お墓参りに最適な時期や日にちはあるのでしょうか。
この記事では「お墓参りはいつ行ったら良いの?」と疑問を持っている方に、お墓参りをする時期を一年を通して解説していきます。
また、お墓参りにの際に気をつけたい注意点やマナーなども合わせて紹介します。
目次
お墓参りの時期と最適な日にち

お墓参りを行う時期として、一般的には次のような日が挙げられます。
- 命日
- 月命日
- 春・秋の彼岸
- お盆
- お正月・年末年始
- 人生の節目
ここでは、お墓参りをする時期の詳細について解説していきます。
また、期間の長い彼岸とお盆については、お墓参りに行くのに良いとされている最適な日にちも解説していきます。
祥月命日(しょうつきめいにち)
祥月命日とは、故人が亡くなったのと同じ月日を指します。
祥月命日は一般的には「命日」と呼ばれ、例えば4月10日に故人が亡くなった場合、4月10日が祥月命日です。
つまり、この祥月命日は年に一度です。
本来、この祥月命日は家族でお墓参りにいくことが昔からの習慣とされています。
また、一周忌・三回忌・七回忌などはこの祥月命日に行われ、その際は親族が集まり大規模な法要が行われます。
月命日
月命日とは祥月命日を除いた命日を指し、年に11回訪れます。
月命日は毎月訪れるため、お墓参りに行かずに仏壇で供養される方も多いです。
しかし、常にお墓を気にかける方は、この月命日にお墓参りをしてお墓を綺麗にする清掃日と定めている場合もあります。
また、初めて寺院の檀家となる方は、この月命日を中心にお寺と関係を築くと良いでしょう。
春・秋のお彼岸
お盆はご先祖様が帰ってきますが、彼岸は私たちがご先祖様に会いに行く意味合いがあります。
- 春彼岸は3月の「春分の日」
- 秋彼岸は9月の「秋分の日」
のそれぞれを前後3日間、合計1週間が彼岸期間です。
- 彼岸初日を「彼岸の入り」
- 春分の日や秋分の日は「中日」
- 彼岸最終日を「彼岸の明け」
と呼んで区別します。
この春彼岸・秋彼岸の一週間はいつお墓参りをしても大丈夫ですが、春分の日・秋分の日となる「中日」がお墓参りをする時期として最適でしょう。
特に、秋分の日は「国民の休日に関する法律」の中でも、お墓参りの日として認定されています。
お盆
年に一度、亡くなった方が家に帰ってくる時期がお盆で、一年で一番お墓参りをする方が多い時期です。
このお盆は7月13日から16日の7月盆と、8月13日から16日の8月盆の2つがあり、ほとんどの地域では8月盆が行われます。
一般的には「お盆の入り」の13日にご先祖様を迎えに行き、16日に送りに行くとされています。
そのため、お墓参りはご先祖様をお迎えする13日が一般的です。
ただし、宗派や地域によっては13日にはお迎えのお墓参り、16日には送り届けるためまたお墓参り、合計2回の墓参りをする場合もあります。
自宅で迎え火と送り火のみを行い、お墓へ出向かない場合は「中日」とよばれる14日、もしくは15日にお墓参りをします。
13日から16日の間は、ご先祖様の霊は自宅にお迎えしているため、墓参りではなくご自宅の仏壇に手を合わせましょう。
浄土真宗のお盆
浄土真宗の教えでは、亡くなった方は全て極楽浄土へ旅立ち、他の宗派のように故人がこの世に帰ってくるという教えはありません。
そもそも、霊やその霊を供養するという考えがなく、仏教の宗派の中では一部独自の教えを持っています。
そのため、お盆だからといって先祖の霊を迎えたり送ったりという特別な行事はありません。
お正月・年末年始
正月は本来、お盆と並び半年ごとに先祖を祀る行事でした。
そのため、お正月や年末年始にお墓参りをされる方は多く、年末にはお墓を綺麗に掃除して新しい年に備え、年が明けたら先祖へ新年の挨拶をします。
このお正月のお墓参りをする日にちは、特に決まりはありません。
家族や親戚が集まりやすい時期ですので、家族ごとの都合でお墓参りをしても問題はないでしょう。
ただし、年末の大晦日は寺院が一番忙しい時期でもあります。
お墓の掃除は遅くとも12月30日までに済ませておくことがマナーです。
人生の節目
ご自身が人生の節目を迎えた時、ご先祖様にその報告やお礼をしたいと考えるものです。
人生の節目とは、次のようにさまざまです。
- 就職
- 進学
- 結婚
- 出産
ご先祖様に報告や相談をする中で、新しい目標をや今後の展望などを誓い、自身を見つめ直すきっかけとなる場がお墓参りです。
お墓参りをしてはいけない時期はある?

