相続登記とは?必要な理由と相続登記の3つのパターン

相続登記 司法書士

相続登記とは

登記する司法書士

相続登記とは、人が死亡しそれまでその人が所有していた不動産(土地、建物) を 他の人が引き継いだ際、その引き継いだ事実を登記簿(現在は、登記官が登記簿に変わる登記記録(※)に記録しています)記載する手続きのことです。

 

例えば、父A、母B、その子C・Dの4人家族がA名義の不動産に暮らしていたところ、Aが死亡したとします。

この際、B、C、DはAの相続人ですから、Aの死亡と同時にAの不動産に対する所有権を引き継ぎます(B、C、Dの共有となります)(「相続」)。

しかし、この引き継いだ事実は登記記録には記録されていません。

そこで、B、C、DがAから所有権を引き継いだという事実を登記記録に記載するための手続きが「登記」です。

そして、この「相続」と「登記」を併せて「相続登記」と呼びます。

 

※登記記録:登記記録は土地や建物の表示に関する情報、権利に関する情報が記録されたデータで、法務局が管理しています。かつては「登記簿」という紙媒体に記録されていたのですが、登記事務の合理化に伴って登記簿に代わりデータで管理されるようになりました。

 

では、相続登記についてもう少し詳しく知るために「相続」、「登記」についてさらに詳しく掘り下げて解説します。

相続とは

相続

相続とは、人が死亡した場合にそれまでその人が有していた権利義務(死亡した人の一身に専属していたものを除く)を他の人が引き継ぐことです。

相続はいつから始まる?

相続は、人が死亡した時点から始まります。

民法882条

相続は、死亡によって開始する。

死亡し相続される人を「被相続人」と呼びます。

相続人の範囲

他方、被相続人の権利義務を引き継ぐ人を「相続人」と呼びます。

誰が相続人となるかは民法で規定されています。このため、相続人のことを「法定相続人」と呼ぶこともあります。

相続人は、被相続人の

  • 配偶者・子(1)
  • 直系尊属(父母、祖父母など)(2)
  • 兄弟姉妹(3)

※( )内は相続順位

であり、いずれも相続開始時点に存在していることが必要です。

 

もっとも、これらすべての方が相続人となるわけではありません。

配偶者は常に相続人となりますが(民法890条前段)、配偶者以外の方には相続の順位が設けられており、その順位に従って相続人となるかどうかが決まります(民法889条、887条)。

 

例えば、相続開始時点で配偶者と子が存在する場合は、配偶者と子が相続人です(第2順位の直系尊属と第3順位の兄弟姉妹は相続人ではありません)。

なお、相続人以外の方(例えば、子の配偶者など)も被相続人の権利義務を相続することが可能です。

その場合は、被相続人の遺言で指定されていることが必要です。

相続財産と相続分

相続によって相続人に引き継がれる被相続人の権利義務のことを「相続財産」と呼びます。

相続が始まると、被相続人の権利義務が包括的に相続人に引き継がれます。

「包括的」というのは、「一切の権利義務を一括して」という意味です。

 

引き継がれるのは権利のみならず、義務も含まれます。

すなわち、プラスの財産のみならずマイナスの財産も引き継がれます。

 

例えば、不動産を相続する場合、住宅ローンが残っていれば不動産のみならず住宅ローンも相続します。

住宅ローンを相続したくなければ、相続放棄などの引き継ぎ方を決める必要があります(ただし、相続人は被相続人が死亡したことを知ったときから3ヶ月以内に限定承認、相続放棄をしない場合は単純承認した(包括的に引き継いだ)とみなされます)。

 

また、相続人には相続財産をどれだけ相続するのか、つまり相続財産の「取り分」が法律で決められています。

この取り分のことを「相続分」と呼び、法律で決められている相続分を法定相続分と呼びます。

登記とは

不動産登記法

登記とは、不動産に関する権利の引き継ぎ(移転)などがあった場合に、その事実を登記記録に記載する手続きのことです。

登記の必要性

では、なぜわざわざ手間とお金をかけて登記する必要があるのでしょうか?

