配偶者は相続税がほとんどかからない?配偶者控除とは

相続税
この記事を監修した専門家は、
牛腸真司
税理士
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。


被相続人=資産を残す人=亡くなった方
相続人=資産を受け継ぐ人=配偶者、子供、親せきなど


1.配偶者控除について

配偶者の税額軽減制度(以下、配偶者控除)は、相続税法19条の2で定められている制度であり、配偶者が支払う相続税において「1億6,000万円または配偶者の取得した遺産のうち法定相続分相当額のどちらか高い金額」が控除されるという制度です。
つまりケースによって控除額は異なりますが、ざっくりと理解するのであれば「最低でも相続財産1億6,000万円までは配偶者は相続税がかからない」と覚えるのが良いでしょう。
「どちらか高い金額」という言い回しについては、

  1. 1億6,000万円より高い場合 → その金額まで
  2. 1億6,000万円より低い場合 → 1億6,000万円まで

は、「相続税がかからない」と理解しましょう。

ケーススタディ①

4億円の財産を持っている夫が亡くなった場合
妻の法定相続分 → 2分の1(子供がいる場合) → 2億円
この場合 2億円>1億6,000万円 となるので①に該当し、妻は2億まで相続税がかかりません。

ケーススタディ②

2億円の財産を持っている夫が亡くなった場合
妻の法定相続分 → 2分の1(子供がいる場合) → 1億円
この場合 1億円<1億6,000万円 となるので②に該当し、妻は1億6,000万円まで相続税がかかりません。

このように配偶者控除を正しく理解するのであれば、上記のように「ケースによって控除額は異なる」と覚えるのが良いでしょうが、先ほども申し上げた通り、ざっくりと理解するのであれば「最低でも相続財産1億6,000万円までは配偶者は相続税がかからない」と覚えるのが良いでしょう。

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2.配偶者控除を利用できる人

配偶者控除を利用できるのは被相続人の”死亡時点”で法律上の婚姻関係にあった配偶者のみです。
つまり法的に「配偶者」として認められる方のみ適用可能となり、事実婚、内縁関係にある方の適用は認められません。
逆に「法的に認められている配偶者」であれば、別居中や離婚調停中などの状況にあっても、配偶者控除の適用が認められます。

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3.利用するには申告が必要

配偶者控除を利用する上で注意すべきことが1つあります。
通常、基礎控除によって相続税がかからない場合は、税務署への申告の必要がありません。しかし、配偶者控除については、控除適用によって相続税がかからない場合でも、税務署への申告を行う必要があります。
これは配偶者控除が「配偶者の相続財産額」によって適用額が異なるという性格を持つためであり、配偶者控除を適用する場合は「配偶者が被相続人から◯◯円を受け取ったか」と言う遺産分割の内容を税務署に知らせる必要があるのです。
つまり、仮に配偶者控除を適用した場合に、配偶者の相続税額が0円になったとしても、遺産分割の内容、受け取る財産の総額、配偶者控除の適用額、などを申告する必要があります。
また相続税の申告は申告期限までにする必要がありますが(被相続人の死亡日から10ヶ月以内)、分割方法が相続税の申告時に決まらない場合、その後3年以内に分割が実行されると「更正の請求」を行う事で、配偶者控除を後から適用することが可能で、納めすぎになった相続税を国から返してもらうことができます。

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4.2次相続まで考える必要がある

ここまでの話を聞くと「配偶者控除はかなりお得だ!」と感じ、相続人に配偶者が居る場合は、できるだけ配偶者に相続した方がお得になると考える方が多いのかも知れません。
しかし、実際の相続では配偶者控除の適用は「中長期の視点」になって考える必要があります。と言うのも相続では2次相続までを考えて、最適な選択を行うことが重要だからです。

1次相続

夫婦のどちらか一方が亡くなった場合に、その財産を配偶者と子に相続する場合

2次相続

残された配偶者が亡くなった場合に、その財産を子に相続する場合

既にお分かりの通り、配偶者控除は1次相続においては大きな効果を発揮し、税額軽減に役立ちます。しかし、2次相続では配偶者控除は使えないため、結果として1次相続で受け取った資産も含めて、2次相続で控除なしで、課税されるという状態になります。
そもそもの配偶者控除の成立の背景としては次のことが言えます。「配偶者は被相続人と共に資産を築いてきた関係があるため、その配偶者から税金を取るのは申し訳ない」と言う考え方です。
しかしこれは裏返すと「配偶者からは税金をあまり取らないけど、子供からはしっかり徴収しますよ」と言う考え方として汲み取ることが可能です。
具体的に、
● 1次相続で遺産相続を配偶者に寄せ配偶者控除を適用した場合
● 1次相続で遺産相続を子に寄せ配偶者控除を適用しなかった場合
とで2次相続まで含め、どれだけの税金がかかるのかを見てみましょう。
◆ ケーススタディ
夫の資産:2億円 妻の資産:5千万円 子ども:1人 の場合

単位:千円

  • 1次相続で100%妻に相続した場合、1次相続時は配偶者控除の適用によって0円となります。しかし、2次相続では妻が夫から受け取った資産、妻が元々持っていた資産の合計が子に相続され、かつ配偶者控除がないため、6,930万円の相続税が子に発生してしまいます。
  • 1次相続で0%妻に相続した場合、1次相続では3,340万円の相続税がかかります。しかし、2次相続ではたった160万円しか課税されず、1,2次の合計で3,500万円と、100%相続した時と比べて3,430万円得をすることが分かります。

上記の表では、相続人保護の観点から相続人の取り分を保障する遺留分を除外して計算しており、また1次と2次の間の相続税対策を考慮していないため、極端な例ではあります。
しかし、必ずしも「配偶者控除はお得である」と言う考え方を持つことは危険であり、2次相続まで考えた時に、損をすることもあると覚えておくのが良いでしょう。

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まとめ

いかがでしたでしょうか?配偶者控除は相続における多くのケースで適用する事が可能で、その効果も大きいため、内容を理解しておくことは凄く重要です。
しかし、必ずしもそれが中長期的に得になるかと言うとそうでは無いため、2次相続までを考えた上で、相続税対策を設計する事が重要です。

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牛腸真司
税理士
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。