【2024】土地の相続手続きの流れは?相続税・評価額計算・登記方法

土地の相続手続き不動産
この記事を監修した専門家は、
牛腸真司
税理士
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。

ご家族が亡くなり相続が起きたとき、遺産の中に土地があるとさまざまな手続きが必要になります。土地の相続ではある程度費用がかかり遺族の間で揉めることも多いため、土地の相続で重要になるポイントを理解しておくことが大切です。

そこでこの記事では、相続財産に土地が含まれる場合の遺産の分割方法や土地の相続にかかる費用、相続登記や相続税申告など、土地の相続で必要な知識を解説します。

目次

土地を相続するときの手続きの流れ

相続に伴う手続きにはさまざまなものがあり、一つひとつの手続きを確実に進める必要があります。故人の遺産を受け継ぐ際に「遺産を私が相続します」と宣言すれば済むわけではありません。土地を相続するときには、およそ次のような流れで手続きを進めます。

土地を相続する手続き
  1. 相続人調査・相続財産調査
  2. 遺言書の有無の確認
  3. 遺産分割協議
  4. 相続登記・相続税申告

ステップ①:相続人調査・相続財産調査

遺産を相続する権利を持つ相続人は法律(民法)で決まっているため、親族であれば誰でも遺産を相続できるわけではありません。亡くなった方の遺産を誰が相続できるのか、まずは相続人調査が必要です。故人の出生から死亡までのすべての戸籍を取り寄せて確認を行います。

そして、遺産に何が含まれるのかも把握しなければならないため、相続財産調査も必要です。自宅で遺品整理をしたり金融機関の口座の残高を確認したりして、借金などのマイナスの遺産がないかどうかも確認します。

ステップ②:遺言書の有無の確認

遺言書があるかどうかで手続きの流れが変わるため、遺言書の有無を確認します。まずは自宅の中を探して遺言書がないかを確認して、もしも自宅などで自筆証書遺言が見つかった場合には家庭裁判所で検認の手続きを行ってください。

また、公正証書遺言が作成されている場合もあるので、公証役場で照会手続きを行いましょう。すべての遺産の分け方が遺言書で指定されている場合は、その内容に従って遺産を相続します。

ステップ③:遺産分割協議

遺言書が残されておらず相続人が2人以上いるようなケースでは、遺産をどう分けるのか相続人同士で話し合って決めなければなりません。この話し合いが「遺産分割協議」で、現預金や株式、土地、自宅家屋、借金など、相続財産調査で把握した遺産の分け方について話し合います。

そして、協議して合意した内容を記載するのが「遺産分割協議書」です。遺産分割協議書を作成する法的な義務はありませんが、土地の相続では相続登記などの手続きの際に必要になることが多いため、一般的に遺産分割協議書を作成します。

ステップ④:相続登記・相続税申告

遺産分割協議をして誰が土地を相続するか決まったら、故人の名義になっている土地を相続する人の名義に変える相続登記の手続きを行います。また、土地のような高額資産が遺産に含まれるケースでは相続税の申告義務が生じることも多いため、相続税申告も必要です。

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土地の相続登記を放置した場合のデメリット

土地の相続手続き(相続登記)を行うことなく放置した場合には、次のようなデメリットが生じる可能性があります。

デメリット
  • 売却や抵当権の設定などができない
  • 第三者に権利を主張できない
  • 時間が経てば経つほど手続きが大変になる可能性が高い
  • 2024年4月以降は罰則の対象となる

売却や抵当権の設定などができない

土地の相続登記をせず、土地の名義が故人のままである間は、その土地を売却することができません。

また、金融機関から融資を受ける際などには、土地を担保に入れ、抵当権(もし借金が返せなくなった場合に、金融機関が土地の売却代金から借金の返済を受ける権利)を設定することがしばしば求められます。この抵当権の設定も、土地の名義が故人のままでは行うことができません。

