【2024】準確定申告とは?申告期限・必要書類・不要なケース・しないとどうなるか

準確定申告手続き
この記事を監修した専門家は、
呉村成信
司法書士
2016年、司法書士試験合格。東京司法書士会所属。都内の司法書士事務所にて不動産登記を中心に登記業務全般に携わる。その後独立し、2019年、そうぞくドットコム不動産の立ち上げ期から参画し、プロダクトアドバイザーに就任。

準確定申告は、家族が亡くなり相続が開始した後、相続人が行う手続きの一つです。

亡くなった人に確定申告の義務が生じていた場合には、相続人が代わりに申告をする準確定申告を行います。

準確定申告の手続き期限は決まっているため、確定申告書や付表などの必要書類をそろえて、期限までに手続きを終えなければなりません。

この記事では、準確定申告とは何か、手続き方法や必要書類について紹介します。

申告をするときに間違えやすい所得控除についても解説するので、準確定申告でポイントになる点を押さえて正しく申告できるようにしましょう。

準確定申告とは

準確定申告とは

確定申告は、1月1日から12月31日までの1年間の所得額をもとに所得税を計算して、国に申告する手続きです。

確定申告は必要な場合と不要な場合があり、必要な場合には原則として本人が手続きを行います。

しかし、本人が亡くなっている場合には、当然のことながら本人では手続きができません。

そこで、このような場合には、亡くなった人に代わって相続人が確定申告を行います。

亡くなった人の確定申告は相続人が行う

亡くなった人の1月1日から死亡日までの所得額をもとに所得税を計算して、その人の代わりに相続人が申告するのが準確定申告です。

死亡したことをもって、その人の確定申告の義務や所得税の納税が免除されるわけではなく、相続人が申告や納税をしなければなりません。

相続人になる人が2人以上いる場合は、連署により準確定申告書を提出します。

また、他の相続人の氏名を付記して各人が別々に提出することもできますが、この場合は他の相続人に申告した内容を通知しなければなりません。

準確定申告の期限は4ヶ月

準確定申告の手続き期限は、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月です。

亡くなったことを死亡した当日に知ったのであれば、その翌日から4ヶ月以内に申告や納税をしなければなりません。

ただし、そもそも準確定申告が不要な場合があるので、相続が開始したらまずは準確定申告をしなければならないのか、この点を確認する必要があります。

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準確定申告が必要な場合・不要な場合

準確定申告が必要な場合・不要な場合

準確定申告が必要になる人の要件は、一般的な確定申告の要件と基本的に同じです。

以下はあくまで一例ですが、例えば次のケースでは準確定申告が必要になります。

準確定申告が必要な場合
  • 亡くなった人が会社員や公務員で、副業による所得が20万円を超える場合
  • 亡くなった人の公的年金による収入金額が400万円を超える場合
  • 亡くなった人が個人事業主で、所得額が所得控除額を超えて納付すべき所得税がある場合

逆に、例えば次のようなケースでは準確定申告は不要です。

準確定申告が不要な場合
  • 亡くなった人にそもそも所得がない場合
  • 亡くなった人の所得が年金のみで、公的年金等の収入金額が400万円以下で所得税が源泉徴収されている場合

会社員や公務員の場合

会社員や公務員などの給与所得者の場合、一般的に次のケースでは確定申告の義務が生じます。

亡くなった方が給与所得者で以下の条件に該当するのであれば、相続人が準確定申告をしなければなりません。

準確定申告が必要な場合
  • 給与の収入金額が2,000万円を超える場合
  • 給与を1箇所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合に、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超える場合
  • 給与を2箇所以上から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合に、年末調整をされなかった給与の収入金額と、給与所得・退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える場合

逆に、例えば亡くなった人が給与を1箇所から受けていて、副業による所得がない場合や副業所得が20万円以下の場合は、準確定申告は不要です。

なお、準確定申告で計算に含める所得額とは、死亡時点で支給期が既に到来している給料です。

死亡後に支給期が到来する給料については、相続財産となるため所得税の課税対象にはなりません。

年金受給者の場合

年金受給者は、次のいずれの条件にも該当する場合、確定申告が不要です。

亡くなった人が年金受給者で、いずれの条件も満たす場合は、相続人が準確定申告を行う必要はありません。

準確定申告が不要な場合
  • 公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下で、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となっている
  • 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である

