不動産相続のデメリットとは?現金相続との違いや注意点を解説

不動産
この記事を監修した専門家は、
呉村成信
司法書士
2016年、司法書士試験合格。東京司法書士会所属。都内の司法書士事務所にて不動産登記を中心に登記業務全般に携わる。その後、独立し司法書士法人グラティアスの代表を務める。

「実家を相続したけれど、このまま持ち続けて大丈夫だろうか」「不動産は資産になると聞くが、デメリットはないのか」――不動産を相続するにあたり、このような不安を抱えている方もいるかもしれません。

不動産は「分けにくい」「動かしにくい」という性質を持つ資産であるため、安易に引き継ぐとデメリットになることがあります。話し合いがまとまらなかったり、想定以上の税金や維持費がかかったり、空き家となって管理や近隣対応に追われたりするなど、相続後に負担が表面化することも少なくありません。

この記事では、不動産相続のデメリットがなぜ生じるのか、不動産と現金では何が違うのか、そして相続後に後悔しないために気をつけるべきポイントについて解説します。

不動産相続で問題が起きやすい理由

不動産相続とは、故人(被相続人)が所有していた土地や建物などの不動産を、相続人が引き継ぐことを指します。

不動産相続は、預貯金のように公平に分けにくく、売却や賃貸などで動かすにも手続きと時間、関係者の合意が必要です。そのため、相続後の意思決定が滞りやすい点が特徴だといえます。また、保有しているあいだも維持費や管理負担が発生し続けるため、先送りにした場合のコストが膨らみやすくなります。以下でくわしく見ていきましょう。

<不動産相続で問題が起きやすい主な理由>

  • 不動産は「分けにくい資産」になりやすい
  • 「資産のつもりが負担になる」可能性がある

不動産は「分けにくい資産」になりやすい

不動産は、相続人同士で公平に分けることが難しい資産です。評価額が算出されても、預貯金のように機械的に按分して渡すことは難しく、「誰が取得するのか」を決めなければ先に進みません。

そのため、不動産を特定の相続人が取得する代わりに、他の相続人との取り分の差を調整するためのお金(代償金)を支払う方法、売却して現金化した上で分配する方法、または共有名義で持ち分を分ける方法など、複数の選択肢を前提に検討を進めることになります。もっとも、代償金を支払えるだけの資金を用意できない場合や、売却自体に相続人同士で同意が得られない場合もあるでしょう。

共有名義は一見すると公平ですが、売却や大規模修繕、賃貸への転用など、重要な意思決定には原則として共有者全員の同意が必要になります。共有者が増えるほど合意形成は難しくなり、不動産が事実上動かせない状態に陥ることもあります。

「資産のつもりが負担になる」可能性がある

不動産は資産価値があるという印象が強く、相続時に「得をした」と捉えられがちです。しかし、実際には保有しているだけで継続的なコストが発生します。固定資産税や都市計画税は毎年課され、火災保険料や修繕費なども必要になります。

とりわけ空き家になると、建物の劣化を防ぐための換気や通水、草木の手入れ、防犯対策など、最低限の管理が欠かせません。遠方に住んでいる場合は、移動の手間や管理委託費が積み上がり、心理的な負担も増えやすいでしょう。

相続直後には見えにくい負担が、時間の経過とともに顕在化し、結果として「資産のはずが負担になった」と感じるケースは少なくありません。

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不動産相続の主なデメリット

不動産相続には、複数のデメリットがあります。これらは相続後に時間が経ってから問題が表面化・拡大しやすい点が特徴です。以下でくわしく見ていきましょう。

<不動産相続の主なデメリット>

  • 相続人同士でトラブルになりやすい
  • 税金や維持費の負担が継続的にかかる
  • すぐに売却できないことがある
  • 管理・修繕・近隣対応の負担が重い

相続人同士でトラブルになりやすい

不動産は分割が難しいため、相続人が複数いる場合、誰が取得するか、売却するか、残すかなど意見が割れやすくなる点はデメリットといえます。住み続けたい人、売却して現金化したい人、将来の利用を見込む人など、立場によって希望が異なるのは自然なことです。

