故人が亡くなった後、遺族は故人を弔い哀悼の意を表して喪中の期間に入ります。
喪中の期間は、お祝い事への出席や旅行を自粛したりなど、普段よりも静かな生活をしなければなりません。
では、喪中の期間の正しい過ごし方とは、具体的にどのようなものなのでしょうか?
今回は、喪中の期間と喪中を過ごす人の範囲のほか、喪中の期間にやるべきこととやってはいけないことについてくわしく解説します。
喪中とは?忌中との違い

喪中とは、故人を亡くした遺族や親族が、故人の供養を行いながら心身ともに静かに過ごす期間のことです。
もともとは、明治時代に法令で「喪に服する期間」として定められていたのですが、法令が撤廃された後も慣習化して現代まで受け継がれてきました。
喪中の期間を過ごす遺族や親族は、お祝い事を避けて派手な行動を慎み、故人を亡くして傷ついた心と身体を少しずつ癒やしていきます。
喪中とよく混同されるのが「忌中」ですが、忌中とは故人の命日から49日までのことで、喪中の期間よりも制限があり、より厳しく生活を律しながら過ごさなければなりません。
それに対し、喪中は日常生活の範囲であればさほど厳しい制限はなく、忌中では慎むべきことも喪中であれば大丈夫というケースもあります。
喪中と忌中の違いをよく理解して、喪中に相応しい行動を取るようにしましょう。
喪中の範囲

喪中の期間を過ごす人の範囲は、故人との血縁の近さやお付き合いの深さによって変わります。
では、どのような人が喪中の範囲に入るのか、喪中の範囲に入る人の具体的な例を紹介しましょう。
基本は故人のニ親等以内の人
喪中の範囲に入る人の基本は、故人から見て二親等以内にあたる人です。
具体的には次にような例になりますので、喪中の範囲を確認するときの参考にしてください。
- 故人の配偶者
- 故人の両親
- 故人の子供
- 故人の孫
- 故人の兄弟
故人と親しかった人は自主的に喪に服す
故人と血縁関係がなかった人でも、「本当の親のようにお世話になった」「本当の兄弟のように育った」など、故人と深く付き合い親しかった場合は自主的に喪に服すこともあります。
あくまで「自主的な喪中」なので、血縁関係者よりも制限は緩やかですが、故人を亡くした悲しみを癒すために出来る範囲で喪に服する人も少なくありません。
喪中の期間や範囲については以下の記事でもくわしく解説していますので、こちらの内容もよく確認してみてください。
【立場別】喪中の期間はいつまで?

喪中の期間は、故人との血縁関係の近さによって少しずつ異なります。
ここでは、喪中の期間を「故人との血縁関係の立場別」で解説しますので、喪中の期間を定めるときの参考にしてください。
- 故人の配偶者・親:13ヶ月
- 故人の子供:3ヶ月〜13ヶ月
- 故人の兄弟・姉妹・祖父母:3ヶ月〜6ヶ月
故人の配偶者・親:13ヶ月
故人の配偶者や親にあたる人は、喪中の期間は13ヶ月です。
養父母も同様で、戸籍上は一番近しい血縁者になるので、喪中の期間は13ヶ月です。
故人の配偶者や親は、葬儀でも喪主として忙しく対応しなければならないため、故人を亡くした悲しみからなかなか立ち直れないこともあります。
13ヶ月という喪中の期間は、故人の死を受け入れ心を癒すために必要な期間と言えるでしょう。
故人の子供:3ヶ月〜13ヶ月
故人の子供にあたる人は、3ヶ月〜13ヶ月が喪中の期間になります。
該当する期間に大きな幅があるのは、子供の年齢によって喪中の過ごし方も異なるためです。
例えば、子供が未成年だった場合、学校の行事などでお祝い事に出席しなければならなかったり、修学旅行へ参加しなければならないこともあります。
子供の年齢がさらに低ければ、喪中という期間の意味がわからず制限が難しいこともあるでしょう。
喪中の子供の過ごし方に関しては、年齢や理解力・状況に合わせて対応してください。
故人の兄弟・姉妹・祖父母:3ヶ月〜6ヶ月
故人の兄弟・姉妹・祖父母の喪中期間は、3ヶ月〜6ヶ月が目安です。
兄弟・姉妹・祖父母の立場にある人は、既に別家庭を築いていたり結婚などで別の家に入っていることもあるため、二親等内であっても喪中の期間はさほど長くありません。
各家庭の事情によっては、長く喪に服していたくてもできないこともありますので、状況を見ながら喪中の期間を決めましょう。
喪中の期間にやるべきこと