逆に、例えば公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円を超える場合には、準確定申告をする必要があります。

個人事業主の場合

個人事業主の場合は、適用を受ける所得控除の種類等にもよりますが、基礎控除額48万円を超える所得がある場合には、多くのケースで確定申告が必要になります。

亡くなった人が事業を経営するなど個人事業主だった場合には、まずは1月1日から死亡日までの所得額を確認し、所得税がかかるのかを確認しましょう。

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準確定申告の義務がなくても申告したほうが良い場合

準確定申告の義務がなくても申告したほうが良い場合

準確定申告をする法的な義務はなくても、あえて申告をしたほうが良い場合があります。

それは、準確定申告をすると払い過ぎた税金の払戻しを受けられるケースです。

例えば、次のようなケースでは、準確定申告をすれば還付金を受け取れる可能性があります。

義務がなくても準確定申告をしたほうが良い場合
  • 亡くなった人が年の途中で退職して年末調整を受けていない場合
  • 亡くなった年に医療費を支払っていて、医療費控除の適用を受けられる場合
  • 亡くなった人が青色申告の承認を受けていて、純損失の繰戻しができる場合

まず、亡くなった人が年の途中で会社を退職して年末調整を受けていない場合、源泉徴収によって税金が多く引かれていることがあります。

また、1月1日から死亡日までの医療費が一定額を超える場合、医療費控除を適用できて還付金を受け取れる場合がありますが、医療費控除を適用するには準確定申告が必要です。

そして、亡くなった人が事業の経営者などで青色申告者だった場合、その年の事業所得がマイナスでも、準確定申告で損失を繰戻して前年の所得と相殺すれば還付金を受け取れる場合があります。

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準確定申告の必要書類

準確定申告の必要書類

準確定申告の手続きで必要になる書類はケースによって異なりますが、主な必要書類として次のものが挙げられます。

準確定申告の主な必要書類
  • 確定申告書
  • 準確定申告書の付表
  • 青色申告決算書・収支内訳書
  • 控除関係書類(適用を受ける所得控除・税額控除に応じて書類を準備)
  • 委任状(還付金を代表者が一括受領する場合に必要)

準確定申告の必要書類は通常の確定申告と基本的に変わりません。

ただし、付表が必要になる点と、ケースによっては委任状が必要になる点が異なります。

また、電子申告(e-Tax)で準確定申告をする場合には、準確定申告の確認書も必要です(電子申告で準確定申告をする場合の必要書類については、のちほど解説します)。

確定申告書や付表の用紙は、次の国税庁サイトからダウンロードできます。

確定申告書

確定申告書には、AとBの2種類の用紙があります。

  • 確定申告書A:給与所得など一定の所得区分の所得のみある場合に使える用紙
  • 確定申告書B:所得の区分に関わらず誰でも使える用紙

亡くなった方が会社員や公務員で給与所得しかない場合は確定申告書Aを、個人事業主で事業所得がある場合には確定申告書Bを使って申告します。

なお、収入や経費などの記入方法は通常の確定申告と基本的に同じですが、準確定申告の場合は、申告書の住所・氏名欄は次のように記入します。

準確定申告書 記載例

出典:確定申告書の記載例(国税庁ホームページ)

表題の確定申告書A(確定申告書B)に「準」を追記し、住所や氏名の欄には亡くなった人(被相続人)と相続する人(相続人)両方の住所・氏名を記入します。

準確定申告をする場合の申告書の記載例は国税庁HPに掲載されているので、実際に手続きをする人は以下のサイトから記載例を確認するようにしてください。

準確定申告書の付表

相続人が2人以上いる場合、「死亡した者の令和○年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」を提出する必要があります。

付表は、各相続人の住所や氏名、還付金の振込先となる銀行等の口座などを記入する用紙です。

準確定申告書 付表 記載例

出典:国税庁資料より抜粋(確定申告書の記載例)

