相続で「確定申告」が必要・不要なケースは?期限はいつまで?

相続の確定申告手続き
この記事を監修した専門家は、
牛腸真司
税理士
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。

遺産を相続すると、所得税の確定申告や準確定申告、相続税の申告が必要になる場合があります。

税金の申告期限は決まっており、期限までに手続きをしないと延滞税など罰金的な税金を科されるため注意が必要です。

相続開始後に税金の申告が必要になるのかどうか、正しく判断できるようにしておきましょう。

今回は、税金の申告が必要になる条件や手続き期限、遺産相続と税金の申告に関するポイントを紹介します。

遺産相続で必要になる税金の申告と期限

遺産相続で必要になる税金の申告と期限

家族が亡くなって遺産を相続する場合、必要になる可能性がある税金の申告は、次の3種類です。

遺産相続で必要になる税金の申告
  • 亡くなった人の準確定申告
  • 遺産にかかる相続税の申告
  • 遺産相続後の所得税の確定申告

それぞれの申告手続きが必要になる詳しい条件は後ほど解説しますが、必要な場合には法定の期限までに手続きをしなければなりません。

亡くなった人の準確定申告

ある程度の所得があると、所得税の確定申告が必要になる場合があります。

1月1日から亡くなった日までの間に亡くなった人に所得があり、所得税の確定申告が必要になる条件に該当する場合も、申告の手続きが必要です。

しかし、本人が亡くなっている場合は、当然本人は申告の手続きができません。

そこで、亡くなった人に代わって相続人が確定申告の手続きを行うことになっています。

これが「準確定申告」と呼ばれる手続きで、期限は「相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内」です。

遺産にかかる相続税の申告

相続する遺産額が多い場合など、相続税の申告が必要になる場合があります。

相続税の申告は、被相続人(遺産を残して亡くなった人)が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行わなければいけません。

たとえば、2月10日に死亡した場合は、その年の12月10日が申告期限です(申告期限が土日祝日の場合は翌平日が期限になります)。

遺産相続後の所得税の確定申告

相続した遺産を売却するなどして所得を得た場合、所得税の申告が必要になる場合があります。

普段は所得がなく今まで確定申告をしたことがない人でも、遺産の相続に関連して、所得税の確定申告が必要になる場合があるため注意が必要です。

所得税の確定申告は、所得が生じた年の翌年2月16日から3月15日までの間に行います。

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準確定申告が必要になる場合

準確定申告が必要になる場合

亡くなった人に生前に所得があると、準確定申告を行う義務が相続人に生じる場合があります。

準確定申告が必要な場合には、手続き期限である4ヶ月後までに、遺産額の確定や税額の計算、準確定申告書の提出を終えなければなりません。

そして、亡くなった人が給与所得者・年金受給者・個人事業主のいずれに該当するかで、準確定申告が必要になる条件が異なります。

亡くなった人が給与所得者の場合

亡くなった人が会社員や公務員などの給与所得者だった場合、準確定申告の義務がないケースが多くなります。

ただし、たとえば亡くなった人の所得や収入の状況が次のケースに該当する場合は、準確定申告が必要になるため、相続人が申告の手続きをしなければなりません。

準確定申告が必要になるケース
  • 給与収入が2,000万円を超える場合
  • 給与を1ヶ所から受けていて給与所得・退職所得以外の所得額が20万円を超える場合
  • 給与を2ヶ所以上から受けており、年末調整をされなかった給与の収入金額と給与所得・退職所得以外の所得額が20万円を超える場合

たとえば、亡くなった人が副業や投資をしており、会社からの給料とは別に20万円超の所得を得ていたような場合は、準確定申告が必要になります。

亡くなった人が年金受給者の場合

亡くなった人が年金を受給していた場合、次の2つの要件を両方とも満たす場合、準確定申告の義務はありません。

準確定申告が不要になる条件
  • 公的年金等の収入金額が400万円以下
  • 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下

