お墓の移動の手続き・流れは?改葬にかかる費用と必要書類

墓の移動お墓

お墓を移動することを「改葬」と呼び、移動に際しては費用とともにさまざまな手続きを踏まなければなりません。

また、改葬は他人事のように感じるかも知れませんが、誰にでも起こり得ることです。

そのため、あらかじめお墓の移動に関する知識がないと、改葬に大きな時間を費やすこととなってしまいます。

 

では、お墓の移動を行う際には、どの様な手続きを踏む必要があり、どれくらいの費用が必要になるでしょうか?

今回は、お墓の移動である「改葬」について詳しく解説していきます。

お墓の移動が必要となるときとは?

お墓の清掃

すでに建てられているお墓を別の霊園等に移動することを「改葬」と言います。

さまざまな理由でお墓の移動が行われますが、近年増加傾向にあります。

では、お墓の移動が必要となるときとはどのようなケースで起こるのでしょうか?

お墓の移動は年間9万件

厚生労働省が行っている「衛生行政報告例」によれば、平成29年度に行われた改葬の件数は104,493件にものぼります。

また、過去10年間に行われた改葬は、2006年から2014年までおよそ7.3万件から8.9万件で推移しているため、増加傾向にあると言えます。

改葬が多く行われている都道府県では、東京(8,627件ほど)が最も多く、ついで北海道(7,638件ほど)、神奈川県(5,205ほど)の順になっており、単に人口の多さと改装が比例していないことがわかります。

年間の改葬件数の少ない福井(159件)、山形(341件)、徳島(416件)などは、人口とともに人の移動が少ないですが、改葬件数は少ないです。

したがって、お墓の移動が必要となるときには、さまざまな要因が関係していると言えるでしょう。

お墓を移動する理由

人口や人の移動がお墓の移動の直接的な要因でないのであれば、具体的にはどのような理由で行われているのでしょうか?

考えられる要因のうち、代表的なものとして挙げられるもにはつぎのようなものがあります。

  • 転居に伴いお墓の管理ができなくなった
  • お墓の管理者が高齢になって維持管理できなくなった
  • 子供がおらず墓守ができなくなった

このように理由はさまざまではありますが、お墓の管理ができなくなったためにやむなくお墓を移動している現状が伺えます。

つまり、管理ができなくなって無縁墓を防ぐための措置として改葬が増えているのです。

また、先ほどお伝えしたように、単に人口大小に関わらず改葬が行われている事実を鑑みると、地域の墓地の状況やお寺との関係等も要因として考えられます。

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お墓を移動する際の流れ・手続き

お墓参り

お墓の移動が増加しつつある日本ですが、たとえ所有地にお墓を建てている管理者であっても、勝手に改葬は行うことができません。

現在、お墓が建てられている霊園・お寺等の管理者への報告のみならず、お墓を移動する先の管理者に加え、自治体にも証明書を発行してもらう必要があります。

そして、それに関わるお金も必要となっているのです。

ここでは、、お墓を移動する際の流れ・手続きを解説していきます。

流れ・手続き①:改葬元にお墓移動の旨を報告する

お墓を移動することが決まったら、まずは現在お墓が建てられている霊園・お寺等に移動の旨を報告する必要があります。

あくまで内諾をもらうことが目的なので、この段階で何か必要な手続きを踏む必要はありません。

 

ただ、その後、現在の管理者に発行してもらう書類等が必要になります。

その後の手続をスムーズにするためにも、まずは現在の管理者に報告・相談するようにしましょう。

流れ・手続き②:改葬先を選定する

お墓の移動をする旨を現在の管理者に報告した後は、移動先の霊園・お寺を探すこととなります。

選び方はさまざまですが、管理のしやすい場所、もしくは宗派によって選定する場合が多いです。

霊園やお寺によっては管理費が高額になるようなケースも考えられるため、アクセス性だけでなく経済面も視野に入れて選定すると良いでしょう。

 

