【2024】相続での家の名義変更は妻(夫)と子供どちらにすべき?税制優遇や控除と併せて解説

家の名義変更不動産
この記事を監修した専門家は、
牛腸真司
税理士
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。

家の名義を持っていた人が亡くなった場合には、その家の名義変更が必要となります。いくら家族内で「長男が相続する」などと決まっていても、法務局で名義変更の手続きをしておかなければ、第三者に対して長男が名義人であることを主張できないためです。

また、故人名義のままでは、家を売却したりお金を借りる際の担保に入れたりすることもできません。

では、相続での家の名義変更は、どのように進めればよいのでしょうか?また、争いがない場合、家は配偶者(妻や夫)か子の、どちらにすれば良いのでしょうか?

今回は、相続での家の名義変更についてくわしく解説します。

家の名義変更とは

家の名義変更とは、法務局で手続きをして、家の名義人を変更することです。

家や土地の名義人の情報は、通常、法務局に登録(登記)されています。そして、登記されている名義人が亡くなったからといって、勝手に名義が書き換わるわけではありません。

家の名義人を変更するためには、家の名義を受け取った人が所定の書類を添えて、法務局に申請することが必要です。この、法務局に登記されている名義人を変更するための手続きを、「家の名義変更」や「家の相続登記」などといいます。

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夫婦間で名義変更が行われるケース

夫婦間での不動産登記の名義変更の方法には、代表的なものとして、次の3つのパターンがあります。

  1. 相続による名義変更
  2. 生前贈与による名義変更
  3. 離婚に伴う財産分与による名義変更

生前に何もしなければ、相続による名義変更ということになりますが、節税対策として生前贈与を選択するケースもあります。また、離婚をすれば夫婦でなくなるため相続することはできませんが、離婚の財産分与という形で名義変更されることもあります。

ここでは上記3パターンの内容や注意すべき点について解説していきますので、いずれかを検討されている方はよく確認して活用してみて下さい。

①相続による登記(名義変更)

まずは、相続による名義変更についてです。相続では、不動産に限らず、車や銀行の預金など、あらゆる財産を承継します。後半でも解説しますが、相続によって配偶者が亡くなった方の財産を引き継いだ際には配偶者控除といって、税制上の優遇措置が認められています。

ですが、配偶者控除があるから相続させるのが一番良いとは限りません。誰が相続するのがいいのかは、税金だけで判断するべきではなく、将来的な財産の承継までも視野に入れて検討する必要があります。相続財産をどのように遺したいかというご自身のお気持ちや、相続人同士の関係などを考慮されるのが良いかもしれません。

②相続税対策として生前贈与

次に、相続によらずに生前に贈与をした場合についてです。

生前贈与というと贈与税が課税されますので、メリットは相続の方が大きいのではないかと考えられそうですが、生前贈与の場合も税制上の優遇措置が認められています。こちらについても、記事の後半を読んで頂ければと思います。

なお、生前贈与による不動産の名義変更で気を付けないといけないこととして、持ち戻しというものがあります。
あまり聞き慣れない言葉だと思いますので、持ち戻しについて簡単に説明します。

“持戻しとは?”

持ち戻しとは、相続が開始した際に、原則として生前贈与した財産を持ち戻して相続財産の計算に含めることをいいます。持ち戻しをすると、生前贈与を受けた相続人は、相続の財産分割の際に、生前贈与で受けた分を控除されてしまうことになりますので、相続時の取り分が減ってしまうことになります。

持ち戻しは、遺言等で持ち戻しを免除する意思表示をすることもできますが、そういった法律を理解して、持ち戻しを免除する意思表示を残していることはほとんどありません。持ち戻し免除の意思表示がない場合は、生前贈与をしても相続時の取り分が少なくなってしまうだけですので、生前贈与か相続かで大きな違いはないといえます。

生前贈与をする際には、相続時の持ち戻しまで考えてする必要がありますので、上記の内容は理解しておくようにしましょう。

なお、平成30年7月6日に可決された民法改正案では、20年以上連れ添った夫婦間の自宅の生前贈与については、相続時に持ち戻しをしない意思表示があると推定されることになりました。今後は、配偶者に対して自宅を生前贈与しても、原則は相続時に持ち戻しせず、相続時の配偶者の取り分が減らないこととなりますので、自宅の生前贈与は利用しやすくなります。

