【2024】相続税の計算を「自分で」やることはできる?基礎知識と申告するまでの流れ

相続 税 自分 で 計算相続税
この記事を監修した専門家は、
牛腸真司
税理士
立命館大学卒業2011年、税理士登録。税理士登録番号は118275。2012年 東京都港区益本公認会計士事務所(現税理士法人総和)にて資産税対策専任。2015年 千葉県税理士会登録。千葉県税理士会松戸支部広報部員。

家族が亡くなり遺産を相続するとき、相続税を自分で計算するか税理士に依頼するか迷う方も少なくありません。自分で税額計算や申告をすれば税理士費用がかからずに済みますが、正しく自分で計算できるか不安な方もいることでしょう。

そこで今回は、そもそも相続税は自分で計算できるのか、そして自分で計算するときの手順や注意点について解説します。相続税の申告期限は決まっているので、計算方法を確認して自分でできそうであれば速やかに申告を行い、難しそうであれば早めに税理士に相談しましょう。

相続税は自分で計算できる?

相続税は自分で計算できる?

相続税は遺産を相続する人にかかる税金で、相続税がかかる場合には亡くなった日から10ヶ月以内に申告や納税の手続きをする必要があります。後ほど解説するように、遺産を相続する場合でも相続税がかかるケースとかからないケースがあり、遺産額が一定額以下であれば相続税はかかりません。相続税は遺産額をもとに計算し、決められた手順に従って計算すれば税額を求められます。

遺産に含まれる財産が現金や銀行預金で、特例制度の適用可否の判断が必要ないようなケースであれば、手順に沿って計算すれば良いので、計算はそれほど難しくありません。

しかし、たとえば遺産に土地が含まれて特例制度が使えるのかどうか判断が必要なケースでは、一般の人が自分で相続税を計算するのは比較的難しいといえます。

相続税の計算では、税負担の軽減につながるさまざまな特例制度があり、特例制度を正しく適用して税負担を抑えるためには専門的な知識が必要です。居住用や事業用の土地を相続する場合に小規模宅地等の特例を使えて土地の価格を最大80%減額できる場合や、著しく利用価値が低い土地の価格を10%減額できる場合などがあります。

そのため、不動産の相続では、自分で計算せず相続に強い税理士に相談したほうが良いでしょう。

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相続税の計算で押さえておきたい基礎知識

相続税の計算で押さえておきたい基礎知識

相続税の具体的な計算方法について見る前に、まずは相続税を自分で計算する際に必要になる基礎知識を押さえておきましょう。相続税を計算する際、前提知識として押さえておきたいポイントは次の3点です。

相続税を計算するときのポイント
  • 遺産を相続しても相続税がかかるとは限らない
  • さまざまな財産が相続税の課税対象になる
  • 相続税の計算では法定相続人の数を使う

遺産を相続しても相続税がかかるとは限らない

相続税は、遺産額そのものに税率を掛けて税額を求めるわけではなく、遺産額から基礎控除額を引いてから税率を掛け合わせます。

  • 相続税の基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円×(法定相続人の数)

つまり、遺産を相続する場合でも、遺産額が基礎控除額以下であれば相続税はかかりません。基礎控除額は少なくとも3,600万円なので、3,600万円の遺産までは相続税がかからないということです。

また、配偶者が遺産を相続する場合は、1億6千万円の遺産までは相続税がかかりません。配偶者は亡くなった方の資産形成に大きく貢献した存在であり、遺産を相続する権利が当然認められるべきなので、他の相続人よりも相続税の計算で配慮が行われています。

さまざまな財産が相続税の課税対象になる

相続税を自分で計算するときには、遺産の総額を求める必要があります。そもそも、相続税の課税対象になる財産が何なのか、この点を理解しておかなければなりません。現金や銀行預金などのプラスの遺産だけでなく、相続税の計算では次の財産が含まれます。

相続税の課税対象になる財産
  • プラスの遺産
  • マイナスの遺産
  • 3年以内の生前贈与財産
  • みなし相続財産

プラスの遺産

現金や銀行預金など、亡くなった方が死亡時点で所有していた財産は相続税の課税対象になります。亡くなった方が遺した財産が何なのか、遺品整理などを行って財産を漏れなく把握しましょう。

マイナスの遺産

亡くなった方が抱えていた借金や未払金など、マイナスの遺産も相続の対象になり、相続税の計算で考慮されます。借金や未払金がある場合には、相続税を計算する際にその金額を差し引けるので、借金の未返済額を確認するために信用情報機関への照会などを行いましょう。

