相続が開始して遺産に土地が含まれる場合、相続登記などさまざまな手続きが必要になります。
相続人調査や相続財産調査にはじまり、相続税申告や相続登記を終えるまでの一連の手続きの流れを理解しておくことが大切です。
そこでこの記事では、土地を相続するときに必要な手続きや相続税の計算方法、土地の相続でかかる費用などについて解説します。
土地を相続するときの手続きの流れ
土地を相続するときには、一般的な相続で必要になる手続きに加えて相続登記が必要になります。
相続開始後の手続きの流れは次のとおりです。
- 相続人調査
- 相続財産調査
- 遺言書の有無の確認
- 遺産分割協議
- 相続登記と相続税申告
相続人調査
遺産を相続する権利を持つ法定相続人は法律で決まっています。
まずは、誰が相続人なのかを確認する必要があり、そのために行うのが「相続人調査」です。
相続人調査は、故人の出生から死亡までのすべての戸籍を収集して行います。
相続財産調査
相続人が相続する財産が何なのか、相続が開始したときには「相続財産調査」を行う必要があります。
現預金や不動産などのプラスの遺産だけでなく、借金などのマイナスの遺産も相続の対象です。
故人の部屋で遺品整理をしたり金融機関の残高照会を行ったり、借金がある場合には信用情報機関に照会したりして未返済額の確認なども行います。
遺言書の有無の確認
遺言書がある場合とない場合で、相続開始後の手続きの流れが変わります。
そのため、相続が開始したら故人が遺言書を残していないかどうか確認しなければなりません。
たとえば、相続人が2人以上いるケースでは、遺言書で財産の分け方がすべて指定されていれば遺産分割協議は行いませんが、遺言書がなければ遺産の分け方を決める遺産分割協議が必要です(「遺産分割協議」は次で説明します)。
故人の自宅に自筆証書遺言が保管されていないかを確認し、法務局で保管されていないかどうか照会の手続きを行います。
公正証書遺言が残されている場合もあるので、相続人になった方は公証役場でも照会手続きを行いましょう。
遺産分割協議
遺言書が残されておらず、遺産を相続する相続人が複数人いるようなケースでは、遺産をどのように分けるのか相続人同士で話し合って決めなければなりません。
遺産の分割方法について相続人同士で協議するのが「遺産分割協議」です。
遺産分割協議は、直接集まって行う形でも、メールや電話などで意見を交換・調整する形でも構いません。
ただし、遺産分割協議にはすべての相続人が参加する必要があり、参加すべき人が一人でも欠けた状態で行った遺産分割協議は無効です。
そして、遺産分割協議で合意できたら、合意した内容を「遺産分割協議書」としてまとめます。
遺産分割協議書を作成しなければならない法的な義務はありませんが、土地の相続登記などで必要になるので、実質的に遺産分割協議書の作成は必須です。
相続登記と相続税申告
土地を相続する場合には、土地の名義変更の手続きにあたる「相続登記」を行います。
また、相続税がかかるようなケースでは相続税の申告・納税が必要です。
相続税の申告・納税の期限は10ヶ月なので、申告や納税が必要な場合には期限までに忘れずに手続きを終えるようにしてください。
なお、相続税の計算方法については後述しますが、小規模宅地等の特例を使って税額がゼロになる場合のように、相続税の納税は必要なくても申告は必要なケースもあります。
土地を相続するときの相続登記の手続きの流れ
土地を相続するときに行う相続登記は、登記の専門家である司法書士に依頼することが一般的です。
ただ相続登記は自分で行うこともでき、次のような流れで手続きを行います。
- 登記事項証明書・固定資産評価証明書を取得する
- 戸籍などの必要書類を揃える
- 登記申請書を作成する
- 管轄の法務局に書類を提出して登録免許税を納付する
ステップ①:登記事項証明書・固定資産評価証明書を取得する
登記の手続きで提出する登記申請書には、登記の対象となる不動産に関する情報を記入します。
不動産に関する情報は登記事項証明書に記載された情報をもとに登記申請書に記入するので、まずは法務局に行って登記事項証明書の発行申請を行ってください。
法務局で発行申請をする際には、土地であれば「地番」、家屋であれば「家屋番号」が必要です。
地番や家屋番号がわからない場合は、固定資産評価証明書で確認できます。
なお、固定資産評価証明書は、登記の手続きの際に納付する登録免許税の税額を計算するためにも必要です。
登録免許税の計算で使う不動産価格を確認しなければならないので、市区町村役場で固定資産評価証明書の発行申請を行ってください。
ステップ②:戸籍などの必要書類を揃える
相続登記の手続きでは、登記申請書とあわせて故人の戸籍や住民票の除票、相続人の戸籍や住民票、固定資産評価証明書などを提出しなければなりません。
ただし、遺言に従って相続する場合や遺産分割協議を経て相続する場合など、ケースによって相続登記の手続き書類は異なります。
