葬儀や法要を営む際には僧侶へ包むお布施が不可欠となりますが、このお布施については不明確な部分が多いです。
そのため、作法や相場金額などで慌てた経験がある方も多いのではないでしょうか?
そこで、ここではこのお布施に関するマナーを解説しながら「相場金額」「注意点」「渡し方」などをお伝えします。
お布施は葬儀のみならず、その後の法要などを通じて長いお付き合いとなる菩提寺との関係性において非常に重要です。
お布施に関する理解を深めることができれば、菩提寺や僧侶とのお付き合いに自信を持つことができますよ。
目次
お布施とは

初めに、お布施の意味や考え方について解説します。
意味
お布施とは自身の持ち物を他者へ施す行為を指し、この行為は仏教の教義上次の3種類の行為に分類されます。
- 財施(ざいせ):自身の財産や金銭を他者へ施す行為
- 法施(ほうせ):宗教者が仏の教えを広める行為
- 無為施(むいせ):人々が恐れないように安心させる行為
このように、お布施の本来の意味はこの3種類の仏教の教えを実践することで、救いに至るための行為を指します。
しかし、現在一般的に使われるお布施の意味はこの本来の意味とは大きく異なり、葬儀や法事の際に僧侶へ「感謝の気持ちを表すために渡す金銭」という意味で使われます。
六波羅蜜という修行の一つ
このように、お布施は葬儀や法事の際に僧侶から読経をいただく際の謝礼を指していますが、本来のお布施は仏教徒に必要な修行とされている「六波羅蜜」の一つです。
この修業は、仏教徒として自らを磨き悟りの境地に至るためには欠かすことができない6種類の修行のことで、お布施を行うことも仏教徒として欠かすことができない修行の一つだと考えられています。
本尊に捧げるもの
お布施を渡す相手は、菩提寺の住職や葬儀や法要に駆けつけてくれた僧侶ですが、実際は菩提寺で祀られている仏様に捧げるものです。
そのため、お布施とは僧侶へ賃金として渡すものではなく、菩提寺の運営のために使われていると考えましょう。
この運営費には次の費用が該当します。
- 寺院の管理費
- 寺院の修繕費
- 僧侶の家族ならびに寺院の事務員の生活の糧
- 寺院で行う行事の費用など
お布施の金額相場

ここからは、お布施の金額相場について解説します。
近年では、寺院との間でお布施をめぐるトラブルが報告されています。
このような自体を避けるためにも、お布施の金額についてのおおよその相場は把握する必要があるでしょう。
法要時
家族で故人を供養するために行う法要ですが、この法要の種類によっても香典費用は変わります。
ここでは、法要別の費用相場を一覧表に記載します。
なお、お布施の金額は「寺院」「宗派」「お住まいの地域」によっても異なるため、ここで記載する金額はあくまでも目安としてお考え下さい。
法要別お布施相場一覧表
法要名 | 金額相場 |
---|---|
初七日~四十九日 | 3万円~5万円 |
百か日 | 3万円~5万円 |
一周忌 | 3万円~5万円 |
三回忌~五十回忌 | 1万円~5万円 |
納骨時
僧侶へお布施を渡す機会は、法要以外では遺骨を埋葬する際も挙げられます。
これは、遺骨をお墓に埋葬する納骨法要を行うためで、この際のお布施は1万円から5万円ほどを包むことが一般的です。
ただし、この際のお布施も菩提寺との関係性により異なるのが現状です。
なお、納骨法要を行う際にお墓の開眼供養を同時に行う場合は、納骨法要のお布施とは別に1~5万円の開眼供養のお布施を包みます。
お盆時期
毎年迎えるお盆ですが、この時期に故人を偲んで法要を行う場合はお布施が必要です。
毎年行うお盆の法要であればお布施は5,000円から2万円ほどですが、故人が亡くなって初めて迎える「初盆」ではお布施は若干高くなり3万円から5万円が相場となります。
戒名を授与される場合
お布施は葬儀や法要の際に僧侶からいただく読経に対するお布施の他に、戒名をいただいた際に包むお布施もあり、この際のお布施は宗派や戒名の位の高さによっても大きく異なります。
ここでは、宗派と戒名の文字数別の金額相場を一覧表に記載します。
なお、この戒名に対するお布施の金額相場も菩提寺との関係性やお住まいの地域により異なるため、金額相場は参考程度に留めてください。
宗派別戒名のお布施相場一覧表
戒名の種類 | 戒名の種類(6文字) | 戒名の種類(9文字) |
---|---|---|
真言宗・天台宗 | 5万円~40万円 | 40万円~50万円 |
日蓮宗 | 5万円~15万円 | 15万円~ |
曹洞宗 | 5万円~40万円 | 40万円~100万円 |
臨済宗 | 30万円~50万円 | 50万円~80万円 |
浄土宗 | 5万円~30万円 | 40万円~100万円 |
浄土真宗 | 5万円~50万円 | 無し |
お布施に含まれない金額