なお、相続人が1人の場合は付表の提出は省略して構いません。

青色申告決算書・収支内訳書

亡くなった人が個人事業主だった場合、青色申告者であれば青色申告決算書を、白色申告者であれば収支内訳書を、それぞれ作成して準確定申告の際に提出します。

青色申告決算書や収支内訳書を作成するには、収入や必要経費の額がわかる資料が必要です。

そのため、亡くなった人の預金通帳の履歴を見て収入額などを確認し、領収書や帳簿などが残されていないか確認しましょう。

また、青色申告者の場合、亡くなった年の事業収支がマイナスでも純損失を繰戻して前年以前の利益と相殺し、還付金を受け取れる場合があります。

ケースによっては、前年以前の確定申告の内容も確認しなければならず、時間も手間もかかるため、所得税の準確定申告や相続税の申告は税理士に任せてしまっても良いでしょう。

控除関係書類

所得控除の適用を受ける場合は、必要に応じて控除証明書類などの書類を用意して確定申告書とともに提出します。

亡くなった方が生命保険料や地震保険料を支払っていた場合は、保険会社に連絡して保険料控除証明書を取り寄せましょう。

医療費控除を受ける場合は、医療費の額がわかる領収書などを手元に用意し、医療費控除の明細書を作成して提出します。

委任状

相続人が2人以上いるケースにおいて、準確定申告をして受け取れる還付金を相続人の代表者が一括して受領する場合、委任状が必要になります。

委任状の用紙は次の国税庁サイトからダウンロードでき、記載要領も掲載されているので、実際に手続きで委任状を用意する場合は以下のサイトの用紙を使うようにしてください。

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準確定申告の手続き方法

準確定申告の手続き方法

準確定申告の手続き先は、亡くなった人(被相続人)の死亡当時の住所地の税務署です。

準確定申告の手続き方法は、通常の確定申告と同じく次の3つのいずれかの方法で行います。

準確定申告の手続き方法
  • 窓口申請
  • 郵送申請
  • 電子申告(e-Tax)

窓口申請

確定申告書や付表、その他の必要書類をそろえたら、税務署の窓口に持参して直接提出すれば準確定申告の手続きができます。

税務署の開庁時間は平日の午前8時30分から午後5時までです。

これ以外の時間でも、税務署に設置された時間外収受箱に投函して提出することもできます。

郵送申請

準確定申告は、税務署に直接行かなくても、書類を郵送すれば手続きができます。

収受日付印のある確定申告書の控えが必要なときは、複写により作成した申告書の控えのほか、返信用封筒(宛名を記入し、切手を貼付)を同封して郵送してください。

電子申告(e-Tax)

準確定申告は電子申告(e-Tax)を使って手続きをすることもできます。

ただし、通常の確定申告と異なり、国税庁HPの確定申告書等作成コーナーから所得税の準確定申告書の作成はできません。

e-Taxソフト等を利用した上でe-Taxで送信する必要があるので、e-Taxソフト等をインストールするようにしてください。

また、準確定申告書を電子申告(e-Tax)で提出する場合、次の書類の提出が必要になります。

e-Taxで準確定申告をする場合の必要書類
  • 準確定申告書(XML形式)
  • 確定申告書付表(XML形式)
  • 準確定申告の確認書(PDF形式)
  • 委任状(書面)