登記の手続きは不動産の所在地を管轄する法務局で行うので、管轄の法務局に問い合わせて事前に必要書類を確認しておきましょう。
ステップ③:登記申請書を作成する
登記申請書の用紙は法務局に行って受け取るか、下の法務局ホームページからダウンロードします。
- 不動産登記の申請書様式について(法務局ホームページ)
上記のサイトでは申請書の記入例も確認できるので、申請書を作成する際は記入例を参考にしてください。
登記申請書には、被相続人・相続人・不動産・登録免許税に関する事項などを記入します。
ステップ④:管轄の法務局に書類を提出して登録免許税を納付する
登記申請書とその他の必要書類が準備できたら、「不動産の所在地を管轄する法務局」に提出します。
手続きの際に登録免許税を納付することになるので、登録免許税の金額分の収入印紙を用意してください。
なお、収入印紙は事前に郵便局などで購入しても良いですし、法務局でも購入できます。
土地を相続するときの相続税の計算方法
遺産を相続すると、相続税がかかる場合とかからない場合があります。
また、高額な遺産を相続すると相続税がかかることが多いものの、土地を相続するケースでは特例を適用できて相続税が無税になるケースも少なくありません。
そこで、ここでは相続税の計算方法や土地の相続税評価額の求め方、節税効果が大きい小規模宅地等の特例について解説していきます。
相続税の計算方法
相続税は、次の順序で税額を計算します。
- 遺産額の計算:相続税の課税対象となる遺産額を計算
- 課税遺産総額の計算:遺産額から基礎控除額を控除
- 相続税の総額の計算:各自が法定相続分に基づいて相続した場合の相続税額を計算して合計
- 各自の納付税額の計算:上記の相続税の総額を各自の実際の相続割合に基づいて按分
相続税の基礎控除額は法定相続人の数によって変わり、次の式で計算します。
- 相続税の基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × (法定相続人の数)
土地の相続税評価額の求め方
相続税を計算する際には、そもそも相続財産の金額をどのように求めるかが問題になります。
土地の相続税評価額を求める方法は、「路線価方式」と「倍率方式」の2種類です。
路線価(道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額)が定められている地域では路線価方式が適用され、路線価が定められていない地域では倍率方式が適用されます。
- 路線価方式:路線価をその土地の形状等に応じた奥行価格補正率などの各種補正率で補正した後に、土地の面積を乗じて計算する方式
- 倍率方式:土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算する方式
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例は、故人が居住用や事業用に使っていた土地を、配偶者や故人と同居していた親族など一定の要件を満たす人が相続すると適用できる特例制度です。
特例を適用できると、相続税を計算する際に土地の相続税評価額が最大80%減額されます。
たとえば5,000万円の土地でも、当特例を適用できると相続税計算に含めるのは1,000万円になるので、節税効果が非常に大きい制度です。
相続税の計算例
ここでは、次のような状況で相続が開始したものとして、相続税の税額を計算してみたいと思います。
- 亡くなった人(被相続人):親
- 遺産を相続する人(相続人):子1人
- 遺産の内訳:土地5,000万円・現預金3,000万円
- 備考:土地は小規模宅地等の特例の要件を満たし評価額の計算では80%減額の対象
ステップ①:遺産額の計算
土地5,000万円の相続税評価額は、小規模宅地等の特例を適用して80%減額できるので1,000万円です。
現預金3,000万円とあわせると、遺産額は次のようになります。
- 課税対象になる遺産額 = 1,000万円(土地) + 3,000万円(現預金) = 4,000万円
ステップ②:課税遺産総額の計算
遺産額から基礎控除額を引いて課税遺産総額を求めます。
まず、この事例では相続人が子1人なので、相続税の基礎控除額は次のとおりです。
- 基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 1人 = 3,600万円
- 課税遺産総額 = 4,000万円(遺産額) - 3,600万円(基礎控除額) = 400万円
ステップ③:相続税額の計算
課税遺産総額に税率を掛けて相続税額を計算します。
相続税の税率は課税遺産総額によって変わりますが、課税遺産総額が400万円であれば税率は10%です。
- 相続税の税額 = 400万円(課税遺産総額) × 10%(相続税率)= 40万円
土地を相続したときにかかる費用