売却や抵当権の設定などを行うには、あらかじめ土地の相続登記を済ませておく必要があります。

第三者に権利を主張できない

土地が故人名義のままでは、せっかく取得した土地の権利を第三者に主張することができません。

たとえば、「長男に相続させる」との有効な遺言書があったにもかかわらず、長男が土地の名義変更を放置している間に、二男にお金を貸している相手(「債権者」といいます)が、土地のうち二男の法定相続分を差し押さえて売却してしまう可能性があります。

この場合、相続登記を放置した長男が、債権者から土地を取り戻すことは困難です。土地の相続登記を放置することは、このようなトラブルの原因となってしまいかねません。

時間が経てば経つほど手続きが大変になる可能性が高い

土地の売却や抵当権設定の必要性が生じてから遺産分割協議や相続登記をしようと考えていても、いざ手続きをしようとした際にスムーズに相続登記ができるとは限りません。

むしろ、相続が起きてから時間が経っていれば経っているほど、相続登記は大変になる傾向にあります。なぜなら、時間が経てば相続人の中に亡くなる人が生じて代替わりが生じたり、相続人が認知症になるなど相続人の状況が変わってしまったりする可能性が高くなるためです。

2024年4月以降は罰則の対象となる

2022年現在、土地の相続登記には特に期限はありません。しかし、このことが所有者不明土地増加の原因になっているとして、社会問題となりました。

その結果、不動産登記法などが改正され、2024年4月の改正法施行後は相続登記に期限が設けられることとなっています。

改正法施行後は、相続での不動産取得を知った日から3年以内に相続登記をしなければなりません。正当な理由なく期限内に登記をしなかった場合には、10万円以下の過料に課される可能性があります。

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土地を相続するときに必要な費用

土地を相続するときにはさまざまな費用がかかります。主な費用を挙げると次のとおりです。

土地の相続でかかる主な費用
  1. 相続税
  2. 登録免許税
  3. 必要書類の取得費用
  4. 専門家に依頼した場合の支払報酬

遺産のほとんどを不動産が占めて現金があまりない場合には、これらの費用に充てる資金を相続人が自分で用意しなければなりません。土地の相続でかかる費用の目安額を把握しておくことが大切なので、どれくらいの費用がそれぞれかかるのかを確認しておきましょう。

費用①:相続税

遺産の総額が「相続税の基礎控除額」を超える場合には、相続税がかかります。

  • 相続税の基礎控除額 = 3,000万円 + (法定相続人の数) × 600万円

相続税の計算方法は後述しますが、たとえば現金5,000万円を子1人が相続した場合の相続税額は160万円です。遺産額が基礎控除額を下回れば相続税はかかりませんが、土地のような高額な資産を相続するケースでは、基礎控除額を上回ることが多くなります。

ただし、土地の相続では税額が安くなる特例制度を適用できることも多く、相続税がゼロというケースも少なくありません。

費用②:登録免許税

土地の名義変更の手続きである相続登記を法務局で行う際、「登録免許税」という税金がかかります。相続で土地を取得する人にかかる登録免許税の税額は、課税標準に税率基本的に0.4%をかけた金額です。

市区町村役場で取得できる固定資産評価証明書に課税標準が記載されていて、たとえば課税標準が2,000万円の土地であれば、0.4%にあたる8万円の登録免許税の納付が必要になります。

費用③:必要書類の取得費用

相続に伴う各種手続きでは、事前にさまざまな書類を揃えなければなりません。必要書類はケースによって異なりますが、次のように多くの書類が必要になります。

必要書類
  • 故人の戸籍謄本
  • 故人の住民票戸籍の附表
  • 故人の住民票の除票
  • 相続人の戸籍謄本
  • 相続人の印鑑証明書

土地の相続では、固定資産評価証明書なども必要です。一つひとつの書類の発行費用は数百円ほどですが、枚数が多いと思いのほか費用がかかります。

なお、不動産の相続登記をそうぞくドットコムに相談・依頼すれば、必要書類の取得費用も込みで定額で登記手続きのサポートを受けられるのでおすすめです。

費用④:専門家に依頼した場合の支払報酬

土地の相続登記を司法書士に依頼した場合の報酬額は司法書士ごとに異なりますが、相場としては土地の筆数や申請1件ごとに6万円~8万円ほどです。登記を自分でやる人はこの費用はかかりませんが、登記を今までにやったことがない一般の方が自分で手続きするのは簡単ではありません。