喪中の期間を過ごす遺族・親族には、喪中の間にやるべき法要やご挨拶などがあります。
では、喪中の期間にはどのようなことをやるべきなのか、故人の命日から時系列に沿って紹介しますので、やるべきことを確認して順番に行なっていきましょう。
- 四十九日法要
- 香典返し
- 新盆
- 納骨
- 喪中はがきを出す
四十九日法要
喪中の期間中、最初に行われる大きな法要が四十九日法要です。
四十九日は、故人の魂が無事に仏様の元へ辿り着く大切な日で、この法要をもって故人の供養に一区切りがつき、遺族は忌明けをして少しずつ日常生活へ戻ります。
四十九日法要では、多くの人にお声掛けして参列していただき、僧侶による手厚い供養を行なった後に会食するのが一般的です。
四十九日法要を行うためには、僧侶の予定を伝えて段取りをつけたり、参列者の人数を確認して会食の予約をしたりなど、やるべきことが多くあります。
少しずつ準備を進めて、つつがなく四十九日法要が迎えられるようにしましょう。
香典返し
香典返しは、故人の葬儀で頂いた香典に対し、四十九日後にお礼の気持ちを込めて品物を贈る行為です。
香典返しの基本は、いただいた金額の半額分の品物をお返しする「半返し」ですが、参列者の立場によって金額にも違いがあるので、リストを作って相応しい品物を用意しなければなりません。
職場などから連名で香典をいただいた場合は、人数を確認して少し多めのお菓子を用意することもあります。
香典をいただいた人が多い場合は、香典返しを用意するのも時間が掛かりますので、早めに香典のリストを作って少しずつ準備を進めましょう。
新盆
新盆は、故人が亡くなってから初めて迎えるお盆のことです。
新盆を迎えた遺族は、僧侶に読経をお願いして供養を行なったり、新盆に集まる人をおもてなししながら故人の冥福を祈ります。
新盆は、通常のお盆よりも手厚く供養したり、地域によっては新盆ならではの風習もありますので、周囲の人によく相談しながら準備をしてください。
納骨
納骨は、故人の遺骨をお墓や納骨堂などに納めることです。
納骨の時期は人それぞれですが、既にお墓や納骨堂がある場合は、四十九日法要後に納骨するケースがよく見られます。
近年では、散骨や永代供養といった新しい供養の方法もあるので、どのような方法で納骨をするべきなのか、喪中の期間に遺族でよく相談して決めると良いでしょう。
喪中はがきを出す
喪中の期間は、お正月のお祝いをすることができないので、新年のご挨拶となる年賀状を出すことができません。
その代わりに出すのが、年始のご挨拶の欠礼を伝える喪中はがきです。
喪中はがきは、11月中旬から12月中旬までに届くように出さなければなりません。
喪中で年賀状を出せない時は、早めに喪中はがきを用意して、相手に失礼にならないよう適切な時期に届くようにしましょう。
喪中期間にやってはいけないこと

喪中期間の遺族・親族は、できるだけお祝い事・派手な行動を避けて静かに過ごさなければなりません。
したがって、喪中の遺族・親族にはどうしてもやってはいけないことがあります。
では、具体的にどのようなことをやってはいけないのか、その例を紹介しましょう。
- 正月飾りを飾る
- 年賀状のやり取り
- お祝い事への出席
- 旅行
- 飲み会への出席
正月飾りを飾る
しめ縄や門松などの正月飾りは、新年を祝うことになるので飾ってはいけません。
喪中の期間は、正月のお祝いをせず静かに過ごしましょう。
こちらの記事では、喪中の正月の過ごし方についてさらにくわしく解説しています。
年賀状のやり取り
年賀状は、新年を迎えた喜びを伝える挨拶状なので、喪中の人は年賀状を出してはなりません。
年賀状を受け取ること自体は問題ありませんが、もし相手が後から喪中であることを知った場合、心を痛めたり悔やむ可能性があります。
このようなことがないよう、喪中の人はあらかじめ年末に喪中はがきを出しておき、年賀状のやり取りを控えるようにしてください。
喪中の年賀状に関する疑問については、こちらの記事でさらにくわしく解説しています。
お祝い事への出席
結婚式やお祭りなどのお祝い事への出席も、喪中期間の人は遠慮すべき行為です。
とくにお祭りの場合、神道では死を穢れと捉えられているので、出席は避けた方が良いでしょう。
結婚式に関しては、既に予定が決まっていたり、周囲の人から頼まれて断れないなどのケースもありますので、こちらの記事を参考にして対応を決めましょう。
旅行
旅行などのレジャーは、日常生活と離れた派手な行動にあたるため、喪中の期間はできるだけ控えるべき行動です。
ただし、学校行事などでどうしてもという場合は出席しても問題ありませんので、状況を見ながら臨機応変に対応しましょう。
飲み会への出席
飲み会への出席も、周囲の人から派手な行動と捉えられるため、できるだけ控えるようにします。
ただし、仕事上の付き合いなどでどうしても断れないという場合は、周囲へ相談してから対応することが大切です。
下記の記事では、喪中にやってはいけないことに関して、注意すべきマナーをくわしく解説していますので、こちらを確認してから上手に対応してください。
忌中を過ぎたら喪中の期間でもやって良いこと

