ペット葬儀とは
ペット葬儀とは、これまで大切な家族として人生を共にしてきたペットが亡くなった際に執り行う葬儀様式の総称です。
このペット葬儀は近年では一般的となり、飼い主のニーズにあった葬儀方法・埋葬方法・供養方法などを執り行うことが可能となりました。
それではこの葬儀方法・埋葬方法・供養方法などにはどのようなものがあるのでしょうか?
ペットの寿命は私たち人間と比較すると遥かに短命です。
そのため、私たち飼い主は必ずペットの最後をみとり、供養するときが来るのです。
必ず訪れるペットとの最後を悔いを残すことなく、落ち着いた気持ちで丁重に見送れるよう、この記事ではペット葬儀に関して詳しく紹介します。
葬儀時間・葬儀場を利用する際の注意点・葬儀費用などについても解説します。
生まれた背景
私たちがペットを飼う理由はさまざまですが、家族同様の存在としてその死を丁重に弔ってあげたいと考えるようになったのは、実はここ最近で100年あまりだといわれています。
それまでは、ペットの亡骸は焼却炉に運搬して焼却処分するか、小動物の場合は土に埋める供養の仕方が一般的でした。
しかし、近年はペットの飼育数が子供の総人口を超えたというデータもあり、犬や猫といったこれまでのペットに加えて、鳥類や爬虫類などさまざまな種類のペットが飼育されるようになりました。
このように、ペットを家族として向かい入れる家庭の増加に伴い、ペットを焼却処分することに抵抗感を覚える方が増えてきました。
そうした社会情勢の中で、ペット関連のサービスが充実していき、「ペットホテル」「ペットトリマー」「ペット同伴で入室できる飲食店」などが登場しています。
それに伴う形で、「家族同様に生活を共にしてきたペットの最期は私たち人間同様に執り行ってあげたい」という飼い主の要望からペット葬儀が誕生しました。
いまでは、ペット葬儀を専門で執り行う専門業者やペット霊園などは一般的となり、その数は増加傾向にあります。
かかる時間の目安
ペット葬儀にかかる時間は、そのペットの体の大きさや体重により火葬時間が異なるため、一律の時間はありません。
次の表に、体重別のペットの火葬時間の目安を記載していますので参考にしてみてください。
種類と体重 | 火葬所要時間 |
ハムスター・小型鳥類などの小動物 | 30分前後 |
小型犬・猫などの3キロ程度の動物 | 45分~1時間程度 |
中型犬などの7~10キロ程度の動物 | 1時間~1時間半程度 |
大型犬などの15~25キロの動物 | 1時間半~2時間程度 |
超大型動物などの25キロ以上の動物 | 2時間~3時間程度 |
このように、ペットの火葬時間はその個体の体格や種類により大きく異なります。
また、葬儀時間は葬儀内容により異なりますが、この火葬以外に葬儀・お別の時間・供養納骨などを執り行う時間を加味すると、葬儀全体の時間はこの火葬時間に加え1時間~2時間ほどが必要となります。
一緒に火葬できるもの
私たち人間が火葬される際には生前の品を一緒に火葬しますが、このときの品を副葬品と呼びます。
この行為と同様に、ペットを火葬する際も一緒に副葬品をペットの遺体とともに火葬することが可能です。
一緒に火葬できるものには、例えば次のようなものがあります。
- 小さな手紙
- メッセージカード
- 数枚の写真
- 容器に入っていないお菓子やご飯
- 少量のお花
ただし、ペットの副葬品については各葬儀場により異なります。
利用される葬儀場に事前確認は必須ですので、必ず確認するようにしてください。
ペット葬儀の種類
ペットの葬儀は、私たちに人間同様にさまざまな種類の方法があります。
ここでは、その葬儀方法を4種類に分類し、それぞれに異なる特徴を解説します。
種類①:合同葬儀