報酬を支払ってでも司法書士に任せた方が、結果的に負担が少なく済むため、専門家に相談・依頼したほうが良いでしょう。

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土地を相続するときの分割方法

一口に「土地を相続する」と言っても、土地の相続の仕方には異なる複数の方法があります。具体的には次の4つの方法があるので、それぞれの方法の特徴を理解しておくことが大切です。

土地を相続するときの分割方法
  1. 現物分割
  2. 代償分割
  3. 換価分割
  4. 共有分割

相続が起きたときの状況によって選択すべき方法は異なります。土地を相続するときに適切な遺産分割方法を選択できるようにしておきましょう。

方法①:現物分割

現物分割とは、遺産を現物のままそのままの形で相続人の間で分けて相続する方法です。たとえば、広い土地を分筆して相続するのが現物分割にあたります。

また、遺産が土地3,000万円と現金3,000万円で、相続人である兄弟2人の一方が土地を、もう一方が現金を相続して3,000万円ずつ遺産を分けるような場合も、現物分割に該当します。

現物分割のメリットは、大切な遺産をそのままの形で相続できることです。ただし、分割が難しい財産が遺産に多く含まれるケース、たとえば土地があまり広くなくて分筆が難しいような場合は、現物分割は難しいため他の方法を検討することになります。

方法②:代償分割

代償分割とは、ある相続人が特定の遺産を相続する代わりに、代償として現金などの自分の資産を他の相続人に渡す方法です。
たとえば、相続人が兄弟2人で、兄が土地3,000万円を、弟が現金1,000万円を相続したケースで、兄が自分の預貯金の中から1,000万円を弟に渡すような場合が該当します。

最終的に兄弟それぞれが受け取った財産額がともに2,000万円になり、公平性を保てる点が代償分割のメリットです。ただし、代償として渡せる財産があることが前提なので、相続人が現預金などの代償財産を持っていなければ代償分割は行えません。

方法③:換価分割

換価分割とは、遺産を売却して得た現金を相続人の間で分ける分割方法です。現金にするので平等に分けることができる点がメリットですが、逆に故人が残した大切な遺産をそのままの形で受け継げない点がデメリットです。

また、そもそも遺産に売却できるだけの価値があることが前提で、買い手が見つからなければ換価分割はできません。遺産に土地が含まれる場合、土地がある場所によっては買い手が見つからないこともあり、このような場合には換価分割を行うのは難しくなります。

方法④:共有分割

共有分割とは、遺産の名義を相続人の共同名義にして共有する方法です。土地を相続する場合には共有名義にすることができ、平等に分けることができます。

ただし、土地を共有名義にしてしまうと、土地を売却する場合などに共有名義人全員の同意が必要になり、土地の有効活用の妨げになるケースも少なくありません。土地を相続する場合には、共有分割ではなく他の3つの遺産分割の方法の中から選択すると良いでしょう。

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土地の相続登記

土地を相続する場合には、法務局で相続登記の手続きを行います。土地の正式な所有者として登録するための大切な手続きです。相続登記の手続きの流れや必要書類、費用について確認していきましょう。