準確定申告書をe-Taxで提出する場合は、相続人が1人の場合でも必ず付表の提出が必要です。

また、相続人が2人以上いる場合は、各相続人が申告内容等を確認し署名した上で、確認書を作成して提出しなければなりません。

そして、相続人が2人以上いる場合で相続人代表が還付金を代表して受け取る場合には、各相続人が署名した委任状を書面で提出する必要があります。

※ 所得の種類等によっては、上記の書類に加えてその他の書類の提出が必要となる場合があります

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準確定申告と控除の関係

準確定申告と控除の関係

準確定申告をするとき、注意すべきなが控除の計算です。

控除額を計算する際に日割り計算をするのかしないのか、いつまでに支払った費用が控除計算に含まれるのか、間違えやすい点がいくつかあります。

医療費控除や生命保険料控除、配偶者控除など、準確定申告をするときの控除の計算方法を正しく理解しておくことが大切です。

医療費控除

準確定申告で医療費控除の対象になる医療費は、亡くなった人が死亡日までに支払った医療費です。

死亡後に相続人が支払った医療費は、被相続人の準確定申告で医療費控除の対象に含まれません。

社会保険料控除・生命保険料控除・地震保険料控除

準確定申告で社会保険料控除・生命保険料控除・地震保険料控除の対象になる保険料は、亡くなった人が死亡日までに支払った保険料です。

社会保険料は本人や一定の親族の保険料を支払っていた場合に控除の対象になり、生命保険料や地震保険料は一定の計算式で求めた金額を税額計算で控除できます。

配偶者控除・扶養控除

配偶者控除や扶養控除は通常、12月31日時点で配偶者や扶養親族に該当するかによって、控除の対象かどうかを判定します。

しかし、年の途中で納税者が亡くなった場合は、配偶者控除や扶養控除等の適用の有無に関する判定の基準日は死亡日です。

そのため、死亡日時点で所得税法上の配偶者や扶養親族に該当すれば、準確定申告で配偶者控除や扶養控除を適用できます。

なお、配偶者控除や扶養控除の適用を受けるには、対象の家族の所得額が一定額以下でなければなりません。

この家族の所得額の判定に関しては、死亡日時点で見積もったその年1月1日から12月31日までの所得額を基準に判断し、見積り額が一定額以下であれば控除の対象になります。

また、配偶者控除や扶養控除の控除額は通常の確定申告の場合と同じであり、年の途中で死亡した場合でも、月割計算をする必要はありません。

青色申告特別控除

亡くなった人が青色申告特別控除の要件を満たす場合には、通常の確定申告と同じく準確定申告でも特別控除を適用できます。

例えば、亡くなった人に不動産所得または事業所得があり、複式簿記で記帳していたなど一定の要件を満たす場合の控除額は55万円です。

さらに、相続人が準確定申告を電子申告(e-Tax)で行う場合は、控除額が65万円になります。

所得金額調整控除

亡くなった人が会社員や公務員などの給与所得者で、所得金額調整控除の要件を満たす場合は、通常の確定申告と同じく準確定申告でも控除を適用できます。

所得金額調整控除の対象になるのは、給与等の収入金額が850万円を超える給与所得者で、次のいずれかに該当する人です。

  • 本人が特別障害者に該当する者
  • 年齢23歳未満の扶養親族を有する者
  • 特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族を有する者

所得金額調整控除の上限は15万円で、給与等の収入金額から850万円を引き、10%を掛けて求めた額を所得税計算で控除できます。

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準確定申告をしないとどうなる?

準確定申告をしないとどうなる?

準確定申告の義務が生じているにも関わらず、期限である4ヶ月までに申告をしないと罰金を科されてしまいます。

期限までに準確定申告を終わらせれば延滞税や加算税はかからずに済むので、申告が必要な場合には4ヶ月以内に手続きを終えることが大切です。

延滞税

申告期限までに申告や納税をしなかった場合に、法定納期限の翌日から納付が完了する日までの日数に応じて課されるのが延滞税です。

令和3年の延滞税の税率は、最初の2ヶ月は年2.5%、2ヶ月を経過して以降は年8.8%で、延滞する期間が長くなるほど延滞税も多くかかります。

加算税

申告期限までに申告をしなかった場合には無申告加算税が、当初申告した税額が過少だった場合には過少申告加算税が、それぞれ課されることがあります。

税率は無申告加算税が最大20%、過少申告加算税が最大15%で、税務署から悪質と判断されて重加算税が課されると税率はさらに高くなるため注意が必要です。

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まとめ

亡くなった人(被相続人)の確定申告を相続人が代わりに行う準確定申告は必要な場合と不要な場合があります。

家族が亡くなり相続人になった人は、まずは亡くなった人の所得の種類や金額を確認して、準確定申告が必要なのかどうかを確認しましょう。

そして、準確定申告が必要な場合には、4ヶ月以内に手続きを終えなければなりません。

確定申告書や付表、控除関係書類などの必要書類は早めに準備して、期限までに確実に申告を終えるようにしてください。

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