3年以内の生前贈与財産

相続が開始する前3年以内に、亡くなった方から相続人に生前贈与された財産がある場合、その財産の金額も相続税の計算に含めなければなりません。

これは、「相続税の生前贈与加算」と呼ばれる制度で、亡くなる直前に財産を贈与して容易に相続税を回避できないようにするための制度です。つまり、相続税がかかるのは、亡くなった時点で故人が所有していた財産だけではありません。

生前に贈与して既に相続人のものになっている財産であっても、3年以内の贈与財産は相続税の課税対象になるので、税額計算では忘れずに含めるようにしてください。

みなし相続財産

亡くなった方が保険料を負担していた生命保険契約に基づいて生命保険金を受け取る場合や、家族が死亡退職金を受け取る場合も、相続税の課税対象になります。

死亡保険金や死亡退職金は、亡くなった方が遺した財産を相続するわけではありませんが、性質としては実質的に相続財産と同じです。そのため、死亡保険金や死亡退職金は、みなし相続財産として相続税が課されることになります。

相続税の計算では法定相続人の数を使う

相続する遺産の金額が基礎控除額以下であれば相続税はかからないことと、相続税の基礎控除額の計算式について紹介しました。相続税の基礎控除額を求める際は「法定相続人の数」を使うため、相続税を計算するには、誰が相続人なのか最初に確認して人数を把握しなければなりません。

誰が相続人なのか確認するために行うのが相続人調査で、亡くなった方の戸籍を取り寄せて相続人が誰なのかを確認します。誰が相続人になるのか、相続人になる人の順位は法律で決まっており、具体的なルールは次のとおりです。

  • 配偶者:相続開始時点で配偶者が生きていれば相続人になる
  • 第1順位:子(や代襲相続人となる孫)がいれば第1順位の相続人として遺産を相続する
  • 第2順位:第1順位の相続人がおらず親がいる場合は、親が第2順位の相続人として遺産を相続する
  • 第3順位:第1順位・第2順位の相続人がおらず兄弟姉妹(や代襲相続人となる甥・姪)がいる場合は、第3順位の相続人として遺産を相続する

なお、代襲相続とは、相続が起きた時点で本来の相続人が既に亡くなっている場合に、本来の相続人の子が代わりに相続人になり遺産を相続することです。たとえば、第1順位の子が既に亡くなっていても、子の子(つまり孫)がいれば、孫が代わりに第1順位の相続人として遺産を相続します。

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相続税を計算して申告するまでの流れ

相続税を計算して申告するまでの流れ

家族が亡くなり相続が開始したとき、自分で相続税を計算して申告する場合は、およそ次の流れで対応することになります。

相続税を計算して申告するまでの流れ
  1. 遺産に含まれる財産を確認する
  2. 法定相続人の数を確認して基礎控除額を求める
  3. 遺産の総額から基礎控除額を差し引く
  4. 税率を適用して相続税の総額を求める
  5. 各相続人の相続税額を求める
  6. 申告書を作成して申告期限までに税務署に提出する

ここでは、相続税の計算・申告を自分でする際に必要になることを順に見ていきます。

遺産に含まれる財産を確認する

相続税を計算するためには、遺産の総額を確定させる必要があります。先ほど解説したように、相続税の計算では「プラスの遺産」「マイナスの遺産」「3年以内の生前贈与財産」「みなし相続財産」のすべての金額を含めなければなりません。そのため、亡くなった方が遺した財産が何なのか、まずは遺品整理を行って確認しましょう。

たとえば、銀行預金であれば、故人が口座を持っていた金融機関に一つひとつ問い合わせて預金残高の確認を行います。また、故人が生前に遺言書や財産目録を作っている場合は、財産目録を見れば財産の一覧が確認できるので、遺言書が遺されていないかどうかも確認しましょう。遺言書は自宅や公証役場、法務局などで保管されている可能性があります。

法定相続人の数を確認して基礎控除額を求める

誰が相続人なのかを確認するために、戸籍調査を行います。亡くなった方の死亡時点の戸籍を最初に取り寄せて、出生時点の戸籍まで遡る形ですべての戸籍を揃えましょう。さきほど紹介した法定相続人になる人の決まり方・順序に従って、誰が相続人になり遺産を相続するのかを確認します。