お墓参りに最適な時期を解説してきましたが、反対にお墓参りをしてはいけない時期はあるのでしょうか?
実は、お墓参りをしてはいけない時期というものはありません。
いつお墓参りをしても良いのです。
よく「仏滅」は縁起が悪いからと墓参りを避ける方もいますが、この仏滅は仏教の教えとはまったく関係ありません。
また、29日は「二重に苦しむ」として諸事を避ける考えもありますが、同時に「ふ(2)く(9)」福の日とも呼ばれます。
こうした事から、お墓参りはご自身の事情を優先して、いつ行っても良いと考えられています。
お墓参りに行く時間帯は午前中がベスト

お墓参りをしてはいけない時期はありませんが、時間帯は午前中が良いとされ、午後は好ましくないとされています。
これは、「一日の中でお墓参りをその日の最初にするべき」という考え方があるためです。
古来、夕方は「逢魔時(おうまがとき)」といって魔が出やすい、霊がつきやすい時間帯として忌み嫌われていました。
もちろん、これらは迷信のためいつお墓参りをしても構いませんが、暗くなってからのお墓参りは足元が見えづらく転倒の可能性があります。
街灯がなく薄暗い墓所も多いため、お墓参りするなら午前中が無難でしょう。
宗教別のお墓参りの時期

ここまでは、仏教におけるお墓参りの時期について解説してきましたが、その他の宗教ではどうなのでしょうか?
ここでは私たちに馴染み深い、「神道」と「キリスト教」についてそれぞれ解説していきます。
神道の場合
神道でも、仏教と同様にお盆や彼岸などがお墓参りに行く時期とされています。
これ以外では神道の朔日参りに習い、月の初めにお墓参りをする地域もあります。
また、仏教における1周忌・3周忌・7回忌などの「回忌法要」は、神道では1年祭・3年祭・7年祭と続く「年祭」と呼ばます。
この時期は、親族そろってお墓参りを行います。
キリスト教の場合
キリスト教にもお墓はありますが、仏教のようにお墓の前で故人を祈ることはありません。
そのため、決まった時期にお墓参りをする習慣自体がないのです。
しかし、信者が一斉に集まる「ミサ」とよばれる宗教儀式が行われ、このミサを行う時期は宗派によって違いがあります。
ここではキリスト教における2大宗派の、カトリックとプロテスタントを例に解説していきます。
カトリック
カトリックでは、故人の死後3日目・7日目・30日目に、教会で追悼ミサを行います。
また、毎年11月2日を「死者の日」と定められており、教会で大規模なミサが行われます。
プロテスタント
プロテスタントでは、故人の死後1ヶ月後に「記念集会」とよばれる集まりを自宅や教会で行います。
この特別集会は、その後1年目・3年目・7年目に行われます。
お墓参りでの注意点

