【2021】養子縁組と相続の関係は?相続税対策に有利?メリット・デメリットと注意点

養子 縁組 相続 生前対策
この記事を監修した専門家は、

相続に備えるための生前対策にはさまざまな方法がありますが、養子縁組を活用した相続対策もその一つです。

養子縁組をうまく活用することで、相続税の軽減や相続トラブルの回避につながる場合があります。

ただし、相続対策としての養子縁組にはデメリットもあるため、実際に養子縁組の手続きをするかどうかは慎重に検討しなければなりません。

この記事では、養子縁組と相続の関係について、メリットやデメリット、注意点を解説します。

養子縁組とは

養子縁組とは

養子縁組とは、血縁関係とは別に法的に親子関係を認める制度です。

養子縁組によって親になった人が養親、子になった人が養子で、養親と養子の間には法律上の親子関係が成立します。

養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があり、一般的に相続対策として用いられるのは普通養子縁組です。

養子縁組の種類
  • 普通養子縁組:家系を存続させるためや家の跡継ぎを設けるための制度
  • 特別養子縁組:子供の福祉を目的とした制度

普通養子縁組

普通養子縁組は、市区町村役場で届出をすることで縁組が成立します(未成年者を養子にする場合は家庭裁判所の許可が必要)。

一般的に相続対策として活用される養子縁組とは普通養子縁組のことで、特別養子縁組と違って養子になれる人の年齢に制限はありません。

普通養子縁組によって養子になった人の戸籍には養子や養女と記載されます。

特別養子縁組

特別養子縁組は、何らかの事情があって生みの親が育てられない場合などに行われる養子縁組です。

子どもの福祉を目的とした制度であり、養子縁組をできる人の条件や必要な手続きが普通養子縁組よりも細かく決まっています。

具体的には、養親になれる人は原則25歳以上、養子になれる人は原則15歳未満の人で、特別養子縁組をするためには家庭裁判所に申立てをしなければいけません。

特別養子縁組によって養子になった人は、実の親との間に法的な親子関係はなくなり、戸籍には養親の子として長男や長女と記載されます。

養子縁組と遺産相続の関係

養子縁組と遺産相続の関係

家族が亡くなって相続が開始したとき、誰が相続人として遺産を相続するのか、相続人になる人の順位や範囲が法律で決められています。

配偶者は常に相続人になりますが、子・親・兄弟姉妹の間では相続人になる順位が決まっており、子が第一順位、親が第二順位、兄弟姉妹が第三順位です。

相続人になる人の順位
  • 常に相続人になる人:配偶者
  • 第一順位:子などの直系卑属
  • 第二順位:親などの直系尊属
  • 第三順位:兄弟姉妹

養子にも遺産を相続する権利があるため、生前に養子縁組をしていると、実際に相続が起きたときの遺産相続の権利関係が変わることになります。

養子は実子と同じく第一順位の法定相続人になる

子・親・兄弟姉妹の中で相続人になる順位が最も高いのが子で、この子には実子だけでなく養子も含まれます。

つまり、実子なのか養子なのかによって相続人になる順位に違いはありません。

養子縁組によって養子になった人は、実子と同じく第一順位の法定相続人として亡くなった方の遺産を相続します。

養子と実子の法定相続分は同じ

どの相続人がどれだけの遺産を相続するのか、相続する遺産の割合の目安として法定相続分というものが法律で定められています。

たとえば、配偶者と子が相続人になる場合は、法定相続分は配偶者が2分の1、子が2分の1です。

そして、養子でも実子でも法定相続分は同じなので違いはなく、養子にも実子と同じだけの割合の遺産を相続する権利が認められています。

実親と養子の関係は養子縁組の種類により異なる

養子縁組をすれば養親と養子の間に法的な親子関係が成立しますが、実親と養子の関係については、普通養子縁組と特別養子縁組で違いが生じます。

  • 普通養子縁組:実親と養子の法的な親子関係は維持されるので、実親が亡くなった場合に養子は相続人になる
  • 特別養子縁組:実親と養子の法的な親子関係はなくなるので、実親が亡くなった場合に養子は相続人にならない

