寄与分とは?貢献度の計算方法と認められる3つの条件

その他
この記事を監修した専門家は、
牛腸真司
税理士
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。

 

1.寄与分とは

寄与分とは「生前に被相続人対して特別な貢献をしていた場合、遺産分割でそれ(貢献していたこと)が考慮され、より多く財産を受け取ることができる」という制度です。
遺言書がない場合、相続人同士で遺産分割協議を開き、法定相続分に従って、それぞれの相続分を決めますが、相続人の中で、被相続人に対して生前、特別な貢献をしていた人が居る場合、他の相続人と同じように財産を相続するのは不公平な扱いとなる場合があります。
その不公平さをなくすため、民法第904条の2では一定条件を満たす人に寄与分が認められています。

寄与分 第904条の2
共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持または増加につき特別の寄与をした者
(引用:民法第904条2項)

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2.寄与分が認められる3つの条件

また、民法で寄与分が認められるには、以下の3つの条件があります。

  1. 共同相続人よる寄与行為であること
  2. 特別の寄与であること
  3. 寄与行為により、被相続人の財産の維持又は増加があること

1つずつ解説していきます。

共同相続人よる寄与行為

寄与分は共同相続人に認められます。
これは「生前に被相続人対して特別な貢献をしていたら誰でも寄与分が認められる、という訳ではない」ということを説明しています。
例えば、被相続人の仕事を手伝っていた部下、献身的に介護した介護士、または知人などが居ても他人には寄与分は認められていません。
ここで注意すべきは「相続人の配偶者」です。
被相続人の介護や世話などを、息子や娘の配偶者(=相続人の配偶者)が行なう家庭も少なくはないですが、相続人の配偶者はあくまでも他人で、相続人にはならないため、寄与分は認められません。注意しましょう。
注:2018年7月6日民法改正があり、民法1050条により相続人ではない親族が無償の療養看護や労務の提供をした場合に,特別寄与者として相続人に金銭の支払を請求できるようにすることとなりました。2019年7月12日までに施行されることとなっています。

特別の寄与

寄与分が認められるには特別の寄与かどうかが重要なポイントとなります。
「特別の寄与」とは何を指すのでしょうか?
指標として以下が挙げられます。
● 無償性
● 継続性
● 専従性
つまり逆を言うと、特別な貢献をしていたとしても、有償で行なっていたり、それが単発的なものだったり、また被相続人だけでなく色んな人の介護をしていたりすると、寄与分は認められません。
線引きが少し曖昧で難しいですが、分かりやすく言うと「親に生活費の仕送りをしている」「週に1度介護をしに行ってる」など”通常の貢献”であれば寄与分は認められず、寄与分が認められるには「親の世話をするために会社を休職した」「住み着きで介護をしている」などの”特別な貢献”が必要になります。

被相続人の財産が維持又は増加

寄与分が認められるには、寄与行為によって、被相続人の財産の維持又は、増加の必要があります。
具体的には、以下の5つの型に分けられます。
1.家事従事型
● 無償で被相続人の事業に従事して、相続人の財産増加に寄与したケース
● 主に農業や商工業が典型ですが、医師、弁護士、司法書士、公認会計士、税理士などの業務を含まれます
● 事業の従事に対応する報酬を受け取っていた場合はこれに該当しません
2.金銭等出資型
● 被相続人に対して、相続人がお金を提供したケース
● 「共働きの夫婦で、生前に被相続人の夫名義で不動産を買った際、相続人の妻もお金を出資した」など
3.療養看護型
● 相続人が被相続人の療養看護を行い、付き添い看護などの費用を免れ、相続財産の維持に寄与したケース
● 仕事の休みに通院を手伝うレベルの介護ではなく、仕事を辞めて介護に従事するなど、通常期待される以上の貢献度が必要
4.扶養型
● 相続人が被相続人の生活費などの生活の面倒をみることによって、相続財産の維持に寄与するケース
● 夫婦や兄弟の場合は相互扶助の義務があるため、通常期待される以上の特別な寄与がないと認められるのは難しい
5.財産管理型
● 被相続人の財産を管理し、財産の増加や維持に貢献した場合
● たとえば被相続人所有の土地の売却の際の手続きを相続人が行い、仲介会社に頼む費用が免れたり、土地の売却金額を増加させた場合が該当