お墓は故人が眠る神聖な場所であると同時に、公共の空間です。
そのため、お墓参りをする際は周囲の迷惑とならないように注意点しなければならないことがあります。
注意点①:お供え物
故人が生前好んで食べていたものを、お供えものとして問題はありません。
ただし、お供え物をそのまま置いて帰ってしまうと、カラスや野生動物に食べられ墓所が汚れてしまいます。
お供え物は、お墓参りが終わったらすべて持ち帰りましょう。
墓所によっては、お供え物が禁止されている所もあるため、確認が必要です。
注意点②:お供えの花
お供えの花については、特に決まりはありません。
故人が生前好んでいたお花や季節の花をお供えとしても良いでしょう。
ただし、枯れて花びらが周囲に散らかるような花、大きすぎるサイズの花などは控えましょう。
注意点③:服装
普段のお墓参りは、カジュアル過ぎなければいつもどおりの普段着で構いません。
一方、初盆や法事などのお墓参りでは喪服を着用するべきです。
また、場所を考慮してアクセサリーや香水などは控え、足場が悪い墓所ではハイヒールなども控えた方が良いでしょう。
注意点④:ローソクの炎
ローソクの炎は火災の原因となるため、必ず消してから帰りましょう。
お線香は放置して燃やし切る場合もありますが、墓所によっては火を消してから処分するという規則を設けている場合もあります。
また、仏教ではローソクの炎は息を吹きかけて消さずに、手で仰いで消すという教えがありあます。
これは、仏様に穢(けが)れた息がかかることを防ぐためです。
注意点⑤:お酒をかけない
故人がお酒好きだった場合は、故人をおもって墓石にお酒をかける方がいます。
しかし、墓石の種類にもよりますが、お酒は墓石の錆びや変色の原因となる場合があります。
お墓を綺麗な状態で保ちたければ、このような行為は慎んだ方が良いでしょう。
注意点⑥:一緒に行く人数
以前は、お墓参りは一人で行ってはならないと言われていましたが、こちらは迷信です。
昔は墓所が山奥や足場が悪いところにあったため、このような話が伝えられたと考えられています。
しかし、今日ではそういった心配はなく、お墓参りに行く人数に特別な決まりはありません。
ただし、複数人でお墓参りをする場合は拝む順番には決まりがあります。
必ず故人から近い関係の方から、順番に拝むようにしましょう。
親族を差し置いて友人から拝むような行為はマナー違反なのっで、注意が必要です。
お墓参りの宗派ごとの違い

お墓参りの作法は、お住まいの地域によって多少の違いがありますが、宗派ごとの違いはありません。
ただし、墓前で合掌した際に唱える名号(みょうごう)は宗派によって異なります。
ここでは、宗派ごとに異なる名号について解説していきます。
なお、ご自身の宗派やその名号がどれになるのかわからない場合、挨拶もかねて菩提寺に確認すれば教えてもらえます。
浄土真宗・天台宗・浄土宗
「南無阿弥陀仏(なもあみだぶつ、なむあみだぶつ)」と唱えます。
南無阿弥陀仏は名号とは呼ばずに、「念仏」と呼ばれます。
日蓮宗
「南無妙法蓮華教(なんみょうほうれんげきょう)」と唱えます。
南無妙法蓮華教は名号とは呼ばずに、「題目」と呼ばれます。
曹洞宗・臨済宗
「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」と唱えます。
真言宗
「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」と唱えます。
お墓参りの流れ

続いては、お墓参りの流れについて解説していきましょう。
清掃
お墓を目の前にしたら、まずはお墓に向かって一礼します。
お墓の清掃は足元から行います。
必要に応じて雑草を抜き取り、周りに落ちている枯葉を拾い集めましょう。
続いては、石塔や石材を水洗いします。
目の細かいスポンジで水拭きをして、すぐに乾いたタオルで水を拭き取り乾拭きをします。
これで大体の汚れは取れますが、ひどい汚れがついている場合は市販されたいる墓石用の洗剤を使って擦り洗いしましょう。
お供え
清掃が終わったら、花を一対立てて持ってきたお供え物を並べます。
その後、ローソクに火を灯し、線香をつけお墓に手向けます。
礼拝
すべての準備が整ったら、数珠を手に持って合掌します。
目を閉じてご先祖様に語りかける方もいれば、読経する方もいます。
お墓参りに必要な持ち物