合同葬は、たくさんのペットを同時に火葬する葬儀方式です。
そのため、他のペットとお骨が混ざってしまい、お骨拾いができません。
費用面では今回ご紹介する4種類の葬儀方式の中で一番安価で執り行うことが可能です。
経済的な事情を考える飼い主に適した葬儀方式だと言えます。
種類②:立会葬儀
個別立会葬は、葬儀の中に次の項目が含まれます。
- お見送り出棺
- 火葬
- お骨拾い
- 納骨
つまり、私たちとほぼ変わらない葬儀方法です。
この葬儀は飼い主が全て立ち合い執り行われます。
そのため、人間同様に丁重にペットを弔ってあげたいと考えるの要望に沿った葬儀が可能です。
種類③:個別一任葬儀
個別一任葬儀は、先ほど紹介した「立会葬儀」と同様の流れで執り行われますが、「火葬」「お骨拾い」「納骨時」は飼い主が立ち会うことはありません。
これらの葬儀工程は葬儀場スタッフにより執り行われ、飼い主はペットを葬儀場スタッフに引き渡し火葬前の見送りをもって葬儀が終了します。
ペットを丁重に弔いたいけれど、どうしても葬儀当日の時間に余裕がない方のニーズに答えた葬儀内容です。
種類④:訪問火葬
訪問火葬は、火葬車という火葬炉を積載した専用の特殊車両がご自宅まで出向き、自宅や指定場所でペットを火葬する葬儀です。
葬儀場や火葬場へ出向くことが困難な方や、思い出の場所で火葬して欲しいと考える方に適した葬儀方法だと言えます。
火葬後のお骨拾いについては選択可能です。
ペット葬儀場を利用する際の注意点
ペットの葬儀場は、大別すると「公営葬儀場」と「民営葬儀場」に分けることができます。
この2つの葬儀場では、それぞれに葬儀様式が異なります。
ここでは公営葬儀場、民営葬儀場それぞれの葬儀場を利用するにあたっての注意点を解説します。
公営葬儀場の場合
各市区町村が運営が運営している葬儀場が公営葬儀場です。
この葬儀場では、合同葬しか執り行うことができず、火葬場としての意味合いが強い葬儀場のため、お骨拾いができません。
そのため、飼い主の中には十分な供養ができないと考える方もいます。
民営葬儀場の場合
近年増加傾向にある民間業者が運営する葬儀場です。
さまざまな葬儀様式に対応してくれるため、飼い主のニーズに積極的に答えてくれますが、その分利用料金は高額になる傾向があります。
注意点①:葬儀日程が組みづらい
近年ペットの飼育数が増加しているため、葬儀件数もそれに伴い増えています。
飼い主が希望する葬儀方式が選択できる民営葬儀場は、そのぶん葬儀に時間がかかり、葬儀の予約を早めに入れなければ、希望日に葬儀を執り行うことができない場合があります。
注意点②:料金は事前確認が必要
先ほど解説したように、民営葬儀場は飼い主が希望する葬儀について細かく設定することができます。
しかし、その葬儀工程一つひとつには細かく料金が設定されているため、料金についての事前確認を怠ると予想を上回る葬儀費用にとなり、トラブルに発展してしまうこともがります。
ペットのお葬式を執り行う流れ
ペットのお葬式は、人間の葬儀同様に一連の流れがあります。
この流れを理解しておけば、いざというときに落ち着いた気持ちで、悔いのない最後の時間をペットと共に過ごすことができます。
ここでは、ペットが亡くなってから永代供養するまでの流れについて解説します。
流れ①:業者に連絡し葬儀内容を決める
ペットが亡くなりこれから葬儀を執り行う場合は、まずはペット葬儀業者へ連絡を入れ、希望の日時や葬儀様式についての打ち合わせを行います。
ペット葬儀業者の中には24時間、年中無休で対応している業者もあり、打ち合わせは電話でも可能となっています。
流れ②:迎えまでペットを安置しておく
ペットを葬儀当日まで安置するには、ペットの遺体が入る大きめの段ボールに新聞紙やタオルを敷き詰め、ドライアイスや保冷剤をその上に敷いたのち、遺体をその上に安置します。