しかし、不動産は「全員が少しずつ受け取る」ことが難しく、合意形成がこじれると感情的な対立に発展する場合もあります。共有名義を選んだ場合も、重要な判断に全員の同意が必要となり、結果として話し合いが進まず長期化する傾向があります。

税金や維持費の負担が継続的にかかる

不動産を相続すると、相続時の税負担に加え、保有中も継続的なコストが発生し続ける点がデメリットです。評価額によっては相続税の支払い義務が生じますが、相続税が発生する場合、納税資金を現金で準備しなければなりません。その際に相続財産の多くが不動産に偏っていると資金繰りが難しくなることもあるでしょう。

また、相続が完了した後も、固定資産税や都市計画税は毎年発生します。加えて、建物の修繕費や火災保険料、マンションであれば管理費・修繕積立金など、保有している限り継続的な支出が避けられません。収益を生まない不動産の場合、支出だけが積み上がる点は大きなデメリットです。

すぐに売却できないことがある

不動産は、売りたいと思ったタイミングで直ちに現金化できるとは限りません。立地や築年数、建物の状態、需要の有無によって買い手が見つかるまでの期間は大きく変わり、想定より価格が下がることもあります。

さらに、相続登記(名義変更)を済ませていないと売却手続き自体に進めないのが原則です。不動産が共有名義であれば、売却への合意形成が必要になり、手続きを進めたくても進められない場面が生じます。「売ればよい」という発想だけで相続を先送りし続けると、結果として処分の難度が高まりやすくなります。

管理・修繕・近隣対応の負担が重い

不動産を相続したものの、住む・貸すといった活用の見通しが立たず空き家になると、管理の負担は現実的な問題になります。人が住まない建物は傷みやすく、カビ、雨漏り、給排水設備の劣化などが進行し、資産価値が下がります。

また、雑草の繁茂、害虫や害獣、防犯面の不安などにより、近隣から苦情が寄せられることもあるかもしれません。状況次第では行政から改善の要請が入ることもあり、金銭面に加えて時間や精神的な負担が生じる点も理解しておく必要があります。

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不動産相続を放置した場合に起こるリスク

不動産相続は、放置するとリスクが深刻化しやすい特徴があります。代表的なリスクを見ていきましょう。

<不動産相続を放置した場合に起こる主なリスク>

  • 過料の対象になる可能性がある
  • 相続人が増え、権利関係が複雑化する
  • 空き家として社会的リスクになる

過料の対象になる可能性がある

2024年4月1日から相続登記は義務化されており、不動産を相続した方は、相続を知った日から3年以内に相続登記を行う必要があります。それ以前に相続した不動産が未登記の場合は、原則として2027年3月31日までに相続登記を完了させる必要があります。なお、2024年4月1日以降に初めて相続を知った場合は、知った日から3年以内が期限となります。

正当な理由がないまま期限内に相続登記を行わなかった場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。過料は刑事罰ではありませんが、法令に基づく行政上の金銭的負担です。

相続人が増え、権利関係が複雑化する

相続後に名義変更や方針決定をしないまま時間が経つと、次の相続が発生し、関係者が増える可能性があります。いわゆる数次相続が重なると、相続人の人数が増え、連絡が取れない方が出てくるなど、調整の難度が上がります。

不動産を売却したり大きく活用したりするには、原則として共有者全員の同意が必要です。共有者が多数になるほど合意は得にくくなり、結果として「売れない、貸せない、直せない」といった状態に陥ることがあります。また、借金のある相続人がいた場合、債権者から差し押さえを受けるリスクもあります。