葬儀や法要を行う際には、お布施以外にも、「御膳料」と「御車代」が必要です。
ここでは、お布施以外のこの2つの費用について解説します。
御車代
寺院で葬儀や法要を行わない場合は、僧侶に会場まで足を運んでもらわなければなりませんが、この際に必要なのが「御車代」です。
この際に必要な費用は5,000円から1万円が目安です。
なお、何らかの事情で僧侶が遠方から葬儀会場へ来てもらう場合は、その距離に応じた御車代が必要です。
御膳料
法要の後に会食が準備されている場合は、僧侶へ「御膳料」として5,000円ほどを包みます。
地域によってはお弁当などを僧侶へ渡す場合もありますが、季節や移動時間などを考慮して食材が痛みやすい時期は控えましょう。
お布施の包み方

お布施を準備する際には、先ほどお伝えした金額相場に加えてさまざまなマナーに従ってお布施を準備しなくてはなりません。
ここでは、お布施の包み方やそれに伴うマナーを解説します。
奉書紙で包む
香典を包む際の最も格式が高い方法が奉書紙で包む方法です。
この奉書紙は冠婚葬祭や重要書類を包む際にも使用される和紙で、僧侶に対する感謝の気持と誠意を伝えるために使用します。
包み方の手順
この奉書紙の形状は一般的な和紙と同様に四角形をしているため、包む際には手順に従って紙幣を包む必要があります。
奉書紙を使った紙幣の包み方は次のとおりです。
- 紙幣は中袋に入れる
- 奉書紙はざらつきのある面を上面にして四角形に広げる
- 広げた奉書紙の中央からやや左側に中袋を置く
- 「左」「右」「下」「上」の順番で中袋に沿って奉書紙の端を折り返していく
無地の白色の封筒に入れる
奉書紙が用意できない場合は、無地の白色の封筒にお布施を入れることも可能です。
この際、スーパーやコンビニなどに売られている一般的な白色封筒を使用しますが、郵便番号欄や電話番号欄などの記載のないものを選びましょう。
僧侶によっては、郵便番号欄や電話番号欄が記載されている白色封筒を使用することを快く思っていない方もいるため注意が必要です。
水引は必要ない
お布施袋は弔事で使用するため、水引について悩む方も多いようですがお布施袋に水引は必要ありません。
お布施は僧侶へ感謝の気持を表すためのものです。
僧侶に不幸事があったわけではないため、水引は必要ではないのです。
お布施袋への入れ方
お布施袋に紙幣を入れる際には、紙幣の向きや紙幣の種類が重要です。
ここでは、具体的な紙幣の向きと紙幣の種類について解説します。
紙幣の向き
紙幣の向きは肖像が書かれている面を表面にして、なおかつお布施袋の入り口部分に近い箇所に肖像が来るように入れるのがマナーです。
また、紙幣が複数枚ある場合は全ての向きを揃えて入れるようにします。
新札は使っても良い
お布施として包む紙幣は新札を使用しても良いとされています。
これは、あらかじめ予定されてた儀式やおめでたい行事には新札を使用するためです。
このような事情から、たとえ仏事であってもお布施を包む状況は僧侶から読経をいただいたことを仏様に感謝するという意味合いがあるため新札を使用します。
なお、どうしてもすべての紙幣を新札にできなかったなどの場合であっても、それほど気にする必要はないでしょう。
特に戒名をいただく際のお布施などは高額となることも多く、多くの紙幣のすべてを新札にすることが困難な場合もあります。
できるだけ新札を多く用意し、汚れやしわが目立つ紙幣を使わなければ問題はありません。
お布施袋の書き方

