葬儀や法要に持参する香典を包む香典袋には、記載する内容や書き方などに多くの決まりごとがありますが、中でも香典袋の内側の包みである「中袋」は他の方の書き方が確認できないため悩んでいる方は多いものです。
そこで、ここでは香典袋の中袋の書き方を説明しながら、「使用する漢数字」「宗教別の表書き」「状況別の名前」などの書き方を解説します。
香典袋の中袋とは

香典の中袋とは、2枚重ねの香典袋の内側にある袋を指しています。
この中袋には香典として包むお金を入れ、この中袋を外袋で包んだものが一般的な香典袋です。
なお、すべての香典袋に中袋があるわけではなく、最近では中袋がないタイプの香典袋も多く販売されています。
香典袋の記載内容
香典袋に記載する内容と記載場所は次のとおりです。
- 外袋:表書き・名前
- 中袋の表面:金額
- 中袋の裏面:郵便番号・住所・氏名
なお、これらの記載内容は故人が生前に信仰していた宗教や宗派、香典を包む人数によって書き方が異なります。
多くの人数の連名で香典を包む場合には、別紙に香典を包んだ人物の住所・氏名を記載して香典袋に包むなどの方法もあるため、状況に応じた香典の包み方を覚える必要があります。
香典の中袋の書き方

先ほどお伝えしたとおり、香典袋には決まった箇所に特定の項目を記載するのがマナーです。
ここでは、香典袋の中袋に記載する金額の書き方と住所・氏名の書き方を解説します。
表面に記載する金額の書き方
中袋の表面中央には香典の金額を縦書きで記載しますが、この金額は漢数字の旧字体の「大字」を用いる必要があります。
金額は大字を使って記載する
中袋の金額は私たちが普段から使う漢数字ではなく、漢数字の旧字体の大字を使用します。
一般的な漢数字では構造が単純なため簡単に改ざんを行えてしまいますが、こうした疑念を払拭するため構造が複雑で画数が多い大字を用いることが正式なマナーです。
略称のマナーでは一般的な漢数字を用いても良いとされていますが、高額な香典を包むことを考えれば正式なマナーの大字を用いた方が良いでしょう。
漢数字に対応する大字の一覧
一般的な漢数字に対応する大字は次のとおりです。
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香典では4は「死ぬ」、9は「苦しむ」を想起させる縁起の悪い数字として使用することがないため表中には記載していません。
なお、数字以外の大字では金額の最後に記載する円は「圓」となります。
大字を使った記入例
ここでは、大字を使った金額の記入例をご紹介します。
「算用数字」「一般的な漢数字」「大字」それぞれの書き方は次のとおりです。

横書きの場合の書き方
香典の金額は縦書きが一般的ですが、香典袋の中には横書きで金額の記入欄が記載されているタイプもあり、この場合は算用数字を使って金額を記入します。
裏面に記載する住所・氏名の書き方
中袋の裏面には、会葬者の「郵便番号」「住所」「氏名」を記載します。
中袋の裏面の左端に書くことがマナーですが、連盟の場合は別紙に記入し中袋に同封する場合もあります。
中袋がない場合
袋が二重になっている状態は「不幸が重なる」ことを連想させるという考えから、香典袋の中には中袋がないタイプのものもあります。
この場合は、外袋の裏面に「郵便番号」「住所」「氏名」「金額」を記載しましょう。
書き方や書く順番は中袋と同じ書き方で問題ありません。
【宗教別】表書きの書き方