放置は将来の手間とコストを増やす要因になりかねないため、早めに対応するのが重要です。

空き家として社会的リスクになる

空き家が長期間放置されると、倒壊の危険、害虫・害獣の発生、防犯面の問題などが生じやすくなり、近隣の生活環境に影響を及ぼすリスクが高まります。景観の悪化や不審者の侵入などが地域の不安につながり、結果として苦情を受けたり、対応を求められたりする可能性にも考慮が必要です。

また、空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)に基づき、「管理不全空家(窓や壁が破損するなど管理不十分な状態)」や「特定空家(放置すると倒壊等のおそれがある状態)」として、行政の指導に従わず勧告を受けると、その土地の固定資産税の軽減措置(住宅用地特例)が受けられなくなります。個人の相続問題であっても、空き家化が進むと社会的なリスクを伴う点は軽視できません。

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不動産と現金、相続で扱いやすいのは?

相続における資産の扱いやすさは、資産価値の大小だけで決まるものではありません。分けやすさ、意思決定のしやすさ、換金のしやすさといった観点で、現金と不動産には明確な違いがあります。それぞれくわしく見ていきましょう。

現金は「分けやすい」が、税務メリットは小さくなりやすい

現金は基本的に「持っている金額=相続税の計算上の評価額」となるため、評価額が下がりにくい資産です。不動産は、相続税の計算では市場価格より低い金額で評価されることが多く、結果として相続税の負担が軽くなる場合があります。とはいえ、税務上の有利不利だけでなく、相続後に揉めにくいかどうかを重視する局面では、現金の分けやすさは大きなメリットになるでしょう。

判断のポイントは「扱いやすさ」

不動産と現金のどちらが望ましいかは、相続人の人数や関係性、そして相続後の利用方針によって一概には言えません。相続人が多い場合や意見が割れやすい状況では、分けやすさの観点から現金のほうが調整しやすい傾向があります。

一方で、特定の相続人が居住する予定がある、収益性が見込めるといった事情がある場合は、不動産を承継する合理性が生じます。「高いから残す」「不要だから売る」といった短絡的な判断ではなく、相続後の管理・費用・手続き・合意形成まで含めて、扱いやすい形を選ぶとよいでしょう。

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不動産相続時に気をつけるべき点

不動産相続で困りやすいのは、維持や処分にかかる負担を十分に見積もらないまま、判断を先送りするケースです。不動産は時間の経過とともに状況が悪化しやすく、権利関係も複雑化しやすいため、早期に方針を固めることが重要です。

<不動産相続時に気をつけるべき点>

  • 相続後の「維持」にかかる負担を把握する
  • 相続後の「処分(売却・整理)」の難しさを知っておく
  • 相続後は判断を先延ばしにしない

相続後の「維持」にかかる負担を把握する

不動産を相続するにあたっては、保有し続ける場合に必要となる支出と手間を具体的に把握する必要があります。固定資産税や都市計画税は毎年発生し、建物の状態によっては修繕費も避けられません。空き家であれば、劣化を防ぐための管理や防犯対策も必要となります。

「住まずに残す」という選択は、維持の負担を長期にわたり引き受けることを意味します。年単位でどの程度のコストがかかるのかを把握した上で、判断しましょう。

相続後の「処分(売却・整理)」の難しさを知っておく

不動産の処分は、想定以上に時間と手間がかかる場合があります。立地や築年数、境界の不明確さ、接道状況などが影響し、売却までの期間や条件は大きく左右されます。

また、権利関係の整理が不十分なまま売却に進もうとしても、相続登記が済んでいない場合は手続き自体が止まってしまうほか、共有名義の場合は全員の合意が得られるまで動けません。相続後は「いつまでに、どの方法で整理するか」を早めに検討し、実行可能性を踏まえて方針を定めることが望ましいでしょう。

相続後は判断を先延ばしにしない

不動産相続において避けたいのは、方針を決めないまま時間が経過することです。相続登記を後回しにしている間に次の相続が発生すると、いわゆる数次相続となり、関係者がさらに増えて調整が難しくなります。結果として、売却や活用の選択肢が狭まり、合意形成や手続きにかかる手間とコストが膨らむリスクがあります。

相続後は、保有・売却・賃貸・整理といった方向性を早めに定め、必要な手続きを進めることが、デメリットを最小限に抑える基本です。

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相続登記をスムーズに行うには?

