遺産の分け方を決めたときに作成する「遺産分割協議書」をどこに提出するのか、提出先は遺産に含まれる財産の種類によって変わります。
遺産の相続手続きをスムーズに進めるためにも、遺産分割協議書の提出先や手続きの流れを事前に確認しておいたほうが良いでしょう。
今回は、遺産分割協議書の主な提出先や遺産分割協議書の作成方法、提出するときのポイントについて解説していきます。
目次
遺産分割協議書とは

遺産分割協議とは、遺産をどのように分けるのかを相続人で話し合って決めることで、決めた内容を記載する書面が遺産分割協議書です。
たとえば、遺言が遺されておらず、相続人が2人以上いて遺産の分け方を話し合って決めなければならない場合に、遺産分割協議を行って遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書は、銀行預金や不動産の相続手続きなど、遺産の相続手続きをする際に必要になる書類の一つです。

遺産分割協議書に決まった書式はありませんが、遺産分割協議で決まった内容がわかるように、誰が何の財産を相続するのかを明確に記載します。
遺産分割協議書の主な提出先は5つ

遺産分割協議書の主な提出先は次の5つです。
- 銀行:預金の相続手続き
- 証券会社:株式の相続手続き
- 法務局:不動産の相続手続き
- 税務署:相続税の申告手続き
- 運輸局:車の相続手続き
遺産分割協議を行った結果、ご自身が銀行預金や株式、土地や家などの不動産、車を相続する場合には、遺産分割協議書を提出します。
また、遺産の相続に伴って相続税がかかり、申告が必要な場合には、税務署に提出する書類の一つとして遺産分割協議書が必要になります。
銀行:預金の相続手続き
遺産分割協議書の提出先の1つ目は銀行です。
銀行預金の相続手続きの流れや必要書類は銀行によって異なりますが、誰が預金を相続するのかを遺産分割協議で決めた場合は、一般的に遺産分割協議書の提出を求められます。
- 預金者が亡くなり、相続の手続きをしたい旨を銀行に連絡する
- 預金の相続手続きに必要な書類を揃える
- 銀行に書類を提出して預金の払戻しを受ける
まず、口座の名義人が亡くなったことを銀行が知ると、その口座は凍結されて入出金などの取引が一切できなくなります。
預金を相続する人が口座内の預金の払戻しを受けるには、一定の書類を揃えて銀行に提出する必要があり、遺産分割協議書も必要になる書類の一つです。
遺産分割協議を行ったケースでは、一般的に次の書類の提出を求められます。
- 遺産分割協議書(法定相続人全員の署名・捺印があるもの)
- 被相続人(亡くなった人)の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)
- 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
- 相続人全員の印鑑証明書
なお、銀行の窓口で手続きをする場合、原本を確認するとコピーを取って返却してくれるケースが多いため、手続きをする銀行の数だけ遺産分割協議書を作成する必要はありません。
証券会社:株式の相続手続き
遺産分割協議書の提出先の2つ目は証券会社です。
誰が株式を相続するのかを遺産分割協議で決めた場合は、一般的に証券会社から遺産分割協議書の提出を求められます。
- 証券口座の名義人が亡くなり、相続の手続きをしたい旨を証券会社に連絡する
- 株式の相続手続きに必要な書類を揃える
- 相続する人が口座を持っていない場合は証券口座を開設する
- 証券会社に書類を提出して、相続する人の証券口座に株式を移す
手続きの流れや必要書類は証券会社によって異なりますが、さきほど銀行預金の相続手続きで紹介した書類と同じ書類が必要になると考えておけば良いでしょう。
そして、株式の相続では銀行預金の相続と違って、相続する人自身が口座を持っている必要があります。
相続する株式を売却して現金化する場合でも、証券会社が売却して現金で相続人に払い戻してくれるわけではありません。
まずは株式の名義を相続人に変更して相続人の口座に移す必要があり、現金化する場合は相続人の口座に移した後に相続人自身で売却手続きを行います。
そのため、相続する人が証券会社に口座を持っていない場合は、証券会社に口座を開設する必要があります。
法務局:不動産の相続手続き
遺産分割協議書の提出先の3つ目は法務局です。
まず、家や土地などの不動産が誰のものなのか、不動産の名義は登記簿という書類で管理されています。
不動産の名義を亡くなった人から相続人に変更するためには、相続登記という手続きが必要で、これは法務局で行う手続きです。
相続登記の手続きをする際、法務局に提出する書類はケースによって異なりますが、遺産分割協議をした場合は、一般的に次の書類の提出を求められます。
- 登記申請書
- 遺産分割協議書
- 固定資産評価証明書
- 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、住民票の除票
- すべての相続人の戸籍謄本と印鑑証明書
- 不動産を相続する相続人の住民票
上記の書類以外にも、たとえば相続放棄をした人がいる場合には相続放棄申述受理証明書の提出が、司法書士に手続きを任せる場合は委任状の提出が必要になります。
なお、手続先は相続する不動産の所在地を管轄する法務局です。
不動産を相続する人が遠方に住んでいて直接法務局に行くのが面倒な場合や、自分で手続きをする自信がない場合は、専門家である司法書士に依頼すると良いでしょう。
また、当サイト「そうぞくドットコム」では、相続登記の手続きのサポートを行っています。
税務署:相続税の申告手続き
遺産分割協議書の提出先の4つ目は税務署です。
相続税の申告を行う場合で、遺産の分け方を遺産分割協議で決めた場合には、税務署で手続きをする際の書類の一つとして遺産分割協議書が必要になります。
- 相続税の申告書
- 被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本(相続開始の日から10日を経過した日以後に作成されたもの)
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)
- 遺産に関する書類や葬儀費用を証明する書類
まず、遺産を相続する場合には、相続税がかかる場合とかからない場合があります。
相続する遺産の総額が基礎控除額以下であれば、相続税はかからず相続税の申告も不要です。
- 相続税の基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × (法定相続人の数)
逆に、遺産額が基礎控除額を超える場合には、相続税の申告が必要になるケースが多く、遺産分割協議書など必要書類を揃えて税務署に提出します。
相続税の申告や納税が必要な場合には、手続き期限が10ヶ月と決まっているので、期限までに手続きを終えるようにしましょう。
運輸局:車の相続手続き
遺産分割協議書の提出先の5つ目は運輸局です。
車を相続する場合は運輸局で手続きをする必要があり、遺産分割協議を行って車の新たな所有者になる人が代表して手続きをする場合は、一般的に次の書類が必要になります。
- 申請書や手数料納付書、自動車税申告書
- 遺産分割協議書(法定相続人全員の署名・捺印があるもの)
- 被相続人(亡くなった人)の戸籍謄本または全部事項証明書(死亡の事実と相続人全員の記載があるもの)
- 相続人の印鑑証明書
- 車検証や車庫証明
まず、亡くなった人が車を所有していた場合は、車検証を探して所有者が誰になっているのか確認が必要です。
亡くなった人の名義になっていれば相続手続きが必要になりますが、ディーラーなど亡くなった人以外の名義になっている場合もあります。
名義がディーラーなどになっている場合は、名義になっている人や会社に連絡して、どのような手続きが必要になるのかを確認しましょう。
遺産分割協議書を作成するまでの流れ

