【2024】借地権の相続の方法は?名義変更は必要?手続きや評価方法を解説

借地権の相続の方法不動産
この記事を監修した専門家は、
呉村成信
司法書士
2016年、司法書士試験合格。東京司法書士会所属。都内の司法書士事務所にて不動産登記を中心に登記業務全般に携わる。その後独立し、2019年、そうぞくドットコム不動産の立ち上げ期から参画し、プロダクトアドバイザーに就任。

亡くなった人(「被相続人」といいます)の住んでいた家の敷地が借地である場合などには、借地権が発生している場合があります。では、借地権の相続はどのように行えば良いのでしょうか?また、借地権は相続税の対象となるのでしょうか?

今回は、借地権を相続する方法や相続税を計算するうえでの評価方法などについて詳しく解説します。

借地権とは

借地権とは、平たくいえば、お金を払って他人の土地を借り、その土地に建物を建てて使用する権利です。借地権には、「地上権」と「貸借権」の2つが存在します。

このうち「地上権」とは民法で定められた物件の一つであり、地主の承諾なく権利を他者に譲渡することが可能です。

地上権は、賃借権と比べて強い権利であるため、地主にとって不都合となることもあります。そのため、一般の戸建て住宅で利用されていることはほとんどありません。

一方、「賃借権」は債権の1つであり、ほとんどの借地権はこちらで設定されています。そのため、これ以後は借地権が「賃借権」であるとの前提で解説を進めていきます。

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借地権の相続手続きの概要

民法上、借地権の存在を第三者に対抗(主張)するためには、借地権の登記が必要であるとされています。しかし、借地権の登記をするには地主の協力が必要であり、この協力が得られるケースはさほど多くありません。

これを受け、借地借家法では、借地権自体の登記がなくても借地上の建物に借地人名義の登記をすればこれをもって第三者に対抗することができるとしています。

つまり、借地権には、次の2つのパターンが存在するということです。

  • 借地権自体の登記があるもの
  • 借地権自体の登記はなく、借地上の建物に借地人名義の登記があるもの

現実的には借地権の登記があるケースはさほど多くはなく、借地上の建物のみが登記されているケースが大半です。借地権の相続手続きを進める前に、その借地権がどちらのパターンであるのか、確認しておきましょう。

借地権の対象となっている土地の全部事項証明書を法務局で取得して、「賃借権設定」の表示があれば前者です。一方、土地の全部事項証明書に賃借権に関して何ら記載がない場合には、後者であるといえます。

借地権の登記がある場合

借地権の登記がある場合において、借地権の相続手続きをするためには、借地権自体の名義変更を行います。

借地権の登記がない場合

借地権の登記がない場合には、借地権自体の名義変更は行いようがありません。そもそも、土地の全部事項証明書のなかには被相続人の氏名さえ出てきていないことでしょう。

この場合には、借地上の建物の名義変更登記を行うことで、自動的に借地権についても相続手続きをしたことになります。

なお、借地上の建物と借地権を別々の人が相続することはできません。借地権はその上にある建物登記と連動して動きますので、借地権を相続する人と借地上の建物を相続する人は、必ず同一人物となります。

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借地権登記がある場合の相続手続きの流れ

借地権の登記がある場合、借地権を相続するための手続きの流れは、次のとおりです。

借地権登記がある場合の相続手続きの流れ
  • 相続が起きたことを地主へ連絡する
  • 借地権を相続する人を決める
  • 借地権の相続に必要となる書類を準備する
  • 借地権の相続登記をする
  • 地主へ連絡する

相続が起きたことを地主へ連絡する

被相続人が借地権を持っていた場合、相続が起きたら、まずは地主へ連絡をいれます。この段階では、借地人である被相続人が亡くなったことを伝えるとともに、借地権を相続する人が決まったら改めて連絡をする旨を伝えておくと良いでしょう。

また、相続人が確定するまでの地代の支払い方法についても伝えておいてください。たとえば、相続人のうちの誰か1名が代表して支払っていくなどです。なぜなら、相続が起きたことを金融機関が知るとその時点で被相続人の銀行口座は凍結され、以後の入出金ができなくなるためです。

借地権を相続する人を決める

次に、借地権を相続する人を決めます。被相続人が有効な遺言書を遺していた場合には、その遺言書の指定に従いましょう。

遺言書がない場合などには、遺産分割協議が必要となります。遺産分割協議とは、遺産のうち誰がどの財産を受け取るのかについて、相続人全員で行う話し合いです。

遺産分割協議の成立には、相続人全員の合意が必要です。仮に1人でも納得しない相続人がいる場合には、遺産分割協議を成立させることはできません。

当人同士で協議がまとまらない場合には、調停委員立ち合いのもと家庭裁判所で行う話し合いである「調停」や、裁判所が決断をくだす「審判」などへと移行します。

無事に遺産分割協議がまとまった場合には、その結果を遺産分割協議書にまとめましょう。遺産分割協議書には、相続人全員が協議に同意をしていることの証拠として、相続人全員が実印での捺印と署名を行います。

