50億の相続発生!紀州ドン・ファン怪死事件から見る「相続問題」を徹底解説!

法定相続
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1.50億円の遺産相続

世間を騒がせた、「紀州のドン・ファン怪死事件」。2018年5月14日にお亡くなりになられた野崎幸助氏は、現金、不動産、その他の資産などを合わせて、50億円もの莫大な資産をお持ちであったと言われています。

本件では、残された妻や家政婦の動向、野崎さんが亡くなる数日前に変死した愛犬など、様々な憶測が飛び交い、ニュースやメディアで取り上げられていますが、この記事では「相続問題」という切り口で、解説したいと思います。

相続 と言う視点で見たときに、本件でポイントになるのは以下の点ではないでしょうか。

  1. 残された莫大な資産は誰の手に?
  2. 50億円の資産を受け取るのに、相続税は一体いくらかかる?
  3. 「愛犬に全財産を渡したい」生前に本人が残したメッセージはどうなる?

50億円もの資産を遺して亡くなられた、日本でも数%しかいない「富裕層」の相続事例とはなりますが、この件は、相続と言う視点で一般の方々が学ぶべきポイントがいくつかあるのではないでしょうか。順番にご説明していきます。

2.莫大な資産は誰の手に?

この事件では、野崎さんが亡くなる3ヶ月前、2018年2月にご結婚された妻であるSさんの動向が注目を浴びていますが、果たしてSさんは野崎さんが遺した50億円もの資産を相続することができるのでしょうか?

妻が夫の資産を相続するにあたって、婚姻期間や同居の事実など、その他条件はあるのでしょうか?

結論を言うと、妻Sさんは野崎さんの資産を相続することができます。

報道を見ている限りでは、Sさんは、婚姻届を提出しており、既に野崎さんの妻であり、2人は「婚姻関係」にありました。

相続では、婚姻関係にある妻(配偶者)は、夫の死後、無条件で相続人(資産を受け取る権利を持つ人)になることができます。婚

姻期間などの条件は特に無く、仮にSさんが、野崎さんが亡くなる1日前に婚姻届を提出していたとしても、相続する権利を持つことが可能です。

妻Sさんが50億円全額を相続するの?

これについて述べると、事実関係(野崎さんの正確な戸籍情報など)が分からないため断言はできないですが、現時点での情報だと野崎さんには親や子はいないため、妻Sさんと、野崎さんの4人の兄弟姉妹(詳細は不明)が50億円の資産を相続することになります。

配分は、

  • 妻Sさん:3/4 → 37.5億円
  • 兄弟姉妹:1/4 → 12.5億円

となります。

ここで注目したいのが、兄弟姉妹が4人いるからと言って、Sさんと合わせて「5人で等分」とはならない、と言うことです。

このケースだと、Sさんが遺産総額の3/4を相続することになります。この、いわば“相続財産の分け方のルール”のことを民法では「法定相続」と呼びます。

※法定相続について詳しくはコチラ

相続では「配偶者」が優遇されることが多いです。

それは、基本的に配偶者は、亡くなられた方(今回であれば野崎さん)共に資産を築いてきた人と考えることができるため、他の親族よりも多く資産を受け取れるように優遇されるのです。

本件ではSさんが共に資産を築いたとは捉えにくいかもしれませんが、現状の法律では3/4を妻であるSさんが相続します。残りの1/4を兄弟姉妹が4人で等分に(つまりは1/16ずつ)分けます。

仮に、野崎さんの兄弟姉妹のうち、亡くなっている方がいる場合はどうなるのでしょうか?

その場合は、「代襲相続」といって、亡くなられた兄弟姉妹のお子様が相続します。

※代襲相続について詳しくはコチラ

ちなみに、野崎さんは過去に結婚していた方がいらっしゃったみたいですが、婚姻関係の無い元妻には、相続の権利は一切ありません。逆に言うと、Sさんが仮に婚姻届を出さず、事実婚の状態だった場合には、相続の権利はありませんでした。

※離婚した場合の元妻の相続について詳しくはコチラ

3.相続税は一体いくら?

相続で受け取った資産に対しては「相続税」という税金が発生します。

そしてこの税金は、資産の額が多ければ多いほど課税額が増える「累進課税」という制度が取られています。

では、50億円もの莫大な資産を受け取った場合、一体いくらの相続税がかかるのでしょうか?