相続対策として使われる養子縁組は、特別養子縁組ではなく一般的に普通養子縁組です。

そのため、相続対策として養子縁組を行う場合は一般的に、養子縁組で親になった人(養親)が亡くなった場合も、元の親(実親)が亡くなった場合も、養子は遺産の相続権を持つことになります。

養子縁組と代襲相続の関係

養子縁組と代襲相続の関係

代襲相続とは、ある人が亡くなって相続が開始したとき、本来相続人になる人が既に亡くなっており、代わりにその子が相続人になって遺産を相続することです。

たとえば、本来の相続人が子のケースで、相続開始時点で親よりも先に子が亡くなっていた場合、その子である孫がいれば孫が代襲相続人になります。

そして、本来の相続人である子が実子の場合でも養子の場合でも、代襲相続の規定が適用される点では基本的に同じです。

しかし、本来の相続人が養子の場合、養子の子が生まれた時期によっては、養子の子は相続人にならないケースがあります。

養子縁組後に生まれた子は代襲相続人になる

養子縁組をした後に生まれた養子の子は、代襲相続人になり遺産を相続できます。

養子縁組によって養親と養子の間に法的な親子関係が生まれ、法的な親子関係がある人の間に生まれた養子の子についても、遺産の相続権を法的に認めるべきだからです。

養子縁組前に生まれた子は代襲相続人にならない

養子縁組をする前に生まれた養子の子は、代襲相続人にはならず遺産の相続権はありません。

養子縁組をする前に養親と養子の間には法的な親子関係はないのは当然で、その養子の子との間にも当然家族関係はありません。

そのため、たとえ、養親と養子が養子縁組をしたとしても、遺産の相続権が与えられるのはあくまでも養子だけであって、養子の子は対象外になるからです。

ただし、養子が、亡くなった方(被相続人)の直系卑属にあたる場合は、その養子の子は、養子縁組前に生まれていたとしても、代襲相続人になり遺産を相続できます。

養子縁組と相続税の関係

養子縁組と相続税の関係

相続税の税額は、遺産の総額から基礎控除額を差し引き、税率をかけて計算します。

詳しい計算方法はこちらの記事で解説していますが、相続税の税額を求めるときの計算方法は、実子でも養子でも基本的には同じです。

ただし、養子と実子では相続税の計算において取扱いが異なる点もあり、具体的には次のような点が挙げられます。

養子に関する相続税計算のポイント
  • 相続税の計算に含められる養子の数に制限がある
  • 孫養子の場合は相続税が2割加算される

相続税の計算に含める養子の数には制限がある

相続税を計算する際、次の金額は相続人の数を使って計算します。

  • 基礎控除額
  • 死亡保険金の非課税限度額
  • 死亡退職金の非課税限度額

上記の金額を計算する際、計算に含められる養子の数に一定の制限が設けられています。

基礎控除額

相続税の基礎控除額とは次の式で求めた金額で、遺産の総額が基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。

相続税の基礎控除額の計算式
  • 相続税の基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円×(法定相続人の数)

養子縁組をして養子になった人がいれば、その人は法定相続人にあたるので上記の計算式の「法定相続人の数」に含まれることになります。

しかし、「法定相続人の数」に含められる養子の数には制限があり、次の人数までしか含めることができません。

養子の数の上限
  • 被相続人に実子がいる場合:1人まで
  • 被相続人に実子がいない場合:2人まで

これは、相続税の軽減だけを目的とした養子縁組を防ぐために設けられている制限です。

仮にこの制限がなくて養子を何人でも計算に含められるとすると、養子縁組を行えば基礎控除額をいくらでも引き上げることができてしまい、誰でも簡単に相続税を回避できてしまいます。