夏場は1日から2日、冬場は2日から3日程度であれば、この方法で安置することが可能です。
安置期間が長引くようなら、遺体のお腹の周りにもドライアイスや保冷剤を敷き詰め、ぬるくなったものに関してはこまめに交換することで安置期間を伸ばすようにすると良いでしょう。
流れ③:迎えの車にペットを納める
葬儀当日になったら、業者にペットの遺体を引き渡します。
この際、ご遺体を葬儀会場に運ぶのか業者がご遺体を引き取ってくれるのか選択することが可能です。
しかし、ペットのご遺体を業者が自宅まできて引き取ってくれるには、オプション料金が発生する場合があります。
先ほど解説したように、作業内容と追加料金に関しては事前に確認し、後々の料金トラブルに発展しないよう注意が必要です。
流れ③:規定の日に火葬する
飼い主が選択した葬儀様式に沿って、規定の日に火葬が執り行われます。
合同葬儀や個別一任葬儀は、遺体を火葬して葬儀は終了となります。
立会葬儀を行う場合は・お見送り・出棺・火葬を執り行い、葬儀場によってはお経が読まれたりお通夜を行う場合もあります。
流れ④:納骨・永代供養する
火葬が終了したら、遺骨はお骨上げを経て骨壺に納骨されます。
納骨後は納骨堂や霊園での埋葬が可能となり、ペット霊園では永代供養をしてもらえます。
納骨後は、霊園管理者によって定期的な生花のお供えや僧侶による読経法要が行われます。
火葬後の納骨、埋葬、供養・法要
ペットを火葬した後に、手元に遺骨をお持ちになった方は、特定の法要日に納骨、埋葬する方もいます。
ここでは、ペットの納骨・埋葬・供養方法とペットの法要日に関して解説していきます。
納骨と埋葬方法
ペットの遺骨を納骨する方法には次の2つがあります。
- 合同埋葬:大きな供養塔に他のペットのご遺骨と一緒に納骨する
- 個別埋葬:人間のお墓のようにお墓をたてその中に個別にご遺骨を埋葬する
また、これら以外では、室内にある納骨堂にペットのご遺骨を埋葬する方法もあります。
- コインロッカー式
- 棚式
- 仏壇
といったように、さまざまな種類の仕様があります。
供養・法要
ペットを供養する場合は、自宅にて供養する「自宅供養」「手元供養」と呼ばれる供養方法と、葬儀場やペット霊園の墓地や納骨堂で供養する方法があります。
自宅供養・手元供養された方は、四十九日・百か日・一周忌などの法要日に改めて納骨、埋葬を行う場合もあります。
また、これらの法要日以外にも初七日・35日・77日・3回忌・7回忌・13回忌・17回忌・33回忌・50回忌が主な法要日とされています。
これら法要日は、亡くなったペットの冥福を近親者と共に祈りを捧げる日とされています。
法要日は仏教の教えに基づいた風習のため、私たち人間と同様の法要日となります。
ペット葬儀の費用相場
ペットの葬儀費用はペットの大きさによって異なり、ペットが大型化するほど費用は高額となります。
ここでは、大きさごとにペットを分類し、該当する動物と費用相場を・合同葬儀・個別一任葬儀・立会葬儀に分けて解説します。
小型動物の場合
小型動物は、体重は3キロから10キロが目安です。
主なペット
- フェレット
- モルモット
- 小型犬
- 猫 など
費用相場の目安
- 合同葬儀:1~2万円程度
- 個別一任葬儀:2~4万円程度
- 立会葬儀:3万円~5万円程度
中型動物の場合
中型動物は、体重10キロから20キロが目安です。
主なペット
- 中型犬(ボーダーコリー・ミニチュアブルテリアなど)
費用相場の目安
- 合同葬儀:2万円~3万円
- 個別一任葬儀:2万円~5万円
- 立会葬儀:3万円~6万円
大型動物の場合
大型動物は、体重20キロから40キロが目安です。
