死亡保険金の非課税枠とは?使い方と注意点をわかりやすく解説

手続き
この記事を監修した専門家は、
牛腸真司
税理士
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。

自分が亡くなったあと、家族が困らないようにとか、家族の助けになれば・・と願って、生命保険(死亡保険)を掛ける人が多いと思います。
生命保険金も相続税の対象にはなりますが、優遇措置が取られています。それを生命保険(死亡保険)金の非課税枠と呼びます。
しかし、この非課税枠はどのように使うか(=誰を受取人にするか)によって、使えるかどうかが違ってきます。
本稿では生命保険の非課税枠について、概要や効果的な使い方をご紹介致します。


被相続人=資産を残す人=亡くなった方
相続人=資産を受け継ぐ人=配偶者、子供、親せきなど


1.生命保険の非課税枠について

冒頭で生命保険の非課税枠について触れましたが、1章では具体的な制度について説明致します。
非課税枠では「いくらまで非課税」になるのでしょうか?答えは以下の通りです。

生命保険の非課税枠=500万円×法定相続人の数

「法定相続人の数」がベースになるという点で、計算方法については相続税の基礎控除と似たルールとなっています。
◆ ケーススタディ
父、母、子供2人の4人家族で父が亡くなりました。法定相続人は妻、子供2人の合計3人になります。この家族の場合、500万円×法定相続人(3人)=1,500万円まで、生命保険金は非課税となります。1,500万円を超える生命保険金については、相続税がかかります。
以上のように、生命保険は、現金やその他の資産と異なり、非課税枠が使えるという点で、節税対策として用いることが可能です。また、評価の差を利用して節税を行う不動産と比べて、気軽に行えるという点においても、生命保険は魅力的な節税対策です。
しかしこのような理由から、「相続税対策には生命保険がとても有利ですよ」と言いながら、強く生命保険の押し売りをしてくる営業マンがいたりもします。しかし、生命保険の非課税枠も、その使い方(=受取人を誰に指定するか)によって、大きく節税になる場合、ならない場合があるので、営業マンの言い分を鵜呑みにしないように気を付けましょう。
2章では、具体的なケーススタディに基づいて、誰を生命保険の受取人にすれば、相続税対策として効果的なのかについてご説明します。

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2.非課税枠の効果的な使い方

生命保険の受取人を誰にすれば最も大きな節税効果を得られるのでしょうか。まずは先程の非課税枠のルール(500万円×法定相続人の数)についてもう少し詳しく見てみましょう。

受取額の割合に応じて分配される

◆ ケーススタディ1
父、母、兄、弟の4人家族がいました。父の生命保険の受取人として、母、兄、弟が指定されていました。保険の受取金額は以下のように、3人とも同額でした。
母 1000万円
兄 1000万円
弟 1000万円
父が亡くなり相続が行われました。この家族の法定相続人は母、兄、弟の3人で、生命保険の非課税枠は1,500万円です。このようなケースの場合、各相続人の非課税枠は、
母 500万円
兄 500万円
弟 500万円
と、なります。
◆ ケーススタディ2
上記と、同じ家族構成ですが、次は生命保険料の受取額が同額でない場合を見てみましょう。
母 2000万円
兄  500万円
弟  500万円
の場合、非課税枠は同じ1,500万円ですが、各相続人の非課税枠は、
母  1000万円
兄  250万円
弟  250万円
と、なります。
◆ ケーススタディ3
では、受取人が母1人の場合はどうなるのでしょうか。
母 3000万円
兄  0円
弟  0円
の場合、非課税枠は同じ1,500万円ですが、各相続人の非課税枠は、
母  1500万円
兄  0円
弟  0円
と、なります。
ケーススタディ1、2、3からわかるように、生命保険の非課税枠というのは、相続人に一律に500万円の非課税枠があるわけではなく、500万円×法定相続人の非課税額を、実際に支給される保険金の割合に応じて分配されるのです。