養子縁組をした人としていない人で税負担に著しい差が生じてしまい、課税の公平性という点でも問題です。

そのため、基礎控除額の計算で含められる養子の人数は1人または2人までに制限されています。

死亡保険金の非課税限度額

亡くなった方が保険料を負担していた保険契約に基づいて死亡保険金を受け取ると、実質的に相続によって得た財産と見なされて相続税の課税対象になります。

ただし、死亡保険金を受け取るのが相続人の場合には、以下の金額までは相続税がかかりません。

死亡保険金の非課税限度額
  • 死亡保険金の非課税限度額 = 500万円×(法定相続人の数)

そして、基礎控除額の計算と同じく、課税の公平性を保つために「法定相続人の数」に含められる養子の数には制限があります。

計算に含められる養子の数は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです。

死亡退職金の非課税限度額

亡くなった方(被相続人)に支給されるはずだった退職金を、その人の死亡に伴って家族などが受け取ると、実質的に相続によって得た財産と見なされて原則として相続税の課税対象になります。

ただし、死亡退職金を受け取るのが相続人の場合には、以下の金額までは相続税がかかりません。

死亡退職金の非課税限度額
  • 死亡退職金の非課税限度額 = 500万円×(法定相続人の数)

そして、基礎控除額や死亡保険金の非課税限度額の計算と同じく、課税の公平性を保つために「法定相続人の数」に含められる養子の数には制限があります。

計算に含められる養子の数は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです。

孫養子の相続税は2割加算される

亡くなった方(被相続人)の「一親等の血族および配偶者」以外の人が遺産を取得すると、相続税の税額が2割加算されることになっています。

一親等の血族とは亡くなった方の子や親のことで、故人の子・親・配偶者が遺産を相続する場合は2割加算の規定の適用はありません。

そして、養子縁組によって養子になった人は子にあたるため、原則として2割加算の適用はありませんが、孫を養子にした場合は取扱いが異なるため注意が必要です。

孫を養子にした場合は、その孫が代襲相続人として相続権を取得する場合を除いて、2割加算の対象になります。

そのため、たとえば甥や姪を養子にすると2割加算の対象にならずに済みますが、孫を養子にする場合は基本的に2割加算の対象になってしまい、加算を回避して相続税を節税することはできません。

相続対策として養子縁組を行うメリット

相続対策として養子縁組を行うメリット

養子縁組を相続対策として活用する場合、主なメリットとしては次のような点が挙げられます。

相続対策として養子縁組を行うメリット
  • 養子に遺産を相続させることができる
  • 相続税を節税できる場合がある
  • 孫を養子にすれば課税回数を1回減らせる

養子に遺産を相続させることができる

養子縁組のメリットの1つ目は、養子にすればその人に自分の財産を相続させることができる点です。

たとえば、再婚相手の連れ子を養子にして遺産を相続できるようにするケースや、事業経営を行っている人が後を継がせるために婿養子を取るケースなどが挙げられます。

再婚相手の連れ子には相続権がなく、相続対策を何もしなければ遺産を相続させることができませんが、養子にすれば遺産を相続できて自分の死後に生活に困る心配などがなくなるため安心です。

また、事業を継がせたい人を養子にすれば、事業資産などを養子が相続できるようになり後継問題を解決できる場合があります。

相続税を節税できる場合がある

養子縁組をすることで相続人の数が増える場合には、相続税の基礎控除額が増えて節税になる場合があります。

実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで、養子の数を基礎控除額の計算に含めることができ、相続人の数が1人増えれば600万円、2人増えれば1,200万円も基礎控除額が増える計算です。

養子縁組をしない場合に比べて、相続税がかからずに済む遺産額が600万円分や1,200万円分だけ増えることになり、死亡保険金や死亡退職金の非課税限度額も高くなって節税になる場合があります。