主なペット
- 大型犬(シベリアンハスキー・ゴールデンレトリバーなど)
費用相場の目安
- 合同葬儀:2万5,000円~3万5,000円
- 個別一任葬儀:3万円~6万円
- 立会葬儀:4万円~7万円
超大型動物の場合
超大型動物は、体重40キロ以上が目安です。
主なペット
- 超大型犬(秋田犬・セントバーナードなど)
費用相場の目安
- 合同葬儀:4万円~4万5,000円
- 個別一任葬儀:5万円~7万円
- 立会葬儀:7万円~10万円
ペットのお葬式に関する疑問点
ペットと最後の別れとなるお葬式に関して疑問点があった場合、どのように対応して良いのかわからず落ち着いてペットを弔ってあげることができません。
そんな不安を解消するため、ここではペットのお葬式に関する疑問点について解説します。
葬儀の写真撮影の可否
スマートフォンのカメラ機能の普及にともない、誰でも簡単に写真撮影が可能となりました。
そのため、ペットの葬儀風景やペットの最期の顔を撮影する方は増えています。
ペットとの思い出を写真に残し供養する気持ちから写真撮影を行っているため、原則この行為が禁止されることはありません。
しかし、撮影した写真をSNSなどで公開する行為は慎んだ方が良いでしょう。
たとえペットであっても、遺体の写真を不特定多数に公開するのはマナー違反です。
棺に入れない方が良いもの
火葬は、お骨を綺麗に残し安心してペットを旅立たせる行為です。
一緒に棺に入れて火葬することで遺骨に悪影響を及ぼしたり、火葬炉や環境を汚染する可能性があるものに関しては副葬品として一緒に火葬することはできません。
棺に入れることができない物には、例えば次のようなものがあります。
- ゴムやプラスチック製のおもちゃ
- 容器に入ったおやつやご飯
- 繊維質のリードや首輪
- クッション
- 大量のお花
香典の要否
ペットの葬儀を執り行う場合、飼い主と近しい関係の方ならその葬儀に参列することは珍しいことではありません。
その場合、香典は必要ありません。
ペットの葬儀では香典の風習はないため、逆に飼い主に気を遣わせてしまいます。
数珠の要否
数珠は手を合わせてる際に必要となりますので、私たちのお葬式と同様のものを用意する必要があります。
お持ちでない場合は、斎場によっては貸し出してくれる場合もあるので確認してみてください。
お供えに適した花と色
ペット葬儀のお供えに使う花については厳密な決まりはなく、飼い主の好きな色の花や生前のペットとの思い出となる花や色があれば、その花を選んでも構いません。
ただ、バラのようにトゲがある花や、花粉が多く落ちやすい花などは避けられる傾向にあり、お供えには不向きです。
ペットのお供えとしての人気があるのはカーネーションです。
一年を通して流通しており、ほのかで優しい色合いと豊富な色彩は葬儀会場に違和感なく溶け込みます。
ペット葬儀の服装
ペット葬儀時の服装は、お葬式をお寺の住職を招いて執り行う場合は、黒を基調とした服装が好ましいでしょう。
しかし、ペットの葬儀時の服装には決まった習慣がないのが実情です。
そのため、仕事の合間をぬって参加される方や、時間が限られている方などは私服での参加が一般的です。
まとめ
ペットの葬儀についての事柄を、さまざまな角度から解説しました。
ペットが亡くなりになり、そのショックから「ペットロス症候群」などの精神疾患を患ってしまう方がいるように、私たちは家族同様にペットと長い年月を共に過ごすようになりました。
ペットとの最後の時間をご自身が納得できる最良の方法で別れを告げ、ペットと過ごすことができた年月に感謝しながらお見送りができるようペット葬儀に関する見識を予め深めておくことは、ペットを飼う者にとっての最後の責任とも言えるでしょう。