喪中の期間を過ごす人は、年間を通して行われる慶事を控えなければなりません。
年賀状も控えるべきものの一つとされていますが、ライフスタイルの変化や地域による風習の違いなどにより、喪中の年賀状をどのようにするべきか悩む人も多いことでしょう。
現代では、喪中の人の立場や出す相手によって、年賀状の対応を考えるケースも増えてきました。
そこで、今回は喪中の年賀状に対する基本的な対応やマナーとともに、喪中でもご挨拶をする場合の具体的な方法を紹介していきましょう。
目次
喪中に年賀状を出したい場合どうする?
そもそも「喪中」とは、故人に近しい親族が喪に服する期間のことで、故人の冥福を祈りながら心に受けた傷をゆっくりと癒していきます。
喪中の期間中は、年間を通じて慶事や楽しい行事などを控えるのですが、お正月行事や年賀状もその一つです。
実は、喪中は明治時代から始まったもので、それに伴い「喜ばしいことは控えるべき」という考えから、喪中に年賀状を控えるという風習が始まりました。
最初は皇族が逝去されたことを悲しみ、仕えていた人々が年賀状を控えることから始まったのですが、いつしかこの考え方が広く庶民に受け入れられ、昭和に入って一般的な考え方になったのです。
現代でもこの風習は受け継がれており、喪中を過ごす多くの人が年賀状を控える傾向にあります。
ただし、ライフスタイルの変化に伴い年賀状に対する考え方も変わり、人によってはそこまで厳しい風習を求められなかったり、年賀状に代わる方法でご挨拶をするケースも増えてきました。
喪中には年賀状を控えたいと思う一方で、喪中であっても年初めのご挨拶はするべきと悩む人も少なくありません。
喪中期間の年賀状は、基本となる対応をきちんと知った上で、自分の立場や送る相手に相応しい方法で対応するようにしましょう。
喪中に年賀状を控えるべき人の範囲はどこまで?
喪中には年賀状を控えるべきとわかっていても、具体的にどのような立場の人が控えるべきなのか悩む人も多いのではないでしょうか。
基本となるのは「故人の二親等内」なのですが、二親等と言われても自分に当てはめるとわかりにくいかもしれません。
そこで、ここでは、年賀状を控えるべき人を故人から見た関係性別に紹介します。
故人と自分の関係性に当てはめて判断してみてください。
故人の夫や妻
故人の配偶者、つまり故人の夫や妻に当たる人は、0親等になるので年賀状を控えるべき対象者です。
葬儀でも喪主としてご挨拶する立場にあるので、多くの人が年末に自身の名前で喪中はがきを出し、新年のご挨拶を控えます。
故人の親や子供
故人の親や子供は、故人を0と数えた際に一親等になるので、年賀状を控えるべき対象者です。
故人の一親等に当たる人は、年齢によっては喪主になる可能性もあるので、自身の立場をよく考慮した上で新年のご挨拶を考えなければなりません。
故人の祖父母や孫
故人の祖父母や孫は、故人を0と数えた時に二親等になるので、年賀状を控えるべき対象者です。
ただし、祖父母が高齢であったり孫が小学生以下の年齢だったりすると、各家庭や地域によっては年賀状を許すこともあります。
しかし、これはあくまで「家庭や地域のルール」であり、一般的な基本としては故人の祖父母や孫も年賀状を控えなければなりません。
まずは基本を踏まえて年賀状を控えるようにし、どうしてもという場合は必ず周囲に相談して判断しましょう。
自分が喪中の時の年賀状
もし自分が喪中になった際、立場としては遺族側になるので、年賀状を控えるのが基本です。
しかし、年賀状は新年の喜びを伝える挨拶状なので、相手に失礼にならないよう対応しなければなりません。
また、仕事上どうしてもご挨拶をしなければならない時は、年賀状に代わる挨拶状の用意が必要です。