手続きの流れ

登記申請書に必要書類を添付して提出します。相続登記の手続きをする場所は、不動産の所在地を管轄する法務局です。

法務局で登記事項証明書を取得して登記申請書に必要事項を記入し、市区町村役場に行って戸籍謄本等の書類を事前に揃えます。

必要書類

ケースによって必要書類は異なりますが、相続登記では主に次の書類が必要です。

必要書類
  • 亡くなった方の戸籍謄本や住民票、住民票の除票
  • 土地を相続する相続人の戸籍謄本や住民票
  • 固定資産評価証明書

遺言書による相続の場合には遺言書を、遺産分割協議による相続の場合には遺産分割協議書や印鑑証明書を添付します。

費用

市区町村役場などで必要書類を発行する際に1通につき数百円ずつの費用がかかります。また、登録免許税の納税も必要です。

土地の評価額と登録免許税の計算方法

土地の相続登記をする際にかかる登録免許税の税額は、次の式で計算します。

  • 登録免許税の税額 = 課税標準 × 税率

登録免許税の計算で使う土地の価格、つまり課税標準は固定資産評価証明書に記載されているため、まずは固定資産評価証明書を自治体の窓口で発行してもらいます。

記載されている固定資産税評価額の1,000円未満を切り捨てた金額に税率0.4%をかけ、算出した金額に100円未満の端数があれば切り捨てます。

たとえば、固定資産評価証明書に記載された土地の価格(固定資産税評価額)が1,510万8,500円のケースであれば、登録免許税の税額は次のとおりです。

  • 登録免許税の税額 = 1,510万8,000円 × 0.4% =6万0,432円 ⇒ 6万0,400円

相続登記に期限はないが早めに終えることが大切

相続登記は、土地を相続する上で大切な手続きです。手続き期限は特にないため、仮にいつまでも手続きせずに放置しても罰則はありません。

ただし、相続登記が完了していないことで不利益を被る可能性があります。そのため、土地を相続することが決まったら早めに登記を終えることが大切です。

土地を売却したり担保に入れたりする際には土地の登記が完了していないとできませんし、場合によっては他の相続人の債権者に土地を差し押さえられるリスクまであります。

もしも登記の手続き方法がよくわからなくて困っている場合には、必要書類の取得代行から登記の手続きサポートまで行っているそうぞくドットコムに相談してみてください。

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土地の相続税申告

遺産を相続するときには、相続税の納税や申告義務があるのかを正しく判断して、義務がある場合には期限までに手続きをしなければいけません。

土地にかかる相続税が軽減される特例制度を使えば相続税がゼロになるケースもありますが、相続税がかからない場合でも申告が必要になるケースもあるため注意が必要です。

ここでは、相続税の計算方法や土地の相続で使える特例制度、相続税の申告期限を解説します。

相続税の計算方法

相続税は次の順序で計算していきます。

相続税の計算手順
  1. 遺産額の計算:相続税の課税対象となる遺産額を計算
  2. 課税遺産総額の計算:遺産額から基礎控除額を控除
  3. 相続税の総額の計算:各自が法定相続分に基づいて相続した場合の相続税額を計算して合計
  4. 各自の納付税額の計算:上記の相続税の総額を各自の実際の相続割合に基づいて按分

たとえば、遺産が現金5,000万円のみで相続人が子1人の場合、相続税は次のように計算できます。なお、相続人が1人なので、基礎控除額は3,600万円(=3,000万円+600万円×1人)で、相続税の税率は遺産額に応じて変わりますが、この事例では15%です。

相続税の計算
  1. 遺産額:現金5,000万円
  2. 課税遺産総額:遺産額5,000万円 – 基礎控除額3,600万円 = 1,400万円
  3. 相続税の税額:課税遺産総額1,400万円 × 税率15% - 50万円 = 160万円

相続人が複数人いる場合には、法定相続分に基づいて相続した場合の税額をいったん計算する必要がありますが、相続人が1人のケースでは、上記のようにシンプルに計算ができます。

土地の相続税評価額の計算方法

相続税の計算をする際、個々の遺産の価格を適切に算定する必要があります。土地の場合は、価格の評価方法が2種類あり、いずれかの方法で計算します。

土地の価格評価方法
  • 路線価方式:土地の面積などをもとに算出する
  • 倍率方式:固定資産税評価額に一定の倍率をかける

相続する土地がどちらの評価方式が適用される土地なのかは、あらかじめ確認が必要です。また、その土地固有の事情が考慮されて、相続税の計算上の価格が減額されることもあります。