また、昨今改葬を代行してくれる業者もいるため、知識がなかったり時間が取れなかったりする場合は、そういった業者を利用することも一つの方法です。

お墓の移動先が決まったら、改葬先の管理者に「受入証明書」を発行してもらい、次の手続きにうつります。

流れ・手続き③:改葬に関わる行政手続きを済ませる

お墓の移動を行うためには、改葬元の自治体で「改葬許可申請書」を受け取ります。

必要事項を記入して書類を合わせて再び自治体へ提出することで「改葬許可証明書」が発行され、はじめてお墓の移動が可能になります。

 

なお、改葬許可申請書に関しては、各自治体のホームページからダウンロードすることも可能なケースもあるので、まずは確認しておくと良いでしょう。

また、改葬許可申請書に必要事項を記入したら、改葬元の管理者の署名および捺印をもらい「埋葬・埋蔵証明書」を受け取ることが一般的です。

 

ただ、昨今署名および捺印をもって埋葬・埋蔵証明書とする場合もあります。

以下に、「改葬許可申請書」の提出から改葬許可証明書を受け取るまでの流れを説明します。

  1. 改葬元の自治体で「改葬許可申請書」を受け取る
  2. 「改葬許可申請書」に必要事項と改葬元の管理者の署名および捺印をもら(※このとき「埋葬・埋蔵証明書」を発行してもらう)
  3. 改葬先で受入証明書を発行してもらう
  4. 改葬元の自治体に「改葬許可申請書」と必要書類(埋葬・埋蔵証明書、受入証明書)を提出する
  5. 「改葬許可申請書」が発行されお墓の移動が可能になる

※各自治体によって必要書類が異なる場合もあります。必ず確認するようにしてください。

流れ・手続き④:改葬元に改葬許可証の提出

自治体で「改葬許可証」を発行してもらえたら、改葬元の管理者に提出すると遺骨の取り出しが可能になります。

詳しくは次の項目で解説しますが、「閉眼供養」や「抜魂供養」、「遷仏法要」などを行うことが一般的です。

そのため、各供養・法要でお布施を支払うことになります。

流れ・手続き⑤:墓じまいを行う

遺骨の取り出しが可能になれば、墓じまいを行います。

遺骨の取り出しから古い墓石の処分まで行うまでが墓じまいになり、期間はすべての書類が整っていれば、およそ1ヶ月程度で完了します。

また、改葬先で新しい墓石を用意する場合、古い墓石を新しい墓地へ移動する場合に限らず、更地にして改葬元へ返却するのが基本です。

流れ・手続き⑥:改葬先に納骨する

改葬先に納骨を行うに際しては、改葬許可証の提出が求められます。

ただし、納骨する段階でお墓が完成していない場合は、遺骨を自宅で保管するか、改葬先で一時的に預かってもらうことになります。

 

新しくお墓を建てる期間は、1ヶ月から2ヶ月ほど必要になりますが、余裕をもって3ヶ月ほどみておくと良いでしょう。

また、受け入れに際して事前に「受入証明書」、受け入れ後「納骨法要」「開眼供養」などが必要になりますが、詳しくは事項で説明します。

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お墓を移動する際の必要書類

書類上の手続き

続いて、お墓を移動する際の必要書類について解説していきます。

スムーズな改葬を行うためには、事前に必要書類を用意しておくことが不可欠。

忘れずに用意しておくことが重要です。

 

また、各必要書類はご遺骨1体につき1枚必要になります。

移動するお墓に先祖代々のご遺骨がある場合は注意してくださいね。

必要書類①:埋葬証明書

埋葬証明書は、移動したい墓にご遺骨が収められていることを証明する書類です。

改葬元の霊園・お寺で発行してもらいます。

 

自治体で「改葬許可申請書」を発行する際に受入証明書とともに必要な書類であり、現在のお墓の管理者との間で改葬の許諾が得られていないと発行されません。

そのため、あらかじめ改葬の旨を伝えておかなければなりません。

また、発行に際しては300円~1,500円ほどの手数料が必要です。

必要書類②:改葬許可申請書

改葬許可証は、お墓の移動を自治体に申請する書類です。

改葬元の自治体で発行してもらいます。

この申請を行わなければ、お墓の移動ができなくなっており、発行に際して「埋葬証明書」と「受入証明書」が必要です。

 