では、自分が喪中の時の年賀状にはどのような対応が相応しいのか、具体的な方法を紹介しましょう。
喪中はがきを出して年賀状を控える
自分が喪中になった際は、喪中はがきを出して新年のご挨拶ができないことを詫び、年賀状を控えるのが基本的な対応です。
喪中はがきは、11月中旬から12月中旬にかけて相手に送る「年賀欠礼状」で、送った相手に対し「自分が喪中であること」と「新年のご挨拶ができず申し訳ありません」という内容を伝えます。
喪中はがきは、できれば相手が年賀状を書く前に届くことが相応しいので、できるだけ早めに用意をして相手の手間が掛からないようにしましょう。
年賀状の代わりに年始状を出す
自分が喪中であったとしても、仕事上のお付き合いで挨拶を欠かせない相手に対し、どうしてもご挨拶をしたいというケースもあります。
そのような場合は、年賀状に代わりに年始状を出して対応しましょう。
年始状とは、簡単に言えば「お祝いの言葉を使わない挨拶状」のことです。
「謹賀」「賀正」「おめでとうございます」といった言葉の代わりに、「新年のご挨拶を申し上げます」「本年が皆様にとって実りある年になりますように」という表現をします。
年始状は、地震や台風などの被災者に対する心使いから生まれた挨拶状なので、全体的に言葉が柔らかく相手にも失礼になりません。
年始状を印刷する業者も増えてきていますので、「喪中だけど年始の挨拶はどうしても欠かせない」という場合には、年始状を出すようにしましょう。
喪中の人に年賀状を出す場合
自分が喪中ではなかったとしても、送る相手が喪中の場合は年賀状を控えるべきか悩む人も多いことでしょう。
特に喪中はがきを受け取っている場合、年賀状を送らないにしても、何かしらの挨拶はしたいと考えることと思います。
では、喪中の人に対する年賀状はどのようにすれば良いのか、具体的な対応を紹介しましょう。
年賀状は出しても良い
よく勘違いする人が多いのですが、喪中の年賀状は「喪に服している人が出すのを控えるべきもの」なので、喪中の人が年賀状を受け取る分のは問題ありません。
つまり、喪中の人に年賀状を出すのは失礼にあたらないのです。
しかし、失礼にならないからといって「喪中はがきを受け取っているのにわざわざ年賀状を出す」という行為は、相手を傷つけたり周囲の人に咎められる可能性があります。
一般的には、「喪中はがきを受け取った人には年賀状を出さない」という傾向が多いので、どうしてもという場合は周囲の人に相談した上で、年賀状に代わる挨拶状を出した方が良いでしょう。
気になる時は喪中見舞いを出す
自分が喪中でないのなら、喪中の人に年賀状を出すことは問題ありませんが、相手の心情を考慮するのであれば喪中見舞いを出す方法もあります。
喪中見舞いとは、年内にいただいた喪中はがきに対するお返事を返す方法です。
故人が亡くなったことを喪中はがきで知ったときや、故人や遺族と親しい間柄であったときに出すことが多く、年始の挨拶を失礼しますという遺族に対し、お悔やみや哀悼の意を伝えられます。
また、すでに年賀状を投函した後に喪中はがきを受け取った場合にも、すぐに喪中見舞いのはがきを出せば失礼にあたりません。
年始のご挨拶ではありませんが、喪中見舞いを送ることで遺族に対する心遣いを示せますので、年賀状を出すことに迷いがあるようでしたら喪中見舞いを送ってみましょう。
喪中に年賀状が来たら返信はどうする?
事前に喪中はがきを送っていても、相手の手元に届くタイミングが合わなかったり、遺族が知らない故人のお付き合い関係があると、喪中にも関わらず年賀状を受け取ることがあります。
喪中に年賀状を受け取ること自体は何も問題ありませんが、喪中の人は年賀状を出すことができないので対応に困る人も少なくありません。
もし喪中に年賀状が来た場合、その返信はどのようにするべきなのでしょうか?