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3.他の相続人への説明が必要

寄与分は自分が主張しなかった場合、それが遺産分割協議で考慮されることはありません。
寄与分が考えられる場合は、自分で資料を作成し書面で裁判所と相手の相続人に主張しなければなりません。
寄与分は、他の相続人の相続財産を減らすことになるので、他の相続人が認めない可能性もあります。
そのため、遺産分割協議で寄与分を認めてもらいやすくするためには、労務の提供や財産の給付、療養介護を客観的に証明できるものが必要となります。
客観的な証明とは何を指すのか、具体的なケースに沿って説明します。

家業にほぼ無償で従事していた場合

タイムカードなどで勤怠の記録をとっていればわかりやすいですが、無償で家業を手伝っていたケースでは記録がないことが多いと思います。
その場合、仕事で利用したメール、店舗型の商売などであれば近所の人から証言、などが客観的な証明として有効となります。

献身的に介護に従事していた場合

まず、診断書、カルテ、介護認定、介護ヘルパーの利用明細など被相続人の介護度(=どれくらい介護をしていたか)が分かるものを用意しましょう。
また、介護の期間、一日の介護時間、内容がわかるように、介護日記を付けるのも良いでしょう。

金銭を付与した場合

銀行の預金通帳の写しや、振込履歴の提示ができるといいでしょう。

“寄与分は遺言によって定めることは原則できない!”
ここまで話すと「遺言書で被相続人に寄与分について明記してもらう」ことで他の相続人にも理解して貰いやすいと考える人が居るかもしれません。が、寄与分は遺言書によって定めることは原則としてできません。寄与分は遺産分割協議または、家庭裁判所によって定めることとされているため、たとえ遺言書に「寄与分を与えない」「寄与分として遺産3割を与える」等の記載は無効となります。
※遺言書の内容によっては寄与分を認める際の参考資料となる可能性もありますので、詳しくは確認が必要
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4.「貢献度」をどうやって金額算出するのか?

それでは具体的にどのようにして寄与分額が決まるのでしょうか。
寄与分の算定方法としては、生活資金の仕送りのように「金銭の移動」が伴う貢献であれば、その金額に応じて判断できますが、介護など定性的な貢献については、家庭裁判所の裁量に委ねられている部分が大きいため、以下で紹介するのはあくまでも目安となる事をご承知下さい。
寄与分の評価方法は上記でご紹介した5つの寄与の種類によって異なります。

家庭従事型

寄与分額=寄与相続人の受けるべき相続開始時の年間給付額×(1-生活費控除割合)×寄与年数

金銭等出資型

① 妻の夫に対する不動産取得の為の金銭贈与
寄与分額=相続開始時の不動産額×(妻の出資金額/取得当時の不動産額)
② 不動産の贈与
寄与分額=相続開始時の不動産額×裁量的割合
③ 不動産の使用貸権
寄与分額=相続開始時の賃料相当額×使用年数×裁量的割合
④ 子の親に対する金銭贈与
寄与分=贈与当時の金額×貨幣価値変動率×裁量的割合

療養看護型

① 療養看護
寄与分額=付添日当額×日数×裁量的割合
② 費用負担
寄与分額=負担費用額

扶養型

寄与分額=負担扶養量×期間×(1-寄与相続人の法廷相続分割合)

財産管理型

① 不動産の賃貸管理、占有者の排除、売買契約締結についての関与
寄与分額= (第三者に委任した場合の報酬額) × (裁量的割合)
② 火災保険料、修繕費、不動産の公租公課の負担
寄与分額=現実に負担した額

相続分の計算

寄与分が認められた場合、相続分はどのように決まるかというと、相続財産から寄与分総額を控除した額で法定相続分によって配分します。
◆ ケーススタディ
被相続人:A
相続人:B、C、D
相続財産:1億2000万円
法定相続分通りに分けるとB,C,Dには4000万円ずつ相続します。
しかし、BがAの事業を手伝っていた貢献が認められ、寄与分として3000万円が認められたとなると、1億2000万円の相続財産から3000万円が控除され、9000万円が相続財産の合計となります。
これを法定相続分に従い、B、C、Dには3000万円ずつ分配され、Bは寄与分の3000万円が加算されます。
すなわち、このケースではBが6000万円、C,Dが3000万円ずつを相続することとなります。

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まとめ

今回は、寄与分についてご紹介致しました。
寄与分は行使できるのであれば、自分から主張すべき制度ですが、相続人間の相続額に差が生じるので、親族間での揉め事だけには発展しないように注意しましょう。

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