たとえば、崖地や電線の下の土地、線路沿いで騒音がひどい土地などは、評価額が下がって相続税が軽減される可能性があります。

相続税を安くする方法

相続税の特例制度を適用できる場合には、税額が大幅に安くなります。特例制度の条件を満たす人が土地を相続することで、相続税負担を抑えることが可能です。

小規模宅地等の特例制度

小規模宅地等の特例制度とは、相続する土地の価格を50%または80%減額してから相続税を計算できる制度です。たとえば、故人と一緒に暮らしていた人が宅地を相続する場合、一定の要件を満たすと土地の価格が相続税の計算上80%減額されます。

1億円の土地でも20%にあたる2,000万円しか課税対象にならないため、節税効果が非常に大きい制度です。

配偶者の税額軽減

配偶者の税額軽減とは、配偶者が遺産を相続する場合に、最低でも1億6,000万円まで相続税がかからず非課税になる制度です。配偶者は故人の資産形成に寄与した存在として当然に遺産を相続する権利があるので、相続税の計算でも税負担が軽くなるように考慮されています。

相続税の申告期限

相続税の申告期限は「相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月」です。相続税の申告義務があるにも関わらず10ヶ月以内に手続きを行わないと、延滞税などの罰金を科されてしまいます。

申告を行う場所は、亡くなった被相続人の最後の住所地を管轄する税務署です。申告義務がある場合には、期限までに必ず手続きを行うようにしてください。

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土地を相続するときのケース別ポイント

土地を相続する場合、どのような土地を相続するのかによって考慮すべきポイントが異なります。建物が何も建っていない更地を相続する場合もあれば、アパートなどの賃貸物件と共に土地を相続する場合もあり、土地の相続と言っても状況はさまざまです。

ここでは、次の6つのケースに分けて、それぞれの土地の相続でポイントになる点を紹介していきます。

土地を相続する際のケース
  1. 「更地」を相続する場合
  2. 「土地と建物」を相続する場合
  3. 「借地権」を相続する場合
  4. 「マンション」を相続する場合
  5. 「アパート」などの賃貸物件を相続する場合
  6. 相続した土地をすぐに売却する場合

ケース①:更地を相続する場合

更地の土地を相続する場合は、土地活用の選択肢が比較的多いケースです。相続後に建物を建てて住んだり事業を行ったりすることもできますし、売却して現金を得ることもできます。

ただし、更地になっている理由が、使い道がなくて買い手も見つからず故人が放置していたようなケースでは注意が必要です。
そのような土地を相続してしまうと、相続しても買い手が見つからず、行政に寄付を申し出ても拒否されて固定資産税などの費用負担だけがかかってしまいます。

更地であっても相続して所有すると一定の費用はかかるため、相続するのか相続放棄するのかはしっかり検討するようにしてください。

ケース②:土地と建物を相続する場合

故人が土地と建物(自宅)を所有し、故人と一緒に相続人が住んでいた場合には、引き続きそこで生活する必要があるため、その相続人が土地・建物を相続します。小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減によって相続税がかからないケースもありますが、逆に相続税がかかる場合には不動産を売却しないため、別途納税資金の準備が必要です。

また、不動産を相続する配偶者が高齢の場合には、相続して数年住み続けた上で売却し、売却で得た資金を介護施設などの入居費に充てるケースも考えられます。土地を相続する段階で不動産鑑定士などの専門家に売却価格の見積りを出してもらうと、その後の資金計画やライフプランを立てやすくなるでしょう。

ケース③:借地権を相続する場合

自宅を相続する場合、自宅がある土地が借地のケースもあります。土地を借りて使う権利である借地権も相続の対象になるため、相続する人は借地権を相続する旨を地主に伝えましょう。

なお、借地権を譲渡などする際には地主の許可がないとできませんが、相続によって借地権を得る場合は地主の許可は不要です。地主に拒否されて相続人が土地を明け渡さなければならないということはありません。

