民法と相続税法について異なる規定を理解しましょう

法定相続
この記事を監修した専門家は、

 

相続財産を、だれに、どのように分けるかは、民法で明確に規定されています。しかし、一部において、民法で定める規定と、相続税法で定める規定に少し違いが生じます。本稿では、そのような民法と相続税法の違い、またそれがどのような影響となるのかについて説明させて頂きます。


被相続人=資産を残す人=亡くなった方
相続人=資産を受け継ぐ人=配偶者、子供、親せきなど


1.養子縁組は何人まで認められる?

民法と相続税法の違いについて考える時、まず最初に挙げられるのが養子についてです。

養子とは、養子縁組によって「血の繋がりがない者の間に親子と同じ関係を成り立たせる法律行為」です。

相続において養子は、実子と同じように扱われ、法定相続人になりますし、相続割合も同じです。

ここでポイントとなるのが、何人まで養子と認める事ができるのかというところです。

なぜここがポイントとなるのでしょうか?

それは相続税の計算方法と関係があります。

ご存知の通り、相続税の計算において、基礎控除の金額は法定相続人の数に比例して多くなります。

つまり、相続税は、法定相続人の数が多ければ多いほど、少なくなるという性質を持っています。

しかし、無制限に養子縁組を行い、法定相続人の数をどんどん増やすことで、相続税を限りなく0円に近づける事はできるのでしょうか?

その意味で、先ほど「何人まで養子と認める事ができるのか」がポイントになると説明しました。

以下を見ていきましょう。

民法で定める養子について

民法では、養子縁組の数に限度を設けていません。

つまり、何人でも養子縁組をし、養子を増やす事が可能です。

極端な話、10人でも50人でも100人でも可能です。

相続税法で定める養子について

まず相続税法においても、上記の民法に従って養子縁組は何人でも行う事が可能です。※ここは誤解しないで下さい

ただし、上記の問い(法定相続人の数を増やせば相続税は限りなく0円に近づくのか)という問題について考えると、相続税法では、基礎控除が認められる養子の数が決まっています。

つまり問いの答えはNOという事になります。

養子を無限に増やして、相続税を0にする事はできません。

では、相続税法では何人まで養子の基礎控除が認められるのでしょうか?

それは実子がいるかいないかで変わります。

実子がいる場合

基礎控除が認められる養子は1人まで

(つまり仮に養子が2人以上いたとしても、基礎控除が認められる養子は1人だけとなります)

 実子がいない場合

基礎控除が認められる養子は2人まで

(つまり仮に養子が3人以上いたとしても、基礎控除が認められる養子は2人だけとなります)

以上のように、

● 民法では、養子は何人でも認められる
● 相続税法でも、養子は何人でも認められるが、基礎控除が認められる養子の数には限度がある

ということを覚えておきましょう。

※上記の相続人の数の制限の説明は普通養子縁組の場合
※養子縁組についてはこちらの記事でも解説されています

2.相続放棄した場合の法定相続人は?

民法と相続税法の違いについて考える時、次に考えれるのが相続放棄についてです。

ご存知のように、相続財産は、大きく分けると以下の3種類

● 積極財産(プラスの財産のこと)
● 消極財産(マイナスの財産のこと)
● 相続財産には属さない財産

があります。

これらの財産を単純承認した場合、相続人はプラスの財産だけでなく、マイナス財産、つまり借金やローンも相続しなければなりません。

場合によっては、プラス財産とマイナス財産の合計で、マイナスになることもあります。

相続によって借金を背負うことになるのは、誰だって嫌ですよね。

そういった事態を避けるために、相続放棄という制度が存在し、相続の開始があったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に申請をすれば、相続を放棄することができます。

この場合、プラス、マイナス関わらず全ての相続財産を放棄することとなります。

※「単純承認」や「相続放棄」についてはこちらの記事をご覧下さい

 

そして、相続放棄をした場合、法定相続人は、次の順位の法定相続人に引き継がれます。

さて、この相続放棄において、民法と相続税法の何が関係するのでしょうか。

ケーススタディで解説致します。

ケーススタディ

母(既に他界)、父、姉、妹の4人家族がいました。父が亡くなり、相続が発生したとします。

このケースでは、配偶者である母が既に亡くなっているので、第1順位である姉妹が法定相続人という立場で全ての財産を相続する事となります

しかし、父の財産に多額の借金が含まれている事が明らかになり、姉妹は相続放棄を決断しました。

すると、法定相続人は第2順位である父母となりますが、被相続人の父母は既に亡くなっています。

そこで、法定相続人は第3順位である兄弟姉妹へと立場が移り、法定相続人は4人となりました。

ここで、民法と相続税法の規定の違いが生じます。

先ほどの養子縁組と同じで、ポイントとなるのは法定相続人の数です。

上記のケースでは、最終的に法定相続人は4人となりました。

これは民法上は正しくて、法定相続人は兄弟姉妹の4人です。

しかしこの場合、当初、被相続人の子である姉妹2人が法定相続人であったのに対して、最終的には兄弟姉妹の4人と法定相続人の数が増えています。

法定相続人の数が増える=基礎控除額が増える=相続税が減る

ということになり相続税法ではこれを許しません。

よって、相続税法のおける基礎控除額の計算においては「相続放棄はなかったもの」として扱われます。

つまり上記のケースの場合、たとえ相続放棄によって最終的な法定相続人が兄弟姉妹の4人になったとしても、相続税の計算では、法定相続人2人(被相続人の姉妹)として基礎控除額が計算されます。

繰り返しになりますが、上記のケースの場合、

  • 民法上は相続放棄をした場合、法定相続人は姉妹兄弟へと移る
  • 相続税法上の税務計算では、「相続放棄はなかったもの」として、法定相続人は2人(姉妹)として、基礎控除の額が計算される

上記のルールを理解しておきましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

民法はこのルール、相続税法はこのルールと細かく述べると、上記以外にも様々な点を挙げる事ができます。

しかしそれらすべてを暗記する必要はなく、個別のケースで注意すべき点だけを覚えておくのが良いでしょう。

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