喪中に年賀状を受け取った時の返信方法について、具体的な例を紹介します。
喪中はがきを出した相手ならそのままで良い
喪中に届いた年賀状のうち、喪中はがきを出した相手からの年賀状であれば、基本は返信をせずそのままにしても大丈夫です。
遺族はすでに喪中はがきでご挨拶を済ませていますし、喪中の相手に年賀状を送ることは失礼にならないので、どちらの立場でも問題はありません。
もし喪中に受け取った年賀状を見て、喪中はがきを出したかどうかがわからない場合は、喪中はがきを出した人のリストで確認する必要があります。
人数が多いと喪中はがきを出し忘れていることもありますので、喪中はがきを送る際には必ずリストを作成して、喪中に届いた年賀状と照らし合わせられるようしておきましょう。
喪中はがきを出してない人には寒中見舞いを出す
喪中に届いた年賀状のうち、喪中はがきを出していない人から年賀状を受け取った時には、寒中見舞いで返信しましょう。
寒中見舞いとは、松の内を過ぎた頃から節分を迎えるまでの間に投函する挨拶状で、慶事には当たらないことから喪中の人でも出すことが可能です。
さらに、喪中はがきだと近況報告などを手書きすることはできませんが、寒中見舞いなこちらの状況を相手に伝えられます。
喪中にいただいた年賀状で返信に迷うときは、松の内を過ぎた頃を見計らって寒中見舞いを書いて送るようにしましょう。
喪中の人が仕事関係者に年賀状を出す場合
喪中の人の年賀状で悩むポイントの一つに、仕事関係者への年賀状があります。
お仕事で知り合った人への年賀状や、会社同士の付き合いで年賀状を出さなければならないとき、喪中であることへの遠慮と社会人としての立場で対応に困る人も多いのではないでしょうか?
喪中の人が仕事関係者へ出す年賀状は、ビジネスとしての必要性を考えるようにします。
では、喪中の人でも仕事として年賀状を出す時の基本的な対応と、会社の規模で考慮すべき点について紹介しましょう。
喪中でも仕事として年賀状を出す
喪中であっても、故人と面識がない仕事関係者に対しては、ビジネス上の挨拶として年賀状を出しても問題ありません。
会社の部署内に届けられる年賀状や、仕事の顧客に毎年出している年賀状など、ビジネス関係のみでプライベートなお付き合いがない人には、例年通りに年賀状を出してご挨拶してください。
家族・個人事業の場合は対応を考える
家族経営や個人事業での仕事関係者に関しては、故人と深くつながっていたりプライベートでのお付き合いもあるため、相手に合わせた対応が必要です。
例えば、家族経営のお店で地域ぐるみのお付き合いがある場合、故人の葬儀に駆けつけた人もいるかも知れません。
個人事業の場合は、一般的なビジネスよりももう少し深い付き合いになるので、お互いを気遣うことも大切です。
もし仕事上でこのようなお付き合いがある場合は、喪中はがきを送って年賀欠礼を伝えたり、年始状でご挨拶をするといった対応策を考えてみましょう。
喪中の年賀状でよくある疑問
喪中の年賀状について調べていくと、基本的な対応方法から思いもよらないシチュエーションまで、さまざまな疑問を持つ人も少なくありません。
特に初めて喪中のお正月を迎える人にとっては、喪中の年賀状の扱いについて多くの疑問を抱えていることでしょう。
そこで、ここでは喪中の年賀状でよくある疑問とその回答を紹介しますので、自身の持つ疑問と照らし合わせて参考にしてみてください。
疑問①:喪中はがきを出すべき範囲は?
喪中はがきは、「新年のご挨拶を控えます」というお知らせのはがきなので、次のような例に当てはまる人には出した方が良いでしょう。
- 故人が毎年年賀状を出していた人
- 故人の二親等以内の人が毎年年賀状を出していた人
- 故人の葬儀に参列して下さった人
- 故人に供物や香典を送ってくださった人
例年から年賀状をやり取りしていた人に関しては、前年の年賀状を確認してリストを作成してください。
故人の葬儀に参列した人や、供物・香典を送ってくださった人の住所は、芳名帳や送り状などを参考にしてリストを作成します。
これらのリストがあると、もし喪中に年賀状を受け取った場合でも、喪中はがきを送ったかどうかが確認できます。
できるだけリストを作成してから喪中はがきを出すようにしましょう。
疑問②:喪中はがきはいつまでに出す?