逆に、たとえば年金収入額が400万円を超えるようなケースでは、相続人が準確定申告を行う必要があります。

亡くなった人が個人事業主の場合

亡くなった人が個人事業主だった場合、1月1日から亡くなった日までの所得額が基礎控除額以下であれば、所得税の準確定申告は不要です。

逆に、所得額が基礎控除額を超えて、その他の所得控除などを考慮しても所得税がかかる場合には、準確定申告と納税の手続きをしなければなりません。

また、亡くなった年の前年1年間の所得に基づいて確定申告が必要な場合、亡くなる前に本人が確定申告をしていなければ、前年分の確定申告を相続人が代わりに行います。

つまり、ケースによっては、亡くなった人の前年所得に対する準確定申告と、今年の所得に対する準確定申告、2つの申告手続きが必要になるということです。

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相続税の申告が必要になる場合

相続税の申告が必要になる場合

亡くなった人から遺産を相続すると、その遺産は相続税の課税対象になります。

相続税の申告をするまでの流れ
  1. 相続人調査をして、税額計算で使う相続人の数を確定させる
  2. 相続財産調査をして遺産額を確定させる
  3. 遺産額や相続人の数をもとに相続税を計算する
  4. 相続税の申告書を作成して、期限である10ヶ月後までに税務署に提出する

ただし、遺産を相続する場合でも、常に相続税がかかるわけではありません。

実際、相続税がかからずに済むケースも多いので、相続税がかかる基準を理解しておくようにしましょう。

遺産額が基礎控除額を超える場合

相続する遺産の額が基礎控除額を超える場合は、基本的に相続税がかかります。

基礎控除額とは次の式で求めた金額で、相続税がかかるかどうか判断の基準になる金額です。

相続税の基礎控除額
  • 相続税の基礎控除額=3,000万円 + 600万円 × (法定相続人の数)

まず、家族が亡くなって相続が開始したとき、誰が相続人になって遺産を相続するのかは法律で決まっています。

家族であれば誰でも遺産の相続権があるというわけではありません。

亡くなった人の配偶者は常に相続人になり、子・親・兄弟姉妹では、相続人になれる順位が決まっています。

順位が高い人が相続人になり、先順位の人がいなければ次順位の人が相続人になる仕組みで、子が第一順位、親が第二順位、兄弟姉妹が第三順位です。

たとえば、配偶者と子1人、親1人がいる場合は、配偶者と子の2人が相続人になり、相続税の基礎控除額は4,200万円(3,000万円+600万円×2人)と計算できます。

相続税はかからないが特例制度を使う場合

相続する遺産額が基礎控除額を超える場合でも、特例制度を使うと相続税がかからずに済む場合があります。

たとえば、配偶者控除を利用する場合です。

相続税の配偶者控除とは、亡くなった人の配偶者が遺産を相続する場合に使える特例で、少なくとも1億6千万円の遺産まで相続税がかからずに済みます。

そして、この特例制度を使うためには、相続税の申告をしなければなりません。

また、住むための土地や事業用の土地を相続する場合に、小規模宅地等の特例を使う場合も、相続税がかからなくても申告が必要になります。

小規模宅地等の特例とは、居住用や事業用の土地を相続する場合に、一定の条件を満たすと土地の価格を最大80%減額してから相続税を計算できる特例制度です。

節税効果が大きく、この特例制度を使えば相続税がかからずに済む場合がありますが、特例制度を使うためには申告の手続きをする必要があります。

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遺産相続で所得税の確定申告が必要になる場合

遺産相続で所得税の確定申告が必要になる場合

先ほど「準確定申告が必要になる場合」のところで、亡くなった人の所得や収入がいくら以上だと準確定申告が必要になるかを紹介しました。

このときに紹介した所得や収入の条件と、遺産を相続した人が確定申告をすることになる条件は基本的に同じです。

つまり、遺産を相続した人の1月1日~12月31日の1年間の収入や所得が、たとえば次の条件に該当する場合には、翌年2月16日~3月15日に確定申告をする必要があります。

給与所得者の場合
  • 給与収入が2,000万円を超える場合
  • 給与を1ヶ所から受けており給与所得・退職所得以外の所得額が20万円を超える場合
  • 給与を2ヶ所以上から受けており、年末調整をされなかった給与の収入金額と給与所得・退職所得以外の所得額が20万円を超える場合
年金受給者の場合
  • 公的年金等の収入金額が400万円を超える場合
  • 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円を超える場合
個人事業主の場合
  • 所得額が基礎控除額を超えて、その他の所得控除などを考慮しても所得税がかかる場合

