相続登記をする際には、「登録免許税」という税金を負担しなければなりません。登録免許税の金額は登記をする不動産の評価額によって決まるため、高価な不動産を相続した場合には、登録免許税も高くなりがちです。
この登録免許税について、平成30年度の税制改正によって、一定の場合に免税措置が設けられることになりました。そこでこの記事では、相続登記でかかる登録免許税の基本や登録免許税が非課税となるケースなどについて、くわしく解説します。
目次
相続登記とは
相続登記とは、亡くなった人(「被相続人」といいます)の名義となっている不動産を、相続人などの名義へと変える手続きです。原則として、すべての不動産の情報やその所有者の情報は、法務局へ登録(登記)されています。
しかし、仮に名義人が亡くなったとしても、相続人などの名義へ勝手に書き換わるわけではありません。法務局では、名義人が亡くなったことや、その後誰が相続することになったのかなどの情報を持っていないためです。
そのため、故人名義となっている不動産を相続人などの名義へと変えるためには、相続人などが所定の書類を揃えて申請をする必要があります。これが、「相続登記」です。
なお、これまで相続登記は義務ではなく、期限も定められていませんでした。しかし、これが「所有者不明土地」が増加している原因の1つであるとして、社会問題となっています。こうした事情を受けて、相続登記を義務化する改正がなされました。
改正法は令和6年4月1日から施行され、改正後は原則として、相続開始後3年以内に相続登記を済ませなければなりません。
また、改正前に起きた相続については、改正法の施行から3年以内に登記を済ませる必要があります。正当な理由なく期限を超過した場合には過料の対象となりますので、今後はより計画的に相続登記を済ませる必要が生じるでしょう。
相続登記でかかる登録免許税の基本
相続登記をする際には、原則として、「登録免許税」を納めなければなりません。非課税となる措置について確認する前に、まずは登録免許税の基本を見ていきましょう。
登録免許税とは
登録免許税とは、登記などをする際に課される税金です。新たに建物を建ててその情報を登記する際のほか、売買や相続などで不動産の名義が変わったことを登記する際、名義人の住所など情報が変わったことを登記する際などには、この登録免許税を納めなければなりません。
登録免許税の計算方法
相続登記でかかる登録免許税は、次のように計算されます。
- 登録免許税額(相続)=不動産の価額×1,000分の4
たとえば、不動産の価額が2,000万円であれば登録免許税額は8万円、不動産の価額が5,000万円であれば登録免許税額は20万円となります。
なお、この計算式が適用されるのは、相続や遺贈(ここでは、遺言で不動産を受け取ること)によって「相続人が不動産を取得した場合」のみです。遺言書などで相続人ではない人が不動産を取得した場合には、税率が「1,000分の4」ではなく「1,000分の20」となりますので、注意しておきましょう。
「不動産の価額」とは
計算式のうち「不動産の価額」とは、原則として、相続登記をしようとする不動産の固定資産税評価額です。固定資産税評価額は、毎年固定資産税の納付書とともに市区町村役場から送付される「固定資産税課税明細書」などの書類で確認することができます。
また、不動産の所在地を管轄する市区町村役場から、「固定資産税評価証明書」などの書類を取り寄せることでも確認することが可能です。
端数処理
登録免許税の計算上、「不動産の価額」は、1,000円未満を切り捨てて計算します。そのうえで、計算結果に100円未満の端数が出た場合には、100円未満の端数を切り捨てます。
ただし、計算結果が1,000円に満たない場合には、負担すべき登録免許税額は1,000円です。
登録免許税の納め方
登録免許税の納め方には、次の3パターンが存在します。
パターン①:銀行振込で納付
登録免許税相当額を、銀行などから振り込んで納付する方法です。振り込みがわかる領収証を相続登記の申請書に貼り付けて、相続登記を申請します。
自分で相続登記をする場合には、この方法が原則となるでしょう。
パターン②:収入印紙の貼付による納付
登録免許税分の収入印紙を購入して、その収入印紙を申請書へ貼り付けて納付する方法です。収入印紙は、法務局の窓口や郵便局などで購入できます。
ただし、この方法が選択できるのは、納付する登録免許税の額が3万円以下である場合などのみです。
パターン③:電子納付
オンラインのシステム上から、インターネットバンキングなどを活用して納付する方法です。相続登記の申請をオンラインで行った場合には、この方法が選択できます。
