相続に関する相談に乗っている専門家は、弁護士や司法書士、税理士、行政書士などさまざまです。中でも、相続税や贈与税など「税」について相談したい場合の相談先は、税理士が適任といえるでしょう。相続税申告などの代行や相続税に関する相談は、税理士の独占業務であるためです。
では、相続についての相談をする税理士は、どのように選べば良いのでしょうか。今回は、相続について相談する税理士の選び方や、相続について税理士へ依頼するメリットなどについてくわしく解説します。
目次
相続について税理士に相談すべき場面とは
相続について税理士に相談すべきなのは、どのような場面なのでしょうか?税理士に相談すべき主な場面は、相続が起きる前と後とでそれぞれ次のとおりです。
- 相続が起きる前
- 相続が起きた後
相続が起きる前
相続が起きる前に相続について税理士へ相談すべき主な場面は、次のとおりです。
生前贈与について贈与税の申告を依頼した場合
贈与とは、ある人から別の人へ「あげます」、「もらいます」と約束として無償で財産を移転する行為です。中でも、親などから将来相続人となる子や家族などに対して生前に財産を無償で渡すことを、「生前贈与」と呼ぶことが多いです。
そして、1年(1月1日から12月31日までの間)に一定額以上の生前贈与を受けた場合には、贈与税の申告と納税をしなければなりません。
この贈与税申告を代行できるのは、税理士のみです。そのため、贈与税申告手続きを依頼したい場合や贈与税額をあらかじめ知りたい場合などには、税理士へ相談することになるでしょう。
相続税対策がしたい場合
将来の相続税額を引き下げる相続税対策がしたい場合には、税理士へ相談することとなります。相続税にくわしい税理士へコンサルティングを依頼することにより、財産の状況や相続人の状況などを踏まえた節税のアドバイスを受けることが可能です。
相続が起きた後
相続が発生した後で税理士に相談すべき主な場面は、主に次のとおりです。
相続税申告を依頼したい場合
相続税申告を依頼した場合には、税理士へ相談することになるでしょう。
相続税とは、遺産などに対してかかる税金です。遺産総額や、亡くなった人(「被相続人」といいます)がした過去の一定の贈与額などが、次の式で算定される相続税の基礎控除額を超える場合には相続税の申告をしなければなりません。
- 相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
相続税の基礎控除額を超えそうな場合には、相続が起きたら早めに税理士へ申告の依頼を打診しておくと良いでしょう。
準確定申告を依頼したい場合
準確定申告とは、亡くなった人について行う所得税の確定申告です。
通常の所得税の確定申告は1月1日から12月31日までの所得を翌年2月16日から3月15日までの間に行いますが、準確定申告は亡くなった日の翌日から4か月以内にしなければなりません。不動産所得や事業所得のある人が亡くなった場合や、被相続人が亡くなった年やその前年に大きな資産を譲渡していた場合には、準確定申告が必要となる可能性が高いでしょう。
準確定申告を依頼したい場合には、早期に税理士へ相談することをおすすめします。
相続税について相談をする税理士の探し方
相続税について相談をする税理士は、どのように探せば良いのでしょうか?主な探し方は、次の3つです。
- 広告やタウンページなどで探す
- インターネットで探す
- 司法書士など他の士業から紹介を受ける
広告やタウンページなどで探す
1つ目は、税理士事務所が出している広告や、職業別電話帳であるタウンページなどで探す方法です。
ただし、後ほど解説をするとおり、すべての税理士事務所が相続税に力を入れているわけではありません。つまり、単に「税理士事務所」を探してしまえば、その事務所が相続税申告をほとんど取り扱っていない可能性があるということです。
そのため、広告やタウンページから税尻を探す場合には、相続税申告について言及されている事務所へ問い合わせた方が良いでしょう。
インターネットで探す
2つ目の方法は、インターネットで探すことです。
相続税申告に力を入れている税理士事務所は、相続税専門のホームページを持っていることが少なくありません。そのため、地域名と「税理士」というワードとともに「相続」も合わせて入れて検索すれば、相続税申告を取り扱っている税理士事務所を見つけることができるでしょう。
司法書士など他の士業から紹介を受ける
3つ目の方法は、司法書士など他の資格者から紹介を受けることです。
相続手続きに力を入れている資格者は、他の資格者と相互に連携を取っていることが少なくありません。他の資格者から紹介を受けることで、相続税に強く、かつ他の資格者から信頼されている税理士と出会える可能性が高くなるでしょう。
相続について相談をする税理士の選び方
相続について相談をする税理士は、何を基準に選べば良いのでしょうか?ここでは、相続について相談をする税理士の選び方を紹介します。
- 専門性を確認する
- 他士業との連携状況を確認する
- 相性を確認する
- 料金を確認する
専門性を確認する
もっとも重要となるのは、その税理士の専門性を確認することです。
実は、すべての税理士が相続税に詳しいわけではありません。1年に1件も相続税の申告をしていない事務所や、1年に1件程度しか相続税申告をしていない事務所も少なくないほどです。
そのため、相続について相談をする税理士は、相続税に力を入れているかどうかを確認したうえで選ぶと良いでしょう。相続税に力を入れているかどうかは、その税理士事務所のホームページを見たり電話で問い合わせたりすることで確認できます。
他士業との連携状況を確認する
相続は、1人の専門家のみでは解決できないケースが少なくありません。
たとえば、相続税の申告(税理士の独占業務)も依頼したい一方で、故人が持っていた不動産の名義変更登記(司法書士の独占業務)も依頼したい場合など、相談内容が複数の専門家の専門分野を横断することが多いためです。そのため、相続について相談をする税理士を選ぶ際には、他の専門家との連携があるかどうかについても確認しておくと良いでしょう。