そして、今まで所得額が低くて確定申告が不要だった人でも、たとえば不動産を相続して賃料収入を得るようになると、今後は確定申告が必要になる場合があります。

不動産を相続して賃料収入を得た場合

亡くなった人が賃貸アパートなどを経営していた場合、その物件を相続すれば相続人は賃料を得ることになり不動産収入が発生します。

たとえば、会社員の人で今まで確定申告が不要だった場合でも、不動産の相続後に年間20万円を超える所得を得れば、先ほど紹介した条件に該当するため確定申告をしなければなりません。

土地や建物など相続した遺産を売却した場合

相続した土地や建物を相続後に売却した場合、売却によって所得が発生します。

売却で得た所得も当然所得税の課税対象になるため、所得額が大きくて確定申告が必要になる条件に該当した場合は、翌年の3月15日までに申告が必要です。

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遺産相続と税金の申告におけるポイント

遺産相続と税金の申告におけるポイント

遺産相続に伴う所得税の確定申告や準確定申告、相続税の申告では、次の3点にも注意しましょう。

遺産相続と税金の申告におけるポイント
  • 期限までに申告をしないと罰金を科される
  • 準確定申告をすると還付金を受け取れる場合がある
  • 準確定申告をすると相続放棄できなくなる可能性がある

罰金を科されると、その分だけ遺産が実質的に減ってしまうことになります。

また、相続放棄をすべきケースなのに相続放棄ができなくなると、相続人が借金を抱えてしまうようなケースがあるため注意が必要です。

期限までに申告をしないと罰金を科される

税金の申告を期限までにしないとペナルティとして罰金が科されます。

罰金にはいくつかの種類があり、たとえば手続きが遅れたことへの利息として科されるのが延滞税、申告をしなかったことへの罰則として科されるのが無申告加算税です。

無申告加算税の税率は最大20%で、実際に科されてしまうと重い負担になります。

罰金を科されて資産を減らす意味はないので、税金の申告が必要な場合は、期限までに必ず手続きを終えるようにしてください。

準確定申告をすると還付金を受け取れる場合がある

たとえば、亡くなった人が会社員で、給与を1ヶ所から受け取っており、副業による所得などがない場合は相続人が準確定申告をする義務はありません。

しかし、義務はなくてもあえて準確定申告をしたほうが良い場合があります。

それはたとえば、亡くなった人が生前に医療費を支払っており、医療費控除を申請することで還付金を受け取れる場合です。

医療費控除の適用を受けるには準確定申告の手続きが必要で、ケースによっては払い過ぎた税金の払戻しを受けられる場合があります。

準確定申告をすると相続放棄できなくなる可能性がある

相続人が準確定申告をしなければならない場合、手続きの期限は4ヶ月と決まっています。

手続き期限が短いため、慌てて準確定申告の手続きをしてしまう人がいますが、相続放棄をする可能性がある場合は注意が必要です。

準確定申告は相続人が行う申告手続きであり、準確定申告をすると自分が相続人になって遺産を相続することを認めたことになり、相続放棄ができなくなる可能性が高くなります。

たとえば、亡くなった人に借金がある場合、相続放棄をすれば借金を相続せずに済みますが、準確定申告をすると相続放棄ができず借金を相続する可能性が高くなるため注意が必要です。

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まとめ

家族が亡くなり相続が開始すると、所得税の確定申告や準確定申告、相続税の申告が必要になる場合があります。

ただし、いずれの申告手続きも必要になる場合とそうでない場合があり、相続が起きたからといって絶対に必要になるわけではありません。

まずは申告の義務が生じる条件が何なのか、正しく理解しておくことが大切です。

そして、申告が必要な場合には手続き期限がそれぞれ決まっています。

所得税の準確定申告は4ヶ月以内、相続税の申告は10ヶ月以内、所得税の確定申告は翌年3月15日までに、手続きをしなければなりません。

期限に遅れて罰則を科されないように、早めに準備をして申告を終わらせるようにしてください。

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