お墓参りに必要な持ち物は意外と多く、何度確認してもついつい忘れてしまうことは少なくありません。
忘れ物をせずに気持ち良いお墓参りをするため、これからお伝えするものをチェックリストとして活用してみてください。
- 清掃道具(洗剤、ハブラシ、鎌、タオル、ゴミ袋)
- 桶と勺
- 線香
- ローソク・ライター
- お花
- お供え物
- 数珠
清掃道具
お墓参りの際には、必ず墓石の清掃を行います。
清掃道具は次のとおりです。
- 洗剤:家庭用の洗剤は墓石を痛めるため墓石専用洗剤を使います
- ハブラシ:墓石に刻まれた戒名などの細かい溝を掃除するのに便利です
- 鎌:お墓の周りに生えた雑草を刈り取ります
- タオル:水洗い後の墓石の水を拭き取るために使います
- ゴミ袋:掃除で出たゴミは各自が持ち帰るため45リットル以上のゴミ袋が必要です
桶と勺
桶と勺は墓所に準備されている場合が多く、その際は借りて使用します。
菩提寺の場合は、家紋入りの桶を事前にご自身で購入してそれを預ける場合もあります。
いずれにせよ、桶と勺は共同の置き場から各自が持って来て使用します。
そのため、使用後は元の場所に戻し施設管理者の手を煩わせない配慮が必要です。
線香
墓前に線香を手向ける行為は、「故人や仏様に食べ物を差し上げる」という意味合いがあり、お墓参りには線香が必須です。
この線香は宗派によって手向ける数に違いがあります。
- 曹洞宗・日蓮宗・臨済宗・禅宗:1本
- 浄土宗:2本
- 天台宗・真言宗:3本
線香も、ローソク同様に息を吹きかけて消すことはマナー違反です。
手で扇ぐか、線香を降って火を消すようにしましょう。
ローソク・ライター
お墓参りの正式な作法では、墓前に供える線香の火はローソクから移します。
マッチやライターから線香へ直接火を移すことはマナー違反とされています。
ちなみに、ローソクへ火をつける際はライターからつけても構いません。
ろうそくの種類は、お盆・彼岸・命日などの仏事の際は白ローソクと決められているため注意しましょう。
お花
お花は、一般的には生花となり当日に購入します。
ただ、菊などの仏花は傷みにくく日持ちするため、前日に購入できる人気のお花です。
墓前に供えるお花の種類には決まりはないため、故人が生前好んでいた花を供えれば良いでしょう。
墓前の花立は対になっているため、準備するお花は同じ束を2つ用意します。
ただし、墓所によっては鳥や小動物がお花を荒らすことから、造花と決められている場合もあります。
ご自身の墓所の取り決めについては、事前に確認しておきましょう。
お供え物
以前は果物や落雁などが一般的でしたが、現在では故人の好物をお供えすることが多くなってきました。
お墓参りから帰る際にはすべてのお供え物を持ち帰り、墓所を清潔に保ちましょう。
数珠
お墓参りの正式な作法として、墓前に手を合わせる際には数珠が必要です。
数珠は宗派によって形や球の数は異なりますが、宗派が違う方のお墓参りをする場合はご自身の数珠を使っても問題はありません。
まとめ

お墓参りをする時期は1年の中で数回あり、お盆や彼岸などの期間が長いもの関しては推奨される日があることがわかりました。
ただし、仏教の教義上「絶対にこの日にお墓参りを行わなくてはならない」という日が指定されているわけではありません。
このように、お墓参りの時期には正確な定めはなく、マナーを守ればいつおこなっても問題はありません。
こうして考えると、お墓参りとは実に手軽で自由なご先祖様の供養方法ということがわかります。
ご自身が負担とならないような日程で気持ちよくお墓参りすることができれば、それがご先祖様に対しての最大の供養と言えるでしょう。