ケース④:マンションを相続する場合

分譲マンションを相続するケースでは、マンションが建っている土地全体を相続するわけではありません。相続税などの税金の計算では、持分割合を考慮して税額を計算することになります。

また、故人が生活していたマンションの一室を相続して相続人が住む場合には、リフォーム費用などがかかります。相続して何年か住んだ後に売却することを考えている場合には、売却価格やそもそも売却できるのかどうかにも注意が必要です。

築年数があまりに古いと売却が難しい可能性もありますし、マンションが乱立して供給過剰が起きている地域でも買い手がつかない場合があります。

ケース⑤:アパートなどの賃貸物件を相続する場合

故人が経営していたアパートなどの賃貸物件を相続する場合は、家賃などの収入と管理費などの支出を比較して利益を出せるのかをまず確認します。

相続して継続的に収益が得られれば問題ありませんが、費用のほうが多くかかって損失が出るようでは大変です。

不動産経営をしたことがない人がいきなり賃貸物件を相続してもわからないことが多いはずなので、不動産会社などに相談したほうが良いでしょう。

また、会社員など年末調整で所得税申告が完結している人でも、家賃収入として不動産所得(または事業所得)が生じると確定申告が必要になる場合があるため注意が必要です。

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相続した土地を売却したい場合のポイント

相続した土地を売却したい場合には、次のポイントを押さえておきましょう。

ポイント
  • あらかじめ相続手続きを済ませておく
  • 売却時の税金が安くなる可能性がある

あらかじめ相続手続きを済ませておく

すぐに売るのだから、相続登記は不要ではないかと考える人もいるかと思います。しかし、登記の仕組み上、故人名義のままでは売却することができません。売却に伴う名義変更に先立って、相続登記を済ませておくことが必要です。

なお、相続登記は今日申請したら明日完了するという性質のものではなく、たとえ申請書類がすべて完璧に揃っていたとしても、申請から登記の完了までには1週間から10日ほどの日数がかかります。

買い手が購入を急いでいる場合などには、相続登記をしていないことで売却の機会を逸してしまう可能性がありますので、あらかじめ相続登記までは済ませておくと良いでしょう。

売却時の税金が安くなる可能性がある

土地を売却して「儲け」が生じた場合には、その儲けに対して譲渡所得税がかかります。この場合の「儲け」とは、土地の売却価格から、その土地の取得費や譲渡にかかった費用を引いた残りの金額です。

相続した土地を売却した場合、土地の取得費は原則として故人が取得したときの対価を引き継ぎますので、取得時期が古い土地であれば儲けが出ることが一般的でしょう。

なお、取得費が不明な場合や売却価格の5%より低い場合には、取得費を売却価格の5%とみなして譲渡所得を計算することができます。譲渡所得税にはさまざまな軽減措置があり、中でも相続後に土地を売却した場合には、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」が使える可能性があります。

これは、その土地を取得した相続で土地を取得した人が相続税を支払っていた場合には、譲渡所得税の計算上、一定金額を土地の取得費に加算することができるという特例です。取得費が増えますので、結果的に計算上の儲けが減り、譲渡所得税が安くなります。

ただし、この特例を使うためには、土地の譲渡が相続税の申告期限前か、申告期限の翌日以後3年を経過する日までに行われなければなりません。相続が起きてからあまり時間が経ってしまうと特例が使えなくなりますので、この特例の適用を検討している場合には、譲渡の時期にも注意しましょう。

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土地を相続する際に相続税を引き下げる特例

その相続に相続税がかかる場合には、土地について相続税を引き下げる特例が使えるかどうか検討すると良いでしょう。土地は相続財産全体の中で大きな比率を占める場合が多く、相続税額を大きく減らす効果が期待できるためです。

土地にかかる相続税を引き下げることができる特例のうち代表的なものに、「小規模宅地等の特例」が存在します。この特例の内容は、次のとおりです。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、土地のうち一定面積までの部分を最大8割減(宅地等の種類によっては5割減)で評価することができる制度です。