今回は法定相続通りに、

  • Sさんが3/4(37.5億円)
  • 兄弟姉妹4人が1/4(12.5億円)

を相続した場合のケースで考えてみましょう。

相続税の計算方法に従って試算すると、

  • 妻Sさん:相続税 19.6億円
  • 兄弟姉妹:相続税 4.5億円

5人合わせてなんと24.1億円もの相続税がかかります。

50億円の資産を相続しても、約半分の24.1億円を税金で支払うことになるとは驚きですね。

実は、日本の相続税は世界各国と比較しても高水準となっており、最大税率は55%となっています。取得金額が6億円以上の場合は、全て55%の税金が課されます。

しかし、実はある制度を使うことによって、なんと妻Sさんにかかる19.6億円の相続税は、0円にする事が可能なのです。

先ほど、「相続では配偶者が優遇されることが多いです」と述べましたが、実は税金面でも配偶者は優遇されます。相続税には「配偶者の税額の軽減制度」という制度があり、配偶者が取得した正味の遺産額のうち1億6千万円と配偶者の法定相続分のいずれか多い金額までは、相続税がかからないようになっているのです。

よって本件では、法定相続通りに分けると、妻Sさんは37.5億円の遺産を相続することになりますが、妻Sさんが支払うべき相続税はなんと「0円」なのです。

※配偶者控除について詳しくはコチラ

一方で兄弟姉妹は、軽減制度などが無い為、結論で述べたとおり、計4.5億円もの相続税を納付することになります。

最終的に、50億円を妻Sさんと4人の兄弟姉妹が法定相続通りに相続した場合、

相続税は、

  • 妻Sさん:0億円
  • 兄弟姉妹:4.5億円

となり、手元に残る金額は、

  • 妻Sさん:37.5億円
  • 兄弟姉妹:8億円

となります。

もちろん、この資産は全て「現金」と言うわけではなく、不動産や株式などが含まれるでしょうが、結果的に、配偶者であるSさんが多くの資産を相続することになります。

4.生前に本人が残したメッセージ

本件は現時点では、野崎さんの自宅から「遺言書」は見つかっていなさそうです。しかし、生前に自らの資産について以下のようなメッセージを残していたそうです。

愛犬に全て相続させたい

仮に野崎さんが、生前に法的拘束力を持つ遺言書を作成し「愛犬に全額相続する」と記載していた場合はどうなるのでしょうか?愛犬が50億円を相続するのでしょうか?

結論を言うと、犬を含めた人間以外の動物に相続をすることは、できません。

またこの場合、厳密に言うと、愛犬は法定相続人にはなり得ないので、「相続」ではなく「遺贈」になるのですが、現状の法律では、犬に遺贈をすることはできません。

しかし、「愛犬のために遺贈する」と言うことは可能です。

つまり、野崎さんの死後、愛犬の世話をしてくれる人物に「愛犬の世話をする」と言う条件付きのもと、遺贈するのです。これは犬ではなく「世話をしてくれる人」に対する遺贈になるので、成立します。

またこの場合、「犬の世話を放棄したら、財産の譲渡を失効する」と言う条件を付けることも可能です。これによって、愛犬の世話をすると言う名目で財産を受け取り、実際は他の目的に使うと言ったような行為を防ぐことができます。

1つ注意点として、上記のケースで、確実に犬の世話をしてくれる人に遺贈したい場合は、「遺贈」では無く、「死因贈与」と言う手続きがオススメです。

遺贈は遺言書で相続人以外の人に財産を渡す方法ですが、これは遺贈者(財産を渡す人)による一方的な意思表示であり、受遺者(財産を受け取る人)は放棄することができるのです。

つまり「犬の世話のために50億円受け取って下さい」と遺言書に書いていても、受け取るほうが「面倒なので、放棄します」と言うことができるのです。

一方、死因贈与は遺贈者と受贈者の二者間で結ぶ契約であり、死因贈与契約を結んでおけば、相続発生後に「やっぱり辞めた」と言うことはできず、問題なく贈与することができるのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

以上のように、「紀州のドン・ファン怪死事件」では相続に纏わる様々なルールや制度を確認することができるのです。50億円もの資産がなくても、仮に100万円の資産であっても起こることは同じです。

そして、相続ではこの他にも様々なルールや制度が存在します。「知らなかった」と言うだけで損をするケースも少なくはありません。両親が元気なうちに、相続について勉強し、家族で話し合える環境を作ることが、円滑な相続を進めるためのポイントとなります。

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