各自治体のホームページからダウンロードすることも可能ですが、提出の際に手数料1,000円ほど求められる場合もあります。

無料の場合もあります。

必要書類③:改葬許可証明書

改葬許可証明書は、自治体でお墓の移動を認める書類です。

発行するには改葬元の自治体で「改葬許可申請書」を行う必要があります。

 

そして、発行された改葬許可証明書は、改葬元・改葬先それぞれで提出することでご遺骨の移動が可能となります。

基本的に、有効期限は設けられていません。

必要書類④:改葬承諾書

改葬承諾書とは、改葬元の使用者と改葬の申請者が異なる場合に必要になる書類です。

基本的は必要のない書類ですが、墓の管理・継承ができず、両家墓などを建立する場合に必要になってきます。

必要書類⑤:永代使用許可書

永代使用許可書とは、改葬先の墓地を利用する事を許可する書類です。

発行に際しては、予め改葬先で墓地の使用権を買う必要が求められ、初回契約時に支払うようになっています(全国平均で60万円から80万円)。

また、第三者への譲渡は禁止されており、継承者が3年から5年間現れない場合は、そのお墓は無縁墓となります。

必要書類⑥:受入証明書

受入許可証とは、改葬先でご遺骨を管理することを証明する書類です。

改葬元の自治体に「改葬許可申請書」を提出する際に必要になります。

 

また、受入許可証には有効期限が設けられている場合があり、期限が過ぎていると改葬許可申請書が受理されません。

あらかじめ確認しておくようにしましょう。

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お墓を移動する際の費用

費用計算

お墓を移動する際の費用は、全国平均で200万円から300万円ほどとされています。

ただ、地域やお墓の広さ、お墓を移動する方法などによって異なります。

 

とはいえ、おおむね次の3パターンに分けることが可能です。

  1. 改葬先で新しく墓を建てる場合
  2. 改葬先に旧い墓石を移転する
  3. 永代供養に納める

それぞれの費用の内訳は次のようになります。

費用①:改葬先で新しく墓を建てる場合

改葬先で新しく墓を建てる場合には、新しいお墓を建立する費用に加え、改葬元の墓地を更地にして返還することが求められます。

また、改葬に際してお墓の料金以外にも、供養や法要といった費用が必要です。

種類 費用 支払先 備考
お墓の解体・処分料 1㎡あたり10万円~20万円 石材店
新しいお墓の建立費用 約120万円~175万円 石材店
ご遺骨の取出し費用 4万円前後 石材店 ※ご遺骨1体につき
離壇料 1万円~10万円 改葬元の管理者またはお寺 ※お寺による
閉眼供養 3~5万円 改葬元の管理者またはお寺
埋蔵証明発行手数料 400円~1,500円 改葬元の管理者 ※ご遺骨1体につき
埋骨費用 3万円前後 改葬先の管理者
永代使用料 約60~80万円 改葬先の管理者
開眼供養料 3~5万円 改葬先の管理者またはお寺 ※ご遺骨1体につき
戒名料 30~40万円 改葬先の管理者またはお寺 ※ご遺骨毎で宗派・位による

費用②:改葬先に古い墓石を移転する場合

改葬先に旧い墓石を移転する場には、新しい墓石の費用は必要ありませんが、墓石を移動する際の費用が必要です。

また、改葬元や改葬先に支払う費用も、新しくお墓を建立する際と同様に必要になってきます。

種類 費用 支払先 備考
お墓の運搬費 20~80万円 石材店 ※距離や大きさによる
ご遺骨の取出し費用 4万円前後 石材店 ※ご遺骨1体につき
離壇料 1万円~10万円 改葬元の管理者またはお寺 ※お寺による
閉眼供養 3~5万円 改葬元の管理者またはお寺
埋蔵証明発行手数料 400円~1,500円 改葬元の管理者 ※ご遺骨1体につき
埋骨費用 3万円前後 改葬先の管理者
永代使用料 約60~80万円 改葬先の管理者
開眼供養料 3~5万円 改葬先の管理者またはお寺 ※ご遺骨1体につき
戒名料 30~40万円 改葬先の管理者またはお寺 ※ご遺骨毎で宗派・位による