ただし、相続登記をオンラインで申請するにはソフトのインストールなど事前準備に手間がかかるため、自分で数回程度の登記申請をする場合にはおすすめできません。
相続登記の登録免許税が非課税になるケース①:100万円以下の土地の場合
ここからは、相続登記の登録免許税が非課税になる2つのケースを見ていきましょう。まずは、相続登記をするのが100万円以下の土地である場合の免税措置です。
非課税制度の概要
相続人が土地を相続や遺贈で取得した場合において、その土地の固定資産税評価額が100万円以下であるときは、この土地の相続登記でかかる登録免許税は非課税となります。
なお、あくまでも「土地」のみであり、建物はこの制度の対象外となっていることに注意しなければなりません。また、相続人ではない人が遺贈で土地を取得した場合にも、この非課税措置の対象外です。
非課税の適用を受けるために必要な手続き
この非課税措置の適用を受けるためには、相続登記の申請書に、「租税特別措置法第84条の2の3第2項により⾮課税」と記載しなければなりません。仮に非課税措置の要件を満たしている場合であっても、この記載が漏れていれば非課税とはなりませんので、記載を漏らしてしまわないよう注意しましょう。
非課税となる期間
この非課税措置が適用されるのは、平成30年11⽉15⽇から令和7年(2025年)3⽉31⽇までの間です。仮に相続登記を済ませていない土地がある場合には、早めに相続登記を済ませておきましょう。
相続登記の登録免許税が非課税になるケース②:相続登記未了のまま死亡した場合
相続登記でかかる登録免許税が非課税となる制度の2つ目は、相続登記が未了のまま死亡した場合の免税措置です。
では、制度の概要を見ていきましょう。
非課税制度の概要
相続人が相続や遺贈によって土地を取得したものの、その相続登記をしないままで亡くなった場合において、その相続に係る登録免許税が非課税となる制度です。文章にすると少しわかりづらいので、例を挙げて解説します。
なお、こちらも土地のみが対象とされており、建物は非課税措置の対象外です。
非課税の適用が受けられる例
たとえば、「相続太郎(A)」名義の土地があったとします。相続太郎氏が亡くなり、遺産分けの話し合い(「遺産分割協議」といいます)で、その相続人である「相続一郎(B)」が土地を相続することとなりました。
しかし、相続一郎氏はその土地を自分の名義に変えることなく、死亡したとします。相続一郎氏の相続では、その子である「相続良男(C)」が土地を相続することとなりました。

(法務局:相続登記の登録免許税の免税措置についてより抜粋)
この場合には、原則として「太郎さんから一郎さんへの相続登記」と、「一郎さんから良男さんへの相続登記」の二段階を踏むこととなります。このような場合において、「一郎さんから良男さんへの相続登記」では原則どおり登録免許税が課税されるものの、「太郎さんから一郎さんへの相続登記」に係る登録免許税が非課税となる措置です。
先代名義のまま長年に渡って相続登記が放置されている土地について、相続登記を促進することを狙いとした制度でしょう。
非課税の適用を受けるために必要な手続き
この非課税措置の適用を受けるためには、相続登記の申請書に、「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と記載しなければなりません。仮に非課税措置の要件を満たしている場合であっても、この記載が漏れていれば非課税とはなりませんので、記載を漏らさないよう注意しましょう。
非課税となる期間
この非課税措置が適用されるのは、平成30年4⽉1⽇から令和7年(2025年)3⽉31⽇までの間です。仮に先代名義のまま相続登記を済ませていない土地がある場合には、早めに相続登記を済ませておきましょう。
相続登記で登録免許税以外にかかる費用
相続登記を行うには、登録免許税のほかにどのような費用が掛かるのでしょうか。相続登記で掛かる主な費用は、次のとおりです。
必要書類の取得費用
相続登記には、さまざまな書類が必要となります。必要書類を揃えるために必要な費用は、相続人が配偶者や子どもである場合で、おおむね5,000円から1万5,000円程度です。
一方、兄弟姉妹や甥姪が相続人となる場合には取得すべき書類も増えるため、プラス1万円程度の費用を想定しておくとよいでしょう。
相続登記において取得すべき主な書類と1通あたりの費用は、次のとおりです。ただし、状況によってはこれら以外の書類が必要となる場合もありますので、自分で書類を集める際には、あらかじめ管轄の法務局へ確認しておくことをおすすめします。
なお、これらのほかに登記する事項を記載した「登記申請書」と、相続人全員での協議がまとまっていることを証する「遺産分割協議書」も必要ですが、これらの書類はどこかから取り寄せるものではないため、ここでは記載しておりません。登記申請書と遺産分割協議書については法務局のホームページに記載例がありますので、こちらをご参照ください。