孫を養子にすれば課税回数を1回減らせる

通常は親から子、子から孫へと遺産が受け継がれるため、親から孫に財産が渡るまでには相続税の課税機会が2回生じます。

しかし、孫を養子にして親から孫に直接財産を相続させるようにすれば、相続税の課税機会が1回に減って節税になる場合がある点がメリットです。

既に解説したように、孫を養子にした場合は2割加算の回避は原則としてできませんが、相続税の課税回数を減らせるという点では、節税対策として養子縁組が役立ちます。

相続対策として養子縁組を行うデメリット

相続対策として養子縁組を行うデメリット

養子縁組を相続対策として活用する場合、主なデメリットとしては次のような点が挙げられます。

相続対策として養子縁組を行うデメリット
  • 相続トラブルが起きることがある
  • 相続税が増えることがある

相続トラブルが起きることがある

養子縁組をすれば養子が相続人になりますが、ケースによっては他の人が相続人ではなくなったり、他の相続人の法定相続分が減ったりすることがあります。

養子縁組によって相続権を失う人や法定相続分が減って遺産の取り分が減る人が不満を抱くケースがあり、養子縁組が相続トラブルの原因になることがある点には注意が必要です。

相続対策として行った養子縁組が逆に相続問題を引き起こす原因になっては元も子もないので、養子縁組をする際には慎重に検討を行うようにしてください。

相続税が増えることがある

たとえば、配偶者と両親の計3人が相続人の場合、基礎控除額は4,800万円であり、この金額までの遺産には相続税はかかりません。

しかし、生前に養子縁組をすると配偶者と養子の計2人が相続人になるため、基礎控除額は4,200万円に減ってしまいます。

このように、養子縁組をすると相続税がむしろ増えることがある点がデメリットの一つです。

仮にこの事例で遺産額が4,500万円だった場合、養子縁組をしていなければ4,800万円以下なので相続税はかかりませんが、養子縁組をすると4,200万円を超えるため相続税がかかります。

相続対策として養子縁組を活用するときの注意点

相続対策として養子縁組を活用するときの注意点

最後に、相続対策として養子縁組を活用するときのその他の注意点について確認しておきましょう。

相続対策として養子縁組を活用するときの注意点
  • 養子縁組が否認される場合がある
  • 養子縁組は簡単に解消できない

養子縁組が否認される場合がある

相続税法では、相続税の負担を不当に減少させる結果となる場合には、税務署は養子の数を相続税の計算で法定相続人の数に含めずに税額を計算できることとされています。

最高裁の判例では「相続税の節税目的の養子縁組であっても直ちに無効になるわけではない」とされていますが、節税だけを目的に縁組を行うと否認される可能性がある点には注意が必要です。

養子縁組は簡単に解消できない

特別養子縁組は原則として解消ができず、普通養子縁組は一定の手続きを踏めば解消できます。

しかし、普通養子縁組であっても、縁組後に簡単に解消できるわけではありません。

仮に縁組後に何かトラブルや問題が生じて養子縁組を解消したい場合、解消できず相続対策として養子縁組を行ったことを後悔する可能性もあります。

本当に縁組をするのかどうかは、しっかりと検討を行った上で決めるようにしてください。

まとめ

養子縁組を相続対策として活用すれば、養子に遺産を相続させることができて相続税の節税対策としても役立つ場合があります。

養子には実子と同じく遺産の相続権が法律で認められているため、養子でも実子でも法定相続人としての順位や法定相続分は変わりません。

ただし、養子の子に関しては代襲相続人になれないケースがあり、相続税の計算に含められる養子の人数には一定の制限がある点には注意してください。

養子縁組をすると逆に相続税が増える場合や相続トラブルの原因になる場合があるので、相続対策として養子縁組を行う場合には、弁護士や税理士など相続の専門家に相談したほうが良いでしょう。

この記事を監修した専門家は、