③離婚に伴い財産分与

相続や生前相続とは状況が異なりますが、夫婦間での不動産の名義変更としては、離婚に伴う財産分与も少なくありません。
離婚をすれば、それまで一緒に生活していた自宅をどうするかという問題が生じます。

財産分与であって、贈与ではありませんので、基本的に贈与税が課税されることはありません。ただし、財産分与とは名ばかりの実質的には贈与と認められるような場合には贈与税が課税されることになりますので注意が必要です。

また、財産分与は離婚が成立してから行うことになりますので、離婚が成立する前に財産分与を理由として不動産の名義変更をすることはできません。離婚成立前に名義変更をすると贈与となってしまいますので、名義変更のタイミングには注意しましょう。

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家の名義変更が必要となるタイミング

家の名義変更は、先ほど紹介した相続や生前贈与などの事由が生じたら、できるだけすぐに行います。名義変更をしないままでは、第三者に対して、自分が正式な名義人であることを主張することができないためです。

ただし、記事を執筆している2023年1月現在、家の名義変更に特に期限はありません。つまり、放置すればトラブルの原因となる可能性こそあるものの、いつまでにすべきという明確な決まりはないということです。

しかし、このことが家や土地の名義変更が長期にわたって放置されることの原因になっているとして、社会問題となっています。これを受け、登記について定めている「不動産登記法」などが改正されました。

改正法が施行される令和6年(2024年)4月1日以後は、相続で不動産を取得したことを知ってから3年以内に相続登記を済ませなければなりません。また、正当な理由がないのに期限に遅れた場合には、10万円以下の過料の対象となります。

そのため、今後はよりすみやかに家の名義変更手続きを行う必要が生じるでしょう。

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夫(妻)が亡くなった場合、名義は配偶者か子供どちらが良い?

夫婦間の不動産の名義変更について解説してきましたが、そもそも、夫婦の一方が亡くなった場合には、不動産の名義はもう一方の配偶者に変更するのが本当に一番良いのでしょうか?

実は、配偶者ではなく、子供に名義変更するほうがいいと考えられるケースはあります。また、最終的に子供にどのように財産を承継していくかまで考える場合は、かなり複雑なことまで考慮する必要がありますので、場合によっては専門家への相談を検討することもおすすめします。

どちらに名義変更するかはケースバイケース

夫婦の一方が亡くなった時に、不動産の名義を配偶者に変更するのか、子供に変更するのかは一概にどちらが正しいということは決まっているものではありません。

不動産の名義変更についてはどうするのが一番いいのかを十分に検討する必要がありそうです。

それではここで、最終的に不動産を引き継ぐ子供が決まっている場合と、兄弟姉妹間でいわゆる遺産争いが想定される場合について説明します。

引き継ぐ「子」が決まっているケース

最終的に財産を遺したい子供が既に決まっているのであれば、配偶者ではなく、子供に直接相続させるのも選択肢の一つです。というのも、不動産の登記には登録免許税や、司法書士へ依頼した場合はその報酬などの費用がかかるため、夫から妻、妻から子供、というように一度妻を経由して相続させると、2回分の登記費用がかかってしまいます。

これに対し、夫から直接子供へ相続させた場合は1度の登記で済ませることができます。ただし、登録免許税は法定相続人なのか、そうでないのかで税率が異なります。そのため、法定相続人以外に遺贈する場合には、必ずしも1度の登記だから安くなるというわけではないので注意しましょう。

2次相続は揉めるケースが多い

夫婦の一方が亡くなって相続が開始し、その後、もう一方の配偶者が亡くなってさらに相続が開始した場合など、この2番目の相続を2次相続と言います。

夫も妻もどちらとも亡くなった後の2次相続では、兄弟姉妹間で誰が相続するかで揉め事に発展するケースが多いです。したがって、両親のどちらかが生きている間には、不動産の相続について十分に話し合って、予め子供の誰かに相続しておくのも一つの選択手段といえます。

子供へ引き継ぐにはどうするべきか?