土地を相続する際には費用が色々かかります。
遺産に現預金が含まれていれば費用に充てることもできますが、遺産に占める不動産の割合が高くて現預金が少ない場合には、相続人自身で納税資金などを準備しなければなりません。
土地の相続に伴って一体どのような費用がかかるのかについても確認しておき、必要であれば納税資金の準備などを早めに行うようにしましょう。
- 必要書類の取得費用
- 相続税
- 登録免許税
- 専門家に依頼した場合の支払報酬
必要書類の取得費用
相続が開始すると、相続人が各種相続手続きを進める際にさまざまな書類が必要です。
戸籍や住民票、固定資産評価証明書などの書類の発行手数料として、それぞれ数百円程度かかります。
相続税
相続税の計算方法はすでに紹介しましたが、遺産額が基礎控除額を超える場合には相続税がかかります。
ただし、土地の相続では小規模宅地等の特例が適用できて、相続税が無税になることも少なくありません。
特例を利用できる要件は細かく決まっているので、税理士などの専門家に確認したほうが良いでしょう。
登録免許税
不動産を取得した人にかかる税金には、「不動産取得税」と「登録免許税」があります。
このうち、不動産取得税に関しては、相続によって不動産を取得した場合にはかかりません。
そのため、相続によって土地を取得した人は、不動産取得税はかかりませんが、登録免許税を納付する必要があります。
登録免許税の税額は、原則として課税標準に税率0.4%を掛けた金額です。
たとえば、課税標準3,000万円の不動産を相続するケースであれば、登録免許税は12万円(=3,000万円×0.4%)になります。
専門家に依頼した場合の支払報酬
相続登記の手続きを司法書士に依頼した場合には費用がかかります。
報酬額は事務所によって異なりますが、司法書士に相続登記を依頼した場合の報酬額の目安は8万円から10万円です。
費用としては安くはありませんが、自分で手続きをする手間が省けます。
また、そうぞくドットコムであれば相続登記のサポート料金が戸籍取得費込みで定額85,000円(税込93,500円)です。
余計な手間をかけずに相続登記を完了させることができるので、そうぞくドットコムの利用をぜひ検討してみてください。
土地を相続するときの遺産分割方法
土地の相続では、そもそも土地をどのように相続人の間で分けたり相続するのかで揉めることが少なくありません。
遺産相続の方法には次の4つの方法があるので、それぞれの遺産分割方法がどのようなものなのか、確認しておきましょう。
- 現物分割
- 代償分割
- 換価分割
- 共有分割
現物分割
遺産を売却などせず、現物のままそのままの形で相続するのが「現物分割」です。
現金など分割が簡単な財産で取られることが多い遺産分割方法ですが、土地を分筆して相続する場合も現物分割に該当します。
家族が遺した大切な財産をそのままの形で受け継げる点がメリットです。
ただし、土地を分筆した結果として個々の土地の面積が小さくなると利用価値が低下することもあり、土地の大きさや形状によっては現物分割が適さないケースも少なくありません。
代償分割
特定の相続人が土地を相続する代わりに、他の相続人に自分の財産を渡す方法が「代償分割」です。
土地は高額な資産であり誰か一人が相続してしまうと受け取る財産額が相続人の間で差が出ることがありますが、代償として別の資産を渡すことで受取額を調整できます。
代償分割であれば、故人の残した遺産を売却などせずに相続でき、相続人同士の公平性も保てる点がメリットです。
ただし、土地を相続する人自身が代償として渡せる現預金などの資産を持っている必要があります。
換価分割
土地を売却して現金化して、その現金を相続人で分けたり相続する方法が「換価分割」です。
土地を相続しても住む予定がない場合などに使われることが多い遺産分割方法です。
現金化すれば相続人の間で分けやすくなり、公平性を保てる点がメリットです。
ただし、土地を売却できることが前提となるため、土地にそもそも利用価値がなく買い手が見つからないようなケースでは換価分割はできません。
共有分割
土地を複数の相続人の共有名義にする「共有分割」という方法もあります。
ただし、土地を共有状態にしてしまうと、売却や造成など何をするにしても共有名義者全員の同意が必要になり、土地の有効活用の妨げになるケースが少なくありません。
共有分割によって各相続人の持ち分を均等にすれば確かに平等ですが、土地の相続では共有分割以外の方法を検討・選択することをおすすめします。
まとめ
土地の相続では、さまざまな手続きが必要になります。
相続財産調査や相続人調査、相続税申告や相続登記など、必要な手続きの種類やどのような流れで手続きを進めるのか、理解しておくことが大切です。
一般の方は相続手続きに慣れていないことも多いので、実際に相続が起きたときには司法書士や税理士などの専門家に依頼して、必要な手続きをスムーズかつ確実に終えるようにしましょう。