喪中の期間は、お祝い事や旅行を控えるといった制限が多いですが、忌中を過ぎているのであればやっても良いことがあります。
ここでは、喪中の期間であっても忌中を過ぎていればやって良いことをを紹介しますので、迷った際の参考にしてください。
- お宮参り
- 七五三
- 結婚式
- 地鎮祭・新築祝い
- 初詣
お宮参り
お宮参りは、神社で赤ちゃんの誕生に感謝し、これからの健康を祈るための行事です。
したがって、穢れを嫌う神社の聖域に足を踏み入れることになるため、忌中の間はお宮参りはできません。
忌明けをした後であれば、喪中であってもお宮参りはできますので、忌明けしているかどうかを基準にしてください。
七五三
七五三も、子供の成長を神社で祝う行事なので、忌明けをしていないと神社に入れません。
忌明けをしているのであれば、喪中であってもお祝いはできますので、忌明けをしているかどうかを基準に考えましょう。
結婚式
結婚式は、人生の節目になる大きな祝い事なので、喪中の人は控えるべき行事です。
しかし、結婚式の時期がずらせなかったり、相手にどうしてもと強く頼まれた場合は、周囲の人と相談して出席することもあります。
喪中期間の結婚式は、周囲の人とよく相談してから対応を決めると良いでしょう。
地鎮祭・新築祝い
地鎮祭や新築祝いは、神道でお祓いを受けることもあるので、忌中のうちは控えなければなりません。
喪中であっても忌中を過ぎているのであれば、神様に穢れを移すことがないので行なっても大丈夫です。
初詣
初詣は、忌明けをしているのであれば神社の聖域を穢すことがないので、忌明け後の喪中期間であれば行えます。
もし忌明けをしていない場合でも、寺院への初詣であれば問題はありませんので、忌明けをしているかどうかで初詣の場所を決めるのも良いでしょう。
喪中期間の過ごし方の注意点

喪中期間は、普段の生活よりも制限されることが多いので、過ごし方に注意をしなければなりません。
では、具体的にどのような過ごし方をするべきなのか、特に気をつけるべき5つの注意点を紹介しましょう。
- 派手な買い物や行動を控える
- お祝い事は忌中を過ぎてから行う
- 忌中を過ぎてから少しずつ日常生活に戻す
- 周囲や地域の慣習にも気を配る
- 迷う時は周囲の人に相談する
注意点①:派手な買い物や行動を控える
喪中期間に長期間の旅行へ行ったり、車の購入や大掛かりなリフォームを行うなどの行為は、周囲の人から派手な行動と捉えられてしまいます。
さらに、故人の亡くして間もない遺族は心が安定しておらず、適切な判断ができないケースも少なくありません。
喪中期間は、故人の供養を続けながら心身を癒す時間でもありますので、派手な買い物や行動は控えるようにしましょう。
注意点②:お祝い事は忌中を過ぎてから行う
忌中を過ぎてないうちにお祝い事を行なったりお祝い事の出席する行為は、周囲の人を「死」に触れさせることになるので相応しくありません。
忌明けをしてからであれば、喪中であってもお祝い事を行なったり出席できるので、お祝い事は必ず忌中を過ぎてからにしましょう。
注意点③:忌中を過ぎてから少しずつ日常生活に戻す
喪中期間のうち、四十九日を迎える忌中までは、遺族もやるべきことが多く心身共に疲れています。
そんな中で、いきなり日常生活へ戻ってしまうと、心と身体のバランスが保てなくなり病気になることもあるのです。
「早く元通りの生活へ」と焦る遺族もいますが、忌中を過ぎてから少しずつ日常生活へ戻すように注意しましょう。
注意点④:周囲や地域の慣習にも気を配る
喪中の過ごし方に関しては、一般的な認識の他にも地域の慣習があるので、自分では大丈夫だと思う行為が周囲の人に受け入れられないこともあります。
周囲や地域の慣習にも気を配り、穏やかに喪中期間を過ごせるようにしましょう。
注意点⑤:迷う時は周囲の人に相談する
喪中期間の過ごし方は、住んでいる地域や周囲の人の認識によって違いがあるため、迷うことも少なくありません。
喪中期間の行動で悩むことがあった場合は、周囲の人に相談してから対応を決めるようにしましょう。
まとめ

喪中期間にあたる遺族・親族は、普段の生活よりもある程度の制限を設けて、静かに過ごさなければなりません。
しかし、忌中を過ぎていれば喪中期間でもやって良いことはありますので、喪中期間の範囲をよく確認してから行動するようにしましょう。