香典の外袋に記載する表書きはその贈り物の内容を示す目録として、香典だけではなくあらゆる贈り物に記載します。
最近はあらかじめ表書きが記載されている香典袋が多く販売されていますが、印刷されていない香典袋にはご自身で表書きを記載する必要があります。
なお、この表書きの書き方は宗教や贈る時期によっても異なります。
仏教の場合
仏教の教義では、四十九日の忌明けまでは亡くなった方は御霊となってこの世に存在していると考えられています。
そのため、四十九日より以前に行う「通夜」「葬儀」「告別式」では、表書きは「御霊前」を用いるのが一般的です。
なお、表書きは御霊前の他に次のような表書きも用いられます。
- 御香典
- 御香料
四十九日以降に行う法要では、故人は成仏して仏様となっていると考えられているため、表書きには「御仏前」を用いましょう。
浄土真宗の場合
同じ仏教徒であっても浄土真宗だけは他の仏教宗派と教義に違いがあり、故人は亡くなった直後に仏になると考えられているため、故人が御霊となってこの世に存在するという考え方がありません。
そのため、故人の死後に行われる全ての儀式での香典の表書きは「御仏前」となります。
神道の場合
神道での表書きは仏教と同じく御霊前を用いる場合もありますが、仏様に捧げる訳ではないので御仏前を用いることはありません。
神道では次の表書きが一般的です。
- 御玉串料
- 御榊料
- 神饌料
キリスト教の場合
キリスト教の場合は、2つの代表的な宗派である「カトリック」と「プロテスタント」で表書きが異なります。
カトリックの場合
カトリックでは「御ミサ料」「献花料」などの表書きが一般的です。
また、仏教で使用する御霊前を用いても問題はありません。
プロテスタントの場合
プロテスタントでは「献花料」「御花料」「弔意料」などの表書きが一般的です。
なお、プロテスタントの教義では「御霊」は異教徒の偶像崇拝という考えがあるため、同じキリスト教であるカトリックで使用した「御霊前」の表書きはマナー違反となります。
キリスト教徒の葬儀に参列する際に宗派がわからない場合は、どちらの宗派でも使える「御花料」の表書きを用いましょう。
無宗教または信仰する宗教がわからない場合
無宗教の葬儀や、信仰する宗教がわからない葬儀に参列する場合は、「御霊前」の表書きを用いることが無難です。
ただし、この御霊前は浄土真宗やキリスト教徒プロテスタントでは、使用することができません。
もしもの場合に備えて、浄土真宗に対応できる「御仏前」、キリスト教プロテスタントに対応できる「御花料」の表書きを記載した香典袋も持参することをおすすめします。
四十九日以降の表書きについて
先ほどお伝えしたとおり、四十九日を過ぎると故人は成仏し仏様となるため表書きは「御仏前」となります。
最近では、法要参加者に配慮して四十九日法要を四十九日前の土曜日・日曜日に行うことも多いですが、その場合でも表書きは御仏前と記載するのがマナーです。
【状況別】名前の書き方

香典袋の外袋の表面に記載する名前は、香典を出す人物の状況によって記載方法が大きく異なります。
ここでは、名前の記載方法を次に挙げる状況別に解説します。
個人で出す場合
個人で香典を包む場合の名前の書き方は、香典袋の表書きの下に名前を記載します。
誰の香典であるのかを遺族が一目見てわかるよう、名前はフルネームで記載しましょう。
なお、上司などの代理で香典を包む場合は上司の名前を記載して、名前の左側に「代」と記載することがマナーです。
2名の連盟の場合
2名の連名で香典を包む場合は、1人で出す場合と同じく香典袋の表面に名前をフルネームで記載しますが、目上の方を中央に記載して目下の方をその左側に書くことがマナーです。
なお、両名が同格の場合は五十音順で記載すると良いでしょう。
3名の連盟の場合
3名の連名で香典を包む場合の名前の書き方は、香典袋の表面の書き方は2名で出す場合と同様ですが、中袋の裏面に記載する住所・氏名を別紙に記入する必要があります。
別紙には住所・氏名に加えて一人ひとりの香典金額を記入して、中袋の表面には香典の合計金額を記載し裏面には代表者の住所・氏名のみを記載しましょう。
4名以上の連盟の場合
4名以上の連名で香典を包む場合の名前の書き方は、香典袋の表面に「○○一同」と記載することがマナーです。
なお、中袋と別紙の書き方は3名の連名の場合と同様の書き方になります。
会社の部署やグループで香典を包む際には、部署名やグループ名も記載しましょう。
会社・法人で出す場合
会社の取引先や社員の不幸ごとに対して企業として香典を包む場合の名前の書き方は、代表取締役の名前をフルネームで書き、その右横にやや小さめの文字で法人名を記載します。
中袋の表面には香典の金額を記載し、裏面には代表取締役の住所・氏名を書きましょう。
代表者名で出す場合
多くの方の連盟の代表者として香典を包む場合の名前の書き方は、表面の中央に代表者名を記載してその左下に「外一同」と書き、右側に会社名やグループ名を記載します。
中袋と別紙に関しては4名以上の連盟と同様の書き方です。
夫婦連名で出す場合
夫婦で葬儀に参列する場合の香典の名前の書き方は、一般的には夫の名前のみを記載します。
ただし、夫婦ともに故人と親しかった場合は2人の名前を書く場合もあり、その際には夫の名前を中央に書き妻の下の名前のみを夫の名前の左側に記載します。
なお、親子や家族で連名する際には、子供が独立していないのであれば世帯主の名前のみを記載しましょう。
夫の代わりに妻が葬儀に参列する場合
夫の代わりに妻が葬儀に参列する際には、表面の中央に夫の名前を記載してその左横に「内」と書きましょう。
香典袋のマナー・注意点