家族が亡くなり相続が開始した後、遺産分割協議書を作成するまでの流れは次のようになります。
- 遺産分割協議の対象になる相続人を確定させる「相続人調査」を行う
- 遺産分割協議の対象になる遺産を確定させる「相続財産調査」を行う
- 遺産の分け方について話し合う「遺産分割協議」を行う
- 合意した内容を書面にまとめるため「遺産分割協議書」を作成する
そして、遺産分割協議書を作成したら、必要に応じて銀行や法務局など各提出先に他の書類とともに提出します。
相続人調査:遺産分割協議の対象になる相続人を確定させる
相続人になるのが誰で、遺産を相続する権利があるのが誰なのかを調べるのが相続人調査です。
ある人が遺した財産を誰が相続するのかは法律で決まっており、亡くなった人の戸籍を集めて相続人が誰なのかを確認する必要があります。
- 配偶者:相続人になる
- 子:第一順位の相続人として遺産を相続する
- 親:第一順位の相続人がいない場合、第二順位の親が相続人になる
- 兄弟姉妹:第一順位・第二順位の相続人がいない場合、第三順位の兄弟姉妹が相続人になる
遺産の相続権を取得する人の順位は、基本的には上記のように法律で決まっています。
ただし、たとえば子がすでに亡くなっている場合でも、その子に子(つまり孫)がいる場合に、子の代わりに孫が第一順位の相続人になって遺産を相続するケースもあります。
相続では専門的な知識が必要になるので、自分で手続きをするのが不安な場合は、相続人調査を専門家に依頼して戸籍の取得など必要な手続きをすべて任せても良いでしょう。
相続財産調査:遺産分割協議の対象になる遺産を確定させる
遺産分割協議を行って遺産分割協議書を作成するためには、そもそも相続の対象になり遺産分割協議の対象になる遺産が何なのか、把握しておかなければなりません。
遺産に含まれる財産が何か、一つひとつ調べて確定させるのが相続財産調査です。
亡くなった人が生前に財産目録を作成していれば簡単に確認できますが、そうでない場合は現金や銀行預金、不動産など、財産の種類と金額を個別に確認していきます。
たとえば、遺産に銀行預金が含まれる場合には、預金口座がある銀行に連絡して残高証明書を取り寄せて預金額を確認する必要があります。
相続手続きの流れは銀行ごとに異なるため、口座があるすべての銀行にそれぞれ連絡して手続きをしなければなりません。
また、亡くなった人に借金がある場合は借金も相続の対象になるため、借金が残されている場合は信用情報機関に照会して未返済額の確認を行いましょう。
なお、遺産に含まれる財産の種類が多い場合は、相続財産調査に時間がかかる場合があります。
専門家に依頼した場合でも、相続財産調査に1ヶ月程度かかる場合もあるので、自分でやる場合でも専門家に依頼する場合でも、財産の調査は早めに始めるようにしましょう。
遺産分割協議:遺産の分け方について話し合う
遺産分割協議の対象者と対象財産を把握できたら、相続人全員で遺産の分け方を話し合って決める遺産分割協議を行います。
遺産分割協議は、全員が集まって直接話して決める形のほか、たとえばメールや電話で意見交換して決める形でも構いません。
ただし、遺産分割協議に参加するすべての人が最終的に同意する必要があり、1人でも同意しない人がいると、有効な協議結果とはならないため注意が必要です。
遺産分割協議をしたものの相続人同士で揉めてしまい、話し合っても合意に至らない場合は、裁判所を介した手続きである調停や審判で解決を図ることになります。
遺産分割協議書:合意した内容を書面にまとめる
遺産分割協議を行って合意できたら、合意した内容を遺産分割協議書としてまとめます。
遺産分割協議書はパソコンで作成すれば楽ですが、署名欄はパソコンで入力せず空欄にした上で各相続人が自署し、押印は実印を使うようにしましょう。
遺産分割協議書には特に決まった書式はありませんが、誰が何の遺産を相続するのか、正確に記載します。
- 預金:金融機関名・支店名・口座番号・口座種類
- 株式:証券会社名・支店名・口座番号・銘柄や株数などの内訳
- 不動産:所在地や地番、家屋番号など(登記事項証明書(登記簿謄本)の記載内容を転記する形で記載)
- 車:登録番号や車台番号(車検証の記載内容を転記する形で記載)
また、遺産分割協議書とあわせて財産目録(財産の一覧表)を作成して、一体どのような財産が遺産に含まれるのか、すぐに確認できるようにしておいたほうが良いでしょう。
遺産分割協議書の記載を明確にして、財産目録を作成してわかりやすくしておけば誤解が生じにくくなり、後々に相続人同士でトラブルになる可能性が低くなり安心です。
遺産分割協議書を提出するときのポイント