たとえば相続登記も依頼したいにもかかわらずその税理士が司法書士との連携がなければ依頼先の司法書士を改めて探さなければならないところ、連携があれば紹介を受けることが可能となるためです。
相性を確認する
相続税の申告など相続に関連する業務では、家族に関してなどプライベートな情報や税に関する自分の考え方などを話すべき場面が少なくありません。考え方が大きく異なる税理士へ依頼してしまえば、不満が残ってしまう可能性があるでしょう。
また、そもそも身内が亡くなった後などただでさえ辛い思いをしている場面で面談がストレスになるような税理士へ依頼してしまうことは、避けたいことかと思います。そのため、相続について相談をする税理士を選ぶにあたっては、相性も重要なポイントであるといえるでしょう。
初回の相談は比較的低額や無料で受けている場合も多いため、初回相談で相性を確認したうえで依頼を検討することをおすすめします。
料金を確認する
税理士報酬は法令などで一律に決まっているわけではなく、事務所ごとに異なる報酬体系を定めています。そのため、依頼をした場合の報酬額も税理士を選ぶ1つの基準となるでしょう。
ただし、料金の安さのみで依頼先の税理士を選ぶことはおすすめできません。なぜなら、相続税の申告などは非常に専門性の高い業務であるうえ、受けられる特例や補正を漏れなく適用しようとすれば税理士側でそれなりの手間と時間がかかるものであるためです。
相続税申告を税理士へ依頼した場合の報酬相場は、遺産総額の0.5%から1.0%程度といわれています。この相場よりもあまりにも低い場合には、低い理由をしっかりと確認した方が良いでしょう。
相続税申告を税理士に依頼するメリット
相続税申告は相続手続きの中でも難易度が高いものであり、自分で行うことは容易ではないでしょう。しかし、相続税申告を税理士へ依頼せず、自分で行うことが禁じられているわけではありません。
では、相続税申告を税理士へ依頼することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?主なメリットは、次のとおりです。
- 時間と手間を最小限に抑えられる
- 計算誤りで相続税を納めすぎるリスクを減らせる
- 受けられる控除を漏れなく受けられる
- 税務署から指摘を受けにくい
時間と手間を最小限に抑えられる
相続税申告を税理士へ依頼せずに自分で行おうとすれば、多大な時間と手間が生じてしまうでしょう。税務申告書の作成は難解であり、相続税法や関連通達などについて基本となる知識がなければ、手引きなどを参照したからといってすぐに作成できるようなものではないためです。
そのため、自分で相続税申告をするためには疑問が生じた部分を1つずつ調べたり、税務署へ何度か相談へ行ったりしながら進めていかなければなりません。税理士へ相続税申告を依頼すれば、自分で税法を調べたり税務署へ相談に行ったりする必要はなくなります。
計算誤りで相続税を納めすぎるリスクを減らせる
相続税を計算するためには、土地や建物、有価証券など、遺産に含まれている財産を1つずつ評価することが必要となります。特に土地の評価は難易度が高く、正しく評価するためにはさまざまな「補正」を理解しなければなりません。
土地の補正には、たとえば奥に細長い土地などの評価を下げてくれる「奥行長大補正」や道路に面する間口の狭い土地の評価を下げてくれる「間口狭小補正」、いびつな形の土地の評価を下げてくれる「不整形地補正」など、さまざまなものが存在します。
相続税申告を相続税に強い税理士に依頼をすれば、必要な補正を適用したうえで土地の評価をしてくれるなど、相続税を正しく算定してもらうことが可能です。
一方、自分で相続税の申告をした場合には、使えるはずであった補正の適用を漏らしてしまったり計算誤りをしたりして、相続税を納めすぎてしまうリスクがあります。
受けられる控除を漏れなく受けられる
相続税には、さまざまな控除が存在します。たとえば、土地の評価が最大8割減となる「小規模宅地等の特例」や、配偶者が相続した価額のうち1億6,000万円か配偶者の法定相続分のいずれか大きな価額までは相続税がかからない「配偶者の税額軽減」などです。
特例の中には適用要件の判断が難しいものもあり、自分で相続税の申告をした場合には、本来であれば受けられたはずの特例適用を漏らしてしまうかもしれません。一方、相続税申告を税理士へ依頼した場合には、特例を漏れなく適用してもらうことが可能となります。
税務署から指摘を受けにくい
自分で相続税申告をした場合には、税務調査などで税務署から過少申告を指摘される可能性が高くなります。過少申告が指摘されれば相続税の追加納付が必要となることに加え、追加納付する相続税額の10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)の過少申告加算税を納める必要が生じます。
大前提として、税理士に依頼したからといって相続税の税務調査が来ないわけではありません。しかし、一般的には自分で申告をした場合には、計算誤りや勘違いなどによる遺産の計上漏れが生じやすい傾向にあります。
そのため、申告漏れの可能性が高いと税務署側が考えれば、調査に入られる可能性が高くなるでしょう。
まとめ
相続税申告を自分で行うことは、時間と労力をかければ不可能ではないでしょう。しかし、無理に自分で相続税申告をすれば、計算誤りなどにより納税に過不足が生じる可能性が高くなります。
このようなリスクを避けるため、やはり相続税申告は税理士へ依頼した方が間違いないでしょう。
さて、相続税申告と並んで比較的難易度の高い相続手続きに、相続登記(故人名義の不動産を相続人の名義へと変える手続き)が挙げられます。相続登記では被相続人の出生までさかのぼる戸籍謄本などさまざまな書類が必要となり、これらを自分で集めることに苦労されるケースが少なくありません。
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