最終的に子供にどのように財産を承継していくかまで考える場合は、相続か、生前贈与か、誰に相続させるかなど、何が最適かは具体的な状況によって異なります。

どういうことか、一例ではありますが、具体例をあげて解説します。

  • 夫婦ともに再婚
  • 夫には前妻の子供がいる
  • 妻には前夫との子供がいる

この場合、夫が先に亡くなって、夫の所有していた不動産を妻へ相続によって名義変更したとします。その後、妻が亡くなった際には妻の子供だけが不動産を相続することになります。

反対に、妻が先に亡くなった場合を考えてみます。この場合、妻が亡くなっても夫の所有する不動産の名義変更はありません。そのため、夫が亡くなった際には夫の子供だけが不動産を相続することになります。

いかがでしょうか?こちらの例では、亡くなる順番で全く結論が異なります。亡くなる順番で結論が左右されますので、相続によらずに、生前贈与を選択することも1つの手段として考えられます。こちらでは詳しく解説しませんが、不動産信託を利用する方法もあります。

また、この例においても、最終的にどのようにするのが最適なのかは、結局のところ、本人にしか分からないと思います。子供との関わり合いによっては、自分の子供に財産を遺したいと考えるかもしれませんし、配偶者の子供に財産を遺したいと考えるかもしれません。または、それぞれ平等に遺したいと考えているかもしれません。

上記の例はやや特殊な家族関係ではありますが、上記の例のようなケースに限らず、どのようなケースであっても、最終的にどうしたいかまでをご自身でよく考え、相続で財産を遺すのか、生前贈与をするのかも含めて検討していく必要があります。

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相続での家の名義変更の流れ

相続で家の名義変更をするまでの基本の流れは、次のとおりです。

家を相続する人を決める

はじめに、家を相続する人を決めます。

被相続人が遺言書を遺しており、その遺言書内で家を相続する人が定められていたのであれば、その遺言書に従います。一方、遺言書がない場合などには、遺産分割協議によって家を相続する人を決めます。

遺産分割協議とは、相続人全員で行う、遺産分けの話し合いのことです。遺産分割協議を成立させるには相続人全員の合意が必要であり、一人でも協議に参加しない人がいたり、一人でも協議内容に納得しない人がいたりすれば、協議を成立させることができません。

必要書類を準備する

次に、相続での家の名義変更に必要となる書類を準備します。必要となる書類は、次でくわしく解説します。

登記申請をする

必要書類の準備ができたら、書類をとりまとめて相続登記を申請します。相続登記を申請する方法には、次の3パターンがあります。

  • 法務局の窓口へ持ち込んでの申請
  • 郵送申請
  • オンライン申請

登記申請に慣れていない場合には、法務局の窓口へ持ち込んで申請すると良いでしょう。軽微な不備であればその場で指摘され、すぐに修正できる可能性があるためです。

なお、相続登記の申請には管轄があり、どこの法務局に持ち込んでも良いわけではありません。家の名義変更登記の管轄は、その家の所在地を管轄する法務局です。

あらかじめ法務局のホームページなどで管轄を確認し、管轄を誤らないよう注意しましょう。

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相続での家の名義変更の必要書類

相続での家の名義変更に必要となる主な書類は、次のとおりです。なお、ここで紹介するのは、遺産分割協議で家の取得者を決めた場合における、基本の必要書類です。

状況によってこれら以外の書類が必要となることもありますので、自分で書類の準備をする場合には、あらかじめ管轄の法務局の事前相談などで必要な書類についても確認しておくと良いでしょう。

登記申請書

登記申請書は、家の名義変更のメインとなる書類です。原則としてここに記載したとおりの内容で登記がされますので、誤りのないよう正確に記載しましょう。

登記申請書の記載例は法務局のホームページに掲載されていますので、こちらが参考となります。

遺産分割協議書

遺産分割協議書とは、遺産分割協議の結果をまとめた書類です。誰がその家の名義を取得することになったのかがわかるよう、明確に記載しましょう。

家については、あらかじめ名義変更をしたい家の全部事項証明書を法務局から取り寄せたうえで、全部事項証明書の表記に従って記載します。遺産分割協議書には、全員が記載の内容で合意していることの証明として、相続人全員の署名と実印での捺印が必要です。