相続人全員の印鑑証明書
不動産を誰が取得することになったのかを示す遺産分割協議書には、相続人全員が実印で押印しなければなりません。この印が実印であることを証するため、相続人全員の印鑑証明書が必要です。
印鑑証明書の取得手数料は市区町村によって異なりますが、おおむね1通200円から400円程度です。印鑑証明書を取得するには印鑑登録証やマイナンバーカードの現物が必要であるため、相続人それぞれに自分で取得してもらうことが多いでしょう。
住所地の市区町村役場で取得することが原則ですが、最近ではマイナンバーカードを持っていることを条件に、コンビニエンスストアのコピー機の操作で取得できる市区町村も増えています。
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等
被相続人の相続人が誰であるのかを確定するため、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本が必要です。また、相続人が被相続人の兄弟姉妹や甥姪である場合には、これらに加えて、被相続人の両親それぞれの出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本も必要となります。
これらの書類は、戸籍謄本であれば1通450円、除籍謄本と原戸籍謄本は1通750円です。それぞれその時点で本籍を置いていた市区町村から取り寄せる必要があるため、実際には、現地までの交通費や郵送代なども考慮する必要があるでしょう。
被相続人の除票
登記されている名義人と被相続人が同一人物であることを確認するため、被相続人の除票が必要です。除票とは被相続人の最後の住所地を証明する書類であり、最後の住所地を管轄する市区町村役場で取得できます。
手数料は市区町村によって異なりますが1通200円から400円程度です。
相続人全員の戸籍謄本
相続人が存命であることを確認するため、相続人全員の戸籍謄本が必要です。
戸籍謄本の取り寄せ先は、それぞれの本籍地を管轄する市区町村役場です。取得手数料は全国一律、1通450円とされています。
不動産を相続する人の住民票
新たな名義人の情報を正しく登記するため、不動産を相続する人の住民票が必要です。
住民票は、住所地を管轄する市区町村で取得できます。また、印鑑証明書と同じく、コンビニエンスストアのコピー機の操作で取得できる市区町村も増えています。
取得に要する手数料は市区町村によって異なりますが、1通200円から400円程度です。
不動産の固定資産税評価証明書
上で解説をしたとおり、登録免許税の額は不動産の固定資産税評価額をもとに算定されます。そのため、不動産の固定資産税評価額を証明するため、「固定資産税評価証明書」が必要です。
固定資産税評価証明書は、その不動産の所在地を管轄する市区町村役場で取得できます。費用は市区町村役場によって異なりますが、おおむね1通300円前後であることが多いでしょう。
なお、市区町村によっては無料で取得できる「固定資産税評価通知書」を発行していることもあり、こちらであっても構いません。
司法書士報酬
相続登記の手続きを司法書士へ依頼した場合には、司法書士報酬がかかります。司法書士報酬の額や算定方法は事務所によって異なるため、一概に言えるものではありません。参考として、相続登記を依頼した場合の報酬相場は、おおむね8万円から15万円程度でしょう。
ただし、不動産の数が多い場合や相続人の数が多い場合などには、加算となる可能性があります。また、書類の収集から依頼した場合などには追加料金がかかる場合もあります。
そのため、具体的な報酬額を知るためには、依頼を検討している先の事務所からあらかじめ見積もりを取る必要があるでしょう。
まとめ
相続登記をする際には、登録免許税がかかります。相続した不動産の評価額が高い場合には登録免許税も高額となる傾向にあるため、あらかじめ算定し、心積もりをしておくと良いでしょう。
また、令和6年4月1日からは、いよいよ相続登記の義務化もスタートします。相続登記を済ませていない不動産がある場合には、登録免許税の非課税措置も最大限活用しつつ、早めに相続登記を済ませておくことをおすすめします。
しかし、相続登記にはさまざまな書類が必要であり、これらをすべて自分で揃えることは容易ではありません。一方で、相続登記にまつわるすべての手続きを司法書士へ依頼すれば、費用が嵩んでしまうでしょう。
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