小規模宅地等の特例の対象となる土地の範囲は広く設定されており、被相続人が住んでいた家の敷地のほか、被相続人が営む事業の用に供していた建物の敷地や、賃貸住宅の敷地も対象となります。

特例の適用にはその土地の用途や取得者などに細かな要件がありますので、相続税にくわしい税理士へ相談したうえで、漏れなく適用を受けることをおすすめします。なお、この特例の適用を受けるためには、申告期限までに相続税の申告をしなければなりません。

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土地の相続で揉めないためにできる対策

さまざまな相続財産の中でも、土地は特に高額な資産なので、誰が土地を相続するのか揉めることも少なくありません。
相続が争族にならないためには事前に対策を行うことが大切です。ここでは、土地の相続で揉めないためにできる対策を紹介します。

土地の相続でトラブルにならないための対策
  • 相続の開始前から親族で話し合う
  • 遺言書を作成する

対策①:相続の開始前から親族で話し合う

相続トラブルが起きるのは、感情的な対立や意思疎通の欠如が原因であることが少なくありません。親が生きている間は親がストッパーの役割を果たして兄弟の対立が表面化しなくても、親が亡くなった途端に遺産相続に対する考え方の違いからいきなり争族に発展する場合もあります。

そのため、親が生きているうちから親族で集まって財産の相続の方法について話し合っておくことが大切です。感情的な対立を少しでも緩和する努力を相続開始前から行っておけば、相続トラブルになるリスクを下げることができます。

対策②:遺言書を作成する

遺産を相続する相続人の間で揉めるケースとは、つまり遺言書が残されていないケースです。財産を残す側が生前に遺言書を作成して、誰がどの財産を相続するのかを指定してしまえば、相続人同士で揉める余地がなくなります。

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土地を相続したくないときは相続放棄を検討する

ご家族が亡くなって相続が起きたとき、遺産を相続しない相続放棄を行うこともできます。ただ、相続放棄の手続きには期限が決まっているので、土地を相続しないために相続放棄をする場合には注意が必要です。相続放棄の手続きの流れや手続き期限など、相続放棄についても確認しておきましょう。

相続放棄をすべきケース

相続放棄をすべきケースには主に2つあり、借金などのマイナスの遺産が多い場合と、遺産を相続しても使い道がなくて困る場合です。

まず、相続では現預金や不動産などのプラスの資産だけでなく、借金などのマイナスの資産も相続の対象になります。
故人に多額の借金がある場合、借金の返済義務を負わないためには相続放棄が必要です。また、田舎など遠方の土地を相続しても使い道がなくて困るようなケースでも、相続放棄を行う場合があります。

手続きの流れ

相続放棄の手続き場所は、故人が最後に住んでいた地域の家庭裁判所です。相続放棄の申述書に必要書類を添付して提出します。

必要書類

相続放棄の申述書に加えて次の書類が必要になります。

必要書類
  1. 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
  2. 申述人(放棄する方)の戸籍謄本
  3. 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

さらに、相続放棄をする人が誰かによって、追加で必要になる書類が異なります。相続放棄をする人ごとの必要書類は、裁判所ホームページの「相続の放棄の申述」に記載されているので確認してみてください

費用

相続放棄に必要な費用は、収入印紙800円分と連絡用の郵便切手です。郵便切手の金額は事前に家庭裁判所に確認するようにしてください。

相続放棄の手続き期限

相続放棄ができるのは「自己のために相続があったことを知ってから3ヶ月以内」です。この期間を過ぎてしまうと原則として相続放棄はできません。遺産をすべて相続してしまうので、相続放棄を行う場合は必ず期限までに手続きを行ってください。

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土地の相続の相談でよくある疑問

最後に、土地の相続についてよくある疑問を2つ紹介します。

土地を相続したら税金はかかる?