借地権の相続に必要となる書類を準備する

借地権を相続する人が決まったら、借地権の相続に必要となる書類を準備しましょう。遺産分割協議書で借地権の取得者を決めた場合の必要書類は、原則として次のとおりです。

ただし、状況によってはこれら以外の書類が必要となる場合もありますので、あらかじめ法務局の登記相談などを利用して確認しておくと良いでしょう。

  • 遺産分割協議書:誰が借地権を取得することとなったのか、借地権の目的となっている土地の全部事項証明書を参照しつつ明確に記載します。記載があいまいでは、登記ができない可能性があります。
  • 相続人全員の印鑑証明書:遺産分割協議書に押した印が実印であることの証明として添付します。
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本:相続人を確定するために必要です。なお、相続人が被相続人の兄弟姉妹などである場合には、被相続人の両親それぞれの出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本も必要です。
  • 被相続人の除票:借地権者と被相続人が同一人物であることの確認として添付します。除票ではなく、戸籍の附票でも構いません。
  • 相続人全員の戸籍謄本:相続人が生存していることの証拠として添付します。
  • 借地権を相続する者の住民票:新たな借地権者を正確に登記するために添付します。
  • 借地権の対象となっている土地の固定資産税評価証明書または評価通知書:登録免許税を正しく算定するために添付します。

なお、登録免許税とは、登記に際して法務局で支払うべき税金です。借地権の名義変更でかかる登録免許税は、次のように計算されます。

  • 登録免許税額(借地権の名義変更)=借地権の対象となっている土地の固定資産税評価額×1,000分の2

つまり、借地権の対象である土地の固定資産税評価額が3,000万円である場合の登録免許税額は、6万円ということです。また、固定資産税評価証明書や評価通知書は、原則としてその不動産の所有者以外が取得することはできません。

ただし、借地権者は利害関係人であるため、例外的に、取得することが可能です。

この場合には賃貸契約書など、有償で借り受けていることが確認できる書類が必要となることが一般的です。そのため、請求先の市区町村役場に、請求に必要となる書類をあらかじめ確認すると良いでしょう。

借地権の相続登記をする

必要書類の準備ができたら、法務局へ、借地権の名義を変える相続登記の申請をしましょう。相続登記の申請先は、その借地が存在する場所を管轄する法務局です。

管轄は法務局のホームページから確認することができますので、あらかじめ確認したうえで申請してください。

相続登記を申請する方法には、次の3つが存在します。

  • 法務局の窓口へ出向いて申請する
  • 郵送で申請する
  • オンラインで申請する

このうち、オンラインでの申請は、自身や家族の登記を数回程度申請するのみであれば、おすすめできません。なぜなら、機器の準備やシステムの設定などに、非常に手間がかかるためです。

登記手続きに慣れていない場合には、窓口へ出向いて申請すると良いでしょう。軽微なミスであれば、その場で指摘されすぐに修正ができる可能性があるためです。法務局が遠方である場合などには、郵送で申請をしても構いません。

地主へ連絡する

借地権の相続登記が完了したら、新たに借地権者となった人から、改めて地主へ連絡します。

この際に、借地権登記が完了した土地の全部事項証明書を、地主へ交付しておくと良いでしょう。今後の地代の支払い方法などについても、この際に話し合っておくとスムーズです。

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借地権登記がない場合の相続手続きの流れ

借地権登記がない場合、借地権を相続するための流れは、次のとおりです。

借地権登記がない場合の相続手続きの流れ
  • 相続が起きたことを地主へ連絡する
  • 借地上の建物を相続する人を決める
  • 借地上の建物の相続に必要となる書類を準備する
  • 借地上の建物の相続登記をする
  • 地主へ連絡をする

相続が起きたことを地主へ連絡する

はじめに、相続が起きたことを地主へ連絡しましょう。この点は、借地権の登記がある場合と違いはありません。

借地上の建物を相続する人を決める

次に、借地上にある建物を相続する人を決めます。借地上の建物を取得した人が自動的に借地権も取得することとなりますので、借地権と建物を別の人が相続することはできません。

借地上の建物の相続に必要となる書類を準備する

借地上の建物を相続する人が決まったら、建物の登記に必要となる書類を準備します。遺産分割協議書で建物の取得者を決めた場合の必要書類は、原則として次のとおりです。

  • 遺産分割協議書:誰がその建物を取得することとなったのか、建物の全部事項証明書を参照しつつ明確に記載します。記載があいまいでは、登記ができない可能性があります。
  • 相続人全員の印鑑証明書:遺産分割協議書に押した印が実印であることの証明として添付します。
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本:相続人を確定するために必要です。なお、相続人が被相続人の兄弟姉妹などである場合には、被相続人の両親それぞれの出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本も必要です。
  • 被相続人の除票:建物の名義人と被相続人が同一人物であることの確認として添付します。除票ではなく、戸籍の附票でも構いません。
  • 相続人全員の戸籍謄本:相続人が生存していることの証拠として添付します。
  • 建物を相続する者の住民票:建物の新たな名義人を正確に登記するために添付します。
  • 建物の固定資産税評価証明書または評価通知書:登録免許税を正しく算定するために添付します。