相続人全員の印鑑証明書

遺産分割協議書に押した印が実印であることの証明として、相続人全員の印鑑証明書が必要です。印鑑証明書を代わりに取るためには印鑑登録カードなどを預かる必要がありますので、それぞれ本人に取得してもらうことが多いでしょう。

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等

相続人を確定するため、被相続人の被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本が必要です。それぞれ、その時点で本籍を置いていた市区町村役場から取得しましょう。

相続人全員の戸籍謄本

相続人が存命であることを証明するため、相続人全員の戸籍謄本が必要です。それぞれ、本籍地の市区町村役場で取得します。

被相続人の除票

家の登記上の名義人と被相続人とが同一人物であることを確認するため、被相続人の除票が必要です。除票は、被相続人の最後の住所地を管轄する市区町村役場で取得できます。

家を相続する人の住民票

新たに家の名義人となる人の情報を正しく登記するため、家を取得する相続人の住民票が必要です。住所地を管轄する市区町村役場で取得します。

家の固定資産税評価証明書

次で解説する登録免許税額を正しく算定するため、家の固定資産税評価証明書が必要です。固定資産税評価証明書は、家の所在地である市区町村役場で取得します。

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相続での家の名義変更でかかる費用

相続での家の名義変更には、どの費用がいくらかかるのでしょうか?主にかかる費用は、次のとおりです。

なお、「司法書士報酬」は司法書士へ家の名義変更手続きを依頼した場合にのみかかります。一方、「登録免許税」と「必要書類の取得費用」は、家の名義変更を自分で行う場合にもかかる費用です。

司法書士報酬

家の名義変更手続きを司法書士へ依頼した場合には、司法書士報酬がかかります。報酬額は法律で決まっているわけではないため事務所ごとに異なっており、一律の金額ではありません。

一般的な相場としては、8万円から10万円程度であることが多いでしょう。ただし、名義変更をする不動産の数が多い場合や相続人の数が多い場合には、加算される場合もあります。

また、遺産分割協議書の作成や必要書類の収集代行などから依頼した場合には、別料金がかかることも少なくないでしょう。

いずれにしても、報酬額や報酬の算定方法は事務所ごとに異なるため、正確な金額を知るためには、依頼を検討している先の司法書士から見積もりを取ることが必要です。

登録免許税

家の名義変更をする際には、登録免許税という税金がかかります。相続による家の名義変更でかかる登録免許税額の計算方法は、原則として次のとおりです。

  • 登録免許税額(相続)=課税標準額(名義変更をする家の固定資産税評価額)×1,000分の4

※課税標準額は1,000円未満切り捨て。登録免許税額は100円未満を切り捨て、1,000円未満となるときは1,000円

たとえば、名義変更をする家の固定資産税評価額が2,000万円である場合の登録免許税額は8万円、家の固定資産税評価額が1,000万円である場合の登録免許税額は4万円となります。

家の評価額が高い場合には登録免許税額も高額となりますので、あらかじめ試算をして心づもりをしておくと良いでしょう。

必要書類の取得費用

家の名義変更には、上で解説をしたとおり、さまざまな書類が必要となります。これらの書類の取得費用は相続の状況によって異なるものの、おおむね5,000円から1万円程度となることが一般的です。

ただし、相続人が被相続人の兄弟姉妹や甥姪である場合には取得すべき書類が多くなるため、さらに1万円ほどの費用が掛かることが多いでしょう。

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まとめ

家の名義変更の方法について解説してきました。夫から妻への名義変更のことだけ考えれば、それほど難しいものではありません。

ただし、最終的に誰に財産を引き継ぎたいのかなどまで考えると、かなり複雑なことまで検討する必要がありそうです。夫婦の財産をどうするのか、場合によっては専門家の意見も取り入れつつ、夫婦でよく検討し、よく話し合うようにしましょう。

また、相続での家の名義変更には、さまざまな書類が必要となります。これらの書類を自分ですべて集めることは、容易ではないでしょう。

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この記事を監修した専門家は、
牛腸真司
税理士
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。