不動産相続の課題をこじらせないためには、相続登記の申請を早めに進めることが重要です。名義が被相続人のままでは、売却や担保設定といった処分に進めず、相続人間の調整も長期化しやすくなります。

もっとも、相続登記をご自身で行う場合、戸籍の収集、遺産分割協議書の作成、登記申請書の作成など、準備事項は多岐にわたります。手続きに不慣れであれば、書類不備による補正対応が必要となり、結果として時間がかかることもあるでしょう。

相続登記をスムーズに進めたい場合は、司法書士に依頼する方法に加え、近年ではオンラインで手続きを支援するサービスを活用する選択肢もあります。ご自身で調べる手間を減らして進められるため、忙しい方にとって有効な手段です。

例えば、スマートフォン(スマホ)で相続登記の手続きを進められるネットサービス「そうぞくドットコムでは、ご自身で行うにはハードルが高い必要書類の収集や申請書の作成、法務局への郵送手配などをワンストップでお任せできます。登記申請書の作成に特化した最安値のプランが1万5,000円(税込1万6,500円)、通常プランは8万5,000円(税込9万3,500円)で利用できます。※上記価格は資料請求後の割引価格です。

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不動産と現金相続どちらが良いかは向き合い方次第

不動産相続には、現金相続には生じにくいデメリットがあります。分けにくさに起因する調整の難しさ、保有コストの継続、換金性の低さ、そして管理・近隣対応は、状況によって相続人に重い負担を与えます。

しかし、不動産相続が必ずしも不利というわけではありません。居住予定がある、収益が見込めるなど、不動産を承継する方がメリットが大きいケースもあります。

問題になりやすいのは、不動産そのものよりも、相続後の方針を定めないまま先送りを重ねてしまうことです。時間の経過とともに権利関係は複雑化し、対応の選択肢も狭まりやすくなります。

相続後の維持・処分・活用の方向性を早めに整理し、相続登記を進める行動が、不動産相続のデメリットを最小限に抑える上で欠かせません。手続きに不安がある方は、「そうぞくドットコム」のようなネットサービスの活用も含め、ご自身に合った進め方を検討してみてください。


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よくある質問(FAQ)

不動産相続は現金相続より損なのでしょうか?

不動産相続が一律に「現金相続よりも損」とは限りません。不動産は分けにくく、維持費や管理負担が発生しやすいというデメリットがありますが、居住や賃貸などの活用が見込める場合にはメリットがあります。相続後に誰がどのように関与し、維持・処分の方針を実行できるかまで含めて判断しましょう。

相続登記をしない場合、どんなリスクがありますか?

相続登記をしないまま放置すると、相続人が増えて権利関係が複雑になり、不動産の売却や活用が困難になる可能性があります。さらに、相続登記は2024年4月1日から義務化されており、正当な理由なく期限を過ぎると過料の対象となる場合もあります。放置することで、相続人が増えたり法律が変わったりして手続きが難しくなりやすいため、早めに取りかかることが重要です。

不動産相続のデメリットを減らすために相続前にできることは?

不動産相続のデメリットを減らすには、所有者が存命の間に、死後に誰が不動産を取得するのか、売却するのか、住むのかといった方向性について家族で共有しておくことが有効です。遺言書の作成や、相続後の維持費・管理方法の確認を行っておくことで、相続発生後の混乱や先送りを抑えやすくなります。

 

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この記事を監修した専門家は、
呉村成信
司法書士
2016年、司法書士試験合格。東京司法書士会所属。都内の司法書士事務所にて不動産登記を中心に登記業務全般に携わる。その後、独立し司法書士法人グラティアスの代表を務める。