ここまで、香典袋の書き方に関して解説してきました。
香典袋にはこの他にも「使用する筆の種類」「金額相場」「香典袋の種類」など、守らなければならないマナーや注意点が数多くあります。
- 使用する墨は薄墨
- 香典の金額相場
- 香典袋の種類
- 袱紗(ふくさ)で包む
- お金の入れ方
- 香典を渡すタイミング
- 香典の渡し方
マナー・注意点①:使用する墨は薄墨
香典袋に記載する文字は、「突然の訃報で墨を濃くすることができなかった」「涙がこぼれて墨が薄くなってしまった」という意味で原則「薄墨」を使用します。
現在では薄墨の筆ペンを使用するケースが多く、この筆ペンの使用は問題はありません。
中袋に関しては、ボールペンも可
中袋に関しては、遺族や葬儀会場の受付担当者に分かりやすい書き方を優先するため、通常の濃い墨やボールペンを使用するのが一般的です。
マナー・注意点②:香典の金額相場
香典の金額は故人との関係性や血縁関係よっても大きく異なります。
一般的には故人の親族の香典は1万円~10万円の範囲で血縁関係が近いほど高額になり、故人の友人や職場関係者などは1万円前後が金額相場です。
香典は個人との関係性を考慮して、金額相場の中で過不足なく包むのがマナーです。
関係性以上の高額な香典はかえって遺族の負担となりかねません。
マナー・注意点③:香典袋の種類
先ほどお伝えしたとおり、香典袋は包む金額や宗教によって表書きが異なります。
宗教によってはタブーとされている表書きや、金額以上の香典袋を使ってしまうと遺族に対して礼を欠いた行為となるため注意が必要です。
マナー・注意点④:袱紗(ふくさ)で包む
香典袋を裸のままや喪服のポケットに入れて持ち運ぶのはマナー違反のため、必ず「袱紗(ふくさ)」に包むよう心がけましょう。
なお、香典袋を包む袱紗は寒色系の色合いで無地の袱紗を使用します。
慶事用の暖色系で柄付きの袱紗は葬儀の場には適さないため使用はNGです。
マナー・注意点⑤:お金の入れ方
香典袋に入れるお金は、肖像がある面を裏にしてさらにその肖像が下向きになるように入れ、すべてのお金の向きを揃えるのがマナーです。
また、お金は新札ではなく旧札を使用します。
どうしても新札しか手元になく旧札を準備できない場合は、新札に折り目をつけて包みましょう。
マナー・注意点⑥:香典を渡すタイミング
香典を渡すタイミングは、お通夜か葬式です。
基本的にはどちらの儀式で渡しても問題はありませんが、お住いの地域によってはどちらかの儀式限定で渡す場合もありますのでその際には地域の風習に従います。
なお、お通夜と葬式のどちらでも香典を渡すのは「不幸が重なる」ことを想起させるマナー違反です。
マナー・注意点⑦:香典の渡し方
香典を葬儀会場の受付で渡す際には、袱紗から取り出し相手から見て香典袋が正面に来るように持ち直し、お悔みの言葉とともに渡すのがマナーです。
まとめ

香典袋に関するマナーは、故人と遺族に対する気持ちを表す大事な作法のため、失礼があってはなりません。
特に、中袋に書く住所や名前は遺族が香典返しやお礼状を準備するための情報源となり、会計係が転記して記録に残すことからマナーを守った書き方が必須です。
突然の訃報でも遺族に対してマナーを守り、故人と落ち着いた気持ちで最後の時を過ごすため、香典に関する作法は少しずつでも理解しておきましょう。