配偶者は配偶者控除が使える事を考慮

では、誰を受取人にすることで最も効果的に生命保険の非課税枠が利用できるでしょう。覚えておくべきは「配偶者は配偶者控除が使えるから、受取人にしないほうが良い」です。
配偶者控除については、別の記事でご説明していますが、配偶者は「配偶者の法定相続分または1億6000万円の高い方」までは、相続税を非課税とすることが可能です。
つまり、配偶者は配偶者控除によって多くの場合、相続税が控除されるため、「誰にでも使える」生命保険の非課税枠を配偶者に使ってしまうのは損ということが言えます。
ですので、生命保険の非課税枠は子供に利用するのが最も効果的で、そのために生命保険の受取人は子供に指定しておく必要があります。
また、先程説明したように、生命保険の非課税枠の金額は、法定相続人の数によって決まるため、仮に配偶者を受取人に指定しようと、子供を受取人に指定しようと、非課税額は変わらないのでご安心下さい。

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3.非課税枠の注意点

相続を考えた時に、ご家族の年齢によっては「子どもに相続しても、どうせまた孫に相続するんだから」という理由で、子供ではなく、孫に相続するケースも増えてきています。
これは、相続税の負担回数を減らすという意味では、ケースによっては正しい選択ですが、生命保険についてはこの選択は間違いとなります。
理由は3つあります。順番に詳しく見ていきましょう。

孫は非課税枠が使えない

1つ目に、孫が生命保険の受取人では、非課税にならないということです。生命保険の非課税枠は、受取人が法定相続人の時しか使えません。
つまり、相続人でない孫や、他の親族などを受取人とした生命保険は、それが非課税枠の範囲内であっても、非課税にならず、そのまま相続税がかかります。

代襲相続や養子縁組の場合は孫も非課税となる!
生命保険の非課税について、孫にも適用されるケースがあります。

  1. 代襲相続が行われた場合
  2. 養子縁組を行なった場合

です。上記のケースの場合、孫は法定相続人になるため、生命保険の非課税枠が適用されます。
これ以外、孫に支払われる生命保険は非課税になりませんのでご注意下さい。

相続税の二割加算が適用されてしまう

2つ目は、孫が受け取った生命保険は、非課税枠が使えない事に加えて、相続税が2割アップになってしまうということです。
非課税分を控除もされず、さらに通常の1.2倍の相続税を払わなければならないのですから大変です。
相続税の2割加算については、別の記事で解説しますが、配偶者、子、親、以外の方(正しくは、一親等の血族及び配偶者以外)が相続する時、相続税が2割加算されるというルールです。

孫にも生前贈与3年内加算のルールが適用される

3つ目を説明する前に「生前贈与には、3年内加算のルールというものがある」と言うことをお話しします。
3年内加算のルールとは、相続税を減らしたいがために、亡くなる直前に慌てて生前贈与をするのを防ぐ目的で決められたルールであり、被相続人が亡くなった後、3年以内に贈与していたものは相続税の対象内になるというものです。
しかし、この3年以内加算のルールは孫には適用されません。
そのため「生前贈与するなら、孫が良い」というのが一般的な生前贈与の効果的な方法として紹介されることが多いです。
しかし、孫が生命保険を受け取ると、この「3年以内加算のルールは孫には適用されません」ではなく、「孫にも適用」という事になってしまいます。
せっかく、孫のために用意された生前贈与の節税効果を、生命保険を孫が受け取ってしまう事で、失うことになります。

以上をまとめると、孫が生命保険の受取人になると、

  1. 生命保険の非課税枠が適用されない
  2. 相続税が2割増し
  3. 3年以内加算のルールが適用されてしまう

と、トリプルでマイナスになります。ご注意下さい。

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まとめ

節税対策において、生命保険は確かに効果的な側面があります。
しかし、どのように制度を利用するかによって、効果は大きく変わります。
今回の解説を熟読していただいた上で、ご自身の生命保険について、今一度チェックしてみてくださいね。

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