銀行や法務局などの提出先に遺産分割協議書を提出する際、注意が必要なこととして、コピーは原則不可で原本の提出が必要になることです。
誤ってコピーを提出しないように注意するとともに、提出先から原本を返してもらう方法についても理解しておくようにしましょう。
コピーは原則不可で原本の提出が必要
遺産分割協議書の主な提出先5つについては、先ほど紹介しました。
基本的に5つの提出先すべてで、手続きをする場合には遺産分割協議書のコピーではなく原本を提出することになります。
金融機関の場合は、窓口で手続きをするとコピーを取ってすぐに原本を返却してくれることもありますが、基本的には提出した原本は戻ってこないものと考えたほうが良いでしょう。
そのため、遺産分割協議書については手続きの度に原本を提出することになります。
遺産分割協議が終わって遺産分割協議書を作成するときには、手続きの数だけ遺産分割協議書を作成しておくほうが良いでしょう。
また、手続きでは各相続人の印鑑証明書が必要になるケースが多いので、遺産分割協議書と一緒に各相続人の印鑑証明書も揃えて保管しておくと、遺産相続の手続きを進めやすくなります。
提出後に遺産分割協議書の原本を返却してもらう方法
遺産分割協議書を提出先に提出する際、原本を返却してもらう方法があります。
たとえば、法務局で相続登記をするときに原本の返却を受けたい場合には、遺産分割協議書のコピーを取って原本と相違ない旨を記載し、署名・押印した上で提出します。
遺産分割協議書の提出先で、原本の返却を受けたい旨を伝えれば、一般的に手続き方法を教えてもらえるので、金融機関や法務局、税務署など各提出先に確認すると良いでしょう。
まとめ
遺産分割協議書の主な提出先は、銀行・証券会社・法務局・税務署・運輸局の5つです。
遺産分割協議を行って誰が何の遺産を相続するのかを決めた場合、預金や株式、不動産、車を相続するのであれば、手続きの際に遺産分割協議書の提出を求められます。
また、相続税の申告が必要な場合にも、遺産分割協議書の提出が必要になります。
遺産分割協議書を提出するときには、原則としてコピーは不可で原本を提出することになるので、手続きの数だけ作成しても良いでしょう。