相続登記しないことによる不都合としては、「いざ相続登記をしたいときに相続登記できないこと」があります。

 

たとえば、相続登記をしていない不動産を買いたいという人が現れた場合、売主が不動産を売却するには、登記記録上買主に所有権の移転登記をする必要があります。

ところが、この時点では登記記録上所有者が確定していませんから、買主に不動産を売却することができません。

したがって、相続人は遺産分割協議をして不動産を誰のものにするのか決める必要がありますし、遺産分割協議にしたがった相続登記をする必要があります。

 

ただし、この時点で相続人が認知症になっていた場合は、成年後見人を選任しない限り有効な遺産分割協議を成立させることができず、相続登記ができません。

また、相続人間の仲が悪くなり遺産分割協議が難航することもあります。

 

さらに、相続人が亡くなり、次々と相続が発生すると相続人の子、またはその子と相続人が拡大していけば、その相続人全員と遺産分割協議をしなければなりません。

そうすると相続人の特定すら難しくなり、結局はいざ相続登記をしたいときに相続登記ができなくなって不動産を売却できないという事態に陥りかねません。

その他の不都合としては、相続人の知らないうちに不動産を他の相続人に売却されてしまうおそれがあることです。

例えば、冒頭の事例で、B、C、Dが遺産分割協議の末、Bが不動産の所有者に決まったとします。

しかし、その後Cの気が変わり、CがBの知らないうちにEに売却し登記を済ませてしまった場合、Bは相続登記をしていませんから、Dが背信的悪意者でない限りDに自己の所有権を対抗できず、不動産を手放さなければならなくなります。

相続登記のパターン

六法全書を読む人

相続登記のパターンは、次の3種類に分けることができます。

  1. 遺産分割協議に従う相続登記
  2. 遺言に従う相続登記
  3. 法定相続分に従う相続登記

それぞれについて詳しく解説していきます。

パターン①:遺産分割協議に従う相続登記

最も多く活用される相続登記のパターンで、遺言(パターン②)がなく、相続人同士で話し合って相続財産の具体的な権利関係を確定したいという場合の相続登記です。

被相続人の死亡によって不動産は相続人に引き継がれますが、その時点ではまだ相続財産は相続人に具体的に分配されていない状態(共有状態)です。

したがって、被相続人が死亡した後は、誰が、どの相続財産を引き継ぐのか、あるいは引き継がないのかについて決める必要があります。

そのための手続きが遺産分割協議です。

 

そして、冒頭の事例で遺産分割協議が整い、BがAの家を相続することになったとします。

その際、AからBへ所有権が移転した事実を登記します。

 

登記を移転するには法務局へ登記申請する必要がありますが、この場合はBが単独で申請することができます。

もっとも、B、C、DがAが死亡した時点で共有名義の登記を済ませていた場合(下記パターン③による登記をしていた場合)はBを登記権利者、C、Dを登記義務者としてB、C、D共同で登記申請する必要があります。

パターン②:遺言(書)に従う相続登記

遺言書がある場合は、遺言の内容にしたがって相続登記します。

ただ、遺言の内容もさまざまです。

 

例えば、遺言の内容が単に「相続人に相続させる」と書かれてあった場合は、相続人は単独で相続登記を申請することができます。

しかし、遺言の内容が「遺贈」の場合は異なります。

 

遺贈とは遺言による贈与(被相続人から特定の人に財産を供与すること)のことです。

遺言に「「相続人」に「遺贈する」」と書かれてあった場合は、受遺者である相続人と他の相続人とが共同して申請しなければなりません。

 

また、「相続人以外の者」に遺贈する場合も同様です。

なお、相続人にはなれない者に「相続させる」と記載されてある場合は「相続」ではなく「遺贈」ですから、受遺者と相続人とが共同して登記申請する必要があります。

パターン③:法定相続分に従う相続登記

法定相続分に従う相続登記とは、法定相続分のとおりに相続する方法です。

たとえば、子及び配偶者が相続人である場合の法定相続分は子・配偶者ともに1/2です。

したがって、冒頭の事例でいえば、Aが死亡した時点で、Bは1/2、C、Dはそれぞれ1/4の範囲内で不動産を共有して所有することになります。

B、C、Dがこの状態を望むのであれば、法定相続分にしたがって相続登記します。

 

法定相続分に従って相続登記するメリットはB、C、Dが単独で登記申請を行えることです。

また、遺産分割協議も行う必要もありませんから、手間暇がかからないいわゆる「手っ取り早い方法」ではあります。

 