お布施袋に関するマナーは、表書きや金額の書き方なども重要です。
ここでは、お布施を包むお布施袋に記載する内容やその書き方などについて解説します。
表書き
お布施を包む際には、お布施袋の表面の上段には表書きを記載するのがマナーです。
この際の表書きは「御布施」や「お布施」などが良いでしょう。
お布施の内容を詳しく記載しようと「読経料」や「戒名料」と記載する方もいますが、お布施は僧侶の行いに対しての賃金対価ではないため、あまり詳しい表書きは適切ではありません。
先ほどお伝えした「御車代」や「御膳料」を包む場合の表書きは、そのとおり「御車代」と「御膳料」と記載します。
なお、これらの御車代や御膳料はお布施と同じお布施袋にまとめて包むのはマナーで違反です。
いくら僧侶と言えども、包まれた金額の内訳がわからなければ不信感を抱いてしまいます。
そのため、お布施は項目ごとに包み金額は明確に提示するように心がけましょう。
裏面
お布施袋の裏面には、「金額」「住所」「氏名」を記載します。
この際に特に注意が必要なのが、金額を書く際に用いる文字です。
香典袋に記載する金額は、漢数字の旧字体である「大字」を用いて書くことがマナーです。
なお、住所と氏名は基本的には縦書きで記載しますが、住所の丁目やマンションの部屋番号などは一般的な漢数字を用います。
この大字に関する詳細は、次に解説する「金額の書き方」の中で詳細に説明していますので、そちらを確認してください。
連名の際の書き方
お布施の金額が大きく、喪主や施主だけではその金額のすべてを賄うことができない場合があります。
このような場合は、香典を包む際によく見られる「連名」でお布施を包んでも問題はありません。
ただし、連名でお布施を包む場合は氏名の書き方に注意が必要です。
連名でお布施を包む場合の氏名の書き方は次のとおりです。
- 2人から3人の連名でお布施を出す場合は立場が上の方から順に右側から氏名をフルネームで記載する
- 2人から3人の連名でお布施を出す場合で全ての人物が同格である場合は右側から五十音順に氏名をフルネームで記載する
- 4人以上の連名でお布施を包む場合は代表者の名前を中央に記載しその左側に「外一同」と書き、別紙にお布施を包んだ方全員の氏名をフルネームで記載しお布施袋に包む
金額の書き方
金額の書き方については先ほどお伝えしたとおり、大字を用いて記載します。
ここでは、漢数字の旧字体である大字と金額を書く際の記入例を解説します。
大字一覧表
一般的な漢数字に対応する大字は次のとおりです。
一般的な漢数字 | 大字(旧字体の漢数字) |
---|---|
一 | 壱 |
二 | 弐 |
三 | 参 |
五 | 伍 |
六 | 陸 |
七 | 漆 |
八 | 捌 |
十 | 拾 |
千 | 仟または阡 |
万 | 萬 |
円 | 圓 |
大字の記入例
- 5,000円:金伍阡圓也
- 10,000円:金壱萬圓也
- 35,000円:金参萬伍阡圓也
- 100,000円:金壱拾萬圓也
金額の最初には「金」の文字を、金額の最後には「也」をつけるのが作法です。
なお、お布施では「4」は死を、「9」は苦しむを連想させるため使うことはありません。
実際にお布施を包む際には、これらの数字を避けるよう心がけましょう。
濃墨で記す
葬儀や法事の際の香典には薄墨を使用しますが、お布施については濃い墨を使用します。
薄墨は大切な方を亡くされた方に対する悲しみの気持ちを示すための作法の一つです。
しかし、お布施を渡す場合は僧侶に不幸事があったわけではないため、悲しみの気持ちを示す必要はありません。
このような考えから、お布施には濃い墨が使用されています。
同じ法事・法要の中で金銭を包むという意味で「香典」と「お布施」は似ていますが、その意味は大きく異なるため注意が必要です。
お布施を渡す際のマナー・注意点