遺産の総額から基礎控除額を差し引く

遺産を把握したら総額を求め、戸籍調査によって法定相続人が確認できたら基礎控除額を計算し、遺産の総額から基礎控除額を差し引きます。たとえば、遺産の総額が6,000万円、法定相続人が2人で基礎控除額が4,200万円のケースであれば、遺産総額から基礎控除額を引いた金額は1,800万円です。

なお、みなし相続財産である死亡保険金や死亡退職金を相続人が受け取った場合は、500万円に法定相続人の数を掛けた額までは相続税がかかりません。そのため、これらの財産が含まれる場合は、保険金額や退職金額から500万円に法定相続人の数を掛けた額を差し引きます。

また、相続開始前3年以内に生前贈与された財産については、相続税を計算する際に使う財産価格は贈与したときの価格です。その財産を既に消費していて今は価値が目減りしている場合でも、贈与された当時の価格を使って計算します。

税率を適用して相続税の総額を求める

遺産総額から基礎控除額を引いた額を各相続人の法定相続分に応じて配分し、配分された額をもとに適用される税率を判定します。

まず、法定相続分とは「法定相続人がどれくらいの割合の財産を相続するか定めた割合」です。

たとえば、相続人が配偶者と親1人の計2人の場合は、法定相続分は配偶者が3分の2、親が3分の1になります。仮に遺産総額が6,000万円、相続人が配偶者と親の2人であれば、基礎控除額4,200万円を引いた後の1,800万円を配分するため、法定相続分は配偶者が3分の2の1,200万円(=1,800万円×2/3)、親が3分の1の600万円(=1,800万円×1/3)です。

相続税の税率は次の表のとおり決まっています。配偶者の1,200万円であれば税率は15%、親の600万円であれば税率は10%であることがわかり、相続税の総額は次のように計算できます。

  • 相続税の総額 = (1,200万円 × 15%-50万円)+(600万円 × 10%)= 190万円
法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

参照元:国税庁ホームページ

各相続人の相続税額を求める

続いて、相続税の総額を各相続人が実際に相続した遺産の割合で配分し、相続人それぞれの相続税額を求めます。たとえば、先ほど紹介した例では、6,000万円の遺産を配偶者と親1人の計2人が相続し、相続税の総額が190万円でした。

このケースにおいて、遺産のうち5分の3にあたる3,600万円を配偶者が、5分の2にあたる2,400万円を親が相続していたとしましょう。その場合の相続税額は、相続税の総額190万円を実際の相続割合で配分して計算するため、配偶者の相続税額は190万円の5分の3である114万円、親の相続税額は5分の2である76万円と計算できます。

ただし、配偶者の場合、遺産額1億6千万円まで相続税はかからないため、相続税はかかりません。つまり、親にかかる76万円が、このケースにおける相続税額ということになります。

6.申告書を作成して申告期限までに税務署に提出する

相続税を計算できたら、相続税の申告書を作成します。相続税の申告書の用紙は国税庁ホームページからダウンロードしましょう。

相続税がかかる場合、申告と納税の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月後です。亡くなった方の最後の住所地の税務署が提出先になるので、10ヶ月以内に申告書を提出して納税を済ませるようにしてください。

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【財産別】相続税を自分で計算するときのポイント

【遺産財産別】相続税を自分で計算するときのポイント

遺産を相続するとき、どのような財産が遺産に含まれるかはケースによってさまざまです。ここでは、次の財産ごとに分けて、相続税を自分で計算するときのポイントを解説していきます。

  • 現金や銀行預金
  • 土地や家などの不動産
  • 生命保険金
  • 借金

現金や銀行預金

亡くなった方の部屋などで遺品整理をすると、現金が見つかる場合があります。いわゆるタンス預金と呼ばれるものですが、「申告しなくても税務署にはバレないだろう」などとは決して考えず、タンス預金についてもしっかりと申告するようにしてください。

銀行預金については、亡くなった方が口座を持っている銀行がどこなのか、どこの銀行にいくら預金があるのか、一つひとつ調べなければなりません。相続税の計算で使う預金残高を確認するため、まずは各銀行に問い合わせて残高証明書を取り寄せましょう。