土地を相続したらどのような税金がかかるのかと、不安に感じる人は少なくないでしょう。土地の相続でかかる税金とかからない税金は、それぞれ次のとおりです。

相続税

相続税は土地単体にかかるものではなく、その相続で受けた遺産全体についてかかる税金です。先ほど解説したように、その相続での遺産全体が相続税の基礎控除額(=3,000万円+法定相続人数×600万円)を超える場合には、相続税の対象となります。

登録免許税

土地を相続して、名義変更をする際には、登録免許税の対象となります。先ほど解説したように、原則として登録免許税の額はその土地の固定資産税評価額の1,000分の4です。

 

なお、相続人ではない人が遺言で土地を取得した場合の登録免許税額は、その土地の固定資産税評価額の1,000分の20となります。

不動産取得税

不動産取得税とは不動産を取得した際にかかる税金です。ただし、相続で土地や建物を取得した場合には、不動産取得税はかかりません。

なお、相続人ではない人が特定遺贈の遺言で土地を取得した場合には、例外的に不動産取得税の対象となります。特定遺贈とは、「この土地をAに遺贈する」のように、財産を個別で指定して遺贈することです。

一方、「財産のすべてをAに遺贈する」「財産のうち2分の1をAに遺贈する」のように財産を包括的に渡す遺言を、包括遺贈といいます。包括遺贈の場合には、渡す相手が相続人ではない人であったとしても、不動産取得税はかかりません。

所得税

所得税とは、毎年の所得(給与所得や不動産所得、事業所得など)に対してかかる税金です。不動産を相続しても、原則として所得税には影響ありません。

ただし、賃貸不動産を取得して賃貸収入を得た場合には、その賃貸収入が所得となりますので、儲けに応じて毎年の所得税がかかります。また、相続で取得した不動産を売却して儲け(譲渡所得)が出た場合にも、所得税の対象となります。

固定資産税

固定資産税とは、毎年1月1日時点の不動産所有者に対してかかる税金です。

固定資産税がかかるかどうかは、その不動産を取得した理由によって違いがあるわけではありません。そのため、相続で土地や建物を取得した場合であっても、売買など他の方法で不動産を取得した場合と同様に、毎年の固定資産税などの対象となります。

なお、土地や建物が市街化区域内にある場合には、固定資産税と併せて都市計画税も毎年課税されます。

相続人の中に認知症の人がいても手続きできる?

特に遺言書などがない場合において、相続人の中に認知症の人がいる場合には、そのままでは手続きを進めることができません。

先ほど解説したように、土地の相続手続きを進めるためには相続時に全員の話し合いである遺産分割協議が必要になるものの、認知症の人は自分で遺産分割協議に参加することができないためです。また、認知症の人を除外して行われた遺産分割協議は無効となりますので、認知症の相続人を無視して手続きを進めることもできません。

相続人の中に認知症の人がいる場合には、まず家庭裁判所で、成年後見人を選任してもらう必要があります。成年後見人とは、認知症などによって判断能力が低下してしまった人に代わって、財産管理や身上保護などの役割を担う人です。

成年後見人が選任されたら、原則としてこの成年後見人が認知症となった本人の代わりに遺産分割協議に参加します。

なお、成年後見人に誰がなるのか、最終的に決めるのは家庭裁判所です。家族などを候補者として挙げることはできますが必ずしもその候補者が成年後見人に選任されるとは限らず、現実的にはほとんどのケースで弁護士や司法書士などの専門家が選任されています。

また、たとえ遺産分割協議を発端として成年後見人を付けたとしても、遺産分割協議が終わったら役目を終えるわけではありません。いったん成年後見人が選任されたら、本人の能力が回復するか本人が死亡するまで、成年後見制度の利用を辞められない点にも注意が必要です。

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まとめ

土地を相続する場合には、相続登記や相続税申告などさまざまな手続きが必要になります。4つの遺産分割方法の特徴を理解した上で、適切な方法を選んで土地の遺産分割を行うことが大切です。

高額な資産である土地が相続財産に含まれるケースでは、相続争いが起きて揉めることも多いので、事前の対策からしっかりと行うようにしてください。

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この記事を監修した専門家は、
牛腸真司
税理士
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。