保険者としての資格を喪失します。
そのため、死去から14日以内に市区町村窓口で資格喪失の手続きを行わなければなりません。
介護保険等の資格喪失手続き
介護保険の被保険者が亡くなった場合は、14日以内に市区町村窓口に介護保険資格失効届を提出しなければなりません。
なお、第1号被保険者である65歳以上、第2号被保険者である40歳以上65歳未満の方で要介護の認定を受けた方は、介護保険資格失効届と併せて保険証も返還します。
世帯主の変更届手続き
死亡届の提出によって、住民登録は自動的に抹消されるため住民票の抹消手続きはされますが、故人が世帯主だった場合は住民票に記載されている世帯主を変更しなければなりません。
この手続きは、亡くなった方の住所地がある市区町村窓口に、故人の死亡後14日以内に提出しなければなりません。
母が亡くなった四十九日を目途に行う手続き
ここで紹介する手続きは期限が定められているわけではありませんが、表中にて手続き内容と手続き場所を示します。
故人の契約に関する手続きの解除がメインとなるため、四十九日を目途にできる限り早めに行うようにしましょう。
項目 | 手続き場所 |
---|---|
児童扶養手当認定請求 | 市区町村窓口 |
復氏届 | 市区町村窓口 |
姻族関係終了届 | 市区町村窓口 |
子の氏変更許可申請 | 家庭裁判所 |
運転免許証 | 警察 |
クレジットカード | クレジットカード会社 |
生命保険・入院保険 | 生命保険会社 |
賃貸住宅の解約 | 管理会社 |
電話加入権 | 電話会社 |
光熱費 | 電気・ガス会社・水道局 |
シルバーパス | 市区町村窓口 |
親の死後1年以内を目途に行う相続手続き
故人の四十九日法要が終われば、遺産に関する手続きを始める時期となります。
ここでは、一年以内に終わらせておきたい相続手続きに関して、「手続き内容」「手続き先」「備考・手続期限」を表中に示します。
手続き内容 | 手続き場所 | 備考・手続き期限 |
---|---|---|
相続人の確定 | 市区町村窓口 | 相続には必要となる手続きのため早めに行う |
遺言書の検認 | 家庭裁判所 | 遺言者の死去からなるべく早く行う |
遺産分割協議書の作成 | 相続人 | 期限はないが2~6ヶ月を目安に行う |
相続登記 | 税務署・税理士 | 遺産分割協議成立後の相続税申告までに行う |
葬祭費の請求 | 市区町村窓口 | 葬儀を行った日の翌日から2年以内 |
埋葬料の請求 | 勤務先・社会保険事務所 | 死亡した日の翌日から2年以内 |
高額療養費の請求 | 市区町村窓口・社会保険事務所 | 治療の翌月1日から2年以内 |
死亡一時金の請求 | 市区町村窓口 | 支給事由が生じた日の翌日から2年以内 |
寡婦年金の請求 | 市区町村窓口 | 支給事由が生じた日の翌日から5年以内 |
遺族基礎年金の請求 | 市区町村窓口 | 支給事由が生じた日の翌日から5年以内 |
遺族厚生年金の請求 | 社会保険事務所 | 支給事由が生じた日の翌日から5年以内 |
遺族補償年金・一時金の請求 | 労働基準監督署 | 死亡翌日から5年以内 |
相続手続きの注意点
相続手続きを行う際には、「手続き期限」に注意しなければなりません。
先ほどご紹介した通り、相続手続きはその種類の多さから何から手を付けたら良いのかわからなくなってしまいがちですが、手続き期限が短いものを優先して行う必要があります。
手続き期限が1年以内と比較的短く設定されている相続手続きには次のものがあります。
相続放棄の期限:3ヶ月以内
財産を引き継ぐ方は、故人の借金など負の遺産も引き継ぐことになります。
あまりにも多くの借金が故人の死後に発覚するケースは少なくありませんが、この場合は相続放棄を行うことが一般的です。
- 期限:ご自身が相続人となることを知った日から3か月以内
- 申立先:亡くなった方の住所地を管轄する家庭裁判所
故人の準確定申告:4ヶ月以内
故人が自営業者であったり動産所得があった場合で所得税の確定申告が必要な場合は、相続人が代りに確定申告を行う準確定申告を行わなければなりません。
- 期限:相続開始を知った翌日から4ヶ月以内
- 申告先:亡くなった方の住所地を管轄する税務署
相続税の申告:10ヶ月以内
相続税の基礎控除(=3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える遺産がある場合は、相続税の申告が必要になります。
- 期間:相続開始を知った翌日から10ヶ月以内
- 申告先:亡くなった方の住所地を管轄する税務署
遺留分減殺請求:1年以内
遺言によりご自身が相続する遺産が少ない、もしくは全くないなどの場合は、遺留分減殺請求をすることで一定割合の遺産を受け取ることができます。
- 期間:相続の開始及び遺留分の侵害がある事を知った時から1年以内、もしくは相続開始から10年以内
預貯金の払い戻し制度について
従来の民法では、遺産分割前の被相続人の預貯金口座は凍結され、払い戻しを受ける場合には相続人全員の同意書が必要でした。
しかし、改正後の新しく交付された民法では遺産分割前でも相続人が預貯金の払戻しが受けられるよう、次の2つの仮払い制度が設けられています。
これにより、現在では「葬儀費用」「遺族の生活費」「債権の支払い」などに関して、故人の預貯金から時間をかけずに捻出しやすい状況が生れています。
金融機関窓口で単独での払い戻しも可能
現在では故人の預貯金の一定割合について、家庭裁判所の判断を経ることなく金融機関窓口での払い戻しが認められています。
この一定割合の計算方法は次のとおりです。
- 一定割合=相続開始時の預貯金債権の額×1/3×払戻を行う共同相続人の法定相続分
計算式だけでは少しわかりづらいため、例を交えて解説します。
【預貯金残高が1,000万円あり相続人が配偶者と子2人で長男が払い戻しを行う場合】
- 1,000万円(預貯金残高)×1/3×1/4(長男の法定相続分)=83万円
この場合は、83万円の金額が金融機関窓口から払い戻されることになります。
なお、1つの金融機関から払い戻しを受けることができる金額には、150万円までという上限が設定されています。
保全処分の要件緩和
「他の共同相続人の利害を害しない」ことを条件に、家庭裁判所の判断で仮払いの必要性が認められます。
これにより、遺族に属する特定の預貯金債権の全部または一部を仮に取得できるようになりました。
まとめ
大切な家族が亡くなった際には、精神的にも肉体的にも憔悴した状況で慣れない手続きの多くをこなさなければならないため、できる限り外部の専門家を活用することをおすすめします。
特に相続手続きに関してはその手続きの内容の複雑さから、法的な知識がない方では期限内に手続きを完了するのは難しでしょう。
そのような場合は、本サイト「そうぞくドットコム不動産」をご活用ください。