しかし、この方法にはデメリットがあります。

もし、将来相続人の仲が悪くなった場合、不動産を売却したり活用するすることが難しくなります。

なぜなら、共有不動産の場合、売却したり活用したりする場合は他の共有者の同意を得る必要があるからです。

遺産分割協議に従う相続登記

遺産分割協議書

それでは、最後に最も活用されることが多い「遺産分割協議に従う相続登記」(遺言書がない場合)の流れについて解説します。

相続登記までの流れ

流れ1:被相続人の死亡

被相続人が亡くなった直後は、まだ精神的に辛い時期です。

いくら相続人間であっても遺産分割や相続の話は避けた方が無難でしょう。

なお、「死亡届」は被相続人の死亡から7日以内に市役所に提出しなければなりません。

流れ2:遺言書の有無の確認

初七日が過ぎたころから、徐々に遺産分割協議に向けた準備を進めていきます。

まずは、被相続人の遺品整理とともに遺言書の有無を確認しましょう。

遺言書がある場合は遺言にしたがった相続登記をする必要があります。

流れ3:不動産・相続人の調査、確定

四十九日が過ぎた頃から、具体的な準備を進めていきます。

まず、相続登記をするにはどんな不動産を相続するのか特定する必要があります。

相続する不動産を特定するには、当該不動産の

  • 地番
  • 家屋番号
  • 所有者

などの情報が必要です。

 

地番、家屋番号は

  • 固定資産納税通知書
  • 登記済証
  • 登記識別情報通知書

に記載されています。

地番、家屋番号がわかったら、それをもとに法務局から「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取り寄せます。

登記事項証明書から不動産の所有者などがわかります。

 

また、相続人全員が協議に関与していない遺産分割協議は無効ですから、遺産分割協議を始めるには相続人が誰であるか確定する必要があります。

相続人を確定するには被相続人の「戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍」、「戸籍の附票(あるいは住民票の除票)」はもちろん、相続人全員の「戸籍謄本」「住民票(あるいは戸籍の附票)」を取得する必要があります。

 

また、相続人の住所や連絡先がわからない場合は戸籍謄本などからを相続人を調査し、連絡を取る必要があります。

相続人は、相続が開始されたときを知ったときから3ヶ月以内に「限定承認」あるいは「相続放棄」しないときは「単純承認」したものとみなされます。

流れ④:必要書類の入手・作成

1から3で取得した書類のほかにも「固定資産評価証明書」を取得する必要があります。

 

相続登記の際には「登録免許税」という税金を法務局へ納付する必要があります。

登録免許税は土地、家屋の固定資産評価額を基に計算されるため、評価額を確認するために固定資産評価証明書を取得する必要があるのです。

固定資産評価証明書は市役所、税務署で取得することができます。

 

また、流れ⑥で登記申請書に添付するための書面として「相続関係説明図」を作成しましょう。書式は⑥でご紹介する法務局の法務局のホームページにも掲載されています。
登記申請の際に添付すると戸籍謄本などの戸籍関係書類は返還してくれます。

相続関係説明図は取得した戸籍謄本などをもとにして作成します。

流れ⑤:遺産分割協議、遺産分割協議書の作成

遺産分割協議については相続登記のパターン①などで解説しました。

協議といっても必ずしも一堂に会する必要はなく、電話や手紙のやり取りで行っても構いません。

 

遺産分割協議を終えた後は「遺産分割協議書」という書面を作成する必要があります。

遺産分割協議書には相続人全員の署名と実印での押印が必要です。

また、その実印が本物であることを証明するための「印鑑証明書」も必要です。

流れ⑥:登記申請書の作成、法務局への提出

相続登記をするには「登記申請書」を作成し、必要書類とともに法務局へ提出する必要があります。

登記申請書の定型書式はありませんが、法務局のホームページに書式及び記載例が紹介されています。

 

そして、登記申請書に必要書類、登録免許税分の印紙を貼った紙、相続関係説明図を添付して申請します(なお、登記申請書の記載方法、必要書類などは相続登記のパターンによって異なります)。

申請方法には次のものがあります。

  • 窓口に持参する方法
  • 郵送で申請する方法
  • QRコードを利用しての方法(令和2年1月14日から)
  • オンラインで申請する方法

窓口に持参すれば、窓口で担当者に気になることを聞きながら提出することができます。

可能であれば、窓口に持参する方法での申請をおすすめします。

まとめ

不動産の処分など、後々のことを考えると相続登記はすべきです。

そして、相続登記するのに資格は必要ありませんから、一般の方でも相続登記することは可能です。

しかし、相続登記のためにはさまざまな書類を収集したり作成したりしなければなりません。

 

また、専門的な知識も必要となります。

そのため、相続登記をご自身で行うとなると一から勉強しなければならず、必要な書類の収集や作成にも多くの時間と手間を割かなければなりません。

 

相続登記によって得た知識も今後の日常生活に活かす機会もさほど多くはないと思われます。

これらのことを併せて考えると、相続登記を確実に行うためには相続登記の専門家である司法書士に任せた方が良いかもしれません。