喪中はがきは、11月中旬から12月中旬までに相手届くよう投函します。
これは、相手が年賀状を準備する時に手間を取らせないための配慮で、できるだけ早く喪中はがきを出すのが理想的です。
年末が近くなると慌ただしくなりますので、早い段階から喪中はがきを出す人をリストアップして準備しておきましょう。
疑問③:子供にも年賀状を控えさせるべき?
喪中の範囲は故人から数えて二親等内の遺族なので、場合によっては小学生の子供も喪中になります。
基本としては、たとえ子供であっても喪中である意味を伝え、年賀状は控えさせるようにしてください。
ただし、子供同士のお付き合いが少し複雑だった場合は、年賀状を出さなかったことに対して学校で文句を言われるなどの問題が起こるかも知れません。
もしこのような問題が懸念される場合は、事前に年賀状を出せないことを伝えたり、年賀状の代わりに年始状を出すなどの対応をとってみましょう。
疑問④:喪中なのに年賀状を受け取ったら?
喪中であっても、年賀状を受け取ること自体は問題ありません。
喪中はがきを出している人から年賀状を受け取った場合はそのまま、出していない人から年賀状を受け取った場合は、寒中見舞いで返信するようにしましょう。
疑問⑤:年賀状を出したあとに喪中はがきを受け取ったら?
相手が喪中だと知らずに年賀状を投函し、その後に喪中はがきを受け取った場合は、次のような対応が一般的です。
- 喪中の相手に年賀状を送るのは、マナー違反ではないのでそのままにする。
- マナー違反ではないが気にかかるので、すぐに喪中見舞いを出す。
どちらの対応であっても失礼ではありませんが、もし喪中はがきを受け取った日から年末まで2週間以上あるのなら、喪中見舞いでご挨拶をすると良いでしょう。
喪中で年賀状を出せない時のマナー
喪中で年賀状を出せない場合は、相手に失礼にならないよう気をつけるべきマナーがあります。
では、具体的にどのようなことを守るべきなのか、喪中で年賀状を出せないときのマナーを紹介しましょう。
- 葬儀の参列者や知人には喪中はがきを出す
- 喪中はがきは12月中旬に届くように出す
- 年始状ではお祝いの言葉を使わない
マナー①:葬儀の参列者や知人には喪中はがきを出す
喪中で年賀状を出せない場合は、例年年賀状のやり取りをしている知人や、葬儀に参列してくださった人に喪中はがきを出してください。
特に一般葬での葬儀の場合、遺族が面識のない故人の知人も参列していることが多く、年賀状のやり取りがある可能性があります。
葬儀の時の芳名帳を用意し、漏れがないようリストを作成して喪中はがきを出しましょう。
マナー②:喪中はがきは12月中旬に届くように出す
喪中はがきは、遅くても12月中旬には相手に届くように出してください。
これよりも遅くなってしまうと、年賀状の受付期間が始まってしまい、喪中はがきと入れ替わりで年賀状が投函されます。
相手に失礼のないよう、喪中はがきは早めに手元に届くよう出しましょう。
マナー③:年始状ではお祝いの言葉を使わない
喪中の人が、年賀状の代わりに年始状を出すケースも増えてきましたが、年始状はあくまで「ご挨拶をするためのもの」であり、「喜びを伝えるもの」ではありません。
年賀状でよく綴られる、「あけましておめでとうございます」や「新年のお喜びを申し上げます」などの言葉は、お祝いの言葉になるため年始状では使用できません。
年始状を出す際には、お祝いになる言葉を使わないよう事前によく調べてから準備をしましょう。
まとめ
喪中に送る年賀状は、送る側だけでなく受け取る側にもマナーが必要です。
喪中で年賀状を控える場合は、できるだけ早く喪中はがきを送るよう心がけ、相手の立場や関係性を考慮して、お互いに失礼のないよう対応しましょう。