相続税はいくらからかかる?ケース別にわかりやすく解説

相続税いくらから相続税
この記事を監修した専門家は、
牛腸真司
税理士
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。

家族が亡くなり遺産を相続すると、相続税がかかる場合とかからない場合があります。
遺産を相続したからといって、相続税がかかるとは限りません。
遺産をいくら相続すると相続税がかかるのかは、相続が起きたときの状況により異なります。
相続税の申告や納税が必要なのかを正しく判断して申告漏れを起こさないためにも、相続税の仕組みを理解しておくことが大切です。
今回は、相続税がいくらからかかるのか、申告や納税が必要になるケースと不要なケースの違いについて解説します。

相続税とは

相続税とは
相続税は遺産を相続する人に課される税金で、遺産の金額をもとに税額を計算します。
ただし、相続人すべてに相続税が課されるわけではなく、遺産額が少ない場合などには相続税はかかりません。
これは、遺産は遺族の生活を支える大切な財産であり、遺族のことを考えて一定の配慮をすべきだからです。
遺産額がいくらから相続税がかかるのかはケースによって異なり、相続人が何人いるのかなどによって変ってきます。

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相続税はいくらからかかる?

相続税はいくらからかかる?
相続税は一体いくらからかかるのかを考える際、ポイントになるのが「相続税の基礎控除」です。
ここでは、相続税の計算方法や基礎控除額の求め方について解説します。

遺産額が基礎控除額以下であれば相続税はかからない

相続税の計算や申告は税理士に依頼することが一般的なので、具体的な計算方法を覚える必要はかならずしもありません。
ただ、相続税の大まかな仕組みを理解しておけば、そもそも相続税がかかるのかどうかを判断できるようになります。
そのため、相続税を計算するときの流れだけでも理解しておいたほうが良いでしょう。
相続税は相続する遺産額をもとに計算し、次のような手順で税額を計算します。

相続税の計算方法
  1. 遺産額の計算:相続税の課税対象となる遺産額を計算
  2. 課税遺産総額の計算:遺産額から基礎控除額を控除
  3. 相続税の総額の計算:各自が法定相続分に基づいて相続した場合の相続税額を計算して合計
  4. 各自の相続税額の計算:相続税の総額を各自の実際の相続割合に基づいて按分し、税額控除を適用して各自の相続税額を計算
遺産額から基礎控除額を引いた上で税率をかけるので、そもそも遺産額が基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。
つまり、いくらの遺産額から相続税がかかるのかを判断する際、基準になるのが「相続税の基礎控除額」です。

基礎控除額は少なくとも3,600万円

相続税の基礎控除額は次の計算式で求められます。

  • 相続税の基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円×(法定相続人の数)
相続人の数はケースによって異なりますが、基礎控除額は少なくとも3,600万円であり、遺産額が3,600万円以下であれば相続税はかかりません。
相続人が1人であれば3,600万円、2人であれば4,200万円、3人であれば4,800万円と、基礎控除額は相続人の数が多いほど金額が大きくなります。

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遺産額が基礎控除額を超えるケース

遺産額が基礎控除額を超える場合
さきほど解説したように、遺産額が基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。
それでは、逆に遺産額が基礎控除額を超える場合はどうなるのでしょうか?

相続税がかかる場合とかからない場合がある

「遺産額が基礎控除額以下であれば相続税がかからない」ということは、「遺産額が基礎控除額を超えると相続税がかかる」ということを意味するわけではありません。
遺産額が基礎控除額を超えるケースでは、相続税がかかる場合とかからない場合があります。
遺産額がいくらから相続税がかかるのかはケースごとに異なり、相続税の申告や納税の義務が生じるかどうかはケースごとに判断が必要です。

控除や特例を適用できると相続税がかからない場合がある

遺産額が基礎控除額を超えて、控除や特例を一切使えないケースであれば基本的に相続税がかかり、手続き期限までに申告や納税をしなければなりません。
一方で、相続税の計算では、税負担の軽減につながるさまざまな控除制度や特例制度が用意されているため、これらの制度を適用できると相続税がかからない場合があります。
例えば、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用できるケースや、障害者控除や未成年者控除などの控除を適用できるケースです。