お布施の準備が整ったら僧侶へお布施を渡しますが、この際には気を付けなければならないポイントがあります。
ここでは、お布施を渡す際のマナーや注意点について解説します。
渡すタイミング
お布施を僧侶へ渡すタイミングは、基本的には葬儀や法要が始まる前か終わったタイミングで渡すことが一般的です。
葬儀や法要が始まる前に渡すのであれば、会場に僧侶が到着し控室に入ったタイミングで、挨拶とともに渡すと良いでしょう。
葬儀や法要が終わった後に渡すのであれば、僧侶へのお礼を述べる際に渡すという流れです。
ただし、葬儀・法要が始まる前というのは喪主や施主は多くの弔問客への対応のため多忙となる場合が多く、僧侶への対応が不十分になってしまうことがあります。
このような事情から、お布施は葬儀や法要後に渡す方が良いでしょう。
その他、僧侶が会食に参加する際には会食の挨拶中や会食終了後に渡すことも可能です。
いずれにせよ、お布施を渡す際には落ち着いた気持ちで誠意ある態度で渡さなければなりません。
くれぐれも葬儀・法要の流れの中で、片手間でお布施を渡すことがないように心掛けてください。
袱紗(ふくさ)の使用
お布施を持参する際にはお布施袋を裸のまま持ち歩いたり、喪服のポケットに入れて持ち歩く行為は厳禁です。
お布施は袱紗に包んだ状態で持ち歩かなければなりません。
ここでは、袱紗を使用する際の注意点を解説します。
使用する袱紗の注意点
葬儀・法要で使用する袱紗の色には注意が必要です。
弔事関係で使用できる袱紗の色は寒色系、もしくは紫色の袱紗を使用します。
間違っても結婚式などで使用する赤色や薄いピンク色の袱紗を使用しないようにしてください。
なお、香典袋を袱紗で包む手順は次のとおりです。
- 袱紗をひし形に広げる
- お布施袋を広げた袱紗の中央よりやや右側に置く
- お布施袋の縁に合わせ「右」「下」「上」「左」の順番でたたむ
渡し方
袱紗に包まれたお布施は手渡しではなく、切手盆と呼ばれる通常よりやや小さめのお盆に乗せて渡します。
この際には、お布施袋に書かれた表書きの文字が僧侶から読めるように向きを直し、感謝のことを述べながら両手で渡すのが作法です。
なお、切手盆が無い場合は地味な色合いの一般的なお盆で代用します。
お盆自体がない場合は、袱紗を四角形におりその上に香典を乗せて渡しましょう。
まとめ

寺院とは故人の葬儀や法要を行った後でも長い付き合いとなることが多く、自身の子や孫が同じ寺院との関係を引き継ぐことを考えると、できる限り良好な関係でお付き合いを続けて行きたいと考えるものです。
そのため、お布施の金額相場やマナーに関しては、一族を代表する喪主や施主はもちろん、ご自身の立場で理解しておくことが重要です。
特に、金額相場は寺院にとっては運営に携わる大事な事柄です。
自身の宗派やお住まいの地域の金額相場をよく理解し、間違いのない額を事前に把握しておくなどの葬儀知識はあらかじめ身につけておきたいものです。