なお、銀行預金を相続するときの手続きの流れや必要書類は、銀行によって異なる場合があります。そのため、必ず銀行ごとに手続き方法について確認するようにしてください。

土地や家などの不動産

土地や家などの不動産では、時価や固定資産税評価額などさまざまな価格がありますが、相続税の計算をする際に使う土地や家の価格は相続税評価額です。土地の相続税評価額は、路線価(道路に面している土地の1平方メートルあたりの評価額)が定められている地域では路線価をもとに計算し、それ以外の地域では、その土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて相続税評価額を求めます。

そして、家屋の場合は固定資産税評価額が相続税評価額です。土地や家の相続税評価額の計算方法については、次の国税庁ホームページで詳しく解説されているので、確認してみると良いでしょう。

また、具体的な路線価の価格については次のサイトで確認できます。

なお、形が歪な土地などでは、土地の価格を減額する補正が行われる場合があります。遺産に土地や家などの不動産が含まれる場合は、自分で不動産価格(相続税評価額)を算出するのが難しいケースもあるので、迷った場合には相続に強い税理士に相談すると良いでしょう。

生命保険金

生命保険金は遺産分割協議の対象にはなりませんが、相続税の課税対象にはなる点に注意が必要です。被相続人(財産を遺して亡くなった方)の死亡によって取得した生命保険金で、その保険料の全部または一部を亡くなった方が負担していた場合には、相続税の課税対象となります。

ただし、生命保険金を受け取ったのが相続人の場合は、法定相続人の数に500万円を掛けた金額の保険金までは相続税はかかりません。相続税がかかるのは、この額を超える部分の金額です。

なお、相続人以外の人が取得した生命保険金については、このように一定額まで非課税になる取扱いはなく、保険金額すべてが課税対象になります。

借金

亡くなった方に借金がある場合、その金額を遺産額の計算で差し引けるので、借金があるかどうかしっかりと確認することが大切です。また、そもそも借金の額が大きい場合は、相続人が借金を相続して困らないように相続放棄を検討すべきケースもあります。

遺産の相続権を法的に放棄する相続放棄の手続きができる期間は、相続の開始を知ってから3ヶ月以内です。この期間を過ぎてしまうと、原則として相続放棄はできず、亡くなった方の借金を相続人が相続しなければなりません。

誤って多額の借金を相続しないためにも、借金が残されているのかどうかを相続開始後に確認するようにしましょう。たとえば、亡くなった方の部屋で遺品整理をする中で金銭貸借契約書が見つかった場合、借金がまだ残っている可能性があります。

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相続税が軽減される特例制度

相続税が軽減される特例制度

相続税の計算では、税額が軽減されるさまざまな特例制度が用意されています。特例制度の中には専門的な知識が必要になり、一般の方が理解するには難しいものがありますが、次の2つの制度については、実際に相続が起きたときに使うことも多いので理解しておくと良いでしょう。

相続税が軽減される特例制度
  • 配偶者の税額軽減
  • 小規模宅地等の特例

配偶者の税額軽減

配偶者の税額軽減とは、亡くなった方の配偶者が遺産を相続する場合に、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税がかからない制度です。

  • 1億6千万円
  • 配偶者の法定相続分相当額

つまり、配偶者が遺産を相続する場合は、少なくとも1億6千万円の遺産まで相続税がかかりません。

なお、この配偶者の税額軽減の適用を受けるには相続税の申告が必要です。配偶者の税額軽減を適用した結果として相続税がゼロになる場合、相続税がかからないからといって申告が不要なわけではなく、申告をしないと適用を受けられず相続税がかかってしまいます。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、居住用や事業用などに使う土地を相続して一定の要件を満たす場合に使える制度です。小規模宅地等の特例を使えると、土地の価格を最大80%減額してから相続税を計算できます。

特例の適用を受けるための要件は細かく決まっているため、要件を満たすかどうか確認が必要ですが、実際に適用できると節税効果がかなり大きい制度です。

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まとめ

今回紹介した計算方法に沿って計算すれば相続税を求められるので、ご自分のケースでも遺産額や法定相続人の数をもとに相続税を計算してみましょう。遺産に含まれる財産が現金や銀行預金のみの場合は比較的計算がしやすいので、専門知識のない方でも税額を計算できます。

一方で、土地や家などが遺産に含まれるケースでは、不動産の評価額の算出において専門知識が必要になることがあり、一般の人が自分で相続税を計算すると間違える場合も少なくありません。自分で計算できそうな場合は問題ありませんが、計算方法がよくわからず迷った場合には、相続の専門家である税理士に相談するようにしてください。

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