相続税の控除制度や特例制度
  • 配偶者の税額軽減:配偶者が遺産を相続する場合、遺産のうち1億6千万円まで相続税がかからない
  • 小規模宅地等の特例:一定の要件を満たす土地を相続する場合、土地の価格を最大80%減額してから相続税を計算できる
  • 障害者控除:一定の要件を満たす障害者が相続人の場合、85歳になるまでの年齢に応じて求めた控除額を相続税から差し引ける
  • 未成年者控除:一定の要件を満たす未成年者が相続人の場合、20歳になるまでの年齢に応じて求めた控除額を相続税から差し引ける
  • 死亡保険金の非課税枠:相続人が死亡保険金を受け取る場合、一定額まで相続税がかからない
それぞれの制度を適用できるケースについて、次の章で詳しく解説します。

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相続税がいくらからかかるのかケース別に解説

相続税がいくらからかかるのかケース別に解説
相続する遺産額が基礎控除額以下であれば相続税はかかりません。
しかし、ケースによっては基礎控除額を超える遺産を相続しても相続税がかからない場合があります。
たとえば次のようなケースです。

  • 配偶者が相続人の場合
  • 相続人が障害者の場合
  • 相続人が未成年者の場合
  • 不動産の相続で小規模宅地等の特例を適用できる場合
  • 遺産に死亡保険金が含まれる場合
一体いくら遺産を相続すると相続税がかかるのかはケースごとに異なるので、以下ではそれぞれのケースについて解説していきます。

配偶者が相続人の場合

配偶者の税額軽減とは、亡くなった方の配偶者が遺産を相続する場合、次の金額のどちらか多い額までは相続税がかからない制度です。

  • 1億6千万円
  • 配偶者の法定相続分
つまり、配偶者が遺産を相続する場合、少なくとも1億6千万円の遺産まで相続税はかかりません。
また、法定相続分とは、各相続人がどれだけの遺産を相続するのか目安になる割合で、法律で規定された割合を遺産額にかけて求めます。
配偶者の法定相続分
  • 配偶者と子が相続人の場合:2分の1
  • 配偶者と親が相続人の場合:3分の2
  • 配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合:4分の3
そのため、例えば遺産額が4億円で配偶者と子が相続人の場合は、配偶者の法定相続分は遺産額4億円に法定相続割合2分の1をかけた2億円と計算できます。
配偶者の税額軽減を適用すれば、1億6千万円と法定相続分のうち多い額まで相続税がかからないので、この場合は2億円の遺産まで配偶者には相続税がかからないということです。

相続人が障害者の場合

相続税の障害者控除とは、相続人が85歳未満の障害者であるときに、相続税の税額から一定の金額を控除できて税負担を軽減できる制度です。
遺産額や基礎控除額などをもとに各相続人の相続税額を計算した後、障害者控除の適用を受けられる人に関しては、さらに障害者控除額を差し引くことができます。
控除額は、その障害者が満85歳になるまでの年数1年につき10万円をかけた金額で、特別障害者の場合は年数に20万円をかけた金額です。
例えば、遺産を相続するとき、満85歳になるまでの年数が15年ある場合、特別障害者の方が遺産を相続するのであれば障害者控除額は、15年に20万円をかけた300万円と計算できます。
つまり、遺産額が基礎控除額を超えて各相続人に相続税がかかる場合でも、この障害者控除の適用を受けられる人に関しては、求めた税額が300万円以下であれば相続税はかかりません。
遺産額が基礎控除額を超える場合でも、障害者控除を使えれば相続税がかからない場合があるということです。