費用③:永代供養に納める場合

永代供養はお墓の継承を前提としない供養の方法で、一般的には無縁墓になる人のためのものです。

しかし、昨今子供に墓守としての苦労を軽減させるために、自ら永代供養に納めるケースも増えてきています。

費用はさまざまですが、合祀専用のお墓の場合墓10万円から30万円ほどとなっています。

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お墓移動の際の注意点

注意点

お墓の移動に際しては、さまざまな手続きを踏む必要があることを説明しました。

当然ながら、お金と一定の期間が必要になりますが、その他にも注意しておきたい点があります。

ここでは、知っておきたい注意点について解説しておきましょう。

注意点①:改葬には時間が掛かる

お墓の移動を行う際は、さまざな手続きが必要になります。

そのため、実際にお墓の移動が完了するまでには、ある程度の時間が必要になります。

 

お墓の移動を大まかに分けると次のように分類できます。

  • 閉眼、開眼の法要
  • 古いお墓の撤去
  • 新しいお墓の建立

「閉眼、開眼の法要」および「古いお墓の撤去」関しては、依頼しても日にちを調節する必要があります。

また、「新しいお墓の建立」では、2ヶ月ほどの期間が必要です。

 

余裕をもって、トータルで3ヶ月ほどの期間をみておくようにしましょう。

なお、すぐに新しいお墓に埋葬できない場合は、ご遺骨を自宅で保管(さらしに包んで保管)、または改葬先の管理者に一時的に預けるようになります。

注意点②:改葬先で旧い墓石が断られる場合がある

改葬元で建立されていた古い墓石を改葬先に移転させれば、改葬費用の節約になります。

ただし、霊園やお寺によっては古い墓石を持ち込めない場合があるので注意が必要です。

そのため、改葬を考える際には、あらかじめ改葬先の墓地の大きさやルールを把握しておき、場合によっては別の改葬先を検討するようにしましょう。

注意点③:遺骨の数に応じて費用がかかる

改葬の際の供養や法要等の費用は、ご遺骨の数ごとに必要になります。

そのため、先祖代々のご遺骨が埋葬されている場合は、費用が大きくなることが一般的です。

 

また、改葬先で用意できた墓地の大きさによっては、埋葬先のスペースが足りない場合も考えられます。

いずれにしても、改葬の際に忘れがちになるのがご遺骨の数なので、改葬を行う際には念頭に入れておくようにしましょう。

注意点④:離檀料で寺院とトラブルになることがある

改葬を行う場合、現在お墓を管理しているお寺に離壇料を支払う場合があります。

離壇料は、あくまでもお礼の意味合いがあるお布施ですが、地域の慣例などによって支払われており、決まった金額になっていないのが現状です。

また、場合によっては高額な離壇料をお布施として請求するケースがあり、支払いを渋ると改葬に必要な「改葬許可申請書」などへの署名・捺印を断るなどのトラブルも見られます。

 

ともあれ、スムーズな改葬を行うためにも、現在お墓を管理してもらっている管理者には配慮を行わなければなりません。

あらかじめ親族や詳しい方に相談しておくことも必要でしょう。

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まとめ

お墓の移動には、お金とともに必要書類をしっかりと段取りしておくことが重要です。

一度手続きが滞ると、場合によっては何度も足を運ぶことになってしまいます。

特に、離壇料などの改葬時に必要になるお布施は、トラブルの原因になる可能性があるため、事前に相談しておくことが重要です。

 

また、改葬は新しくお墓を建立するお金に加え墓じまいの費用が必要になるので、コストが高くなることも踏まえておきましょう。

最後に、今回お伝えしたことのポイントをまとめておきますね。

  • 改葬は過去十年で増加傾向にあり他人事ではない(主にお墓の維持管理が困難になって改葬を行っている)
  • 改葬先の流れは、改葬の相談→改葬先の選定→閉眼、開眼の法要→古いお墓の撤去→新しいお墓の建立
  • 改葬には様々な必要書類が必要(埋葬証明書、受入証明書、改葬許可証明書、永代使用許可書など)
  • 改葬費用は全国平均で200万円~300万円ほどで新規でお墓を建立するよりコストが高い
  • 改葬する際にはご遺骨の数の確認とともに改葬元および改葬先のルールに従う方が無難
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