ただし、状況によってはこれら以外の書類が必要となる場合もありますので、あらかじめ法務局の登記相談などを利用して確認しておくと良いでしょう。

なお、建物の相続登記にかかる登録免許税は、次のように計算されます。

  • 登録免許税額(借地権の名義変更)=借地権の対象となっている土地の固定資産税評価額×1,000分の2

たとえば、建物の固定資産税評価額が2,000万円である場合の登録免許税額は、8万円ということです。

借地上の建物の相続登記をする

必要書類の準備ができたら、借地上にある建物の相続登記を申請しましょう。相続登記の申請先は、その建物が存在する場所を管轄する法務局です。

借地権の登記がある場合と同じく、法務局の窓口へ持参するか、郵送で申請する方法を選択すると良いでしょう。

地主へ連絡をする

建物の登記が完了したら、新たに借地権者となった相続人から、地主へ改めて連絡を入れます。その際には、登記が完了した建物の全部事項証明書を持参すると良いでしょう。

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借地権は相続税の計算上どのように評価される?

借地権は、相続税の対象となります。借地権は非常に強い権利であり、その土地をある程度自由に使うことができるためです。

借地権には、通常の借地権である「普通借地権」と、期間満了後の更新がない「定期借地権」とが存在します。相続税を計算するにあたってのそれぞれの評価方法は、次のとおりです。

普通借地権の場合

借地権が普通借地権である場合、その評価方法は、次のとおりです。

  • 普通借地権の評価額=その土地の自用地評価額×借地権割合

自用地評価額とは、その土地に借地権などの権利が何ら付着してないことを前提とする評価額です。土地のある地域に応じて、路線価方式や倍率方式などで評価を行います。

借地権割合は、その土地のある地域に応じて、30%から90%の間の10%刻みで指定されています。その土地の借地権割合を知るためには、国税庁が公表している路線価のホームページをご確認ください。

借地権の対象となっている土地の場所を地図から探し、その土地が面する道路に記載されたアルファベットを確認しましょう。

たとえば、「150E」と書かれていれば、その土地の借地権割合は50%です。また、「1,000C」と書かれていれば、その土地の借地権割合は70%となります。

借地権割合を調べる際にはアルファベットの前に書かれている数字は気にせず、アルファベットのみを確認すれば構いません。

定期借地権の場合

定期借地権とは、普通借地権とは異なり、更新されない借地権のことです。そのため、建物がある限り原則として更新がなされる普通借地権と比べて、評価が低い傾向にあります。

定期借地権の評価方法は、次のとおりです。

  • 定期借地権の評価額=自用地評価額×(① ÷ ②)×(③ ÷ ④)

①:定期借地権等の設定時に受ける経済的利益の総額

②:定期借地権等の設定時の宅地の通常の取引価額

③:課税時期における定期借地権等の残存期間年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率

④:定期借地権等の設定期間年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率

計算式は複雑に見えますが、まず「①÷②」で、定期借地権の設定をした時点における、その土地全体における定期借地権の価値の割合を計算しています。

たとえば、設定時におけるその土地の価格が2,000万円で、500万円の権利金を支払っていたのであれば、

  • 500万円÷2,000万円=0.25

となります。

そして、これを自用地評価額に掛けることで、現在価値に引き直しているわけです。たとえば、この土地の自用地価格が評価時点で4,000万円に値上がりしているのであれば、

  • 4,000万円×0.25=1,000万円

となります。

③と④は、金銭価値を評価時点に引き直すための調整です。たとえば、20年前の500万円は、現在の500万円とは価値が異なります。これを、③と④で調整しているわけです。

③と④の数字は国税庁のホームページから確認することができます。

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まとめ

借地権の相続手続きには、借地権自体の登記が必要になる場合と、借地上の建物の相続登記をすることで自動的に借地権が移転するものとの2パターンがあります。

あらかじめ全部事項証明書を確認し、どちらのパターンであるかを確認してから手続きを進めていくと良いでしょう。

いずれの場合であっても、借地権の相続手続きにはさまざまな書類が必要となります。中には見慣れない書類もあり、これらの書類を自分ですべて集めることは容易ではありません。

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この記事を監修した専門家は、
呉村成信
司法書士
2016年、司法書士試験合格。東京司法書士会所属。都内の司法書士事務所にて不動産登記を中心に登記業務全般に携わる。その後独立し、2019年、そうぞくドットコム不動産の立ち上げ期から参画し、プロダクトアドバイザーに就任。