相続人が未成年者の場合

相続税の未成年者控除とは、相続人が未成年者であるときに、相続税の税額から一定の金額を控除できて税負担を軽減できる制度です。
遺産額や基礎控除額などをもとに各相続人の相続税額を計算した後、未成年者控除の適用を受けられる人に関しては、さらに未成年者控除額を差し引くことができます。
控除額は、その未成年者が満20歳になるまでの年数1年につき10万円をかけた金額です。
遺産額が基礎控除額を超えて各相続人に相続税がかかる場合でも、この未成年者控除の適用を受けられる人に関しては、求めた税額が未成年者控除額以下であれば相続税はかかりません。
遺産額が基礎控除額を超える場合でも、未成年者控除を使えれば相続税がかからない場合があるということです。

不動産の相続で小規模宅地等の特例を適用できる場合

小規模宅地等の特例とは、亡くなった方が居住用や事業用に使っていた土地などを相続した場合に、一定の要件を満たすと土地の価格を最大80%減額してから相続税を計算できる制度です。
要件が細かく決まっているため、特例を利用できるかどうかはケースごとに確認が必要ですが、実際に使えると大きな節税効果が得られます。

例えば、遺産が現金2,000万円と土地5,000万円で、相続人が1人のケースを考えてみましょう。
この場合、もしも小規模宅地等の特例を適用できないと、遺産額7,000万円に課税され、基礎控除額3,600万円を超えるため相続税がかかります。
しかし、特例を適用できて土地の価格を80%減額できる場合は、80%減額後の価格1,000万円と現金2,000万円を合わせた3,000万円に課税され、基礎控除額3,600以下なので相続税はかかりません。

相続人が死亡保険金を受け取る場合

亡くなった方が保険料を負担していた保険契約に基づき相続人が死亡保険金を受け取る場合、次の金額の保険金まで相続税がかかりません。

  • 死亡保険金の非課税上限額 = 500万円 × 法定相続人の数
例えば、相続人が1人のケースで、その相続人が遺産である現金3,000万円と死亡保険金800万円を受け取る場合を考えてみましょう。
この場合、現金と死亡保険金の合計額は3,800万円で基礎控除額3,600万円を超えています。
しかし、死亡保険金800万円のうち500万円までは相続税がかかりません。
そのため、相続税の課税対象になるのは3,300万円で、この金額は基礎控除額以下なので相続税がかからずに済みます。

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相続税がかかる場合は申告が必要

相続税がかかる場合は申告が必要
遺産の総額が基礎控除額を超えて相続税がかかる場合、申告と納税の手続きをする必要があります。
また、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用することで相続税がかからずに済む場合も、特例の適用を申請するために申告の手続きをしなければなりません。

相続税の申告期限は10ヶ月

相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月後です。
そのため、家族が亡くなり相続が開始したら、相続税の計算の基礎となる遺産額の確認などを行い、相続税を計算して申告書を作成して10ヶ月以内に税務署に提出しなければなりません。
相続税の申告期限については、こちらの記事で詳しく解説しています。

申告先は亡くなった人の最後の住所地の税務署

相続税の申告手続きは、亡くなった人の最後の住所地の税務署に対して行います。
相続税の申告書に必要書類を添付して、10ヶ月以内に提出しましょう。
ただし、相続税の計算や申告書の作成は、専門知識のない一般の人には難しいため、相続税に強い税理士に依頼することが一般的です。
そのため、相続が開始したら、遺産額が基礎控除額を超えて相続税がかかりそうであれば、早めに税理士に相談すると良いでしょう。
そもそも相続税がかかるのか、申告が必要なのかどうかよくわからない場合も早めに相談することをおすすめします。

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まとめ

遺産を相続する場合、相続税がいくらからかかるのかはケースによって異なりますが、少なくとも3,600万円の遺産までは相続税がかかりません。
遺産の総額が基礎控除額以下であれば相続税はかからず、配偶者が遺産を相続するのであれば少なくとも1億6千万円の遺産まで相続税がかからずに済みます。
相続税がかからなければ基本的に申告は不要ですが、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用して税額がゼロになる場合は、申告が必要になるため注意が必要です。
相続税の申告期限は10ヶ月と決まっているので、申告や納税が必要な場合には期限までに手続きを終えるようにしてください。

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牛腸真司
税理士
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。